〜更なる高みへ/002〜




 「腹が減っては戦は出来ねぇ。だから、昼食い終わってから全員叩いてやる。それまでに覚悟を決めておけ」





 ・・・・・・


 「・・・順番が逆になっちまったが、仕方ねぇ。バトルの前に部屋に案内する」

 昼食を終えた後、ガイクはそう言い、皆にリビングに戻って荷物を持つように言った
 
 「この家の1階は凸型で、家の中心はリビング、左側がこの20人は入れる食堂、右側の方は客室になってる。
 玄関入って真っ直ぐ行った凸の突起部分には風呂に洗面台、洗濯機やお手洗いがある。
 ただし、洗面台は2階にもあるし、トイレは上なら2つある。自由に使っていい。
 地下室は貯蔵庫だ、それに続く階段は食堂の方、台所にある」

 ガイクががたんと椅子から立ち上がり、一応皆もそれに着いていく
 それからすぐにピッと指を上に突き立て、続けて言った

 「2階へ続く階段は玄関のすぐ横、食堂の上はトレーニングルーム、客室の方はじいちゃんやばあちゃん、俺の部屋がある。
 本来なら年老いた2人を階段で上り下りさせたくないんだが、断然に景色がいいとの聞かなくてな。
 風呂や洗面台の上はバルコニーで普段は洗濯物を干すのに使ってる、リビングの上は書斎だ。本はリビングで読んでくれても構わない」

 食堂を出て、皆が流されるままに荷物を持ち、客室側へと歩いていく

 「風呂はまだ1つしかないから、男女完全時間交代制でいく。
 まぁトレーニングルームにシャワー室が1つだけあるから、汗をかいたらそこで流せばいいだろう。
 朝食は7時から7時半、出来れば全員が揃って食事前の挨拶が出来るといい。
 寝坊したら、食いはぐれるから気をつけろ。後もキツいしな」

 皆が呆然と聞いていると、ガイクがくるりと振り返って言った

 「・・・これが大体だが、ウチの案内だ。何か質問は?」

 「あ、あの・・・えーっと・・・」

 何だか言葉がつかえて出てこない、ガイクはさらりとそれを流して話を続ける

 「じゃあ、部屋割りの説明だ。1階の客室は4つあり、廊下を挟むように左右に2部屋。
 で、中のベッドは2つずつ完備してある。つまり、2人で1つの部屋だ」

 ガイクが各部屋の鍵をポケットから取り出し、説明した

 「手前の1号室はレッドとゴールド、それとシショーとやらも同室で頼む。
 向かいの2号室はイエローとクリス。で、3号室がグリーンとブルー」

 「ちょっと待った、何よそれ!」

 ブルーが当然の如く叫んで抗議すると、ガイクは平然と言ってのけた

 「ジョークだ。ただ、5号室(実質は4号室だが、客室と言うこともあり不吉な数字は避けてこうした)は物置と化しててな。
 掃除がまだ終わってないんで、悪いんだが終わるまでグリーンはリビングのソファーで寝て貰う。
 5号室の掃除が終わったら、1号室のゴールドはそっちに移動して貰うから、そのつもりで」

 「な・・・」

 「一番時間にルーズそうに見えたんでな、几帳面なグリーンと同室なら寝坊も何も出来ないだろう?」

 ぐっとゴールドが反論に詰まり、皆は妙に納得した
 おそらくそれと同じ理由で、イエローとクリスが同室なのだろうと察した

 「・・・あ、あの!」

 イエローが言葉を振り絞り、ガイクに向けて言った

 「何だ?」

 「ど、どうしてここまで・・・ていうか、今日はここに泊まってもいいんですか?」

 ガイクは首筋をぽりぽりとかき、それから説明した

 「カントー本土襲撃の為、言っちゃ悪いが難民がナナシマに流れてきている。
 4のしまも例外ではないし、向こうのベッドの数にも限りがある。
 それに、こっちはそちらの事情を聞いているんでな。出来る限りの協力はさせてもらうつもりだ」

 「事情って・・・どういうこと?」

 ガイクは「詳しくはそれを話した張本人に訊け」と言った
 勿論、皆の視線は・・・考えられる可能性としてグリーンの方に向いた

 「・・・残りの説明は思い出したら言う。それより、グリーン以外は早く部屋の確認と荷物を置いてこい。
 今より45分後に、もう一度リビングに集合しろ。予告通り、きっちり叩いてやる」

 それだけ言うと、ガイクは慌ただしく鍵を手渡し、忙しそうに食堂の方へと戻っていった
 皆は手渡された鍵をじっと眺め、それからぎこちない動作で各部屋のドアの前に移動した

 
 カチャンと開いたドアの先、部屋の中はこぢんまりとしていたがキレイに整えられていた
 確かにこぢんまりとした部屋だったが、内装がキレイで清潔そうなイメージもあるからか、不思議と窮屈を感じない
 
「なかなかいい感じの部屋ッスね」

 「そうだな。さっ、荷物を置いて、張本人に問いただしに行くぞ」

 ゴールドは「うッス」と返事し、ばたばたんと荷物を投げ捨て、部屋を飛び出した
 また皆も同じ考えらしく、部屋から顔を覗かせ、グリーンのいるリビングに向かった





 ・・・・・・


 「・・・さっ、説明して貰いましょうか?」

 グリーンがソファーに座って文庫本を読んでいるのを、ブルーがその背もたれに座り訊いた
 皆も同じことを思っているし、いたせりつくせりなのだが・・・このままではどうも納得がいかない    
 文庫本をグリーンがパタンと閉じると、一応説明した

 「そろそろ腰を落ち着けて修行したかったのでな。ガイクに頼み、しばらく泊めさせてもらえないかと頼んだんだ」

 「それはわかるけど、アンタとガイクの関係は?」

 「5歳の時、同じくジョウト・ジムリーダーのシジマ先生の元で共に修行していた。
 違うのは俺の場合はおじいちゃんの紹介だったが、ガイクはその甥にあたる」

 皆がびっくりした表情になる
 つまりは、あの育て屋老夫婦はシジマの・・・親ということになる
 正確に言えばシジマは長男で、ガイクは三男坊の息子らしい

 「修行を終えたら、俺はカントーに戻ったんだが、ガイクはその後ホウエン地方へ単身留学した。
 なんでも、『コンテスト』とやらに興味が沸いたらしくてな・・・それ以後は殆ど音信不通だったんだ」

 「ふーん、で? 今になってコンタクトが出来たんだ?」

 「ああ、いきなり向こうからポケギアがかかってきたことには正直驚いたがな。
 電話のキッカケは俺のジムリーダー就任祝いだ、それと最近になってナナシマの方に移ったともな」

 成る程、まぁ大体は納得出来たのだが・・・

 「・・・いや、確かにガイクが強いのはわかるんッスけど、それだけで俺達の修行になるとは・・・」

 ゴールドはまだぶつぶつと言っている、余程悔しかったのだろう
 その問いかけに、グリーンがしれっと言った

 「どうやら、ガイクも能力者らしい」

 「はぁ!?」

 「能力についてはまだ訊いてないが、本人がそう言うのだから先ず間違いないだろう。
 それに先程見た通り・・・実力もあるし、能力者修行に関しては向こうの方に一日の長があるには違いないだろう。
 温かい食事、柔らかい寝床、為になる修行場・・・これ以上の条件、そうはないぞ?」

 それは認めざるを得ない
 食事も旅に出てからは食べたこともないような美味しいものだったし、客室もポケモンセンターのもの以上だ
 しかも、そろそろ腰を落ち着けての能力者修行もしたかったところだ
 これだけの好条件を突きつけられては、流石にぐぅの音も出ない

 「とりあえず、今わかっている俺達の能力や状況は向こうに伝えてあるからな。
 それに合わせたメニューなんかを考えてくれるようにも頼んであるし、また文句はそれからでいいだろう?」

 「・・・そうね。まぁ、どのみち一泊はする予定だったもの。
 今からじゃポケモンセンターで寝ることは出来そうにないしね」

 ブルーはとりあえず納得したように見せ、ソファーから立ち上がった

 「あ、てことはシショーが喋るのも知っているんですね?」

 「伝えてはある。黙っておいて、驚く顔も見てみたかったんだが・・・」

 『あの調子だと、多分、驚かなかったと思うけどなぁ・・・』

 皆も納得の表情を見せると、いつの間にか後ろに立っていたガイクが「おい」と声をかけた
 一瞬、心臓が止まりかけたが、向こうは全く気にしていない

 「きっかり45分だ。裏庭に行くぞ」

 「?」

 「さっきみたいに表でバトルしまくるのも問題があるだろう、通行の邪魔だしな」

 ガイクがまたスタスタと先へ歩いてしまうのを、皆がパタパタとその後をついていった

 「いよいよ修行か〜」

 「・・・うーん、ねぇ、グリーンの先生の元で一緒に修行してたんでしょ?
 てことは、やっぱり目一杯厳しくしたスパルタ形式なんじゃ・・・」

 「初日からそう飛ばすわけないだろ。今日は軽く実力を見せて貰うだけだ」

 地獄耳も修行の成果だろうか、振り向かずにガイクはレッドとブルーの会話に応えた
 ガイクのすぐ後ろを歩き、首をひねっているのはイエローだ

 「裏庭・・・裏庭・・・」

 リビングを真っ直ぐに進み、風呂場やトイレを通過し、凸の突き当たりの扉がその裏庭に続いているらしい
 鍵はかかっていないのか、ガイクががちゃりと扉を開けると、小部屋とまた扉があった・・・どうやら二重ドアらしい
 寒冷地帯などでよく見かけるそうだが・・・暖気が外に逃げぬよう冷気が中に入ってこないようにする為のものだ
 が、この辺りではあまりそれも意味はなさないはずなのだが・・・どういうことだろうか
 また1枚目の扉の裏のドアノブに鍵がぶら下がっており、それが2枚目の扉の鍵らしい
 
 ・・・と思いきや、ガイクはしゃがみ込んで床の隠し扉を開け、そこから本物の鍵を取りだした
 そして、「お前らもこの場所を憶えておけ。本物がある隠し扉はここだけだ」と教えた
 試しに色んな所を触ってみると、至る所に同じ様な仕掛けがあったのに驚いた
 しかし・・・どうやら、裏庭もそういった管理をきちんとしてくれれば出入りを自由にしていいらしい

 「随分と厳重なんですね」

 「ああ。預かりものの逃走防止と用心のためにな」

 そこでようやくイエローは思い当たった
 そうだ、ここはどこだったのか


 がちゃりと扉を開けると、そこは別世界だった

 小川や草原、崖山に洞窟らしきもの・・・そこには自然界が凝縮されているような光景だった
 あまりに広大すぎてうまい言葉も出ず、またここにいるポケモン達は自由にのびのびと過ごしている

 「ここが自慢のポケモン養育場だ。ありとあらゆる状態や環境を詰め込んだ箱庭好きのじいちゃんの最高傑作さ。
 向こうのフェンスは野菜畑と果樹園、牧場もある。ウチで出る食事は皆自家製というわけだ、健康にもいい」

 「ほへぇ・・・これが全部、個人の持ち物!?」

 「オーキド博士も一枚噛んでるって聞いたけどな。ここの環境維持のための装置とか処置とか・・・」

 「広〜〜〜〜〜っ!」

 ガイクの説明そっちのけで、皆がめいめいにこの広大な箱庭に散っていく
 これだけ広いと、一度は探検してみたくなるのが人情というものだろう・・・

 「あ、おい、待て!」

 ガイクが制止すると、皆は一応本来の目的を思い出したようだ
 とりあえず立ち止まってみせると、ガイクは頭をかきながら言った

 「広いだろ? つまり、どれだけお前らが暴れても他の島民の迷惑にはならないってことだ」

 「・・・修行場には最高で最適だな」

 奥の方をガイクが指差し、言うが早いがまた歩き出した

 「とりあえず、自然フィールドでの闘いは後だ。
 向こうの方にノーマルフィールドを用意してあるから、そこに行くぞ」

 客人が珍しいのか、ガイクに余程懐いているのか・・・周りにいたポケモン達が群がってくる
 それを1体1体どかしながら進みつつ、またガイクは続けて言った

 「そこで、先ずは1人ずつ全ポケモンを使って俺とバトルして貰う。
 能力の使用も構わねぇし、むしろガンガン使ってこい。手加減はしない」

 その言葉に、皆が同時に応えた

 「「「「「「望むところだ(です)」」」」」」

 「・・・良い返事だ!」





 ・・・・・・


 〜本日の昼食〜

 ・精米したての炊きたて御飯
 ・豚肉の冷製しゃぶしゃぶ(ゴマだれ)
 ・ゴボウサラダ
 ・豆腐とねぎの味噌汁
 ・お新香
 ・麦茶
 ・冷水





 To be continued…



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