〜更なる高みへ/006〜




 「よし、行くか!」





 ・・・・・・


 「んで、今日は何をするんスか?」

 決意新たに、皆が裏庭に集合すると、ガイクが「とりあえず歩くぞ」と促した
 今日も天気が良くなりそうで、絶好の修行日和となるだろう
 
 「・・・・・・あれ、何だろう? 山か丘か?」

 「あれって、ちょっと盛り上がって見えるやつでしょ? どっちかしら」

 「ん、いや・・・あれは『いてだきのどうくつ』だ」

 島の左側を指差し話していたところに、ガイクが正答を教えてくれた

 「この島で唯一、保護指定に入っている洞窟だ。一年中、氷が張りつららが天井を覆っている。
 そして、比較的温暖なナナシマ諸島では珍しいこおりポケモンが生息する所だ」

 「へぇ・・・」

 「ガイクの家の敷地内にあるんじゃないんだな」

 「そこまでウチも広くはないさ」

 ガイクがしれっと言う、そして「保護指定だし、地元の人間も滅多に入らない聖域みてぇな所だから、荒らすんじゃねぇぞ」と付け加えた
 何人かがギクゥッと反応を示した辺り、こっそりと珍しいポケモンを捕獲する気でいたのかもしれない

 「そんな元気があるなら、もう少し修行メニューをキツく設定し直すぞ?」

 「いやいやいやいやいやいやけけ、結構です!」

 ガイクが残念そうに「そうか」と呟くと、皆がほっと安堵のため息を漏らした
 ここでの最終目標は『ガイクを越えること』だが、今はまだ少なくとも準備期間の準備の時間だ
 しかも、昨日の(軽いという)修行で、やや筋肉痛がみられるのだ・・・今はまずい


 「・・・裏庭の奥の方は崖、下は海。ただし、2箇所だけ比較的安全に下りられるところがあり、そこには猫の額程しかないが砂浜がある。釣りをするなら、満潮に気をつけろ。
 そこに見える森には虫ポケモンが多く生息していて、中には珍しいものが紛れ込んでいたりする。それはウチのポケモンではなく、本土や別の島からの迷いポケモンのようだ・・・」

 ガイクが1箇所ずつ、丁寧に様々な説明をしてくれる
 皆はふんふんと興味深そうに聞き入り、また改めてこの箱庭の凄さと広大さがわかった


 ・・・・・・ぐるりと1時間以上かけて、この裏庭とやらを回りきり、裏庭入口の扉前まで戻ってきた
 たかが個人の家の裏庭を回るのにこれだけの時間がかかろうとは、全く以てありえないことだ

 「さて、午前中の修行だが・・・しばらく、お前らにはこの裏庭で遊んで貰う。
 そして、常時型やバトルを条件とする者をのぞき、全員に能力・特能技の使用禁止を申し渡す」

 「・・・はぁ!?」
 
 「この修行でお前らが得るものは2つ。
 1つはトレーナー人生においては避けられない野生ポケモンとの闘いを繰り返し、如何なる状況でも戦術・戦略を駆使し野生ポケモン程度には負けないようになること。
 それは能力を使わず、使えない時も含まれるし、把握も何も出来ていない今は能力に頼りすぎるのも問題だからな。手持ちが傷ついたら、ここに戻ってくればいい。
 つまりは最低限の戦術・戦略や指示のタイミングを中心としたトレーナーレベル上げ、それが出来なきゃ話にならんからな。
 もう1つはお前らのパーティの強化。単純なレベル上げとタイプバランスの強化!
 ほら、今持ってるポケモンを全部出せ。タイプと技の確認だ」

 レッド達がかちゃりと自分のボールを手に取り、それらを総て空に放った
 ボンボンボンッと、今まで闘ってきた力強く頼りになる仲間や友達、相棒、家族が顔を見せた

 レッド、ニョロボン/ニョロ(♂)。みず・かくとう、ピカチュウ/ピカ(♂)。でんき、フシギバナ/フッシー(♂)。くさ・どく。ギャラドス/ギャラ〔ちゃん〕(♂)。みずひこう、プテラ/プテ(♂)。いわ・ひこう、エーフィ/ブイ(♂)。エスパー、ニドキング/ニドオ(♂)。どく・じめん・・・計7体(タイプ重複は太字)
 
 グリーン、ハッサム(♂)。むし・はがね、リザードン(♂)。ほのお・ひこう、サイドン(♂)。じめん・いわ、ポリゴン2(?)。ノーマル、ゴルダック(♂)。みず、ナッシー(♂)。くさ・エスパー・・・計6体

 ブルー、ぷりり(♀)。ノーマル、カメックス/カメちゃん(♂)。みず、ピクシー/ピッくん(♂)。ノーマル 、ニドリーナ/ニドちゃん(♀)。どく、メタモン/メタちゃん(?)。ノーマル 、ケーシィ/ケーちゃん(♀)。エスパー・・・計6体

 イエロー、ラッタ/ラッちゃん(♂)。ノーマル、ピカチュウ/チュチュ(♀)。でんき、ドードリオ/どどすけ(♂)。ノーマルひこう、バタフリー/ピーすけ(♂)。むし・ひこう、オムスター/オムすけ(♂)。みず・いわ、ゴローニャ/ゴロすけ(♂)。いわ・じめん・・・計6体

 ゴールド、エイパム/エイたろう。ノーマル、バクフーン/バクたろう(♂)。ほのお、ニョロトノ/ニョたろう(♂)。みず、キマワリ/キマたろう(♀)。くさ、ウソッキー/ウーたろう(♂)。いわ、マンタイン/マンたろう。みず・ひこう・・・計6体

 クリス、メガニウム、メガぴょん(♂)。くさ、エビワラー/エビぴょん(♂)。かくとう、パラセクト/パラぴょん(♀)。くさ・どく、ウインディ/ウインぴょん(♂)。ほのお、カラカラ/カラぴょん(♂)。じめん、ネイティ/ネイぴょん(♀)。エスパー・ひこう・・・計6体


 「・・・ふーむ」

 ガイクが皆のポケモンを見て、品定めをしているようだ
 一方、クリスは捕獲自由と聞いているので、早くもうずうずとしている

 「レッド、あくかドラゴンタイプが欲しいところだな。少しタイプが偏りすぎている、それか技で補うしかないだろう。もう数の上では規定オーバーだしな。
 グリーン、まぁまぁだ。それなりに対処は出来るだろうが、もう少し技にばらつきを。この先、タイプ一致やお決まりの補助技だけではやってはいけない。
 ブルー、一番やばいぞ。ノーマルタイプは弱点が少なく、使いやすいが多すぎる。メタモンを鍛えても良いが、あまり強くはならんぞ。
 イエロー、もう少しパワー系が欲しい。身体の大きなポケモンも、ラッタの『いかりのまえば』をうまく使えば、捕まえるのも楽になるはずだ。
 ゴールド、じめんタイプかその技を使えるポケモンはどのパーティでも欲しいところだ。お前もそうしとけ、それとパーティのレベル上げをまんべんなくやるように。
 クリス、捕獲用メンバーのみでこれまで闘ってきたという対応・応用力は認めよう。しかし、もう少しタイプバランスを考えたパーティにしたいな。みずタイプが1体もいないのは正直キツい」

 流石、『能力、トレーナー・アイ』・・・技やタイプ一致まで視るだけで、的確に痛いところをついてくる
 それに、パソコンなどが使えない以上、今まで捕まえてきたポケモン達は使えない
 いくら指摘されたところを補えるポケモンを捕まえた経験があり、ボックス内にいたとしても・・・今の手持ちにいなければ無意味だ 
 そうだ、『サファイア』を手にするまで・・・レッド達はこのメンバー+ここで捕まえられるせいぜい1〜2体で闘い抜かなければならないのだ(育て屋は最高で2体預かってくれる)
 というか、サファイア探しのことを今更思い出し、ガイクに告げた

 「・・・・・・4のしまだと、一番怪しいのはさっき言った『いてだきのどうくつ』だな。こおりとサファイアの青のイメージも重なる。
 だが、最近R団やそういう奴らが来た形跡はないし、入口には必ず見張りが1人いる。
 見張りは4の島の住人だし抱きかかえられる可能性は低い、が・・・まぁしばらくは心配ないだろ」

 「どーして言い切れるのよ?」

 「いや・・・まぁ、今、この島は襲われても俺・・・がいるからな。異変が起きればすぐにわかるし、お前らは修行が優先事項だ」

 随分と自信たっぷりな台詞のようだが、いまいち納得出来ない
 が、4の島をよく知っているガイクが平気だと言っているのだから、これ以上の議論は無意味だ

 「話はずれたが、ここでの捕獲は自由だ。だが、特殊ボールの使用は一切禁止する。
 使っても良いのは市販のモンスターボールのみ、他のボール系はしばらく俺が預かる」

 クリスがガンッと衝撃を受け、そして泣く泣くガンテツさん特性のボールをガイクに明け渡した
 またグリーンはジムリーダーに支給されるスーパーボールも預け、ガイクはその代わり皆にモンスターボールを10個程手渡した

 「使い切り無くなったら、その日の捕獲は終了とする。また全部使い切らず、明日以降まで持ち越すのも自由だ。
 また裏庭への出入りは自由だから、別の時のために使ってもいい。夜行性のポケモンとかな。
 言っておくが、ただの量産型のボールでも、当て所へ間違いなくぶつければ捕獲率は高まる。トレーナーの知識も試されるぞ」

 「それでも、クリスの独壇場か?」

 「いえ、でも・・・手持ちが一杯ですし、考えて使います」

 「ガイク、この箱庭にドラゴンタイプのポケモンなんているのか?」

 「全タイプがいるとは言っていないな。しかし、先程言ったように、たまにここの環境に惹かれて一時的に住み着くポケモンがいる。
 可能性として狙うならばそれだな。最も、そうそう珍しいのは現れないだろうが・・・」

 「野生と預かりポケモンの区別は?」

 「特殊なボールマーカーがついているのがそれだ。一目でわかるようになっている。
 というか、バトルだけなら預かりポケモンとしても構わない。それも育ての一環だからな。
 確か10年近く預けられているのがいて、引き取り金額が高くなりすぎ、そのままにされているヤツがいるとじいちゃんから聞いたことがあるな」

 ゴールドの目がきらりと光った、間違いなくそいつを倒してレベルアップを狙う気だった
 また、クリスも様々な制限がかかる分、捕獲に燃えるらしかった
 最も、ガイクの「あくまで捕獲はオマケで、修行のことを忘れるなよ」と釘を刺されたが
 それにこれ以上の説明は面倒なので、各自ポケギアを持ち、何かあったら番号登録したガイクのところにかけるように指示した

 「今、10時半前・・・案内で時間を食ったし、昼食まで2時間ぐれぇだな。
 それまでにここへ戻ってくること、そして何らかの成果を持ち帰る気でいること。
 ポケモンが1レベルアップしたでも何でも良い、この眼で視ればわかるからな。
 別にペナルティは考えてないが、明日以降は何らかのイベントを用意する気だから、まあ今日は慣らしってことで」

 ガイクが再び時計を見て、秒読みをした
 常にそこにあり最早肉体の一部的存在となったくわえタバコが上下に揺れ、そして言った


 「午前の修行、開始!」

 「よっしゃぁ!」

 皆が勢い良く駆け出していくのを確認した後、ガイクもまた忙しそうにウチの中に戻っていった





 ・・・・・・


 「へへ、やっぱ俺は大物狙いっしょ!」

 早速単独行動となったゴールドがガサガサと彼の胸の高さ程もある深いヤブの中を通り、先程ガイクが言っていた大物を狙う
 勿論、修行の方もきちんとやるつもりだし、大物にすぐ出会えるとは全く以て限らない
 が、例え敵わないにしても、一度ぐらい遭遇し出現場所を抑えておくのも悪くはないだろうと考えたのだ

 「(・・・んー、でも、確か育て屋ってのはレベルや経験値は上がるけど、進化はしねぇんだったよな)」

 ここでは預けポケモン同士の対立や争いは日常的に起こるので、ステータスは普通よりかは上がるのかもしれない
 が、あくまでここも育て屋の養育場、何か預けポケモンのみ進化を妨げるような電波が流れているに違いない
 現にポケモン図鑑にその機能があるし、ここの維持にはそれを開発したオーキド博士が一枚噛んでいるのだから、容易に想像がつく
 となると、もしかしたら10年預けられていたとしても、進化することで強くなるタイプのポケモンではそう期待出来そうにない
 もしくは一度は人の手にあったポケモンなのだから、1回か2回進化させたところで預けているのかもしれない

 「(出来れば後者の方が楽しめそうだが、まぁ出会えなきゃしょうがねぇ)」

 それか進化しないポケモンという可能性もあるし、トランセルのようなポケモンを預けているのかもしれない
 もしこの後者の場合はここまで期待させたのだ、(出来そうもないが)勿体ぶっていたガイクを一度シメなければ気が済まない

 「(・・・・・・ここは広ぇもんなぁ、ちょっとしたサファリゾーンだ。
 先ず初日から普通に大物に出会える確率の方が、全然低いぜ)」

 だが、ゴールドの直感は「この辺りにいる」と告げている
 それに今日出会えなきゃ明日また探せばいい、兎に角大物とやらに出会えるまでに出てくる他のポケモンを皆まとめて蹴散らす
 そうしてパーティのレベルを上げ、そしてラスボスを倒すかの如く大物と対決・・・そして勝利する
 一度勝てるようになったら、あとは他のポケモンを無視して大物とだけ闘いまくる
 その方が一気に経験値が貰え、手っ取り早く強くなれるからだ・・・そう、総てはガイクを倒すために

 「我ながら完っ璧な作戦だ・・・!」

 思わず声に出てしまうが構わない、どうせ他に聞いている人などいないのだから 

 「(・・・ガルーラやバンギラス、リングマかもしれねぇなぁ・・・)」

 勝手に大物の予想をしていると、でんと何か柔らかい壁のようなものに鼻先をぶつけた
 アテテテテと鼻を押さえつつ、ふと見てみれば、そこにいたのはソーナンスだった

 「んだ、珍しくもねぇ。こんなのもいんのか」

 『ソ〜〜〜ナンッス!』

 が、せっかく初めて遭遇したポケモンだ
 先ずは肩慣らしとして、景気よく撃破してしまおう

 「うっしゃ、ウーたろう! 『けたぐり』!」

 この深いヤブでは小型のポケモンじゃ動きにくいし、バクたろうじゃこの辺一体ごと自分が丸焼けになってしまう
 ガサガサッとウーたろうが動き、至近距離から『けたぐり』を決めた

 ・・・・・・が、途端にウーたろうの方が弾き飛ばされてしまう
 それが『カウンター』によるものだと気づくと、ゴールドは舌打ちした

 「(そーだ、コイツの対処方法をレッドさんから幾つか聞いたことがあるな)」

 ソーナンスの覚える技は限られている上にセオリーが決まっていて、その内必ず『カウンター』と『ミラーコート』が入るという
 この2つの技はそれぞれ物理・特殊攻撃を受けたダメージ分だけを2倍にして相手に返すという厄介なものだ
 ソーナンスのHPやぼうぎょ・とくぼうは大したもので、その2つの技の扱い方ならばまさに天性のものだという
 が、その2つの技にも弱点がある
 簡単なものとして、相手がカウンターを狙うなら、此方は特殊攻撃を使えばその技は失敗になる
 またいくら返し技とはいえ、相手もダメージは受けるのだから、それこそ叩いて叩いて叩きまくってしまうのも手
 一番難しいとされるのが、相手が返してくるタイミングを読み、それを素速く避けること
 または自分から攻撃のリズムを崩し、タイミングを外し、相手がうまく返し技を使えないようにしてしまうことだ
 ダブルバトルならば、此方2体の技をそれぞれ物理・特殊にし、常にソーナンスを狙えばいい・・・そうすれば片方は返せても、もう片方は必ず食らう

 「(さっさと進みてぇし、ここは一気にカタァつけるか)」

 ウーたろうが深いヤブの中に潜り、その姿を消した
 ガサガサと大きな音はすれど、どこから聞こえてくるのかもわからず、またその姿は見えない・・・

 「(場所が幸いした。この深いヤブん中なら、俺でもタイミング外しのテクが使える・・・!)」

 ソーナンスの方は全く動かない、そもそもこのポケモンは自分から攻撃することは出来ないのだ

 
 そして、ソーナンスの頭上からウーたろうのいわおとしが炸裂する
 同時にウーたろうを引っ込め、代わりにニョたろうを出し、ヤブをかき分け傍に寄り、れいとうビームを標的の背後から放たせる
 念には念を入れ、タイミング外しと同時にダブルバトルの手法を取り入れたのだ
 我ながら、この作戦はうまくいったと自負している

 「(経験値が分散されっけど、まぁいっか)」

 見事に2つの技がソーナンスにクリーンヒットする、ゴールドは小さくガッツポーズを取った


 矢先だった
それも束の間、ゴールドの頭上から岩が降り、ニョたろうは半分凍ってしまった

 「・・・・・・ッ!?」

 ガンガンと降り注ぐ岩は間違いなく、ウーたろうのいわおとしだ
 しかし、使ったのが『カウンター』ならば、何故ニョたろうまで凍っているのだ
 そう、最初は何もわからなかったが、すぐに理解出来た
 あのソーナンスは最初にカウンターを放ち、いわおとしを返した
 そして、れいとうビームが届くまでの一瞬のタイムラグを狙って、『ミラーコート』の方を発動させたのだ

 「(んな話があるかよ! こんな連携はトレーナーの目と素速い判断がなきゃ不可能だぞ!?)」

 このソーナンスは野生のはず、しかもいわおとしは頭上から、れいとうビームは背後からととっさに判断出来ない死角から狙ったつもりのなのに
 ありえない状況判断に的確な対応処置、どう考えたって野生のポケモンじゃありえない

 「まさか・・・!」

 ニョたろうのれいとうビームで辺りの深いヤブが凍り砕け散り、ソーナンスの全貌がようやく見えた
 同時に、ゴールドは不敵に笑った

 『野生と預かりポケモンの区別は?』

 『特殊なボールマーカーがついているのがそれだ。一目でわかるようになっている』

 胸に燦々と輝く紅いボールマーカー、どう見たってただのボールマーカーではない
 そして、この手強さ・・・ゴールドは素速く、それでいてゆっくりとガイクにポケギアをかけた

 『もしもし』

 「ガイク、大物ってのは・・・・・・」

 『・・・もう出会ったのか? そうだ、大物とは同時攻撃すら効かない養育場最強のソーナンスのことだ』

 それだけ聞ければもう用はない、それを向こうも察したのかどちらからともなくポケギアが切れた

 「面白ぇ・・・!」

 この深いヤブもまた有利とも不利ともつかない、状況も相手にも不足はない

 「(大分想像とは違ったが、この大物・・・ソーナンスは俺が倒す!)」

 全く動かない様が逆に余裕に見える養育場最強のソーナンスに、ゴールドは立ち向かっていった





 ・・・・・・


 「・・・随分と早かったな」

 ポケギアを片手で切ったガイクががんがんと板に釘を打ち付けながら、ぽつりと呟いた
 口にはタバコの代わりに釘がくわえられており、彼の周りには板と大工用具が拡がっている

 「(・・・さて、そろそろ5号室の方の掃除に回るか)」

 此方の作業も進めてはおきたいが、実はそう急ぐものでもない
 だが、彼は何かやりかけのものがあると、それが気になって仕方なくなるという性質なのだ

 「(んじゃ、これを打ち付け終わったらにするか。うん、キリが良い)」

 手を動かすのと同時にガイクは別のことも思案していた
 そう、まさかこんなに早く、あのソーナンスが見つかるとは思ってもみなかったのだ
 しかも、それを探し当てたのはあのゴールドときた

 「(・・・まだ実力は弱いが、ハナは随分と良いようだな)」

 確かに素質だけ見れば、名前の通り・・・『金』と言えるのかもしれない

 「(さて、問題はどうやってアイツを倒すのかなんだか・・・まぁ見物だな)」

 ガイクは大きく金槌を振りかぶって、釘と今日のこの作業にトドメの一撃を差し込んだ




 To be continued…



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