〜更なる高みへ/007〜




 「(大分想像とは違ったが、この大物・・・ソーナンスは俺が倒す!)」





 ・・・・・・


 「(・・・さて、困ったわね)」

 ブルーは小さな池の周りをぐるぐると歩き、思案していた

 「(ガイクの指摘通り、今のパーティじゃ厳しいものがある)」

 しかし、ブルーがポケモンを進化させないのにもわけがある
 彼女が得意とする戦術は相手の虚を突き、戦闘の主導権を此方のものにすること
 その為には大きな身体があると、攪乱するのに不便だったり、場所によっては不利となる
 だから、大きな主砲を持つカメちゃん、ゆびをふるの意外性でピッくんと主力を最低限にしてあるのだ

 「ノーマルタイプの弱点である『かくとう』・・・その対策も一応練ってあるんだけどな」

 手に取ったボールの中にはケーシイが入っていた、タイプはエスパーだ
 手持ちに入れたのは最近、2の島での分散バトルがキッカケだった
 あんなバトルがまた無いとも限らない、こちらは『そらをとぶ』ポケモンがいないので、カメちゃんを倒されたら移動手段が無くなってしまう
 そこで、最低限・・・人家があり、最後に寄ったポケモンセンターに戻れる『テレポート』を憶えたポケモンを持つことに決めたのだ
 この判断が後々「吉」となった、理由は言うまでもないだろうが・・・転送装置の使用不可によるものだ

 「(でも、今のところ戦力外・・・)」

 が、このケーシイのレベルはそう低くない、重点的に育てるようにすればこの2時間でユンゲラーまで進化してくれることだろう
 しかし、そこからが問題なのだ

 「能力者って、交換出来ないのよね・・・」

 ユンゲラーとフーディン、両者の技の憶えるレベルはほぼ一緒
 違うのはステータスの伸び、そして進化すれば当然身体能力値自体も底上げされる
 それを知っている者ならば、ケーシイが進化したらすぐにでも『通信進化』させるべきだと判断を下す
 ブルーもそれは重々承知の上だが、したくても出来ないのだ・・・あの2の島の分散バトル以降から

 「・・・厄介な弱点よねぇ、交換が出来ないなんて。進化・交換なら、アタシの得意分野なのに」

 ブルーはふぅっとため息を吐いた、かくとうタイプの弱点はエスパーだけでもないと知っている
 そう、『ひこうタイプ』だ・・・しかし、ブルーには『そらをとぶ』を使えるポケモンがいないのはさっき言った通りだ
 理由は幼少時のトラウマによるものだが、つい最近その克服に成功した
 だから、持とうと思えば持てるのだが・・・どうもあまり気乗りがしない

 「(そんな文句、言ってられないんだけどな・・・)」

 しかし、飛行ポケモンならば素早さにも申し分ないし、攪乱戦法や主力としても役立ってくれるに違いない

 「・・・とりあえず、一応、ケーちゃんをユンゲラーにしちゃいましょう」

 この水辺に出てくるポケモンは池自体がさほど大きくないので、大型のものは棲めないはずだ
 ニョロモやウパー程度、良くてもその進化系ぐらいのもののはずだろう
 ちまちまと数多く闘う方が後々ステータス的にもお得だと知っているので、ここを選んだわけなのだが・・・・・・ 


 「・・・なんでこんなのがいるのよ」

 ブルーは思わずそう呟き、目の前に現れたポケモンを見た
 そこには、巨大な身体と硬い防御力を持った野生のキングラーの姿だった・・・





 ・・・・・・


 「っきしょん!」

 レッドはズズッと鼻をすすった、朝からまだそれがひいているらしい
 と、その音を聞きつけ、野生のアーボ達がいっせいに襲いかかってきた

 「ブイ! 『サイコキネシス』!」

 タイプ一致に加え、相手の弱点を的確につき、難なく撃破した
 ここはまだガイクの家がよく見える草原付近、レッドは何処へ行くべきか迷っていた

 「・・・んー、手持ちはオーバーしてるからなぁ」

 環境によって生息ポケモンが違うのは当然のことだ、ならば自分の欲しいポケモンがいる所を見つけなければならない
 レッドが欲しいのは・・・・・・実はドラゴンタイプというわけではない  

 「多分、草原だと思うんだけど・・・」

 首をひねりながら歩きつつ、そのポケモンの生息地を思案している
 別に何も考えず、ただ下見程度で今日を終わらせても良いのだが・・・

 「出来れば、遇っておきたいからなぁ」

 ブイが耳をピクピクと動かし、レッドの後に付いてくる
 そこで思い出したかのように図鑑を取りだし、そのポケモンの生態について調べてみることにした

 「えっと、デルビル・ヘルガーの項目はっと・・・・・・」





 ・・・・・・


 「やっぱり森は落ち着くなぁ。ね、チュチュ?」

 イエローが大きな樹の幹に寄りかかり、座り込みつつそうチュチュに問いかけた
 その問いかけに答えるかのように、全身で喜びを表した

 「・・・何を休んでいる」

 「あ、すみません。つい・・・」

 グリーンがふぅとため息を吐いた、やはりついてきて正解だったか
 イエローの性格上、この修行は向いていないと判断し、以前と同じように最初だけ指導をしてやることにしたのだ

 「この森にいるのは、やっぱり虫タイプでしょうか」

 「そうだな。出現ポケモンは3の島の、あの森と変わらないようだが・・・」

 最も、虫ポケモンの活動時間は朝が基本なので、今の森は静かな方だ
 2人が歩いていると、ポッポやオニスズメがたまに襲ってくる

 「チュチュ、『でんじは』!」 

 向かってくる敵総てをイエローに任せてはみたものの、やはり完全な攻めの態勢には入りきれないようだ
 グリーンは一考し、分かれ道に差しかかったところで「一旦、ここで別れるぞ」と言った
 イエローは真っ直ぐ、グリーンは逸れて右に曲がった
 しかし、この森はそう広くはないので、またすぐに道はどこかで繋がるだろう

 「(その前に・・・)」

 グリーンは自身にむしよけスプレーを吹き付けた、これでしばらくはポケモンとは遭遇しない
 そう、野生のポケモンがグリーンに近づけない代わり為、そのしわ寄せは総てイエローにいくようにしたのだ

 「(あまりうまい作戦とは言えないが、此方からも向こうへけしかけるか・・・)」
 
 グリーンはハッサムを出し、眠っている虫ポケモンやヨルノズクにちょっかいを出した
 気持ちよく眠っていたところを無理矢理起こされたのだが、その相手にはうまく近づけない
 苛々とした気持ちで、他の獲物を探しに周りに当たり散らす

 「(・・・このくらいでいいか)」

 グリーンはリザードンを出し、『そらをとぶ』でこの森を抜け出した
 と、同時に怒りの矛先を見つけた野生のポケモン達の咆吼と何か悲鳴に近いものが聞こえたのだった・・・





 ・・・・・・


 「(慎重に捕獲しなきゃ・・・)」

 クリスはモンスターボールを手の中で転がし、岩が多く転がっているところを歩いていた
 別にそれよりも良いポケモンが出てきたとすれば、捕まえた時に他のポケモンを逃がせばいいのだ
 皆の手持ちは既にいっぱい、今いる手持ちを逃がそうとは思わないだろうから、きっとそうするはずだった

 「みずポケモンかぁ・・・」

 少なくとも、この辺りには水気も何もないのでいないだろうが・・・それでも思わず口に出てしまう
 今まで捕獲のベストメンバーとして、手持ちを連れて旅を続けてきたクリス
 そう、メガぴょんの加入をのぞいて、実はもう増やす気はないのだ

 「でも、わたしの手持ちじゃ・・・満足にそのタイプの技を憶えるこはいないし・・・」

 どうしたものかと考える、捕獲はしたいがメンバーに加える気がないならそれは避けた方が良いのかしれない
 しかし、珍しいポケモンを見てしまえば自動的に『捕獲モード』に移行してしまうので、この心がけは無意味かもしれない

 「とりあえず、ガイクさんの言う通りにレベルだけは上げておこう」

 この先、ゴールドと同じようにクリスは能力者においてのバトルでは圧倒的に不利なのだから
 今は言われた通りに能力使用を禁止しているが、元々クリス本人に使えるものでもなさそうなのだ

 「(ガイクさんの言ったようなことが出来たら、物凄いことなんだろうけど・・・)」

 通常のバトル時にはわざマシン及びひでんマシンは使用が出来ない
 しかし、それは能力者のバトルではどうかわからない
 キワメばあさんのような他人のポケモンに技を憶えさせる能力、クリスの一度憶えた技をもう一度思い出させる能力、どんな技でも忘れさせる能力
 それらがもし、バトル中でも使えたら・・・・・・それは驚異のものとしか言いようがない

 「(・・・ま、今考えたってしょうがないよね)」
 
 と、目の前にゴツゴツとした身体を持つサイホーンが姿を現した
 じめん・いわタイプのこのポケモンに有効なタイプは、みずかくさタイプ・・・

 「パラぴょん!」

 素速く『キノコのほうし』と『ギガドレイン』を指示し、体力を削った

 「今だ、モンスターボール!!」

 パシィンと蹴り上げたボールの中に、先程のサイホーンがすぽっと入ってしまう
 「ふぅっ、捕獲完了」と言うのも束の間、クリスははっと我に返り、泣く泣く捕まえたサイホーンを逃がしたのだった・・・
 




 ・・・・・・


 「あー、ほこりがすげぇな」

 窓を全開にし、ガイクがパタパタとはたきでほこりをはたいている
 5号室の物置状態はなかなかひどいことになっていて、果たして今日中に終わるかも怪しい
 なにしろこれから昼食作りもあるのだ、時間はいくらあっても余るということがない

 「今日の昼食は・・・やっぱ季節に合わせたもんでいきてぇな」

 そんなようなことばかり、先程からぶつぶつと独り言を唱えている
 皆が好みそうで、栄養価が高くバランスのとれたものにしたいところだ
 幸い、ここの老夫婦はまだ歯が丈夫に健在であり、食べるものも選り好みをしない
 そういった意味では全員に同じもの・・・正確に言えば同じメニューを出せるので楽なのだった

 「・・・そうだな。あれにしてみるか」

 メニューが決まったらしく、少しはたきを動かす手にスピードが加わった
 その分、ほこりが舞い散るので注意をしなければならないが

 「(下ごしらえ、あいつらの部屋の掃除、ぞうきんがけ・・・)」

 頭の中で浮かんでくるはこの後の作業、修行から帰ってきたレッド達の為にタオルと飲み物も用意しておかねばなるまい
 その幾つかはポケモンにやらせてもいいのだが、出来ることなら総て自分の手でやらないと気が済まない
 別にポケモンが手抜くというわけでなく、こういう風に忙しく動いていないと気が収まらないのだ
 勿論、この性格形成に一役を買っているのが・・・あの育て屋ばあさんなのだが

 ガイクがはたきをかけていると、何かが頭の上に落ちてきた
 それがぶつかる前にキャッチし、ほこりを払い、何かと見てみる

 「・・・・・・」

 ガイクはそれをじっと眺め、そしてことんと棚の上に置いた
 後でこれも自分の部屋に持っていき、どこかに片づけなくてはなるまい
 別にレッド達の目に触れても構わないのだが、あまり気乗りはしなかった

 落ちてきたのは、簡易の額に入った写真だった
 そこに写っていたのは3年前、かつてホウエン地方でコンテスト制覇した自らの姿
 しかし、その劣化が酷く・・・ガイクの姿以外、写っていたはずの背景は真っ白になっていた


 その空白の背景に込められていたのは、いつまでも残る思い出・・・・・・
語る時は、今じゃない
 
 


 
 To be continued…



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