〜更なる高みへ/016〜



 「・・・ここには色んな本がある。そして、自分を見つめ直せ。時間はある」


 ・・・・・・


 「んじゃ、おっぱじめますか」
 
 ガイクがごきりごきりと両の拳を鳴らし、グリーンとクリスに迫った
 勿論、肉弾戦の実習ではなく、ただのポケモンバトルのはず
 しかし、どうしても・・・そうは見えなかったのは何故だろうか

 「お、お願いします!」

 「・・・・・・」

 2人がウインぴょんとゴルダックを出し、把握が始まった


 ・・・・・・


 シショーは森の中、地面にちょこんと座っていた

 『どうしたの、2人共!』

 「どうしたもこうしたもじゃねぇ〜〜〜〜〜ッ!!!」

 ゴールドが絶叫すると、『そこかっ』とシショーが『はがねのつばさ』で飛びかかり声が聞こえた方角の樹を薙ぎ倒した
 運良くその隣の樹の後ろに隠れていたイエローとゴールド、足下のチュチュとニョたろうは慌てて逃げだす

 「何なんだよ、あの強さ!」

 「だから言ったじゃないですか! どうなっても知りませんよ、って」

 確かに、あの時イエローの忠告さえ聞いていれば・・・いや聞いていても同じだったろうが
 それにしてもシショーの強さは規格外すぎる、対処法がなかなか思いつかない
 こうして敷地内の森の中へと逃げ込めば、少しは状況打破のきっかけがみつかるかもしれないと思っていたのだがアテが外れた
 そもそも『みやぶる』が使え、視力・聴力の発達した『夕闇の森のハンター・ヨルノズク』であるシショーにとってはこういう所は絶好の狩り場だ

 「と、とにかく何かトラップのようなものを仕掛けましょう!」

 「お、おう!」

 とは提案してみたものの、その材料がない
 以前なら、イエローはキャタピーのピーすけの糸を使っていたが、今はもう進化してしまっている
 だから、他に方法はと聞かれても・・・・・・すぐには答えられなかった

 『逃げたら修行にならないでしょ!』

 「修行の前に殺す気ですか!」

 必死に逃げ惑い、そして無茶苦茶な強さとその修行に反論する
 いや、これくらいじゃないと修行にならないと言うのがガイクという男
 ・・・そして、ゴールド達の身体の心配よりもその言葉に乗ったシショーだから聞くわけがないが

 「そ、そうだ!」
 
 「な、何かあったんスか!?」

 がささっと近くの藪に飛び込み、イエローは単純すぎてトラップや何かといえるのかどうかわからない作戦を教えた
 流石に反対されるかと思ったが、ゴールドは「やりましょう! やってみなきゃわかんねぇッスよ!」と2つ返事で同意した


 『・・・どこに隠れても無駄だよ』

 シショーは2人が藪から藪へと身を隠しながら進んでいるのがよく見えた
 しかも、何か企んでいそうな怪しげな動きだ
 
 『・・・・・・ふーん?』

 動き自体が何かのトラップか、そこへ来るように誘っているのだろうか
 ならばわざわざ乗る意味はない
 しかし、ここはあえて乗ってあげようとシショーはにやりと笑った  
 ゆっくりと低空飛行し、2人の後をこっそり付いていく
 ・・・向こうは気づいているだろうし、此方は気づかせてあげてるのだ

 『(さて、何が飛び出してくるかな)』

 その期待は裏切らず、間もなく森を抜けようとした時、トラップは作動した
 シショーの周囲の樹々が一斉に倒れかかり、更に頭上から『いわおとし』がきた
 恐らくシショーが2人を尾行している時、その更に後ろに気配を隠しつつチュチュやウーたろうが控え、二重尾行させた
 この時使ったのはイエローのボール付き釣り竿であり、正確には竿はなく釣り糸にボールを付けただけのもの
 勿論、そのボールの中には先程挙げた2体が入っている状態だ
 それから、シショーが通り過ぎた後にこっそりばれないように釣り糸を操作し、2体を出したのだ
 これなら、何とか気づかれないだろうと踏んでのことだ
 そして、シショーに気づかれないように、こっそりと先を歩く2人がマーキングした幹を、ぎりぎりまでチュチュの尻尾から出す電熱で静かに焼き切ったのだろう
 そして、ある程度の準備が整ったら、ウーたろうの『かいりき』や『いわおとし』などを連携させて一斉に樹々を倒した・・・・・・

 ガラガラガラガラと崩れてきたそれらに、シショーは哀れ下敷きになった
 
 「・・・ふー、成功ッスね」

 「まだわかりません。今の内に体勢を整えましょう」

 すっかり実戦そのもの、シショーは完全に敵扱いされている
 ゴールドは少し気が抜けたのか、ウーたろう達を大声で呼んだ 
 名前を呼ばれ、ひょこっと倒れた樹々をまたぎつつウーたろう達が此方へと寄ってくる

 「よーし、よくやったぞ。敵は下敷きだ」

 ゴールドはボールに戻そうとモーションした
 と、次の瞬間

 『イマイチだね。100点満点で38点しかあげられないよ』

 ゴールド達が固まった、そしてじっと倒れ込んだ樹々や山のように積み上げられた岩を見つめた
 それからすぐに、まるで爆発したかのように樹々と岩が吹っ飛んだ
 出てきたのは翼を硬化させたシショー、しかも身体の殆どにダメージが見られない
 『まもる』や『みきり』は使えないはずだから、硬化した翼で防御したということだろうか

 『・・・これで終わり?』

 ただ2人は唖然とし、逃げることさえ忘れていた
 そして、もうこの化け物と正面を切って戦い、勝つ以外に無事逃げ切る得策はないことを悟った・・・・・・

 「・・・せめて、46点はください」

 「そーいう問題ッスか」


 ・・・・・・

 
 
 「・・・んー」

 レッドはあることで悩んでいた
 彼やそのフルメンバーを中心にここの半野生ポケモンがきぜつ、もしくは戦闘不能で横たわっている

 「困った。此処のポケモンが強すぎる」

 レベルが高すぎて、デルビルのレベルの上昇が早すぎるのだ
 確かにある程度レベルが高く強い方が経験値は良い、しかし最終的にはじっくり育てた方が強くなる
 レッドとしては、レベルの低いポケモンも高いポケモンもバランス良く色々な経験をさせつつ戦わせ強くしていきたい
 
 「手持ちをこまめに変えて経験値を分散させるか、『がくしゅうそうち』を持たせりゃ楽でいいんだけど・・・」

 あいにくがくしゅうそうちの持ち合わせは無く、こうしてフルメンバーを出すはめになっているのだ
 だが、ちょっと戦わせて後は他の皆に任せるなどという温室育ちも精神面で良くない気がする  
 なら普通に戦わせれば、いやだから此処のポケモンはそこらの野生ポケモンより強いのだ
 矛盾した思いを抱え、レッドはこうして悩んでいたわけだ

 「・・・お、そうだ。釣りだ」

 そんな中でピンと閃いたのは釣りだ
 つりざおのランクでレベルは上下するから、ある程度狙いは絞りやすい
 すぐそこに池のようなところがあったこともあるし、思い立ったが吉とも言うではないか
 それに釣れるのは水ポケモンが殆どだから、デルビルに弱点な相手の対処法も教えられそうと・・・レッドは早速行動に移すことにした

 
 まるでひょうたんのような、絵に描いたような池があり、レッドはその傍に腰を下ろした
 それからするすると携帯式の『いいつりざお』を取り出し、ちゃぽんと池に釣り糸を垂らした
  
 「このつりざおなら、そう強いのは釣れないからな〜」

 確か平均して20レベル程度であり、その下のランクの『ボロのつりざお』は平均が10レベルぐらいなので、その中間の釣り竿があればもっと良かったのだが
 勿論、場所によってはいいつりざおでも20レベル以下のポケモンも結構釣れる
  
 だから、レッドは安心して釣り糸を垂らしたのだ 

 「・・・・・・。ひいてる!」

 なかなか強い引きだ、何が釣れるだろうか・・・その釣り上げる瞬間がたまらない
 レッドはわくわくしながら水面を覗き込むと、急に池の水が盛り上がった

 「!」

 引きの手応えもない、いや向こうから水上へ上がってきたのだから当然か
 そのやる気満々のポケモンは・・・・・・

 「・・・いや、だから、此処のポケモンは強すぎだろ」

 水上に上がってきたのはどう見てもレベル30以上のジュゴンだった
 このランクのつりざおでもこんな大物も釣れるのかと思う反面、なんでこの小さな池にこんなポケモンが生息していられるのかが不思議でしょうがない
 もしかしたら、この敷地内の池は総て海に繋がっているのかもしれない

 「・・・頑張ろうな」

 レッドは半ばあきれ顔でデルビルにそう言うと、勇ましく吠えた
 が、微妙にその腰が引けているような・・・・・・確かに今のデルビルにはちと早すぎる相手だった
 しかし、そう文句も言っていられない
 ジュゴンはレッドとデルビルに向け、早々と『オーロラビーム』を放ち、素速く避けた
 それから、デルビルに技の指示を出そうとした時だった

 「・・・冗談はやめてくれ」

 うっかり引き上げ忘れた竿がしなったかと思うと、次々に大型の水ポケモンが浮上してきた
 レッドの顔は引きつり、デルビルは技を出そうとしていた口が開いたまま固まってしまった


 ・・・合掌・・・


 ・・・・・・ 


 「・・・ZZZZZ・・・」

 「風邪をひかれますよ、ディック様」


 ここは勿論、未だ謎に包まれたあの組織のアジトの一室だ
 急に呼び出されたと思えば、相手は机に突っ伏したまま寝ている
 タツミがそう声をかけ、ディックの身体を揺すってみる
 しかし、全く起きる気配がしない・・・・・・
 こんな様子を見ていると、たまに呼吸することまでもが面倒臭くなっているんじゃないかと不安になる

 「・・・・・・。仕方ありませんね」

 タツミはすっと後ろに回り込み、コートを羽織らせた

 「あれ? 添い寝はしてくれないの?」

 「・・・・・・。・・・ご命令なら」

 最初から狸寝入りだったのか、それとも起こしてしまったということで此方の修行が足りないだけなのだろうか
 多分、後者だろう・・・タツミはそう考えることにした
 タツミは短くキッパリと答えると、ディックは「面倒臭いから別に良いんだけど」とぼけっと言った
 
 「それで、ご用件とは?」

 「うーん、それが・・・」

 「カントー本土に何者かが潜入したみたいなの」

 コンコンと開いたドアに今更の如く叩きつつ、突然現れたリサが言った
 タツミはその話の内容に別段と驚きはしなかった、まだそういう輩がいてもおかしくはないからだ

 「本当なら、タツミに行かせる程じゃないんだけど・・・・・・」

 「場所的に、あなたのトレーナー能力が良さそうなのよ」

 「いえ、ご命令なら、どこでも喜んで行かせてもらいます」
 
 そうタツミが言うと、ディックはちょっとだけ眉をひそめた
 ディックは単に側近がいなくなると、自分の雑務処理をしてくれる人がいなくなるから渋っているのだ
 勿論、この2人の女性はとっくにそれを見通している
 タツミが口でそう返すと同時に、心の中で大体の目星は付けていた

 「もう察しているとは思うけど、目的地はクチバの海底ドーム。
 多分、もう侵入者はいないと思うし、面倒臭いだろうけどとりあえず海底の隅々まで探ってきて」

 「そこまで潜れるということは、少なくとも『幹部候補』ぐらいの力の持ち主だと思うから、四高将の貴女でも油断はしないこと」

 能力者、いやこの組織やその任務において慢心や油断は死に繋がる
 それでも、彼女は躊躇わなかった

 「わかりました。早速向かいます」

 総ては組織の為、上司の為、そして・・・・・・シナリオの為・・・・・・





 To be continued…

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