〜更なる高みへ/017〜
「･･･いや、だから、此処のポケモンは強すぎだろ」
･･････
「ぬ、おぉぉおぉおおおぉぉおおぉおおおおぉぉぉ･･･ッ！」
･･･何事かと思えば、ただゴールドが夕食を勢いよく平らげているだけだ
それはまるで何かに八つ当たるかのようで、食べたもので両頬を思い切り膨らませている
「もう少し落ち着いて食わんかッ！」
「ひゅいやひぇむ」
ガイクの罵声で少し落ち着いたようだが、それでも勢いは衰えない
しかし、他の皆の一昨日と比べ、食はあまり進んではいないようだ
なんというか、風呂で少しは疲れが抜けたようだが、ゴールドまでは回復していないというべきか
それでも出されたものは総て食べられるし、とりあえずおかわりだってするのだから、ガイクの出す食事は恐ろしい
一度食べたものを総て飲み込んでから、クリスは行儀良く言った
「･･･あの、この修行っていつまで続くんですか？」
「ん？ 把握は明日で終わり、明後日からは別メニューに移すつもりだ」
「重要とか散々言われてた把握を一度で終わらすのか？」
「いや、これからの別メニューも把握の一部というか。
そもそも把握ってのは、『自分の能力を隅々まで知ること』に尽きる。
だから、明日までやる形式的な把握よりも、むしろこれからやる把握の方が重要かもしれん。
もう少し詳しく説明すると、５日目以降からはトレーナー自身も含めた野外訓練もメニューに加わる。
それと、メニューの内容がパターン化するもの特徴かもな」
何度となく、能力やここでの目的や課題についての同じ会話が繰り返される
記憶が飛んでいるとか皆が物覚えが悪いのではない、それでも再認識や確認を繰り返す
「なんか、その先が見えないと不安ですね」
「･･･ま、その内慣れるさ」
ガイクはそう言った
･･････
修行４日目の座禅終了後、またもやお勉強大会が始まった
今回はガイクの方から課題が出て、それについて調べてみる･･･というものだった
それをやっている時、ゴールドが訊いた
「そーいや、今まで色んな組織の連中と戦ってきましたけど、ん中で変な感覚があったんスよ」
「ん？」
「なんていうか、こう･･･相手から物凄い威圧感みたいのが感じられて･･･」
「ああ、これのことか？」
「へ？」とゴールドが声を出す間もなく、いきなり横に座っているガイクから何かが発せられたように思えた
びりびりと痛い程感じるそれは、まさに敵と対峙している時と同じだった
と、今度はガイクがふっと笑うと、感じていたそれも消えた
「･･････こ、これッス！」
「結局、この感覚は何なんだ？」
「あー、そうだな。お前らの言う通り、威圧感のようなもんだろ。
ま、能力者のハッタリみたいなもんだな」
「？」
ガイクはきゅぽっとペンをキャップから引き抜き、ホワイトボードに何か書き始めた
「生き物には本能がある。その内の『危機を察知し回避しよう』とする防衛本能が、相手の能力者の恐ろしさを身体でわかるよりも早く本人に伝えようとする。
つまり、相手の強さを勝手に感じちまって、こっちがビビリモードに入るってなだけのこと」
「な･･･ビビリ!!?」
「そーだ。ま、自分の強さに自信を持ってるヤツはそんなことにはならない。
お前らは勝ったり負けたりを繰り返してるから、まだ自信が持てねぇんだろう。
さっき俺がやったのは、ま、意識を戦闘モードみてぇのに切り替えたからって思ってくれりゃいい」
つまり、ガイクの本気の一端を感じ取り、腰が引けてしまったのだという
『戦わずして勝つ』、能力者でなくともこのハッタリは使えるという
ただ能力者が一般トレーナーに比べれば規格外なので、そう感じることが多いだけらしい
「でもさ、いちいちそんなのにかかってたらまともに戦えないよな」
「そうだな。ただ身体を強くするだけでなく、そういったものに打ち克てるよう心の方も鍛えるべきだ。
もっと言や、眼を鍛えろ」
「眼？」
「強い意志ってのはまず眼に宿るもんさ。お前らが今までビビッてきた相手には、迷いも恐れも無ぇ猛者達だろう。
そんな奴らと眼を合わせたら、ビビらない相手は普通いねぇだろうが」
いたとしたら、それは余程の馬鹿かもしれない
本能に訴えかけるハッタリは、それ以上の意志を持って立ち向かわねばならないからだ
「･･･あれ、ってことはブレイドとかいう男は･･･」
「げ。まさか俺ら、ハッタリだけで負けちまったんじゃ」
「だとしたら、相当情けないぞ。精神鍛錬のメニュー、もっときつくするか？」
「いやいやいやいやいやいや！ で、でも、よく思い返してみると、他にも原因がありそうだなぁっと思い至ったんで結構です！」
ガイクは「そうか？」と眉をひそめ、つまらなさそうに言った
･･･そういえば、今までに戦ってきた組織のメンバーは今頃どうしているのだろうか
いくら軍隊のような連中だからといって、負けたら即退役とか始末されるわけでもあるまい
となると、いずれまた彼らと戦う時が訪れるのだろうか･･････
･･････
今日の把握犠牲者はイエローとゴールド
規格外の強さことシショーに散々追いかけ回られ、あれだけ仕掛けてみたものの一度も勝てなかった
どうにも悔しいので、この鬱憤を是非晴らしたいのだが･･････どうだろうか
「弱気は厳禁だ。常に、ポケモンと共に強くありたいと思え」
「うッス！ やってやろーじゃないですか！」
「お、お願いします！」
ぴりぴりとした緊張感だけでない、先程感じたガイクの威圧感が迫ってくるようだ
２人は自ずと気合いを入れ、それに気圧されないようにぐっと足に力を込めた
今日はイエローも能力を使ってもいい、回復が常に出来るというのはバトルでは有利だろう
しかし、そう一筋縄でいきそうにない･･･それがガイクを始めとするこれから戦うべき敵や組織なのだ
「ゴロすけ！」
「キマたろう！」
２人がポケモンを出すと、ガイクはチャーレムを出した
最後の･･･３組目の把握が始まった
･･････
「･･････」
ブルーはぱらりぱらりと本のページをめくっていた、昨日からずっと･･･
本当に、色んな本が置いてあった
もう１００冊は･･･それは少々オーバーだが、５０冊は読んだかもしれない
「･･････」
ガイクは言った、「自分を見つめ直せ」「自分を知れ」と
この問いの、出口なんて、本当にあるのだろうか？
自分を知らない人間は、それこそここにある本の数よりも多い気がする
といっても、決して見つからないものではないはず･･･
だからこそ、考えれば考える程、壁は高く厚いものになっていくだけのような気もするのだ
そして、その壁を迂闊に壊そうとすれば、ぶくぶくと感情の濁流に呑み込まれてしまうような気がした
「･･･いつまでもウジウジしてるのはアタシらしくない！」
そう思ってはいるのだが、なかなか思考は先へと進んでくれない
折角、『教科書』は山程あるのに、頭の中ではわかっているのに、それを実践・実行するとなると戸惑い、躊躇ってしまう
「･･････何かきっかけがあればな･･･」
はぁ、とブルーは大きくため息を吐いた
･･･まだまだ先は長い、のかもしれない･･･
･･････
〜昨日の夕食〜
・カレーライス（野菜を先に茹で、ざるに空けておく。この時、茹でたお湯は捨てない。空いた大鍋で玉ねぎを焦がさないようにじっくり炒め、次に粗めに挽いた牛挽肉を炒め、再びそこへ野菜を茹でたお湯を入れる。あとは秘伝のカレー粉や小麦粉を加え、とろみをつける。皿にご飯をのせ、カレーをかける。そして、その後にざるに空けておいた茹でた野菜をのっける。カレー色に染まらなかった色とりどりの野菜が見た目に鮮やかな一品）
・自家製漬け物各種（福神漬け、南蛮漬けなど）
・バニラアイスクリーム（ウエハース付き）
・オレンジジュース
・りんごジュース
・冷水
〜本日の朝食〜
・おにぎり各種（塩、鮭、梅、昆布、おかか、ツナマヨ、肉味噌など）
・厚焼き卵
・揚げたて豆腐の味噌汁
・自家製漬け物各種（大根のたまり漬けなど）
・ほうじ茶
・番茶
・日本茶
・冷水
〜本日の昼食〜
・鶏つくね丼
・ナスの揚げ浸し
・水菜とジャコとカリカリベーコンのサラダ
・自家製漬け物各種（浅漬けなど）
・ほうじ茶
・番茶
・日本茶
・冷水
To be continued…
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