〜更なる高みへ/042〜
「おめーら、この先に用があんのか?」
・・・・・・
「そうだべさ」
ゴールドがわざとなまって、そう答える
向こうに対して失礼なので、シショーが一発叩いておいた
「そうですけど、何か問題が?」
「いんや、ただ珍すーなーと思てな」
レッド達を船の上から見下ろすようにその男はいた
訛りのある、ほぼイメージ通りの熊のような男だった
「いんや、聞いたことばあっても、この海域をなみのって来るやつぁ珍すくてな」
「昔はもっといたんですか?」
「おお。いっぱいいたって聞いとるよ。ポケモンと一体さなって、どんな荒波も乗り越えてったそうさ」
「へー」
それは能力者だったのだろうか、それとも今の一般トレーナーが軟弱になっただけなのか
シショーから言わせれば、『それは両方だね』と言う
「この先ば、文版家しかねーど」
「ぶんばんや?」
ゴールドが首をかしげると、シショーが『そこそこ、そこが目的地』と耳打ちした
それを聞いたレッドがいち早く返事をし、その船の主に訊いた
「あなたも一緒なんですか?」
「おお。良ければ一緒ついてこい。先導したる」
船は小さく狭く、その上荷物を積んでいるようなのでとても全員を乗せることが出来ない
だから、せめて島までの水先案内はしてくれると申し出てくれたのだ
「ありがとうございます」
「んや、気にすなって」
船と横並びにレッド達がなみのりを始めると、船の主は航路をまっすぐに取る
ゴールドがちょーどいい、と船の主に訊いた
「すんませーん。今から行くたー島ってどーいう建物があるんスか?」
「んー、図書館のような古本屋のようなとこがね」
「や、それは知ってるんスけど・・・」
船の主は何度もたー島を訪れている節があるので、訊いてみたのだが・・・・・・
それを察してくれたのか、船の主は言葉を選びながらわかりやすいように説明してくれた
「あすこはなー、パスコンが発達する前はナナシマの重要な島だったんだ。狭い島にぽつんと館っぽいのがあるでよ。
島の人達が要らなくなったり読まなくなった本を持ち寄って、おらみたいな漁師に頼んで行きがけに置いてきて出来たんだ。
不定期におらみたいのがたー島さ行って、本を別の島へ持っていく。別の島は持ってきてもらった本と交換に別の本を渡す。
おらは渡された本をたー島さ置いてく。したら、また置いてある本持って別の島さ行く。そん繰り返しだ。
もしずっと手元ば置きたほどに欲しか本だったら、見合う値段をつけて買い取る。そん金は館や他の本の修繕費に回してた」
確かにその島では要らない本でも、他の島では欲しい本かもしれない
つまり、たー島はナナシマの本の交流場・中継点なのだ
「今はめっきり行かななったけどなー。でも、今は連絡船も動かなくて、みーんな不安じゃ。
それば少しでも明るくならんかと、久々に行って本を仕入れてこようと思うてなぁ。
幸い、おらもおらの船もこんくらいの海流なら腕ひとつで何とか行けるべ」
「へー。でも、基本的にただでやってるんですよね?」
「ま、そだな。昔も本さ持って来てくれた漁師を島で一晩泊めたるとか、一食馳走する程度のもんじゃあ。
おら達だって、漁行くついでに頼まれることさ多かったし、そう望むもんじゃねぇ」
船の主はにへっと笑った
決して生業にはならないものだし、たー島の館はいわゆる公共施設だからするものでもない
だから、それくらいで丁度良いのだろう
「なかなか面白そうッスね」
「でも、肝心の本はなんかすりきれてそうねぇ」
潮風に当たり、何十何百人もの人に読み込まれた本だ
むしろ、そうなって当然といえる
もしかしたら、様々な本に埋もれて隠れた相当古い「お宝」というものもあるかもしれない
「まぁ、そこは仕方ないだろう。元々俺達が欲しいものがあるとも限らんしな」
「それもそうですね」
「んぁ? なんか欲すぃもんでもあんのか?」
「いや、ちょっと・・・」
レッド達は言葉に詰まった
知りたいことなら山ほどあるが、どれも本として探し当てるのが難しそうなものばかりだからだ
ガイクの言うあの人の顔はともかく、能力者についてや伝説のポケモンの所在地なんて当てになるのか
とりあえず何か面白い情報が見つかればいい、そんなワラをつかむような気持ちだった
・・・・・・
「おぉう、着いたべさ」
船の主が声を上げるのと同時にレッド達も視認出来た
目の前にはちー島ほどの大きさはないものの、いー島より大きな島が見える
大きくもなく小さすぎでもなく・・・中途半端な島だ
「なんか森が見えますね」
「防風林みてなもんだな。潮風で建物や本が痛まないように植えたもんでの。あの奥にあるべ」
「ああ、考えてあるもんだな」
感心したようにグリーンが言うと、船の主が豪快に笑う
なんでも提案者は違うがその植樹をしたのはこの船の主らしく、この大笑いは照れているらしい
「上陸準備すっかぁ。どいてくんろ」
船の主が平手でレッド達に船から離れるように言い、その後にいかりをぼちゃんと落とした
今時いかりをおろすのか、という感じがいかにもこの船の主には合っている
「んじゃ、先に行くよ」
「おぉう、ナナシマ交本館でんな」
船の主がぶんぶんと手を振って応えてくれるのを、皆が微笑む
殺伐な今に、こういう人と出会えたのは嬉しかった
「で、ナナシマ交本館ってのは?」
『この島の建物の名前』
「そういや、まだ聞いてなかったな・・・」
「ナナシマ・本・交流・館で、そのまんまですね」
クリスが苦笑する
確かにそのまんまだが、変にひねるよりわかりやすくていい
防風林を進んでいると、心なしかイエローの顔色がいつもよりいい
本人に聞けば「そうですか?」という程度のものだが、やはり森林と彼女の相性は良いのだろう
レッドがしきりにそれを繰り返すものだから、イエローが照れてしまっている
急に気温が上がったわねぇとブルーがつぶやきゴールドが相づちをうつものの、当の2人は聞いてやしない・・・
・・・・・・
「ふーん、これがそうなの」
「館ってより民家ッスね」
想像していたものより建物の規模は小さかったが、きっと木造建築という皆が密かに考えていたことは当たっていた
古い民家と納屋をくっつけるように改造したもの、という描写が一番しっくりくるだろう
木造建築独特かつ古い家の雰囲気とにおいに臆するわけもなく、グリーンが交本館の扉に手をかけた
「・・・鍵はかかってないのか」
『一応、公共施設みたいなものだし。何より、こんなところにくる泥棒もいないからでしょ』
「前者は納得。後者はそれこそ穴場っていう気もしますけど」
はははっと笑い声があがり、グリーンが扉を引いた
木造建築独特かつ古い家の雰囲気とにおいに加え、古書独特のにおいが充満していた
好きな人にはたまらないが、このままだと空気が悪すぎるので、たまらずブルーが交本館の窓を見つけては全開にする
とりあえず空気の入れ替えということで、扉も開け放しだ
防風林の道も曲がりくねっていたりしたので、潮風が直接吹き込んでくることもないだろう
「・・・すごいとこね・・・」
「褒めてるんだかけなしてるんだか」
ブルーのつぶやきにレッドが苦笑する
ここは確かに本の世界だった
壁一面の本棚、積み上げられた段ボール箱、無造作に重ねられた束
それら・・・この建物内すべてが本で埋め尽くされ、通路として確保されていたのはその隙間を縫うようにしてのわずかに30cmほどだった
閉鎖的な部屋の真ん中に立っていると、部屋中の本に圧迫されそうで息苦しいほどだ
「なんか本の墓場みたいッスね」
「言い方は悪いですけど、どことなく正しいですね」
「手当たり次第に詰め込んだって感じかしら」
「ていうか、こんなにあるのか・・・」
そこらの古本屋以上かつカントー本土の図書館並みの蔵書数に気おされ、探すのが億劫になりそうなほどだ
掃除も長いことされていなかったようで、ほこりも積もっている
「わぁ、凄いほこりですよ」
「これはもう本を探す前に掃除しないと」
「メンドくさー。ちょっとガイク呼んできて」
『行ってくる?』
「待て待て。本当に行きそうだからやめて」
クリスはすでに腕をまくり、どこからかバケツと雑巾を持って掃除準備に取り掛かる
指先ですっとこすっただけでわたぼこりがたっぷりついてくる環境では、流石に本も読めない
ブルー達も観念して、大掃除に取り掛かることにした
大型は無理だろうが、小型や中型のポケモンならば室内作業を手伝えるだろう
いや、大型のポケモンはいったん本を外に出す作業をこなしてもらい、虫干し作業もしてしまうことにした・・・
掃除を始めてから20分ほど後に、船の主がようやく交本館に顔を出した
両手と肩には大きなリュックがぶらさがっており、なかはぎゅうぎゅうに詰め込まれた本だとわかる
おそらく回ってきた島々から回収してきたものなのだろう
「おぉ、掃除さやってくれてぇんのか」
「ええ。まぁ。ついでに虫干しなんかも」
「ていうか、そんな大荷物があるなら言ってくれれば手伝うのに・・・」
「ああ、平気さ。こん程度なら手伝わすんもわりと思てな。どれ、わすも手伝うか」
船の主も手伝っての一斉大掃除となり、場は一気に慌しく埃っぽくなった
なかには本とは言えないほどダメになっているものもあり、それらを見極めるのが大変だった
本を抜いて空になった本棚を運ぼうとしたら、そこのところの床が抜けているところがあったりもした
またいかがわしい本やら発禁本が見つかると大騒ぎになり、更に混乱を極めることとなる
すべての本が交本館から出された時、もう陽がわずかに傾きかけていた
随分と働いたので、お腹もペコペコだ
「んざ、メシにすっべ」
船の主が新鮮な魚や島で手に入れてきた野菜を提供してくれ、それで簡単な煮込み料理を作ることにする
1人旅経験も多いこのメンバーはガイクの家事手伝いをたまにしていたこともあり、なかなかの包丁さばきだ
流石にガイクと同等の調理速度ではないが、それ以前の旅よりかは早く出来上がった
「うん、うまい」
「まぁまぁねぇ」
「俺達の料理の腕ってこんなもんだっけ?」
「・・・・・・ガイクさんの料理が凄かっただけですって。まともな調理器具もありませんし」
『舌肥えちゃったよね』
「黙って食え」
グリーンに一喝され、一転し、黙々とした昼食会となってしまう
そんななかでも船の主が豪快に笑い、おかわりを貰う
「んま、今日のとこはここさ泊まってけ。他に野宿出来そな島やいろは48諸島はこの近くにねーけ」
「そうさせてもらいます。でも、本閉まったら建物のなかじゃ寝れないですね」
「ま、慣れたからいいけど」
食事が終われば、次は建物の掃除だ
雑巾で床をふき、壊れた本棚を出来る限り修理する
交本館の裏手にあった物置のなかに木材やペンキ・ニスなどを見つけたので勝手に使わせてもらい、新たに本棚を作ったりもしたし床の修復もした
こういう面倒な作業もグリーンのハッサムによるきりさくやレッドのカビゴンのかいりきなどにかかれば、人の手よりも何倍も早く出来るので助かる
ペンキやニスだって炎ポケモンがいればあっという間に乾き、すぐに実用可能となる
「俺のハッサムは日曜大工係じゃないぞ」
「いやぁ、でもその手ってノコギリや金槌の代わりも出来るしさ」
「ったく・・・ポケモンに頼ってばかりだな」
「今の社会、ポケモン無しに生きてけませんよ」
「これとそれはまた違う問題だと思うがな」
レッドとグリーンがそう言うが、この2人はポケモンに負けずに手を動かし、働いている
それに比べて、ブルーとゴールドはうまいこと皆の周りを立ち回って、お茶係を承ったりしてうまく手を抜いている
「でも、なんで無駄に木の板とか置いてあったんでしょーかねぇ」
「さぁ? でも、だいぶ古そうなやつだったし、知らない誰かが同じようなことをしたんでしょ。その余り」
「2人共話してないで手を動かしてくださ〜い」
イエローがとんてんかんてんと金槌をたたきながら、ブルーとゴールドを目ざとく注意する
メンバーのなかでは一番非力だが、案外こういう細かい作業は仕事は向いているようだ
ブルーとゴールドの疑問は船の主も知らないと言うし、ここを立ち寄る漁師などは他にもいるので気にすることではないらしい
置いてあったそれらには特に不審な点も無かったし、あのまま朽ちてしまうよりはいいだろう
「いやぁ、みちがえてくんだなぁ」
「いっそのこと交本館ごと建て直せばいいのに」
「無茶言うな」
・・・・・・
「作業完了しました」
「現在、午後8時20分です」
それだけ言うと皆はばたっと地面に倒れるか、その場に座り込んだ
ようやく終わったという充足感と疲労が一気に噴き出したのだろう
「うわっ、もう真っ暗だ」
「あれぇ? アタシ達何しに来たんだっけ・・・」
『まぁまぁ』
「片付けてる間、本の内容とか何にも見てないもんなぁ」
面白そうな背表紙はいくつも見たが、適当に外に出して適当に中にしまったのでまた探さないといけない
グリーンは面倒なので最初からそういうのを別に置いておいたらしいが、知らない内に紛れ込んで一緒に片付けられてしまったと文句を言った
「あ、なぁ、これって鍛錬になったのかな?」
「ならないんじゃない。これじゃ」
「修行とは別の疲れですよ。レッドさん」
まだだらだらと横になっているレッドとブルー、イエローを座り込んでいるグリーンが見下ろした
「夕食を作るぞ」
「ごめん。無理」
「あとは任せたッス」
「作れるやつが作るしかないな」
グリーンとクリス以外、誰も動こうとはしない
レッドやブルー辺りは体力はあるのだから、単にサボりたいだけなのかもしれない
「そんなわけないだろ。ほんとに疲れてんだって」
「アタシも〜」
それを言うならグリーンとクリスも同じなのだが、2人はため息をはいた
「わかった。その代わり、明日と明後日の6食分はお前らが作れ」
「う。……明日だけにして?」
「もう1日分追加されたいか?」
「ワカリマシタ」
随分と不利な条件を出されたにもかかわらず、誰も動こうとしない辺り、本当なのかもしれない
もしかしたら、ガイクの修行やバトルの疲労も今頃になって出てきたのかもしれない
そんな疲労やら痛みが後になってくるなんて、年寄りみたいだが・・・仕方ないことだ
「缶詰開けて、日持ちしない野菜と簡単に炒めるか」
「お湯どのくらい沸かしときます?」
疲れているからこそ、無駄を失くしたいと2人はてきぱきと動く
そのおかげで、夕食は30分もしない内にほぼ完成し、午後9時半には就寝出来たのだった
・・・・・・
その夜、みちがえた交本館のなかに誰かが入っていった
暗いなか、夜目で本の背表紙をひとつひとつなぞって確かめていく
足元に積まれている本は後回しにし、とにかく根気強く分類もされていない本棚を探し続ける
探し始めて1時間以上経って、ようやくお目当ての本が見つかったようだ
ちょうど最後の棚にそれはあり、逆から調べていけば良かったと、暗いなかで表情も見えないが苦笑しているのが雰囲気でわかる
その本を手に取り、脚立を引き寄せ、それに座った
1ページ、2ページとぱらぱらめくり、読み進めていく
「・・・暗いとこで本読むと目を悪くするわよ」
暗がりのなか、誰かがぱたんと本を閉じた
「ブルーか」
「泥棒かと思ったわよ」
ブルーがペンライトほどの大きさの懐中電灯をつけ、光を当てた先にはグリーンがいた
「いつからいた」
「ついさっき。交本館のなかで気配がしたから」
まさか本を探す間中、1時間以上も付き合っているわけがない
グリーンは「そうか」と小さく返した
「そんなこそこそして。明日でもいいでしょ」
「・・・まぁな。気になったんだ」
ブルーがふーんと息をつき、懐中電灯をグリーンの手元に当てる
が、グリーンの手が邪魔で何を読んでいるのか、その背表紙やタイトルが読み取れない
「アンタこそ、1人で何むっつり読んでるのよ。こっそり真夜中に、皆に秘密でさぁ?」
「変な勘繰りをするな」
ぽいっとグリーンが手に持っていた本を投げると、ブルーは慌てて懐中電灯をグリーンに向かって放り投げた
お互いが持っているものをうまく交換し合うと、早速渡された本をブルーは読み始める
「ああ、もう暗くてよくわかんない」
「通ってないからな、電気」
グリーンが立ち上がってブルーの背後に回り、手元を明るく照らす
その本を覗き込むような形なので、妙にお互いの顔が近い
振り向こうとすると、絶対に・・・・・・ぶつかる
「・・・なんだ?」
「別に。で、これ・・・・・・『Gray Myth』? 外国の本?」
「片付けの時、少し目を通したんだが・・・まぁ内容を読め」
手元が明るくなったので、なんとか読める
それにしても随分と古臭い本で、ジャンルは絵本が一番近いだろう
擦り切れててボロボロで、よくもこんな状態の本を投げ渡す気になれたものだ
一通り、目を通した
「・・・・・・何これ」
「わからん。何かの伝説の類か、さては預言書か」
グリーンの言葉にブルーが思わず振り返りそうになったが、なんとか踏みとどまる
そこでようやく気づいたのか、グリーンが一歩後ろに下がった
何も意識していなかったということは、この男も相当ニブい
「まさか」
「そのように読み取れる、ということが問題だ。だが印刷・発行年数も不明、作者の部分も擦り切れていて読めん」
ブルーが確かめると、グリーンの言う通り、情報と言えるものは殆ど無かった
古いものだから仕方ない、ということもあるがここまで徹底していると最初から記す気が無かったなどの意図的なものを感じる
「でも、まぁ、アタシなら紙の劣化具合から年代ぐらいならわかるかも・・・」
「そうか。なら、頼む」
ブルーが更に内容を読み込んでみると、なかなか興味深いものだとわかってくる
どうもわかりやすいひとつの話を何かを難しく、かつ謎めいたものにしたいらしいものだと思われる
「・・・頼みついでに、その本なんだが、レッド達には伏せておいてくれ」
「いいわよ、別に」
やけにあっさり承諾するので、グリーンが呆然としている
「なによ」
あっさり承諾してやったのに、呆然とするグリーンを見てブルーはむっとした
「なにって・・・理由とか聞かんのか」
「あるなら話してよ」
ブルーが脚立に座り、閉じた本をグリーンに手渡した
グリーンが再び本をめくり、ぱらぱらと流し読みをする
「・・・恐らく、これはトレーナー能力と関連性のあるものだ」
「へぇ。なら、なおさら伏せとくとまずいんじゃない? 1人でまた抱え込む気?」
進歩無いわねぇ、とブルーがつぶやく
「関連性があるから伏せておきたい。これはまだ俺達が知らなくてもいいことのような気がする」
「知らなくてもって・・・・・・アタシやあんたは」
グリーンがふいっと顔を横にそらすので、「アンタねぇ」と思い切りツッコんでやった
「・・・ったく、なんかアンタと2人だけの秘密が増えてく一方なんですけど」
「そうだな・・・」
ブルーが盛大なため息を吐いた
この他に共有する秘密事項というのがあることを覚えているだろうか
「俺は信用するに値しないか?」
秘密を共有するにあたって、俺は信用出来る人物には値しないか?
「あーあ、もう・・・」
値しないわけないじゃない、ある意味一番それらしい人物だ
わかってて聞いてるのかと思うと、ブルーは更にため息を吐いた
「あんたね、それ、最高の殺し文句だからね」
「俺はお前を殺す気なんか無いぞ」
グリーンがさらっと言うのでブルーは眉間にしわを寄せ、こめかみを押さえた
なんだか頭痛がしてきそうだ、夜更かしはするものじゃない・・・肌にも良くないだろうし
「・・・じゃ、この本はアタシが隠し持っておきましょ」
「ああ、頼んだ」
それだけ言って、グリーンはすたすたと歩いて行ってしまう
足元に詰まれた本の山を崩さずに、懐中電灯もなしに、よくぶつからず歩けるものだと感心する
流石に2時間もいれば、この暗さに目が慣れきっているのだろう・・・一応、窓から月明かりが差しこんではいるし・・・
・・・あ、転んだ
ブルーは吹き出した
勿論、グリーンは無言だ
暗くてわからないが、こちらをにらんでいるような気もする
「秘密にしといてあげる」
2人だけの、秘密にしといてあげる
「・・・・・・」
暗いなかでわからないだろうがブルーは微笑みながらそう言うと、グリーンは黙ってそのまま交本館を出て行った
その際に崩した本の山をきちんと元に戻していくのがらしいというか、かわいいところだ
懐中電灯であの時のグリーンがどんな顔をしていたのか照らさなかったのは、流石にそこまでやったらおもし・・・かわいそうだからだ
「さて、と・・・」
懐中電灯を口にくわえ、ブルーはごそごそと本棚をあさり始めた
彼女もグリーンと同様、何かの本を探しにきたのだろうか
「あったあった」
くふふふとブルーが本棚の奥に巧妙に隠しておいたものを見つけ出し、脚立に改めて座りなおした
その本の題名は何故か見えない、ブックカバーでも付けているのだろうか
「乙女のヒ・ミ・ツw」
結局、ブルーが読んでいる本の中身はわからないままで終わった・・・
・・・・・・・
翌朝、全員が各自のテントから出てきた
とりあえず、あれからグリーンもブルーもきちんと眠ったことがわかった
そして、2人が真夜中にこっそり抜け出したことは周りにはばれていないようだ
「? ブルーさん、なんかクマ出来てません?」
「気のせいよ〜」
くぁっとブルーが大あくびをすると、その横でグリーンも小さくあくびをした
・・・・・・流石に同時にあくびはまずい、しかも間の悪いことにこの2人の目が合った・・・
「「・・・・・・。こっち向くな」」
険悪なムードを演出し・・・・・・いや実際気まずいムードだったのだが、なんとかそれで切り抜けた
ついでに、
・・・いや、
そして、この日、
レッド達はとんでもない人物と出会うことになるのだった
To be continued・・・
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