〜更なる高みへ/043〜



 
 「「・・・・・・。こっち向くな」」


 ・・・・・・


 今日も暑いくらいの晴天で、レッドはまぶしい太陽を手で覆い隠しながら見上げた

 「さて、今日は読書日和だな」

 「まぁ・・・・・・そうですね」

 交本館はあくまで本置き場であり、そのなかに人が読むスペースなど殆ど無い
 ましてやこの人数ではイノムーが針の穴を通るくらい・・・・・・というほどでもないが、かなり無理がある
 落ち着いて読むことなど到底不可能なので、読むなら必然的に屋外で・・・ということになる
 レッドの言葉はここを改装し、内部構造を把握した上での実に的確なものだったのだ

 「つーか、よく昨日で改装終わったよなー」
 
 「まぁ、これだけトレーナーとポケモンいれば終わるもんじゃないか?」
 
 ポケモンの力も借りたことだし、多少はありえなくてもガイクの修行の賜物だと言い切れる辺りがおかしい
 もはや常人の域を超えているとしか言いようがないが、能力者として生きる道を選んだのだ 
 一般人との違いを気にし、離れていくことを気にして、その歩みを止めてはならない

 そう、決して
 忘れてはならない
 既に戻れないことを
 既に羨むべきものですらないことを

 「でも、虫干しと称して本を火であぶるのはどうかと思いますよ?」

 「あれは・・・・・・確かにな」

 「虫干しって太陽光で虫を殺すんじゃないんスか?」

 「違います」

 ゴールドの言うことは間違っているが、世間的には虫干しの認識はこんなものかもしれない
 本来、虫干しとは夏の土用や秋の晴天の日などに、書画・衣類・調度品などを陰干しして風を通し、虫の害やかびを防ぐことだ
 直接日光にあてると本が劣化するので気をつけよう

 『だから僕が「かぜおこそ」うか、って言ったのに』
 
 「シショーのわざは威力が強すぎんのよ」

 それにシショーがそんなことを言っていたのかどうか、誰もおぼえていない
 かなり存在感が薄い
 『酷っ!』と声に出しても、こうして地の文に組み込まれるくらいだ
 なんとなくそれを流し、レッド達は心なしか嬉しそうにつぶやいている

 「何読もうかな〜」

 「絵本とかも結構ありましたよね」

 クリスの「絵本」という言葉に危うくブルーは表情に出そうになった
 だが、秘密を共有しているグリーンは無表情を崩さず、平然と皆を率先して交本館に入っていった

 「(・・・なんかムカつくわね)」

 こういうのは気にしたら負け、とわかっているのだが・・・・・・
 

 ・・・・・・


 交本館のなかで、皆が思い思いに動いて目当てのものやそれらしいものを探して見ている

 「うーん、あんまし興味をひくようなものは無いわねぇ」

 「小説とか胡散臭いものとか、なんか誰かの日記まで混じってますよ」

 それのページを開いて「しかもきっちり3日で終わってます」、とイエローが付け加えた

 その日記の他にも誰かの手書きで書かれている、そういったものは多々あった
 これは手違いで混じったのか、それとも誰かに読んでもらいたくてあえてここに寄付したのだろうか
 しかし、その類の自作の小説の内容は思わず苦笑・失笑してしまうものばかりだった

 「なんでしょう? ブリキュエクピトの焔って? あれ? ここ前にも読んだような・・・?」

 「わけわかんない設定詰め込みすぎね。23点」

 「『合神! バンバンク』ってパクリじゃん」

 「むやみに横文字を使うものじゃありませんね・・・。読者が追いつけません」

 「・・・・・・お前ら、他のやつ読めよ」

 なんだかんだ言って、素人小説を楽しんでいた
 ぶっとんでいたり、調子が明らかに変わっているのが見えるのが面白いらしい 

 しかし、だ
 これだけ本があると、自分達の目当ての本を見つけるのは相当大変だ
 だから、別に分けて置いたんだとグリーンが言ったが、もはや後の祭りだった

 「あー、どんなの見つけりゃいいッスかね?」

 「やっぱり昔のポケモンジャーナルとか。能力者の特集号とかあってもおかしくないだろ」

 「回収騒ぎとかでもうないかも」

 「いや、だから、ここにはあるかもしれない。大量の古本に囲われて、残っているかもしれない」

 レッドの言葉は楽観的かもしれない
 
 それでも、
 木を隠すなら森の中、
 回収騒ぎから隠すなら探させる気を失くすところへ


 「・・・いや、隠す気があったらだろ。その話の前提」

 「適当にぶちこまれてるだけじゃない」

 「や、でもさぁ・・・希望つーか」

 「何の希望だ」

 言い争う時間も惜しく、ここからは自由に読むことにした 

 分厚い専門書を山ほど抱えて外に出て、グリーンはさっさと読書に励んでいる
 レッドはなるべく薄そうな本で数をこなしてみるようだ
 イエローとクリスは絵本や子供向けの本に目をつけたようで、ブルーとグリーンは内心ひやりとしたものだ
 ブルーは手当たり次第にかき集め、片っ端から速読している
 ゴールドはというと、読むよりもおかしなタイトルのついた本を探すのに夢中になっていた
 『これぞまさしく「本」末転倒だ』と笑うシショーに、船長は船に積んで持っていく本を厳選する

 
 そんなこんなで2時間は経過したところで、ゴールドが面白そうな本を見つけたと叫んだ
 しかし、またどうせ大したものではないだろうと皆は読書に集中した

 「あーっ、何スか。その態度は!」

 『はいはい、わかったわかった。何見つけたの?』

 シショーが子供をあやすように問いかけ、余計にへそを曲げてしまったようだ
 ゴールドはなかなか見せようとせず、いつまでもむくれている
 その状況にいらいらしたのか、専門書を閉じたグリーンが近づいてきた

 「・・・で、何を見つけたんだ?」

 「いーッスよ、もう」

 「わざわざ読むのを中断してるんだ。早く見せろ」

 渋々ゴールドが手に持っていた本をまとめてグリーンに、いつもの愛想ゼロで渡した
 グリーンはそれらを手渡され、のぞきこんできたシショーと一緒にその表紙を見て固まった

 「いや、ね。これ書いてる作者? どっかで見たことある名前だなーって、しかも変な名前つーか。
 それだけだったんスけど、いや結構中身は難しくて」

 「お手柄だ」

 ぐだぐだと言い訳がましいことを並び立てていたゴールドだったが、グリーンの意外な一言に「へ?」と返した
 「やだなぁ、もう」と調子よく返そうとしたが向こうは真剣な表情そのものだったので、今度はゴールドの方が固まってしまった
 その様子にブルーやレッド達も集まり、なんだなんだとその本をのぞきこんでみた

 「・・・!? これって・・・」

 驚くブルーにグリーンが無表情のまま、「ああ」と断言した

 「キリュウ・トウド博士の研究レポートだ」

 『しかも手書きのね』

 一冊は『携帯獣経験値及び性格傾向から見る育成論』、もう一冊はあの『携帯獣氣体成生論』
 想像以上のお宝発見をしたようだ


 ・・・・・・
 

 「キリュウ・ドウド博士?」

 「うん。最近、伝説のポケモン捜索隊が『そらをとん』でる姿を視認したらしいよ」

 ディックがリサにそう告げた
 それが本当なら、一大事だ

 リサが腕を組み、ため息をついた

 「あの任務失敗から消息不明だったけど、今までどこに隠れてたんだか」

 「考えるのも面倒臭いね」

 ディックは両手を広げ、降参のポーズを取って見せた
 あの任務とはブレイドが博士を迎えに行く、というものだが返り討ちにされた一件のことだ

 「今、そっちの捜索隊をジークが編成してるみたい」
 
 「私の方からも人材を送っておくわ」

 「ま、大丈夫じゃない?」

 のんきそうにディックが答えると、リサは眉をひそめた
 それはいくらなんでも楽観的過ぎる
 あの博士はその頭脳に加え、少なくとも幹部候補並の能力は持ち合わせている厄介な相手だ
 
 「そもそも、能力者であること以上になんであんなに強いのかしら」

 ブレイドだって弱くはなかったし、むしろ将来の幹部昇格への有望株だった
 それをあっさりと撃退したとなると、ただの能力者ではない
 そう、その強さはまるで幹部レベル・・・・・・一介の研究者にしては破格の強さだ


 「『努力値』って知ってる?」

 いきなりディックにそう聞かれ、リサが戸惑いを見せた
 知らない、わからないとわかったや否やディックは得意げにダルそうに語った

 「ポケモンを倒すと経験値が貰えるでしょ? で、レベルアップする。ポケモン育成の基本だよね」

 「それは知ってるわよ」

 「だが、それひとつで育ちが違うのは何故か。単なる種族差や個体差で終わらせてもいい問題なのか、ということにその博士は着目した」

 ディックが面倒臭そうに口を開くのをさえぎるように、ジークが現れそう語った
 待ってました、あとはよろしくと言わんばかりにディックは寝転び・口をつぐんだ
 リサは静かに次を待ち、ジークはきびきびとそれを続けた

 「ポケモンには性格がある。それらを分類し、調べ上げていった結果、性格によって能力値の伸び白が違うことが判明した。
 更に倒し、得た経験値にもまたそのポケモン、種族によって特色や違いが見られた」

 「で、努力値って言うのは?」

 「例をあげるならば攻撃力が高いワンリキーを倒すとそのポケモンは攻撃の能力値が上がりやすくなるというシンプルなものだ。
 ワンリキーだけを倒していけば、攻撃特化のポケモンが育ちあがるというわけだな」

 「当たり前じゃない? それって」

 「そう! 当たり前なんだ」

 いきなり起き上がったディックがそう叫んだ

 「僕達は当たり前なんだ。そうやって育てるようにあの人に教わってきたんだから」

 「!」

 一般的なトレーナーはそういったことを考えない
 ただ目の前にいる野生ポケモンを倒して、適当に経験地を積んでいく
 そこに理論はなく、ただただ強くなればいい・レベルが上がればいいと思っているだけだ

 「そういった検証データやポケモンすべてに共通したその溜られる努力値の限界『510』という数字を見出した論文が『携帯獣経験値及び性格傾向から見る育成論』だ。
 こちらは全然知られていないし、目に見えない努力値という考えは学会に浸透しにくかった。ポケモン1体を戦えるまでに育てるのも、すごく労力と時間の要ることだったからね」

 ポケモン生態学者にくわえ、目には見えない氣や気脈関連のエキスパートであるキリュウ・トウド博士の本領発揮というべき研究だ
 
 「そういうところからガイクと対になる『目には見えないものを視る』能力者かと思ったんだけど、なんか違うみたいだし。本当によくわからない人だよ」

 その口ぶりから、ディックはキリュウ・トウド博士に会ったことがあるのかもしれない
 しかし、そういう育て方を知っているのならば、確かに博士があれだけ強いのもうなずける
 自ら打ち立てた理論でポケモンを並外れた強さに仕上げていれば、戦闘訓練を積んだブレイドを返り討ちにすることは充分可能だ

 ジークが強く断言した

 「世の中に強者と呼ばれる存在は数ある。四天王やレッドのようなリーグ優勝経験者にジムリーダー。
 やつらはそういった育て方を本能的に感じ取り・知って、それを実践しているから強いのだ」

 ディック達は知る由も無いが、先代トキワシティジムリーダーが残した『大地の奥義』もその傾向で書かれていた
 レッドがゴールドに手ほどいた修行の内容も「どんなポケモンを倒せばどの辺が強くなれるか」という大雑把なものだ
 しかし、彼らは理論的ではないものの最適な育て方というものを知っていた
 ガイクもまた、ここに在籍していた時や歴代の育て屋の知識から学んだに違いなかった

 「努力値を下げるきのみも存在する、と論文にはある。今からでもその実践は遅くはない、という丁寧な言葉付きでな」

 しかし、その後に「無知は罪でも恥でもない。今までの無知であった時間をいったん忘れ、頑張って育てなおしましょう」と論文に書かれているそうだから台無しである
 人間がもう少し出来ていれば、もっと有名になれただろう惜しいバヵ・・・・・・博士だ

 「あー、ガイクはきのみを育てるのもうまかったっけ」

 リサはなんとなくそのことを思い出した

 育てたそれをポケモンのおやつに混ぜ込めば、余計な努力値を下げて育てなおすことも可能だ
 あとは純粋に必要なものだけ、再び経験値と共に積ませればいい
 あらゆる努力値を積め、かつ最適な相手ならあの広い庭にはいくらでもいる
 またこれもレッド達があとで知ることになるだろう事実のひとつだが、ガイクもそういった理論で最初から考えていたわけではない
 あくまで組織のノウハウと自身の経験に基づいていたので、この理論は知らなかったと考えても良いだろう


 そのポケモンの性格・固体差・技構成に合わせた努力値の割り振り

 「これからの戦いはそういった育て方をしてきたものが勝ち残っていけるのかもしれないなぁ」

 ディックがごろんと横になり、面倒臭そうにダラけ始めた
 このダラけっぷりはまさにディックの本領発揮だ
 
 「最も、俺には関係無い話だがな」

 自信に満ち、揺らがないままジークはそうはっきりと言ってのけた
 そう、彼の力の前では小ざかしい真似かもしれなかった

 「なるほどね。ありがと、ジーク」

 「あ、ジーク、そういえばなんか他に話があってきたんじゃないの?」

 リサが礼を言い、ディックは思い出したように訊いてきた
 そういえばジークがわざわざこんな話をするためだけに姿を見せたとは思いがたかった

 「キリュウ・トウド捜索隊編成のリストを持ってきた。ひとまず目を通せ」

 「面倒くさ」

 「貴様の話に付き合ってやったのだ。それぐらいは構わぬだろう」

 有無を言わさぬ断言に、ディックは渋々手を伸ばし、ジークから差し出された厚い書類を受け取った
 ぱらぱらとそれを流し読みしていると、少しだけディックの顔色が変わった 

 「・・・・・・ジーク、これマジ?」

 「このくらいは必要だろう」

 「徹底しすぎ・・・」

 のぞきこんだリサも思わず目を見開き、驚いてしまった
 能力者に常識を問うのはどうかと思うが、それでもありえないものだ
 

 そのリストには動かせる幹部候補を総員し、そのリーダーとしてジーク自らの名前をつらねていた


 「目撃情報を得た海域を中心にナナシマ全土を捜索、抵抗は一切認めず、圧倒的な武力により押さえつける」

 まさに元軍人のジークが本領発揮だ
 「博士もお気の毒に・・・」と、リサは心のなかで同情し、合掌した


 さて、博士とは生きて会えるのだろうか?


 ・・・・・・


 「お手柄だ、ゴールド。これを探していたんだ」

 しかし、グリーンが虫干しの時に分けて置いたなかにはなかった
 どこかで見落としていたか、グリーン以外の誰かが見つけたか何かで気づかなかったのだろう
 不満げだったゴールドの表情が一変し、今度は調子に乗り始めたので無視することにした
 
 「この育成論は後回しでいいか」
 
 「興味はあるけどね」

 「問題の成生論を先にするか」

 おそらく本人の手書きだろうそれは比較的紙が新しく、年月を感じさせなかった
 保存状態が良かったというより、これを書いたこと自体が最近なのだろう

 「ていうか、今時手書きはないでしょ」

 「変わり者って話だし」

 「早く読みましょうよ」

 つい話がそれてしまったが、気を取り直して黒紐で適当にくくられた論文を開いて見た
 序文から始まるそれを見て、レッド達は唖然とした

 「ば、バカな・・・!」

 「こんなのってありえるの!?」

 「確かに今までの常識を覆しているな!」

 
 レッド達が最初に開いて見たもの、それは・・・・・・おそらくキリュウ・トウド博士本人のスナップ写真だった
 しかも、何故か他人を見下すかのようなローアングルで撮られている

 「・・・・・・普通、論文にこんなの載せないわよねぇ」

 『変わり者っていうより相当の自信家? ナルシスト?』

 「なんか今にも、こう・・・『敬え、愚民共』とか言いそうッスよ」

 ゴールドが写真を指差して言う通り、これからその人物の人柄というかオーラが手に取るようにわかる気がした
 間違いなく、これはポケモン学会に参加した学者の殆どを敵に回した張本人だとわかった

 「・・・読む気失くしてきたんだけど」

 「酷いものだな。どうしてこんなのに、あのお祖父ちゃんが興味を惹かれたんだか・・・」

 グリーンの落胆ぶりも興味があったぶんだけ激しかった
 それだけ、この写真には破壊力があるのだ

 「気にすんなって。問題は中身だろ? 」

 レッドが論文を手に取り、ページをめくった
 ・・・・・・そして、すぐに固まった
 
 「・・・ワリィ、グリーン、読んでくれ」

 「難しいのか」

 「なんつーか、暗号?」

 そう言われて、更にページをめくって見ると・・・なるほど、これは少しひどい
 端的に言えば字が少し汚く、おまけに様々な専門用語らしい言葉をあらゆる比喩的表現で書き並べてあったのだ
 これは流石にグリーンでも読み進めるのは困難で、時間を要しそうだった

 「流石は学者といったところか」

 グリーンがそうつぶやくと、皆が論文に顔を突っ込むように覗き込んできた
 そうやって顔を下に向けたままわいわいと騒ぎ、あーだこーだと解読方法や意味を探っていく

 「この辺はもう意味不明だよな。どうなってんだ?」

 「感心しないでよ。読めなきゃしょうがないじゃない」

 「ふぅ、久しぶりに来たけどなんか綺麗になってる」

 「難しいつーか、こいつ、ほんとに人に読ませる気があんのかって感じの文章ッスね」

 「・・・あぁ、ここにあった板使ったのか。どうでもいいけど」

 「鋭いな。俺もそう思う」

 「なかも割と綺麗だな〜」

 「あれ、誰か来たみたいですね」

 「ふーん」

 「ねぇねぇ、そこで固まってる男女集団。ここの本って適当に持ってていいんだよね?」

 「あ、お構いなく〜」

 「入りまーす。うわ、むさいオッサンだな。あ、もしかしてあの古い船の船長?」 
 
 『あれ? いーの?』

 「アタシ達はここの専属職員でも何でもないでしょ。他人をどうこうする権限もないじゃない」

 「めぼしい本は俺達がキープしてるだろうし」

 『そりゃそうだけど・・・』

 「・・・失敬。どうもすみません。正直が過ぎまして、いや怒らないで・・・」

 「いっそ、これ書いた本人に会いたいよな。わけわからん」

 「同感」

 「ったく、あんなに怒らなくても。謝ったし。あ・・・じゃ、これだけ持ってくんで」

 「はいはい。どうぞどうぞ」

 「律儀な人だなぁ」

 「なんか交本館にいる船長さんが不機嫌そうな声出してませんでした?」

 「さっきの人と喧嘩でもしたかな」

 「謝ったんだよ、一応」

 「ていうか、この島までどうやって来たのかしら?」

 「カイリューに乗ってきた」

 「そりゃ凄い」

 「まぁ、大したことはあるでしょ。そこらのトレーナーに比べたら」

 「そうですね〜」

 「・・・・・・へぇ、まだその落書き残ってたんだ?」

 「確かに。そんな感じだな」

 「それにサインいる?」

 「や、別にいらないッス」

 「了解」


 来たばかりだというのに来訪者はどうやらもう帰ってしまうようで、せめて最後ぐらいは顔を上げて挨拶と思ってレッドが論文から目を離した
 来訪者と目が合い、会釈を交わした


 「・・・・・・あれ?」

 その来訪者はカイリューに本を積み込み、乗り始めた
 レッドはその間に皆の手から論文をひったくり、序文のページを開いた


 「・・・それでは・・・」

 カイリューが浮き上がり、空を舞う直前だった
 そのトレーナーの顔を改めて確認出来たのは・・・・・・

 「ちょ、あれ・・・」

 レッドの手から論文がすり抜け、地面に落ちた
 ブルーが「何よ」と言いながらそれを拾い上げ、レッドと同様に上を見た
 皆もなんだかよくわからないまま、上を見た

 「・・・・・・」

 カイリューに乗ったトレーナー

 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ん?


 序文のページに貼られた写真と来訪者の顔が・・・・・・似てる?


 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・んん?

 本当に似ているだけなのかどうか、
 それは
 見下ろされる形のアングルから見て、ようやくわかった

 「ちょ」

 「む」

 「は」

 「おい」

 「ええ」

 「うん」

 『あら』


 そして、全員が同時に絶叫した


 「「『「「「「ちょっと待てぇええぇぇえええぇぇえぇえぇえッ!!!?」」」」』」」


 カイリューに乗ったトレーナー、いやよれた白衣を着た研究者
 間違いなく、キリュウ・トウド博士本人だった





 To be continued・・・
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