〜更なる高みへ/046〜
「いいだろう。その代わり、そちらが口をはさむひまなど与えない」
・・・・・・
「ポケモンとは何か、それに迫るのが『携帯獣氣体成生論』だ。
そのなかで一部で有名になったのは『ポケモンは意思を持ったエネルギーの塊』である、というものだろう。
そうだな。あながち、間違ってはいないし、これから語ることもそれがほぼ中心に来るだろう。
そもそもポケモンとは何なのか。どこから来たのか。まぁ、それは若干分野違いだから後で見解だけ述べさせてもらう。
意思を持った超高エネルギー体。その意味はわかるかな?
ポケモンはエネルギーの塊であり、それでポケモンの行動や生態の殆どの説明がつくんだ。
ふむ。わかりやすく説明するにはポケモンの最大の特徴である進化を前提に順に挙げようか。
進化。ポケモンは短時間で自らを激変させ、その能力を上げるものが多い。
その為にはトレーナーやポケモン自らは他のポケモンを倒し、戦いのなかで経験値を得る。
経験値とは戦いのなかで得た情報だけではない。倒したポケモンからそのエネルギーの一部を吸収、継承するという意味もある。それが努力値だの何だのといわれるものでもあり、最終的なポケモンの成長を決める3大要素とされる『種族値・個体値・努力値』のなかで唯一外的なものに影響される。
単に情報の積み重ねだけで生物は進化出来るものじゃない。それこそ永い時間をかけて、わずかずつそれに至るまでの情報というきっかけと力を得ていくものだが・・・・・・ポケモンは合理的かつ恐ろしい手法を取ったわけだ。
がくしゅうそうちはボールのなかからでもそれが出来るようにするもので、その起源はトレーナー能力を機械的に再現したもののようだが特許やその申請記録は極秘なので見たことがない故に確証はないがほぼ間違いない。
しかし、だ。よくよく考えてみれば、ポケモンの進化は進化じゃない。
どちらかといえば変態に近い。・・・変態といっても行動などではない、生態の方だ。
ポケモンはあの進化の光と言われるなかで、一瞬にして身体を作り変える。
あの光こそ、ポケモンの身体にたまったエネルギー、その輝きだ。
ポケモンの身体を形成し溜め込まれていたエネルギー・経験値が一定量以上になると膨れ上がり、爆発的にその量を増やす。それがあの輝きであり、形状的にはだいばくはつに近しいかもしれない。
そして増大したエネルギーに合わせて、ポケモンは自らを再び構成する。その瞬間に、オーキド・ユキナリ博士が開発したポケモン図鑑から発するある種の妨害電波がポケモンの遺伝子に呼びかけ、その進化をとめることが可能となった。まだ一般には出回っていないそれは、悪用すればとてつもなく危険なことだからだ。下手すれば生態系が崩れる。だから、図鑑を持つにふさわしいという選び抜かれた子供達にしか与えられず・今はそれで様々な実験データを取っているのだろう。
その進化の時の進化後の形成の基になる、設計図となるのがポケモンの遺伝子に眠っている情報だ。進化しても姿やシルエット、面影が残っているのはその情報の根本は変わっていないからだ。大幅に変わるコイキングの場合、眠っている竜の遺伝子を進化の瞬間に目覚めさせるからだろう。この情報は経験値とは違うはたにあるから、倒したポケモンの姿を取り込むといったような変化は起きない。
進化の石はポケモンのそういった遺伝子を揺り起こすと同時に、それ自体がポケモンと同様に超高エネルギー体。一部のポケモンはそれを受け入れ・取り込むことで、経験値をいくらためても通常では起きない進化をその身で可能にする。
進化の石で進化を起こすポケモンとそうでないポケモンとの違いは、経験値のような細々としたものではない超高エネルギーを一気に受け入れる素地があるか否かだろう。素地、わかりやすく言えば最初からエネルギーの器に空きがあるんだな。
通信で進化するポケモンも同様に、野生では起きえない好感という特殊条件下で発生するトレーナーとのやり取りから生まれるある種の氣の触れ合い、またその氣に当てられ・ポケモンに持たせたアイテムから進化に影響する電波のようなものが遺伝子情報を影響させる。
ふしぎなあめも超高エネルギー的なものだが、レベルを上げるという経験も努力値もない何もないただのエネルギーの結晶だから、努力値などが増えることはない。育て屋も同様に努力値などをつませない特殊な育て方をする技術を持っているらしいけど、最近はどうかな・・・って何だその微妙そうな顔は。妙な心当たりでもあるのか。まぁ、いいが。
これが初心者でもわかるポケモンの進化の全貌だ。まだ細かいことはあるが、その脳では一気に受け入れるのは無理だろう?
エネルギーの塊とは言うが、ポケモンは生物に変わりない。むしろ人間に一番近い生物だ。
進化に関係してくる、その遺伝子がまた厄介なものでね。そういった特定の遺伝子というのは何十種類もあって、その組み合わせやパターンでまた変わってくる。
ポケモン固有の遺伝子もあれば、人間固有の遺伝子もある。
だけど、能力者と呼ばれる人間は自分も含めてポケモン固有の遺伝子やパターンを持っているんだ。
ああ、勘違いしないでくれよ。それが入ってたら=ポケモンってことじゃない。あくまで見られるだけで、他はすべて人間だ。
氣などの概念を持つ能力者は確かにポケモンに近いものを感じるが、それは元々人間だって持っているものだ。そう人間もポケモンと同様にエネルギーの塊といえる。
それを引き出し活用する鍵が個人の持つ遺伝子、いわゆる血筋と何らかの形で関係しているのだろう。先祖がえりというものもあるにはあるから、能力者になるという才能はそれで説明がつくかもしれないが検証は難しいな。どれだけの人間の血筋をたどっていけばその真実に届くのか、見当もつかない。
そういえば、まだ紹介してなかったな。
自分の能力は『ベット』。指をはじく行為で自らの氣をポケモンの技に上乗せすることが出来る。
トキワの癒しは体力や状態回復に向けられるのに対し、自分の能力は攻撃や防御に向けられる・似て非となるもの。
だが、その類似性から診断に役立ったし氣脈を感じるのも割と敏感なのでね。自分の研究にも役立つ。自分はカントー出身だから、もしかしたらトキワの血を少しひいているのかもしれないな。
ま、どうでもいいか。
次にバトルといこう。能力とバトル、体内エネルギーについて更に踏み込んでいくぞ。脳の回転は追いついているか? ま、脳は回転しないが・・・笑うとこだ。
ポケモンはエネルギーに満ちた生物だ。その攻撃方法は個体や種によって様々だが、その殆どが内部のエネルギーを消費して行われる。
そして、エネルギーを消費すればその分だけ補充する必要が出てくる。ポケモンはそのエネルギーを自力で取り戻すことが出来る。そこらをただよう自然から、時には技の補助を借りて相手のエネルギーを奪うこともある。
エネルギーの補充にかかる時間がターンとなり、体内エネルギーを技へと変換するのが早いものほど先手を取れる。ポケモンの身体能力、そう素早さとはその表れといえるだろう。
ポケモンの体内エネルギーは基本的にそのポケモン自身のタイプのものだが、機能としてエネルギーを別のタイプへと変化させることが出来る。理論上はすべてのポケモンは、すべてのタイプにエネルギーを変換出来る。しかし、それは種族によって相当な制限がある。使えるわざマシンの数やおぼえるわざの違いはここにくる。ただし、同種族でもその変換機能の性能や精度などは若干異なってくる。
それに呼応するのがめざめるパワー。文字通り、ポケモンのその肉体に眠っているすべてのタイプにエネルギー変換を目覚めさせることが出来る可能性を持つ特殊な技だ。基本的にすべてのポケモンがおぼえられることもある。
技を使うことでポケモンはエネルギーを放出・消費し、再び技を使えるまでにエネルギーの充填及び変換機能をそれに備えて休める。これの繰り返しがターン制となるわけだ。先制技は消費するエネルギーやモーションを小さく抑えているから、通常よりも早く動ける。威力の高いしんそくもノーマルタイプというエネルギー変換がしやすく、その変換率も早いものだから成り立てる。
またはかいこうせんのように多量にエネルギーを放出・変換機能を酷使する技だと、反動としてエネルギーの補充が間に合わず1ターン動けなくなったり・変換機能の低下で技の威力ががくっと落ちる。自分の場合だと、そのエネルギーの補充を『ベット』で補助するから、はかいこうせんなんかの後でも連続して技が放てる・・・ということだ。変換機能の低下はどうしようもないけどね。
他に技の威力・エネルギー量が高すぎて、戦うことで身を守るために使うポケモンの身体を逆に傷つけてしまうものもあるが・・・・・・あれはあまり関係ないね。直接攻撃系が殆どだから、そうなって当然ともいえる。
わざのPPも重要なことだ。あれは変換機能の限界を示すものでもあり、ポケモン自身の気力を表すものでもある。体力があっても、気力が落ちればわざはわざとは呼べない代物になってしまう。人間だって同じことだ。わざの指示はただのかけ声じゃない。ひとつのバトルに集中し、神経をすり減らす一端だ。更にポケモンへそう指示を出すたびに、能力者でなくとも一種の言霊として氣を乗せていることは殆ど気づかない。単純な体力の消費と考えることが多いからね。実際、それと勘違いする程度だから大したものじゃない。
ポケモンのHPと体内エネルギーはまた別物と考えてもいい。むしろ、その肉体や精神の維持限界を指し示すものと考える。ポケモンはエネルギーの塊であるから、それを維持しなければならない。肉体や精神はその為の、最もわかりやすいものだ。肉体や精神を酷使し、限界が近づいた時、ポケモンは自らをスリープモードという状態にする。これはそこの『トキワの癒し』の能力者と同様、これ以上の消費や酷使をすべてにおいて拒否し・活動を一時的に停止するものだ。いわゆるその『ひんし状態』とは、もう戦う戦えないという根性論ではなく超高エネルギー体であるポケモンがポケモンである為に行われるものなんだ。
それから、わざのなかでもネコにこばんは興味深い技だ。自らのレベルを把握し、それに合わせ、エネルギーを現金に換えられるものに一種の物質変化させる。通常のわざは自然物を利用したり、己の身体やエネルギーを変質・利用させることが多いのに、このわざだけは違うんだ。
大体ポケモンは人間の通貨・現金を必要としないから、このわざは長い間付き合ってきた人間の欲望が反映されたものともいえる。浅ましいと考えるのもいいが、人間とポケモンがともに生きていくためにポケモン側がどうにかしようと努力した結果と考えれば美談だ。それで旅を助けられたことは一度や二度はあるだろうからね。
そう、一般人・能力者などと関係なく、人間とポケモンは互いに影響しあっているんだ。今も、なおだ。
能力者の特異な氣に触れる、影響されてその外見的な変化・驚異的な成長速度を見せるポケモンもいる。特典とはそういったことから見出されたものだ。
交換が出来なくなるシステムは未だに解明されていないが、能力者とポケモンの繋がりが強くなりすぎたのではないかと考えている。もしくは交換という特殊な条件下を生み出せない、何か反作用・反発するものが生まれるのかもしれない。能力者同士、一般トレーナーとの溝がそうなんだろう。単なる精神論ではない、遺伝子からの拒絶・・・・・・だとすればなかなか哀しいことだね。
トレーナー能力とは人間のなかに眠るポケモンの力・遺伝子が変質的に目覚めたものではないか、それ故にポケモンにしか作用しないのではないか。遺伝子からのものというところから、人体のブラックボックスである脳が影響されてしまい、その身体に何らかの障害に近いものが起きているのではないか。性格の凶暴性はポケモンの遺伝子の作用、荒れ狂った野生の本能が影響しているのかもしれない。
・・・・・・最も、それは推測であって具体的には不明だが、すべての事象はいつか必ず説明がつけられるようになるもの。能力者という状態が最終的に行き着く先はいまだにわからないが、能力者になって免疫力が低下しての病死や寿命が縮まっての早死にした者はいないという無害さもある。
遺伝子という足がかりはあるのだから、あとは真実まで地道に行ってみるほかない。説明出来ない事象などない。あるとすれば、それを説明出来る理論がまだ見つかっていないだけなんだから。
話の筋を戻そう。自分の論説の話だ。
うん、そうだな。ここいらで育成論について話してみようか。
自分の掲げた論説のなかで登場する育成における3大要素。これが話題になったといえる。え? 喧嘩腰の文章のせい? まさか。実証と実験に裏付けられた事実、つまり当たり前のことしか書いていないんだけどな。
で、そう、どんなポケモンにも種族値・個体値・努力値と呼ばれる3つの要素がある。順に説明しよう。
種族値とはそのポケモンの種族それぞれに決められた限界値。能力として素早さが上がりやすい種族や攻撃が上がりにくい種族など、様々だ。防御が上がりにくい種族をどれだけ防御に特化して鍛えても、最初から防御が高い種族にはかなわない。そして、伝説のポケモンはその種族値が高い傾向にあり、他のポケモンと画一する最大の理由だ。カイリューやメタグロス、バンギラスは最も伝説のポケモンに近い種族値を持ってるとされている。
個体値というのは種族値とは違い、そのポケモン1体1体・つまりは個体によっての能力差だ。種族値はピカチュウならピカチュウすべてに共通するものだが、個体値はピカチュウAとピカチュウBという風に個別で違いが出てくる。性格も影響するといってもいい。ポケモンの性格は最近から注目されて、能力成長にも差が出ることがわかってきた。ま、自分の論文を誰かが読んでしたり顔でパクってるだけだけど。よくあるんだよね。無名だとか非常勤とかの学者が書いた論文を元に論文を書くやつって。あれ、バレないとでも思ってんのかね。それで世間に評価されるんじゃ、世の中も知れたものだね。あ、痴れたものかな。
努力値は戦いで得た経験値が大きく作用してくる。外的要因といったが、最大で510の努力値をポケモンは得られる。その振られ方はHP・攻撃・防御・特攻・特防・素早さの6つ。意図的に・どれかに特化し集中して振ることで、その能力値を上げやすくする。適当に振ったところで、ポケモンは強くはならない。強くするには、使うわざやポケモンの個性に合わせた振り方を熟知しなければならない。ま、いったん努力値を510振ればあとはどんな経験値をつませて進化させても最終的な能力地は変わらないから楽といえば楽かな。
種族値・個体値・努力値の配分をうまく合致させることで、ポケモンの能力を最大限にまで引き出すことが出来る。逆に言えば、それが出来ていないポケモンは種族値が高いとされる伝説のポケモンでも弱くなる。
この3つのなかでどうにもならないのが個体値で、最も厄介なものだ。種族値は最初から固定されていて、努力値は振り方を間違わなければ誰にでも出来るしきのみがあれば間違いもやり直せる。ただ、個体値だけが一種の才能ともいうべきものであり絶対的に覆せないんだ。これにこだわって、同じポケモンを何十何百体と捕まえては逃がすようなトレーナーもいるって話だけど、まぁくだらないといえばくだらないよね。
それと選択するわざはタイプ一致がどうのとか言うけれど、それでわざの威力が上がるのはエネルギーの変換の効率の問題だったりするんだ。補助技はその効率を上げるもので、うまく使えばタイプ不一致でも高い威力が出せるのはその為だ。・・・と、まぁこんな内容だね。
それからポケモンを収納するモンスターボールについて、興味はあるかい? あれも自分の論説でおおよそ説明出来るんだよ。信じる信じないかは別としてね。
色々な諸説が流れているが、それにはわけがあってね。そもそも電子レンジの仕組みを知らずになんとなく使っているのと同様に、MBってのはただポケモンに投げていればそれなりに使える。特殊な技術も必要ないし、考える気にもならないトレーナーが殆どだろう。ボングリというきのみからそういったものを作り始めてから、人間はずっとそのなんとなくで使い続けてきたんだ。今の大量生産のMBだって、ボングリ製のボールを科学的に構造解析して・自然的なものを可能な限り人工的で安価なものに取り替えただけ。作動原理までは殆ど踏み込んでいないんだ。
MBの構造で有名なのはキャプチャーネットだが、あれは外にいるポケモンをなかに閉じ込めるものと言われている。実際、その通りだ。ボングリ製のものの場合、網目状の繊維を利用して鍛え上げたものだ。これが一番構造解析・人工物との取替えに苦労したそうだよ。
しかし、あれにはまた別の機能が備わっている。そもそも、あれだけの質量を持つポケモンをあんな小さなMBに収めるのはほぼ不可能だろう? 色々考えるが、一般のトレーナーにはわかるわけもない。
キャプチャネットは内側に閉じ込めたポケモンの体内エネルギーを拡散させ、文字通りその質量を減少させることでMB内に収めさせるんだ。それこそ、ポケットに入るサイズまでね。
その際にあらゆるポケモンの身体エネルギー・遺伝子情報をボールに記憶させ、再び出す時にそれを基にポケモンへエネルギーを収束・充填させて再構築する。ま、しぼんだ風船にまた空気を入れるようなものだと思ってくれ。空気がパンパンに入った風船はポケットに入らないだろう? そういうことだ。
ありえない? そうやって新しい説を排除して何になる。前提で唱えたはずだ。『ポケモンは意思を持ったエネルギーの塊』だと、それはもはや否定出来ないし人間も同じものだと考えられる。
だが、MBで人間が捕獲出来ないのは別の要素があるからだ。
太古より受け継がれてきた『ポケモンは人間に従う』というシステムの所為だ。このシステムはどんなポケモンにでもあり、それを否定することは出来ない。反抗するポケモンがいるのは、それを認めたくないからだ。第一、奴隷のような関係なるかはトレーナー次第だからな。
更にジムリーダーと勝つことで得られるジムバッジというものがポケモンを強く締めつける、と同時に強くする。そういった力を持つ不思議なあれは純粋な、ある種のエネルギーの結晶といってもいい。一般的によく知られているとけないこおりと同類のものだ。
ある種のエネルギーとは、簡単に言えばその土地の人間の氣だ。もっと正確に言えば、その土地の気脈から溢れ影響を及ぼしている人間の氣だ。ジムリーダーはその土地の人間が選ばれることが多いが、要するにその土地柄に合った人間を意図的に選出しているんだ。時たま、違う人間が選ばれるがバッジは配布されるものでリーダーが作るわけじゃない。リーダーの氣を使って作るわけじゃない、ってことだ。ただ、土地柄に合った人間がジムリーダーにつくと不思議と強くなる。土地の人間ではない時は、まぁそのトレーナーがそんな小細工みたいなことをしなくても強いということだ。
そうやって、土地の氣を結晶化させているのはポケモン協会だが、技術や事実は隠蔽されたままだ。ただ、何も知らないジムリーダーに得体の知れないバッジを渡し、慣習的に・実力を認めたトレーナーに渡せばいいと言う。そして、バッジを8つ集めたものはリーグ本戦無条件参加ときたもんだ。・・・どうもあそこは、何か腹に一物隠し続けていて不快だね。
この戦いの、すべての黒幕がポケモン協会であってもおかしくない。むしろ、その方がすっきりするよ。君達のような若者を忌むべき能力者になるように仕向け、あの組織やR団と対立させ戦わせ、共倒れを謀っているんじゃないか?
ああ、決心がついたね。この決着がついたら、すべてあの会長に問いただそう。こんなことに巻き込まれたのは、紛れもなくポケモン協会の所為だからね。八つ当たり? なら、目に見えない運命の所為にでもしろと? そっちの方がどうかしているだろ。
・・・・・・話を戻すよ。しかし、こうやってわき道にそれるのも悪くないだろう? 世の中のすべてを疑ってかからないと、真実は見えてこないこともある。知らない方が幸せって言うには嘘だ。知っていなければ、自他共に怒る資格も哀れむ資格も無いんだよ。
ポケモンが人間に従う、人間はポケモンを従わせる。このシステムはいつからあるのか。そもそもポケモンと人間はいつから共存していたのか。
だって、そうだろう? 火を吐き、氷を生み出し、地面を砕くポケモンの前に道具も言語も無かった頃の人間の先祖様がどう立ち向かっていけるというんだ。
そこが謎なんだ。果たして、ポケモンはどこから来たのか。少なくとも、人間が残した記録にはもれなく・必ずポケモンが出てくる。逆に出てこなかった頃がない。
では、人間がこの姿となった頃、都合よくポケモンが現れたというのか。それとも人間が進化をするその過程でポケモンは派生したのか。そうすると能力者というのは派生し損ねた遺伝子・進化上の欠陥品なのかどうか。
すべてが推測や妄想の域を出ず、まだ解明されていないが、自分はこう考える。
答えは『楽園』にある。
『楽園』というのは『Gray Myth』という絵本に描かれているものでね。内容は予言とも妄想ともつかない、中途半端なものだよ。ただ問題なのは、そこに出てくるものが殆どトレーナー能力を表していること。
様々な能力者が現れて、そして戦うようなことを書いている。下手すれば、今の・この状況を表しているといってもいい。そうすると予言にも取れるが、それにしては書かれていることが曖昧すぎる。予言ははっきりと断言するもので、あれではどうとでも取れてしまうんだ。曖昧なことで予言とするものは沢山あるけどね。なんだっけ、ホラ・・・世紀末のアレもそうだって話は聞いたことないかな? ・・・そう。良かったね。今日、ひとつ賢くなったんじゃないか。
うん、予言というよりあれは過去にあった出来事を書いているのかもしれない。いわゆる伝承・伝説のような類かもしれないが・・・・・・そういうのは少し捻じ曲がって伝わるものだからな。アテにならないかもしれない。大体、本に書かれていることすべてを鵜呑みにする方が間違っているとも言えるな。ナニ? 文献から読み解いていく学者や学問の否定? それこそ間違ってる。
ひとつのものに固執するから間違っている。いくつも比較して、ひとつのものの真実を追うのが学者だよ。でも、比較したものが全部間違いだって言うのも珍しくはない。だって、今も過去の歴史は今の権力者達に都合のいいものに書き換えられているからね。ま、簡単に言わなくても捏造だよ。事実だし、それを問いただしたって無駄なこと。本当のことを教えてくれるわけないだろう? だから、文献すべてが間違ってることだってあるって言うんだ。
じゃあ、自分の論説は、って? 自分は、自分の目や手ですべて科学的に実験や実証を繰り返したことしか書いてないけど何か? データが間違っていたら? 謝ればいいじゃないか。それ以上、何か出来ることはあるのかい?
だ・か・ら、ひとつのものに固執して、他のと照らし合わせずに鵜呑みにして後から『間違っているじゃないか』っていうのがおかしいんだ。何が正しいのか、自分の目や手で確かめもしないやつに言われたくないね。照らし合わせて、間違っていることが判明したら本当の真実がわかったってことで喜べばいいじゃないか。間違っている方を糾弾して何になるんだか、わからないことが多いね人間ってやつは。謝罪や何やらを求める感情論も結構だが、もっと本当の真実を知った達成感と喜びを味わうような考えを持つような・合理的になるべきだ。と、長すぎたか。少し、感情的になっていたかもしれない。・・・・・・そうそう、あの学会のやつらを思い出してしまったからだ。すまない。
・・・それでも、『Gray Myth』の最後に書かれている『楽園』というそれが何を示しているのか。『Gray Myth』に描かれていることが仮にすべて真実であるならば、それが指し示すのはポケモンと人間の起源なのか、もしくは別の何かなのか。・・・と、機会あれば読んでみるといい。現存しているものは少ないだろうが、いやナニ、砂丘に落とした米粒よりかは楽に見つけられるだろう。
確かどこかの考古学者が元の壁画か何かを絵本のようなものにして、自費出版したものがあったはずだ。絵本にすることでナニが得られたのか、まったくわからないけどね。むしろ、事実とはかけ離れた印象を・ただのイチ伝説だと世間には認識されたかもしれない。
ああ、でも・・・・・・能力者騒動のなか、その考古学者も槍玉に挙げられてそれの回収騒ぎがあった気もするけどね。それほど問題が見受けられるものなら、最初から出版するなと言いたい。大体、回収だなんてそれの付加価値を与えるようなものじゃないか。
結局、わかってないんだよ。ああいう輩は、そんなことが無意味だということを。力を持つ者が、世の中を操作してるってことに気づかない。それさえも利用しているってことに・・・・・・。
・・・さて、君達はどちらの側の人間になるかな。
自分の『携帯獣氣体成生論』から始まる論説は踏み絵でもあり、分岐点なんだ。これを知ったものは更なる奥地へ足を踏み入れることになるか、これとの関わりを一切絶とうとするか。殆どの学者は後者だった。
だって、そうだろう? ポケモンは生物というよりも意思を持った超高エネルギー体である。また人間とそんなポケモンが同じであり、遺伝子的にはその中間体に近い能力者の存在を出来うる限り証明した。発狂ものだよ。生命の倫理なんかまるで無視してるじゃないか。
血も肉もある。しかし、本質はそれではない。そう認識しているものが、自分達の目ではそうと思っているだけなんだとしたら? もしかしたら、自分達は宇宙人から見れば肉体も何もない、ただの発光体なのかもしれないってことだ。それは光の反射による色の識別とよく似た話だが、もっと深刻かもしれない。
育成論だってそうだ。種族値・個体値・努力値の存在を知ってしまったから、知ったから強く育てられることに気づいてしまったら、それにこだわり続けることになってしまうかもしれない。純粋にバトルや育成を楽しめず、ひたすら高い個体値を求め続け・限られた努力値を計算し細かく振るためにバトルをするだけの作業になってしまうかもしれない。それは哀しいだろう? 何の為にバトルをするのか、何の為のパートナーかを忘れてしまうんだ。
ポケモンバトルをもっと楽しめ! 能力者になっても、それは変わらないはずなんだ!
・・・さ、脳の回転は追いついたか? 理解出来たか? 恐怖したか? 何故、学会が自分の論説を無視し・拒絶したかわかったかい?
なら、いい。これで自分の話を終わるとしよう。質問は受け付けない。基本的なことは話したから、あとはその論文を一から読んで理解することだ」
To be continued・・・
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