〜更なる高みへ/052〜
「「誰が似たもの夫婦だッ!!!」」
「チンチロリン♪ 2人の恋路のような、ダブルバトルであるといいのだけれど」
・・・・・・
「目に見えないものを信じ続けるのは難しい」
「見えないものを信じ続ける為に形を求めようとする」
「神仏ならば模った偶像を、経典を求めるように」
「人は目に見えるものに安心し、目に見えないものに不安をおぼえる」
「それ故に形を欲する」
「愛情ならば接吻を、抱擁を求めたり」
「時に目に見えないものを信じるに言葉のみで安心し、満たされるのもいる」
「おかしなことに、言葉は目に見えないのに形を持つもののように扱われる」
「だけど、言葉は言葉」
「目に見えて、その肌で感じられる行動にはかなわない」
「ポケモンとの絆は主従関係で、トレーナーの指示をポケモンが実行することで感じる」
「指示が声に出ていようが出ていなくても、そういうことだ」
「数字もそのひとつ」
「今まで曖昧だったポケモンの強さを、個体値や種族値で表してしまった」
「育て方は努力値に依存させる、徹底した数値化」
「それの善し悪しに意味は無く」
「目に見えないものを目で見えるものに表す」
「必然のことだから」
「これから行く先を」
「この世界における目に見えないものすべてを形容し表す目に見えないもの」
「それが」
「シナリオ」
「それもひとつの解釈」
「帰結」
「もはや真実など虚実と同じ」
「解釈の違いですべてを帰結」
「それは放棄」
「それこそが誠実」
「仕方ない」
「どうしようもない」
「思考の罠」
・・・・・・
「置いてかれてるなぁ」
『何か話でもしたのかな』
離れたところから2人を見るレッドがそうつぶやいた
バトル形式はダブルバトル
2対1
2人がかりは卑怯と思われるかもしれないが、これはダブルバトル
ポケモンの数が同数とあればそうとも言えない
トレーナーが2人の場合、そのトレーナーがそれぞれのポケモンに指示を出すことになる
例えば片方が補助技を出し、もう片方がその恩恵を受けるなどして攻撃する
その指示合わせが出来なければ、勝利の道は開けることはない
出来ない原因にポケモンやトレーナー同士の相性、それらの力量の差による反応速度から来るものもある
合わない攻撃リズムにトレーナー側が翻弄され、ポケモンやその場を迂闊に混乱させて自滅していくだけだ
一方、トレーナーが1人だった時、指示の食い違いというものはありえない
逆に1人でポケモン2体同時に指示を出さなければならず、常に的確かつ正確な状況判断が必要になってくる
指示が追いつかなくなったり・間に合わなかったりするなどで、自滅していくパターンが多いらしい
トレーナーに負担がかかり、その負担がポケモンの動きに影響するのだ
だが、それさえ出来れば2人より効率は上だろうが求められるレベルは高い
指示や呼吸合わせが重要となってくるダブルバトルだが、それ以外のセオリーがある
『素早さの遅いポケモンから潰していけ』
行動が早いポケモンが相手の遅いポケモンを潰せば、同数対決なら後々有利になるのは当然のこと
今のところ、行動の遅いポケモンが早いポケモンに一矢酬いるには耐久力を上げて攻撃に耐えさせるか・先制技を覚えるほかないのが現状だ
「・・・まぁ、ブルーもグリーンも上級者だから足の引っ張り合いはないだろ」
「よく知り合った仲間同士ですものね〜」
「ダブルバトルの基本も押さえてるでしょう」
「となると、問題なのは」
ゴールドが何か言いかけるのに続き、レッドが小さくうなずきながら言った
「相手の能力だな」
こちらの素性を知った上で、というなら『ダブルバトル向けの能力なのかもしれない
相手はカクレオンが2体、同じポケモンが2体
プラスルやマイナンのような特性も無いのだから、何かしら意図があると考えていいだろう
グリーンとブルーが後出しながら、バトルポケモンを出した
ナッシーにニドリーナだった
互いに相談しあって決めたわけでもなさそうなコンビに一抹以上の不安を覚える
口出すのははばかられるので、黙って信じて見守るだけだ
「あ! やせいの しかく が とびだしてきた! ♪」
相手は笑う
その能力は未知数
ならば、能力を使わせる間もなく倒してしまえばいいだけだ
速攻で決める
刺客が来てしまった以上、この先は急ぐ必要がある
「ニドちゃん、にどげり!」
「ナッシー、サイコキネシス!」
先手は貰った
ブルーとグリーンは相手のカクレオンの一風変わった特性・へんしょくをうまく利用してきた
この特性を持つポケモンは最後に受けたわざと同じタイプになってしまう
場合によってはそれが有利にもなるが、今のこの場合は確実に不利になる
まずブルーのニドリーナのにどげりで、今・ノーマルタイプのカクレオンは効果抜群
へんしょくでノーマルタイプはかくとうタイプになり、今度は遅れてきたナッシーのサイコキネシスで再び効果抜群をくらう
この2回連続抜群ダメージならば、カクレオンの耐久であれば倒せるはずだ
ヵッカ コロコロコロコロ
2体のカクレオンが同時に動いた
意外と素早い動き
・・・せんせいのツメを持っているのかもしれない
それとも相当場慣れしているのか
カクレオンの1体が長い舌をナッシーの首元に突き出し、その動きを止められる
おどろかすだ
ナッシーはひるんでしまった
もう1体のカクレオンはかえんほうしゃでニドリーナに向けるが、にどげりの威力と風圧でうまく吹き飛ばした
さすが、というべき攻防
ダブルバトルを得意とするならこれくらい当然だろうか
「いい狙いです」
ヵッカ コロコロコロ
カクレオンが再び動き、先手を取る
いやなおとで防御力を下げにきた
トレーナーをも巻き込む耳障りな音波から逃げるグリーン達やポケモンは、もう片方のカクレオンと鉢合わせになる
力をためこんだきあいパンチ
「ナッシー、リフレクター!」
ナッシーが間に割って入り、見えない壁とタイプ相性をもって受け止める
くさ・エスパータイプであるナッシーにはかくとう技は効果は半減する
そこにリフレクターを張ればダメージなど殆ど無くなる
「あ、ありがと。グリーン」
「気にするな」
ニドリーナでは受け切れなかった
感謝の気持ちを表し、ブルーが礼を言う
「高鳴る胸の鼓動はふいのきあいパンチ? それともなぁに」
・・・本当に心臓が飛び出してしまいそうな、問いかけだった
しかも技を放ったカクレオンがそう言いながら離れていくのだから、ブルーは二重に驚いたのだ
本当に?
「そうかな、そうかな、そうかもね」
いちいちリズムにのるような語呂のいい台詞に、ブルーはまゆをひそめた
間違いなくあのトレーナーが何らかの方法でポケモンを通して言わせているようにしている、と思うのだが
まさかシショーのよ・・・・・・
「腹話術か」
グリーンがそう推察した
それは単純なものだが、互いの息やリズムを重視するダブルバトルで乱すには最適だったかもしれない
動揺を誘い、ミスをさせるのだ
姑息かもしれないが効果的な作戦だろう
「そうだよ」
あっさり肯定した
腹話術を少しかじっているのだという
「でも、それがどうしたの」
ポケモンがしゃべろうがしゃべらまいが関係の無いこと
「肝要なのは本人達の気持ちでしょ。代弁してるだけだって」
刺客が手を軽く握り、手首からぐるぐる回してみている
「当たってると思うんだけどね。2人とも感情を押し殺すのうまいようで、見る人が見れば微笑ましいくらいだよ」
・・・当たってる?
何がだろう
ブルーはちらりとグリーンの後姿を、横顔を見た
何も感じてない、と思う・・・・・・
お互いに
そう?
ヵッカ コロコロコロ
「くるぞっ」
グリーンの激でブルーがハッと我に返る
カクレオンの攻撃はアイアンテール、きりさく
鋼と化した器用な尻尾と意外にも鋭い爪がガガガッと地面を砕き、叩く
「よそ見してるな!」
「わ、わかってるってば」
防戦一方だ
いまいち攻めの姿勢に欠けている
2人の呼吸が合わない以上、相手の術中に思うようにはまっているということだ
遠くから見ているレッド達は何をやってるんだと首を傾げるほど、動きに精彩が欠けおかしい
「集中しろ!」
「わかってるわよ!」
呼吸が合わず、お互いがイライラしている
利害・目的一致の共同戦線を張ったことなどいくらでもあるのに、今日ばかりは足並みがそろわない
それは明らかにブルーのせいだった
せい、といわれても仕方ない・・・・・・そんな戦いぶりだ
ヵッカ コロコロ
カクレオンのだましうち、おどろかす
ナッシーをおどろかしてひるませ、だましうちの必中で追撃する
効果は抜群
ニドリーナのフォロー無しでは切り抜けられない
業を煮やしたグリーンが、ブルーの肩をつかんだ
「いい加減にしろ」
「あ、か関係ないでしょ!」
「大有りだ。このまま無様に負ける気は無い」
グリーンの目は真剣そのものだ
どんな言葉にも問いにも耳を傾けず、バトルに集中している・・・のだ
それを水差すような行動を取られては怒るのも当然
この刺客が何を狙っているのかわからない以上、早く倒してしまいたいのだ
「何に気を取られてる」
「・・・」
「む」とも「ん」とも「う」ともつかない声を出し、ブルーが黙る
知性を持つナッシーが猛攻を防ぎ、ニドリーナはおろおろしている
「・・・・・・そんなに俺の気持ちとやらが気になるなら、このバトルに速攻で勝てたら教えてやる」
ブルーがきょとんとした顔で、少し頬に赤みがさした
「い、いや、別に」
「これ以上、御託を並べるな。相手に聞く耳を貸すな。いくぞ」
ナッシーは猛攻を受け、既に重傷を負っているはずだ
ここからはニドリーナのみで戦っていく気でなければならない
「まだ俺のポケモンは終わっていない」
グリーンが鋭い目で見る先の、カクレオンにツタが巻きついている
シュルシュルとしめつけ、カクレオンが悶えている
「やどりぎの・・・タネ」
「そうだ。かわされたり、かえんしほうしゃで焼かれたりでなかなか根付かなかったがな」
ナッシーのリフレクター、タイプ相性によるダメージの半減があってもぎりぎりのタイミングだ
あそこまで根付いてしまうと振り払うのには相応の技が必要になり、逆にダメージを大きくしてしまう
ここまで持っていければ、持久戦は有利になる
「闘争も恋愛も焦りは禁物です」
ヵッカ コロコロ
カクレオンのふぶきだ
広範囲に及ぶこの特殊技にはリフレクターは効果を発揮せず、ナッシーにとっては天敵のタイプ相性
「ニドちゃん、『まもる』」
とっさに自身を盾にしてナッシーを守るが、防ぎきれない
そもそも2体を対象にする技ではないのだから当然だろうが、向こうの攻勢が激しくなってきた
ヵッカ コロ
猛吹雪を貫くかのようにかえんほうしゃが押し迫る
ふぶきの技も威力を呑み込み、強くなっているように見えるのは特典の力か
逃げ場などなく、ニドリーナはその身体で耐え、受けきるしかなかった
またまもるの効果も薄く、ナッシーにも壊滅的なダメージが及ぶ
「・・・・・・」
状況は圧倒的不利
グリーンは静かに相手を観察、分析して好転をはかる
ヵッカ コロコロコロ
吹雪がやみかける頃、それに合わせていやなおとを紛れ込ませ・放ってくる
カクレオンが覚えられる技は本当に多種多様で、2体もいれば攻撃のバリエーションが増大する
・・・・・・多種多様
「多種多様すぎる」
「?」
グリーンの言葉は明瞭ではない
はっきりとした意味が伝わってこないのだ
「思い出せるか? 相手が繰り出してきた技を」
戦い以外のことに気を取られがちだったブルーには全部はわからない
それでもグリーンの補足もあって、何とか思い出した
おどろかす
かえんほうしゃ
いやなおと
きあいパンチ
アイアンテール
きりさく
だましうち
おどろかす
ふぶき
かえんほうしゃ
「これで相手側の技は全部出たわけね」
ブルーが指折り、8つの技を確認する
すべての技がわかれば、その対応策もとりやすい
これで少しだけ光明が見えた
「違う」
グリーンの発言は明瞭ではない
非常にわかりやすくない
「ふぶきとかえんほうしゃを使ったカクレオンは同一ポケモンだ」
「はぁ?」
「同じ種類2体のダブルバトル、そのコンビネーションに翻弄され、技の威力や効果で誤魔化していたようだが間違いない」
グリーンは断言した
「あいつらは技を5つ持っている」
・・・・・・それが本当なら、従来のポケモンバトルがひっくり返るほどの能力だ
ポケモンバトルにおいて重要な技選択
悩んで悩んで、何十と覚えてくれる技から4つだけ選ぶ
どんなポケモンを、状況を相手にするのを得意にするのか
取捨選択で泣いたことがあるトレーナーも少なくないはずだ
グリーンはその自身の能力で擬似的に5つ目の技をおぼえさせている
しかし、相手はその上、完全な形でありえない5つ目の技を習得しているという
「その通り」
また相手が調子よく、あっさりと認めた
「だけど正確じゃない」
ヵッカ コロコロコロコロ
聞き逃せない
いやでも気になるその音
カクレオンのみずのはどう、ふぶき
波動による混乱と身体を濡らすことを狙い、零度以下のふぶきを最大限に活用させる
悪くないコンボだ
ナッシーのタイプ一致である以上、逃げて、頃合を見計らってのニドリーナのまもるでしのぐ防戦
それしかない
真っ向から破るにも、ナッシーのHPは減りすぎたのだ
やどりぎのタネの効果は生きているが、そう一気に・多くの回復が出来るわけじゃない
音
技が5つ
状況に不似合いにも取れる技選択
点々としていた推測は、やがて一本の線となる
その答えも、落ち着いた頭と視線で確信を得られることだろう
「ダイス」
刺客の能力は6面ダイスによるものだ
投げた目に書かれている技をポケモンが繰り出すギャンブラー的な能力形態
しかし、理にはかなっている
ポケモンは技を4つまでしかおぼえられない
ならば、別のものにそれを依存させることで解決させる
出目とポケモンの脳は何らかの形で直結し、出た直後に反応して繰り出せる
「おおむね正解だね」
ヵッカ コロコロ
カクレオンの10まんボルト、だましうちの連撃
やはり刺客からポケモンへは一切の指示が出ていない
特に10まんボルトは今までに無い技、つまりもう1体の5つ目の技
「このダイスはカクレオン達の身体の一部を埋め込むことで、その一部に仕立てられたもの。
出た目に対応した技を繰り出せる、までは合っているよ。
でも、そこにギャンブル的な要素は殆ど無いなぁ」
地面の凹凸や手のひらのなかでの転がし方などで、ダイスの目をほぼ100%操作出来るという
しかし、どの目が出ても大丈夫なようにタイプや追加効果がうまくバラけてさせている
また出た目にしか反応しないということで、運任せもあるが何より指示の迷いが出来ない
どう転んでも良いように持っていける隙の無い仕組みだ
ヵッカ コロコロコロ
「・・・・・・それともうひとつ。ちょうど出たものがある」
5つの技を6面ダイスに組み込む
6−5=1
「6分の1の確率で出る『特能技』。シックストゥー」
カクレオンの1体に、その身体に変化が起きる
ヵッカ コロ
ニドリーナが素早くまもるを発動させる
カクレオンの腕が光り輝き、まもると真っ向から激突
何とか防いだものの、すさまじい威力だったのが気迫と雰囲気で伝わってくる
「シックストゥーは次に出た目(技)の、元の威力を+36すること」
先ほどのすさまじい威力の技、出目はきりさく
タイプ一致ではないのかもしれないが、技の威力を挙げる効果がそう見せたのだろう
また今までも気づかない内に何度もその目が出て、技の威力が強化されていたに違いない
確率論ではなく・それなりに狙って使えるものとすれば、能力者の特典を引き起こしやすくもするいい特能技と言える
これで相手のカクレオンの技すべてが判明した
おどろかす、きあいパンチ、アイアンテール、10まんボルト、みずのはどう、シックストゥー
かえんほうしゃ、いやなおと、きりさく、だましうち、ふぶき、シックストゥー
多彩な技を持ち、使うことの出来るカクレオンによく合った能力だ
「カクレオン専用の能力だ。他のポケモンじゃ出来ない無二。そう、貴方達の互いのように」
意図的なものかかえんほうしゃがトレーナーを、グリーンに向かって一直線で放出された
ニドリーナもまもれず、トレーナーごと逃げることに遅れかけた
グリーンがとっさに動き、まとめて庇おうとする
ぎりぎりで、そこにブルーがニドリーナににどげりの指示をし、トレーナーを乱暴に吹き飛ばすことで全員の回避に成功した
「まだこのバトル中の借りは返しきれてないわ」
「礼は言わん。貸し借り以前の問題だ」
ブルーはきっぱりと言い切ったのに、グリーンは素っ気無いどころか少し怒っている
乱暴にやりすぎたか、とブルーも自らの腰をおさえてたたいている
ようやくブルーは本来の調子を取り戻したようだ
そもそもあんなことで動揺するのが珍しいくらいだった
この劣勢、その勢いのまま乗り切ることが出来るのだろうか
光明はある
グリーンは本当に、わずかだが頬を緩めた
「マゾ?」
それを見逃さなかったブルーが思わず口にしてしまうと、グリーンは今まで以上に険しい表情を見せて黙ってしまった
またやってしまった、のか
「・・・もういいから、さっさとケリをつけるぞ」
諦めの表情を見せたグリーンが、ブルーに話しかける
相手の能力・技構成・特能技は知れた
対応策はいくつか考えられる
向こうにはまだクリーンヒットを与えられず、こちらのバトルポケモンのHPは厳しい
「どうするの?」
「ダイスの破壊か力押しによる相手ポケモンの気絶がまず選べる」
「前者はそうしても勝てるって保証は無いから、後者」
「となると、カクレオンの特性を利用する必要があるな」
「タイミングを合わせれば余裕じゃない?」
「言い切れん。向こうもじっとはしてくれないからな」
「じゃ、じっとさせればいーのよ」
ブルーが微笑んで見せるとグリーンは「やれるものならやってみろ」とふいとそっぽを向いた
いつものように何か思いつき、ばっちり冴えてきたようだ
「ニドちゃん、おだてるっ」
ブルーの指示でニドリーナがだだっと駆け出し、カクレオン達の周りを走っては立ち止まり器用な二足立ちで前足をたたく
ぐるぐる走り回られ、ところどころで手を打つものだからそれに身体が否応なしに反応してしまう
その動き目まぐるしく、カクレオン達がフラフラに・・・・・・混乱状態になったのだ
向こうの指示がダイスと直結していても、身体が言うことをきかないのであれば動けない
ヵッカ コロコロ
ダイスが転がる
しかし、わけもわからず自分を攻撃してしまった
「やどりぎのタネ、おだてる。このような技が成功してもタイプは変わらないんだったな」
鈍足のナッシーがいつの間にかカクレオンの後ろに回りこんでいた
良い天気だ
おそらく特性のようりょくそが発動するくらいのものになったのだろう
ナッシーに反応したカクレオンが集中力を高めている
どうやら片方にはキーのみかラムのみを持たせていたようだが、技がいけなかった
このモーションはきあいパンチ
わずかだが力と気合を溜め込まなければならず、使うにはみがわりか相方のサポートが必須だ
混乱状態のカクレオンにニドリーナがヘドロばくだんをぶつける
特性・へんしょくでノーマルからどくタイプへ
更にどくまでもらってしまったらしく、長い舌でぜーぜーいっている
「・・・・・・」
ナッシーのサイコキネシスが決まった
どくタイプのカクレオンは効果抜群、きあいパンチのカクレオンは集中力が途切れて技に失敗してしまった
ぐらりと・・・・・・片方のカクレオンが地に伏した
刺客は無表情でいるが、もう軽口などは一言も発しない
「勝負あったな」
遠巻きから見ているレッドがそう確信した
ダブルバトルにおいて、相方がきぜつしてしまうのは致命的だ
ましてやグリーンやブルーのような実力者を2人相手にするなら尚更のこと
「さて、覚悟決めてもらいましょーか」
ブルーがそう息巻くと、刺客はため息をついた
それはまるで最初から乗り気ではなかった、と・そう主張するようにわざとらしいものだった
「・・・・・・貴方達のラブは不滅ですから。ちなみに」
わずかに兆候が見られるテレポートの光
だが、消える前に何か空恐ろしいことを言ってのけた
ブルーが「ちょ」と止める前に姿を消した
「な、なんだったの」
そう、なんだったのか
この戦いははっきり言えば、トレーナーとしても駆け引きなどを楽しめるものではなかった
相手もその実力を出しあぐねているのか、やる気を見せなかったのか不満が残る素振りを見せた
わかりやすく言えば時間稼ぎ
そのため、したくない戦いをしにきた・・・・・・そんな印象を与える
わざを5つ、それらのわざを強化する特能技、相手の動揺を誘う腹話術紛い
ぐだぐだな展開が相手の持ち味をうまく活かしきれず、いや逆に活かそうとしなかったのかもしれない
それと名前も、階級も明らかにしていない
今までの刺客とは何かずれがある
「まぁ、そんなことよりさっ」
心なしかウキウキしているブルーが、くるりと一回りしてからにこっと笑った
意地悪そうにも、満面の笑みにもとれる
「聞かせて? グリーンの気持ち」
To be continued・・・
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