〜更なる高みへ/054〜




 「追うぞ!」


 ・・・・・・


 受動か能動か

 知る由も無し


 ・・・・・・


 「・・・エアームドか」

 『タイプは鋼・飛行。耐性の多さ、特性のがんじょう、その種族値と相まって硬いポケモンだ』

 ブラッキーも硬い能力値を誇り、速攻ではなく攻撃をあえて受けて・じわじわと相手を攻めていくタイプのポケモンだ
 あの2体の持ち主、能力者は持久戦が好みなのだろうか
 
 「結構速いぞ」

 追う者、追われる者の差を考えてみても悔しいが向こうの方が速い
 しかし、ぎりぎりのところでついてこられるような速度に調整されている感じもする
 なめられている上、要は「ついてこい」と言われているものなのだ
 このまま向こうの思惑通りに事が進むのも危険だが、蒼い鉱石を取り戻す算段は無い
 『トリック』を使えるポケモンがいれば、話は別だったろうが・・・『どろぼう』や『ほしがる』は射程距離外だ

 「思うままだな」

 「どこまで行くんスかね」

 万全の体勢でなみのりやそらをとぶしたわけではない
 あまりにも長距離の追いかけっこになった時、逃げられてしまうかもしれない

 『方向は5のしまだから、そこに能力者がいるんじゃないかな』

 「どうかしらねー」

 「いや、どうもそうらしい」

 ブラッキーとエアームドが少し方向を変え、まっすぐ目的地を目指しているのがわかる
 振り切って逃げよう、などということはないらしい

 「歓迎されてるんでしょうか」

 「どうだか・・・」

 少なくともまた厄介なことに巻き込まれることとなる
 それだけは確かだろう・・・


 ・・・・・・


 5のしま

 上陸したはいいが、ブラッキーとエアームドを見失ってしまった
 放っておくと、下手をするとこの島から逃げてしまう
 レッド達が駆け出すと、何かの気配がする

 ポケモンではない
 人間の話し声だ


 「ん? 誰だ」

 「!」

 カントー・ジョウト地方に住む誰もが見覚えのある団服達
 複数のR団員、それも先頭はあのエリートトレーナーが現れた
 出会った人ではないが、その雰囲気で4のしまにいたやつらと同類とわかる

 「てことは、ブラッキーのおやって・・・」

 R団員がサファイアに何か用でもあるのか
 それともおやとは違うのか 

 「これは都合いい。まさかお前らが来るとは思ってもみなかったぞ」

 エリートトレーナーが構えると、またぞろぞろとお仲間が集まってくる
 どうやらこの島はR団に半ば支配、拠点とされているようだ
 カントー本土から逃れてきた残党の集い、というわけでもなさそうだが・・・

 ということは、4のしまで乱獲された野生ポケモンもここにいるのだろうか

 「どうする?」

 「先にブラッキーを追う方が先だ」

 「ブラッキー?」

 周りを取り囲むR団員の1人が反応を見せる

 「エアームドに乗ったブラッキーなら向こうに行ったぞ」

 レッドがそのR団員の指先の方を見ると、本当に小さくその後姿が見えた
 これ以上離されたら、見失ってしまう

 「ありがとっ」

 律儀に礼を言い蒼い鉱石求め・追いかけ、駆け出すレッド達をR団が追おうとする
 そこにブルーが特製のけむりだまとピッピ人形をまとめて放り投げる
 R団のポケモンは人形に気を取られ、エリートトレーナー達は煙幕でレッド達の姿が見えなくなった
 咳き込んで指示を出すのどがかすれ、下手に攻撃すれば同士討ちになる
 
 煙幕が晴れた頃、レッド達の姿は見えなくなっていた
 おそらく茂みのような、目に付かない影のところを通っているのだろう


 「追え、方角はわかってるんだ!」

 「いや、待て」

 意気込むR団員1人を、エリートトレーナーが止めた
 
 「あの方角なら、問題ない」

 ぐじゃりとエリートトレーナーがピッピ人形と地面を踏みしめ、R団員をにらみつける
 いつもならこのエリートトレーナーは同士討ちを踏まえた上で味方ごと攻撃し、敵をも逃さないのだが・・・今日はこの人形があったので出来なかった

 「そう。問題ない」

 あの方角には少なくともこの場にいるR団員より数も質も上の同じ団員が、そして同じランクのエリートトレーナーが5人もいる
 勿論、エリートトレーナーのなかには4のしまに行った者もいる
 それだけレッド達が向かっている方角は重要な場所ということだが、人員的にはまったく問題ないはずだ

 「それより、確かめなくてはな」

 レッド達にブラッキーの行方を教えたR団員に仲間であるはずのエリートトレーナーが迫る
 そんなにそのことを言ってしまったのがまずかったのだろうか

 「お前は誰だ」


 ・・・・・・


 「R団のやつら、追ってこないッスね」

 『まぁ、その方がいいよ』

 「方角間違ってない?」

 「こっちで合ってるはずだけど」

 レッド達は蒼い鉱石を追う

 「あそこ、見て」

 わずかに見える飛ぶエアームドとブラッキーの後姿
 ここまで来て取り逃がすなんてことにはしたくない
 
 
 ゴールは近い


 ・・・・・・


 「お前は誰だ」

 周りがざわつく
 ここで仲間を疑うとはどういうことか

 「ただの役者志望だ」

 どろりとR団員の顔が崩れていく
 下からのぞいてくるのは別人の顔、崩れたものはメタモンになった

 その顔は醜かった
 美しくはないが、自信のような何かに満ち足りている表情だ


 いきなり仲間懐疑から、即自ら裏切り者だとばらしてきた
 どういうことだ、と周りがうろたえる
 何故スパイのような人間がいる、何故レッド達に加担する
 少なくともこの場やレッド達の関係者ではないことだけは明白だった

 「何にしろ、草は狩る必要がある」

 「さすがはエリート」

 醜い顔が嘲笑う

 「それがどうした」

 歯軋りに近い笑い声をエリートトレーナーは不快そうに顔をしかめた
 顔立ちのいい彼と並べると、裏切り者の顔はいっそうひどく見えた

 「所詮は人間がつくった称号だろう。何の意味がある」

 「・・・安い挑発だな」

 エリートトレーナーは一般トレーナーのなかでも上位の部類に入る
 戦いにおいても戦略・戦術の要素や組み立ての出来ていない能力者なら負けるだろう
 ましてや相手・裏切り者はメタモン使いで、その種族値はたかが知れている
 その上、他の本物のR団員に囲まれているのだ

 そんな状況としては絶望的なのだが、向こうは何故余裕を保っていられるのか

 「勝てるからだ」

 「なに?」

 「天は人の上に立つ『神』をつくった。
 そして、俺達は神の試練を受け・乗り越え、その足元に及んだ者だ」

 醜い顔をさらけ出し、その腕に3つの腕輪があることを掲げて見せる
 
 「時代は動いている! 今より前から動き出さぬ者は、既に置いていかれていることもわからぬ愚者!!」

 腕輪3つで『幹部候補』ということをエリートトレーナーは知っていただろうか
 そもそも組織の昇級制度なども知る由も無いはずだ
 しかし、その過剰な自信には何か裏があると踏んで警戒態勢に入る
 心静かに、いつも通りの対処で臨めば負けは無いと・・・確信した顔だ

 
 「俺はダブルバトルの方が好きなんだ」

 唐突に男は語りだした
 淡々と、何も演じてはいない

 「メタモンのへんしんは相手の姿形だけでなく、そのステータスをも写し取る。
 変わらないのはHPの数値ぐらいなものだ。故に努力値振りはHP、他はへんしんする時に必要な耐久か素早さがいい」

 「それがどうした」

 メタモンのへんしんはそう言えば聞こえはいい
 しかし、実際はターン制に縛られ、へんしんした前後どちらかに相手の一撃を受けなければならないのだ
 HPに努力値を振ろうが元からその種族値が低いので、耐え切れないことも多い
 せいぜいメタモン以下のHP種族値を持つツボツボにへんしんすれば脅威の耐久に、などが有用・・・・・・と言われる

 「つまり、これならどうか」
 
 エリートトレーナーの身体がぐんと後ろにのめりこむほどの勢いで引いた
 何故か
 背後から何者かがエリートトレーナーの肩を思い切り引っ張ったのだ

 R団員がその周りにいるはずなのに、誰もとめられず・気づかなかった
 完璧に気配を消していたというより、一瞬で姿を現した・が、しっくりきそうだ

 引き倒されるのをこらえ、身体をひねってエリートトレーナーはそれを逃れた
 背後に立っていたのは仮面をつけた人間・・・・・・


 「今回のパートナーを務めてもらっている上司だ」

 「な」

 仮面の男は無言だった
 デザインからもマスク・オブ・アイスではないのもわかる

 階級の上位に位置づけられ、人一倍それに執着し、気遣うエリートトレーナーだから察せた
 ランクが違う
 神だの人間だの・のものではなく、トレーナーランクそのものが違う存在だと気づいた

 エリートよりも上という仮面の男はいったい何者なのだ、と自問自答するしかエリートトレーナーはなかった 


 仮面の男がカイリューをボールから繰り出した
 その姿や威圧感、眼光から良く鍛えられた『別格』のポケモンと悟る

 同時に醜い男のメタモンがそれを写し取り、じゅうなんな肉体をへんしんさせていく
 更にその顔をへんしんした肉体が覆っていき、仮面の男を形作った

 それが醜い男の能力
 メタモンがへんしんしたポケモンのトレーナーの姿をも、メタモン自身から伸びた肉体によって写し取る
 そして、へんしん後のPPは一律5ではなく通常の最大値になる(対象のPPが10ならへんしん後のメタモンのPPは5だが、この男のメタモンは対象と同じPP10)
 ポイントアップで増大されたPPも反映される

 まるで仮面の男とよく鍛えられたカイリューがそれぞれ増えたようだ
 役者志望というだけあって、その立ち振る舞いや雰囲気までもまとっていて区別がつかない

 「・・・・・・」

 「最強が2人、というわけだ」

 どんなトレーナーにもなりきり、その指示や動きを8割以上真似て・演技する
 中途半端な実力のトレーナーをその対象にすると、その対象と同等かそれ以上の実力を持った相手にやられてしまう
 シルバーとゴールドの実力差は殆ど無かったから、シルバーの演技してもゴールドには勝てなかった
 だが、写し取った対象のポケモン・トレーナーとしての実力が極端に違うのならば、その話は別となる


 エリートトレーナーは戦う前から敗北を知った
 R団員は無謀にも、果敢に攻め込んでいくが・・・・・・結果は見えていた

 「命により、おとなしく邪魔する者を破壊する」

 「島の形を変えない程度に、その力を示せ・と」


 ・・・


 彼らの任務は達せられた
 それだけ伝えておく
 

 ・・・・・・


 「・・・」

 『どうしたの、イエロー』

 ふと憂げな表情を見せるイエローにシショーが呼びかけた
 イエローはほんの少し、微笑んだ

 「何でもありません。きっと」

 「そうか? 物音がするぞ」

 レッドの言葉にシショーが耳を傾け、『あ、誰かがバトルしてる』と肯定した
 ブルーは「まともな人間の聴覚なの?」と思わず突っ込んだ

 「今は構ってるヒマはない。もう追いつける」

 バトルしているならR団員とあのエリートトレーナーだ
 味方ならまだしも敵なのだから、気に病むことも必要以上に気にかけることもない

 「・・・うーん」

 イエローはまだ何か言いたげだが、これ以上は話さなかった
 また身体に変調があったのか、と疑るがそれは大丈夫とまた微笑む
 それが・その返答が不安なんだと、お互いにわかっている

 しかし、それ以上は追求しなかった


 「あ、見失った」

 ゴールドのあっけらかんとした声に、皆が乗っているポケモン達は急ブレーキをかけた
 その勢いにトレーナーもつんのめりそうになる 

 「おいっ!」

 「ちょ、ウソでしょ! ゴールド!」

 「あー、でも多分あそこッスよ」

 詰め寄り、迫り来る皆に対しゴールドが指差した方に大きな倉庫が見えた
 見晴らしもよく、目の前から突然消えるわけもないから、おそらくあの建物の中に逃げ込んだのだろう
 エスパータイプのポケモンが傍にいなければならないテレポートの可能性も低い
 
 「あそこか」

 「誘っているとしか思えんな」

 「虎穴入らずんば虎児を得ず、と言うけどね」

 
 うん、とレッドが軽くうなずいてから言った

 「イエロー、ゴールド、2人はここに残ってくれ」

 「!」

 「なんでッスか!」

 突然の宣告に焦る2人対し、レッドがなだめるように返す

 「何があるかわからないから、何かあったときの為に2人を外に置くんだ。
 いざとなったら力ずくで助け出してくれ」

 「でも・・・」

 不安そうな顔を見せるイエローにブルーがぽんとその頭に手を置いた
 大丈夫、と体言しているのだ

 「一応、R団員もいることだしな。外に誰か置くのは賛成だ」

 グリーンがちらっとゴールドの方を見る

 「自信がなければ俺も残るが、どうする?」

 その言葉に火がついたのか、ゴールドが快諾した
 鮮やかにハマりすぎて、クリスが笑った

 『じゃ、頼んだよ』

 「はい。わかりました」

 ささっと音を立てないように、レッド達はR団倉庫へと忍び寄る
 イエロー達はそれを木陰からこっそりと見守る他なく、静かに幸運を祈るのだった


 ・・・・・・


 「・・・・・・」
 

 ただ足がこちらを向いた
 それだけのこと・・・


 ・・・・・・


 倉庫内に侵入したレッド達が見たもの
 
 照明無し
 R団員の人影無し
 不気味な機械のコードやスイッチ
 そして無造作に積まれた檻入りのポケモン達

 倉庫内に侵入したレッド達が聞いたもの

 自分達の靴擦れや呼吸の音
 R団員の会話も独り言も聞こえない
 わずかな電子音
 そして無造作に積まれた檻入りのポケモン達の鳴き声

 
 「ひどいな」

 『4のしまで乱獲したポケモン達か・・・』

 捕まえたら捕まえただけでそのまま放置か
 それとも使えそうなポケモンだけ選出して、あとは売りに出すなどの処分を検討しているのかもしれない
 どのみち、このままにしてはおけなかった

 「解放するのは簡単だが、元のところへ返す輸送手段が無いぞ」

 仮にここで逃がしてしまえば、この島の生態系がおかしくなってしまう
 それはまずい

 「ガイクやカンナに連絡取りましょうか」

 「そうだな。でも、ここはまずブラッキーを探すんだ」

 心を鬼にして
 居場所がわかれば、あとはどうにでも出来る
 今は蒼い鉱石を見つけ出すのが先だ

 「それにしても、見張りが1人もいないなんて変ですよ」

 『・・・いや、それはどうかな』

 シショーの意味深な言葉のすぐ後に、がたっと音がした
 さっと腰のボールに手を当て、臨戦態勢に入る

 檻に入れられたポケモン達が騒ぐ


 「・・・・・・」
 

 陰から出てきたのはR団員、いやエリートトレーナーだった
 それも火傷など、全身に怪我を負った満身創痍の状態で、だ
 これにはレッド達も虚をつかれ、言葉を失った


 「ぁ・・・」

 ぐらりと前のめりに倒れそうになるのを、レッドが駆け出し抱きとめた
 そうやって改めてその状態を見ると、こするような打撲痕に火傷を負っているようだ

 「見張りはいないんじゃなくて、全滅したってことですか?」

 「・・・そうらしいな」

 ブラッキーのトレーナーの仕業か
 しかし、その気配は感じられない

 「からくりが見えてきた罠にしては静かすぎるぞ」

 「そうね」

 警戒心を強めると、ふとエリートトレーナーが小さくうめいているのが聞こえる
 何か言いたいこと、伝えたいこと、やられた相手による伝言があるのだろうか
 その囁きに耳を傾ける

 
 「・・・Aォ、お・・・ニ」
 
 ぐぐっとレッドの腕を強くつかみ、それだけ言って力尽きた
 ダメージによって気絶しただけで、息絶えたわけではないのでホッとする
 
 「・・・?」

 「いやな予感がしますね」

 早くブラッキーと蒼い鉱石を見つけ、早々に出た方が良さそうだ
 それとも一度外に出て、もう一度不審な点などを探してみるべきか


 「・・・なんか暑くない?」

 ブルーがひきつった笑みを見せながら、そう言った
 これだけ檻型のモンスターボールや人が密集している倉庫内なのだから、少しぐらい室温が高くてもおかしくない
 それに今日は晴れ、夏の日差しで・・・・・・

 「あきらかにおかしいぞ!」

 おかしい
 MBに入っていればポケモンの体温は感じず、体感的に暑くなることはない
 こうして暑くなった、といきなり感じ始めるのは外に異変があったからだ

 「イエローとゴールドは!?」

 『! 部屋の壁を見てよ!!?』
 
 シショーが悲鳴をあげた
 部屋の壁や天井が既に炎と化しているのだ
 いつの間に火をつけられたのか、それよりも火の勢いや回り方が異常に早すぎる
 油でもしみこませていたわけではない、この建物は鉄筋だ・・・

 「水ポケモンで脱出だ」

 「言われなくてもっ」

 ブルーのカメちゃんのハイドロカノンを炎の壁にぶち当てる
 しかし、鎮火の気配を一向にない
 それどころか水流と炎がぶつかって発生した熱い水蒸気に苦しめられることとなる

 「・・・っ」

 クリスの様子が少しおかしい
 この異様な熱気、水蒸気などで肌からトラウマを思い出し始めてしまったのか
 乗り越えたにしても心の傷は完全に癒えることはない

 「この炎は普通じゃない」

 「なら、それなりの対処をするだけのこと」

 グリーンがポケギアで電話をかける
 通信先は外にいるゴールドだ

 『もしもし、こちらゴールドッス!』

 「無事だったか」

 『何とか』

 「現在の状況はどうでもいい。今から俺が指示するとおりに動け!」

 危機的状況の打破
 それが今早急に行われるべき命題

 「今から合図を出す。それと同時に外側から南向きの壁に水タイプの攻撃をするんだ」

 『同時に・・・外と内側から一点突破ッスね!』
 
 「物分りが良くて結構だ」

 『もうこっちも色々試したんスよ! この炎の原い・・・ック・・・イの』

 通信状況がおかしくなってきた
 この炎の壁にそんな効果があるとは思えないから、おそらくR団倉庫内の機械・設備が影響しているのだろう
 出火の原因は気になるが、外にいる2人が無事ならばとりあえずそれでいい
 
 「早く位置につけ。カウントダウンだ」
 
 『りょ、か・・・・・・』

 水流→炎←水流
 
 ポケモンの水流は物理的な破壊力を充分に兼ね備えている
 内と外からのタイミングさえ合えば、これで消えないわけがない
 しかも内からの水流にはあのハイドロカノンが加わるのだ

 火さえ消えればコンクリの壁くらいい壊せる手段はいくらでもある
 

 「カウント5」

 『・・・よ』
 
 レッド達がありったけの水ポケモンを出し、備える
 ニョロは思い切って水流に押されつつ水流を放ち、その勢いのまま拳でぶつかっていき・コンクリの壁をも破壊する気でいる

 「3」

 『にぃ』

 「1」

 
 ドンッと勢い良く噴き出す水流、いや激流
 それらが束になって炎の壁一点に集中される

 炎+コンクリートなどものともしない威力だ
 そう、ここの倉庫建設時に使われたのは通常のコンクリートだった
 ガゴォォオンとニョロがそれを砕いた音もした


 燃え盛る炎は通常ではなかった

 すべてを絞りつくして、放たれた水流はすべて熱い水蒸気となって周囲の視界を奪うだけに終わった・・・
 がくんと力が抜けていく気がした


 「どうして・・・」

 ありったけの水タイプの攻撃はした
 内と外の同時攻撃による突破も試みた
 それなのに、なお炎の壁の勢いは増している
 火の粉が飛んでくることは水蒸気でまぬがれているようだが、さがて内の酸素をすべて食い尽くすだろう
 それよりも室温の上昇で焼けていくのが先だろうか

 周りの視界が白くかすむ
 近くにいるはずなのに皆が離れ離れになってしまうようだ

 「あきらめるな!」

 レッドの声に皆が勇気付けられ、再び立ち上がる
 グリーンとゴールドの通信はまだ途絶えておらず、外からの援護もまだ勢いを落としてだが続いているようだ
 
 「ニョロが空けたコンクリの穴から脱出・・・」

 それは難しかった
 炎の勢いが強すぎるのだ
 水を被って突っ込むどころのではない


 それでも炎は無情にも燃え上がる
 炎の壁がせばまってくる

 そして、
 視界が白く、息も白く・・・・・・

 再びレッド達に、今度はその身体そのものに異変が襲っていた
 それでも気づくのに遅すぎた

 足が動かない
 感覚が無い


 燃え盛る炎の壁に囲まれ、白い霧で視界を奪われ、レッド達の意識はそこで途絶えた

 



 To be continued・・・
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