〜更なる高みへ/061〜




 「たどり着いてみせます」


 ・・・・・・


 階段はそう長く続かない
 普通のものと変わらず、一段飛ばしでクリスは駆け上がる

 上りきったところで、広い部屋を狭くするような仕切りが見えた
 〕〔のような形の仕切りであって、それのおかげで否が応でも目の前にいる2人のトレーナーからは逃げられないようになっている
 倒さなければ、次の階には進めない

 逃げる気も戻る気もない

 「勝負やっ」

 「ダブルバトルだ」

 やはり見覚えがある2人だった

 コガネのジムリーダー・アカネ、エンジュのジムリーダー・マツバのタッグ
 得意タイプは以前のポケモンリーグで知れている
 物理のノーマルと特殊のゴースト

 厄介な相手だ

 「ウインぴょん、メガぴょんっ」

 「ミルたん!」
 
 「ムウマ」

 先頭にいるポケモンが飛び出す
 ウインぴょんは先程に続いての連戦だ

 「しんそくっ」

 ノーマルタイプの先制技
 ゴーストであるムウマには効果がないので対象はミルタンクだ
 あついしぼうを特性に持つミルタンクには炎攻撃では効果が薄いので、この選択にした

 大きな身体を持つウインぴょんのしんそくが直撃し、ミルタンクが後ろに転げ倒れる

 「・・・聞きますけど、2人とも能力者なんですか?」

 「そうだ」

 「そーやっ」

 「まぁ2人ともこのバトルでは使うことはないだろうけどな」

 マツバがそう答えたところでムウマが動いた
 ミルタンクから飛び離れるウインぴょんの傍に擦り寄るように近づく

 「でんじは」

 まもることも出来ず、ウインぴょんに放たれ、まひにおちいる
 レベルアップではおぼえない故に、でんじはをおぼえているムウマは珍しい

 「高い種族値であり、先制のしんそく、強力な炎攻撃をおぼえている。
確かにきみが持っているポケモンのなかで最も先鋒にふさわしいポケモンだ」

 「・・・!」

 「だから、早めに潰させてもらう」

 後ろに転がっていくミルタンクが、その勢いを保ったまま後方の壁にぶつかる
 そして、ボールのように反射して返ってきた

 「ミルたんのころがるや!」

 「メガぴょん、リフレクター!」

 ミルタンクの方がわずかに、確かに速かった
 リフレクターという物理半減の壁が貼られるより先にウインぴょんに一撃が入る
 全身に遠心力みなぎり、反動もあるその破壊力は岩石がぶつかってくるもの以上だ
 効果も抜群、ウインぴょんのHPはかろうじて残った程度だった

 ・・・ここで一旦戻すべきだろうか
 連戦させて「きぜつ」させるには、この先の戦いを考えると惜しい?

 否
 タイムアタックなのだから

 「ウインぴょん、しんそくっ!」

 しかし、からだがしびれてうごけなかった
 ムウマのシャドーボールが決まり、ウインぴょんがきぜつした

 「それで良かったのかな?」

 マツバの問いに、クリスは心のなかで頷いた
 タイムアタックなのだから、自分のポケモンへ回復アイテムを使うよりも相手のポケモンへのダメージを優先させたい
 相手は道具を使わないのだろうから

 「きみの持つポケモンじゃ何を選んでも同じだ」

 ・・・クリスは次に出すポケモンを考えた
 思考に割ける時間は少ない

 「カラぴょん!」

 選んだのはカラカラだ
 ノーマルタイプに有効なエビぴょんは無効タイプであるゴーストであり、かつエスパー技を覚えるムウマに遅れを取る可能性が高い
 地面であるから相手のポケモン両者へのタイプ相性では冴えるものはないが、他に比べると悪くもない
 そして、他にも狙いがあった

 「(マツバさんの能力は多分『千里眼』だと思う)」


 ジョウト地方では有名な人だった
 ポケモンを通じて何でも見通す千里眼の使い手
 恐らく手持ちのゴーストポケモンの思念・波長などを合わせることで、そのポケモンが読み取ったものを同じように感じることが出来るのだろう
 ゴルダックによる思念の通信はポケモン図鑑でも行われたことがあるから、トレーナー能力でも再現は可能なはずだ
 ただし遠くまで見えるということはポケモンの力を増幅させているはずなので図鑑より上、だがポケモン→マツバへの一方通行のみなどという制約はあるだろう
 
 「(だから、私の手持ちの何を選んでも同じなんだ)」

 相手2人とも能力者
 だけど、今のバトル中それらしいトレーナー能力は発動していない
 どうして?

 考えられるもののひとつとしてバトル中には発動出来ない、しても意味が無い能力だから
 それがマツバの答え

 では、アカネはどうなのだろう

 それを見極めるのがカラぴょんの役目だ

 「ミルたんのころがるはまだ続いとるでぇ!」

 リフレクターが貼ってあるとはいえ、止まるか外れるまでその勢いと破壊力を増していく物理技だ
 大した威力ではない内に対処する必要がある

 「カラぴょん、受け止めて!」

 地面タイプであるカラカラに岩タイプの技は効果が薄い
 その骨一本で、転がってきた巨体のミルタンクを止めてみせる

 「メガぴょん、のしかかり!」

 動きの止まったミルタンクにメガぴょんがのしかかる
 これでダメージを与えるのは2度目、そこそこHPは削れているはずだ
 ただ追加効果のまひまでは出ず、食らったところですぐ逃げられてしまった
 ミルタンクは耐久、意外と素早さが高いポケモンなのだ

 「カラぴょん、ホネブーメランっ」

 ブォンと投げ飛ばした骨が部屋を旋回する
 大きく弧を描くような軌跡、ムウマとマツバがのけぞり避ける
 命中率の問題では無い、狙いはミルタンクだ

 「ミルたん、おんがえし」

 大きくふりかぶって、飛んでくる骨に一発入れる
 バチンとはじかれると、再び弧を描いてカラカラのところへ戻っていく

 「カラぴょん、もう一度!」

 「集中狙いかいなっ」

 ダブルバトルの基本は相方の潰し合いだ
 ダメージを負っている方を先に狙うのは常套手段

 カラぴょんのホネブーメランがミルたんに迫る
 何度はじいても手元に戻っていくだけ、そこから追撃してくる
 ブーメランの軌道は自在で、時にムウマの方を狙ってくるから侮れない
 メガぴょんがカラぴょんに対するリフレクターの効果や攻撃を身体を張って止め、こうごうせいで回復する
 時間を少々使っているようだが、クリスのペースだ

 流れを変えるには勢いだ
 アカネが飛び出した

 「負けてたまるかいな! ミルたん、おんがえし!」

 カラぴょんの、ブーメランが手元に戻る前
 そこを狙う

 「待て」

 マツバが制止したが、止まらない
 その戦い方だと、今まで攻撃を止めてきたメガぴょんはムウマが引き付けなければならない
 それが何か危険に思えてならなかった
 千里眼を持つ者の勘だった

 ブーメランが旋回して戻ってくるよりも早く、ミルたんがカラぴょんに迫る
 おんがえしはノーマルタイプの技のなかで安定した破壊力を持っている
 タイプ一致もあり、まともに食らえばダメージは大きいだろう

 「カラぴょん!」

 クリスが指示をしようとするが、カラぴょんは丸腰だ
 体格差を考えると武器もなしに受け止めるなんてことは出来ない
 メガぴょんがフォローに回ろうとすると、ムウマが向こうからやってくる
 同時攻撃だ


 ドゴとありえない音がした

 
 ミルたんがムウマに、おんがえしを当てていた
 ノーマルタイプのポケモンが、ノーマルタイプの技でゴーストタイプのポケモンを殴り飛ばしていた
 
 ありえない、信じられない
 それでも、目の前にあることが現実
 能力者の戦いはいつもそうだった
 

 「んなっ」

 アカネは驚いていた
 どうして、カラぴょんではなく味方のムウマに攻撃してしまったのか
 クリスは一瞬で相手と自分の立ち位置を変える特能技でも持っていた?
 

 「やられたな」

 マツバの嫌な予感はこれだった

 リフレクターとホネブーメラン

 前者によって生まれた微妙な屈折が、わずかにメガぴょんの立ち位置を誤認させていた
 後者は投げた軌跡と戻ってくる軌跡が微妙に異なり、また骨に気をとられ・受け取っているカラぴょんの位置が微妙にずれていたのだ(その場で投げて受け取ったのではなく、わずかに動いて受け取っていた)
 マツバ・アカネ側とクリス側で前後左右ずつわずかに異なる立ち位置
 ムウマがメガぴょんに近づく方向とミルたんがカラぴょんに近づく方向がわずかに重なり、結果衝突してしまった
 
 
 「PP温存目的の同士討ち狙いか」

 「いえ、そういうわけじゃありませんけれど」

 クリスは未知数のアカネの能力を見極めようとしただけのことだ
 聞いても答えてくれるわけがない
ペラペラ話してくれるかもしれないけれど、嘘かどうかまで確認する必要がある

 「このバトルでは使われない」トレーナー能力
 ゴールドのようにバトルに関係の無いものなら、言葉がちょっと違ってくるはずだ
 マツバの能力は実際そうかもしれないが、もっと視界の悪い・敵が遠くにいるようなバトルでは使えなくもないだろう
 では、アカネはどんな能力か

 クリスとのバトルでは能力が発動しない、意味をなさないもの

 常時、発動、特殊と能力には型がある
 しかし、そのどれでも可能性がある
 要は「バトルに関係するけれど今回は発動条件を満たせない」ものと推測出来る

 トレーナーが同性の時、発動出来ない・・・ありえるけれど、ポケモンに関するトレーナー能力ではちょっとおかしい気がする
 フィールド状況が発動条件なら、今いる部屋にそれを組み込んだものにしておくはずだ
 ポケモンの性別が違わないと発動不可・・・ありえるけれど、クリスのパーティには♂♀揃っている

 幸いにも、すぐに思い至れたのがタイプ相性だった
 発動条件になる特定のタイプがいないから、クリスのパーティでは能力が意味をなさない
 元々バランスのいいパーティではないので、それを特定するのは難しかった
 そもそもノーマルタイプは弱点こそつけないものの、ほぼバランスよくダメージを与えられる
 ・・・たったひとつをのぞいて


 「ご明察や。ウチのトレーナー能力は『ノーマルタイプの技がゴーストタイプに当たるようになる』もんや。
 手持ちかつノーマルがタイプに入ってるやつ限定でな」

 かぎわけるなどがそれに当たる、その効果を得続ける常時型のトレーナー能力だ

 「効果がいまひとつな鋼に等倍ダメージを与えられるようになる、かもしれないと思いました」

 「いい線いってると思うで?」

 クリスのパーティに勿論鋼はいない
 よく当たったなー、とアカネが感心している
 そして、その推察を完全なものにする為にはマツバのムウマで試すのが一番早かったわけだ
 殆ど当てずっぽうだったのだが、運が良かった

 いや、すべてのポケモンバトルにおいて言えること
 それは勝敗は大きく運に左右されるもの
 どれだけ技や戦術を凝らそうが、1回の急所に当たったで覆されることもある
 
「だが、まだ勝負は終わっていない」

 マツバのムウマが体勢を持ち直し、メガぴょんにシャドーボールを当てようとする
 そこに返ってきたホネブーメランが、無防備な後頭部に直撃した
 素早さと特攻を中心に育てられ、HPはやや低いムウマはそれで力尽きてしまった

「あっ」

 「メガぴょん、のしかかり!」

 残るミルタンクもメガぴょんの重量級な一撃にくわえ、追加効果のまひを受ける
 そこにカラぴょんの追撃、ホネこんぼうをくらってしまってダウンした


 「・・・これ以上の余計な問答は後にして、上っていけ」

 「また負けたぁあぁあぁぁああぁ〜!」

 「はい」

 泣きじゃくるアカネに後ろめたさを感じながらも、クリスは次の階段を見つけて上っていく
 これで倒したジムリーダーは3人
 普通に考えて、残るはあと4人・・・・・・タイムアタックだとかなり厳しい

 「ウインぴょんの回復はどうしようもないなぁ」

 完全に力尽きてしまったから、手持ちの道具では不可能だ
 メガぴょん先頭に突き進んでいくしかない


 「着いたっ」

 次の階に上ったクリスは愕然とした
 目の前にいるトレーナー、ジムリーダーが3人もいた

 「案ずるな。3人同時ではない。3人連続戦なだけ」

 アイテムを使うことは許されているが、そのヒマさえ与えられない
 ギロッとひとにらみ、ダンっと床を踏み抜きそうな勢いで飛び出してきた

 「まずはオレからだ。タンバジムリーダー、ソウシンホウのシジマが相手する!」

 出してきたのは・・・・・・ニョロボン!
 ガイクもレッドも使用している、強力な水・格闘ポケモンだ
 いや、それよりも・・・ガイク以上の使い手であるはずだった

 ソウシンホウ、それがシジマのトレーナー能力なのか・・・
 クリスはメガぴょんに、リフレクターの指示を出した


 ・・・・・・


 閃光がはしった


 まばたきするよりも早く、速く決着がついた

 「うわっ」

 ボロボロになったカイリューと共にトウド博士が落下し始める

 「(あの一瞬で種族値600のカイリューをここまで痛めつけるか!)」

 しかも、まもるのエネルギーを貫通してきた上でこのダメージだ
 なければ、トウド博士も怪我以上の怪我をしていたに違いない

 「(理論上、まもるを破ることは出来ない)」

 相手の攻撃エネルギーと同じ量のエネルギーで相殺、防ぐのがまもるだ
 それも相手の攻撃が到達する前に、相手より先に出して見えるほど速くやらねばならないので連続は難しい(みきりと同様)
 今トウド博士が使っている「まもる」はまた少し違うものだが、それでも充分以上に技を防ぐ効果はある
 なのに、あっけなく破られた
 そして、カイリューを戦闘不能にした


 「・・・・・・まさか、いや、そうか。そういうことか!」

 落下していくトウド博士がひらめいた
 高度10kmからの自由落下中だというのに、恐るべき思考回路だ
 ・・・いや、トウド博士はただひとつのことしか集中して考えていられない
 それ故、落下の恐怖より先にきた「まもる」から派生した思考が頭を埋め尽くした
 幸運だった
 
 「のんきなものだ」
 
 自分のポケモンがやられても気にせず、分析する
 学者というものはトレーナーというよりロケット団に近いものを感じる

 ジークが、ジークと共にその切っ先をトウド博士に向けた
 そこでようやくトウド博士は危険な状況を自覚した

 「命運尽きたな」

 「どうかな〜」

 のんきそうな声が聞こえた

 自由落下するトウド博士をその手につかみ、笑うピエロがいた


 「お前は・・・」

 「ぱぱ〜んとイツキとぉ〜じょぉ〜」

 突如として現れた存在
 イツキのネイティオが2人をつかみ、離さない
 フラッシュで目くらましを張るが、ジークは目をつぶらず見据えている

 「ジョウト四天王と組んでいたのか」

 ジークがそう呟くと、トウド博士が勝ち誇ったように笑った
 指差し、あざ笑うように言ってのける

「グァッハハハァッハッハ・・・!
 こうやっておっかない組織に追われている自分が何の対策も立てないと思ったのかい!?
 来るべき日に備え、こういう根回しをしておいたのさぁっ!」

「ちょ〜っとぉ、あんまり騒がないでよぅ」

 トウド博士に対し、イツキが嫌そうにため息をついた
 明らかに調子に乗りすぎだ

 「それと、君の能力の概要も何となくつかんだよ!」

 「それで」

 「・・・・・・それで」

 調子に乗っていたのはジークの能力がどんなものか察しがついたこともあったようだ
 しかし、段々とトウド博士の・その勢いがなくなってくる

 「理解すれば、より恐怖する」

 「・・・うん。そういう能力だ。反則すぎる」

 トウド博士の声はまさに切羽詰ったような、のどが渇いてしまったような声だった
 イツキも勝てない相手だと悟ったらしい

 「逃げられると思うな」

 ジークの声に更にどすがきくと、トウド博士がわけもわからずじたばたし始めた
 頭のなかを、より強い恐怖で上書きしてしまったのだろう
 突発的なことに弱いのだ

 「ほ、本来なら反則したやつが退場するんだけどなぁ〜」

 バシバシと叩かれつつ、イツキも震えた声で強がった
 
 「戦場に反則はない」

 ジークの向けた矛先が、イツキのネイティオを頭から貫いた
 強い気流にまぎれて、シュブッと音がする
 
 
 「・・・・・・逃したか」

 ポケモンの帰巣本能と絆に訴えかけることで発動するテレポート
 危機的な状況になった時、近くまたは故郷にいる同種のポケモンにエスパー的な「虫の知らせ」のようなものが届く
そのチカラを共鳴・増幅させ、仲間の元へとたどっていく(空間移動する)・・・というのが大体の原理だ
 トレーナーのポケモンになった時は、(脳裏に強く残っている)最後に回復してもらったポケモンセンターがそこになる
 回復と言う安心と安全を感じさせるそこへのイメージはいわゆる犬が認識する帰るべき家・故郷、というものだろう
 またトレーナーはポケモンとボールを通しての絆、主従関係によりそれに同行することが出来るのだ

 組織の特殊なテレポートは、帰巣する故郷や家をトレーナーが設定することが出来るのだ(島、組織のアジトなど、ポケセン以外も可能)
 元はある1人のトレーナー能力だったのだが、解析し、わざマシン化・・・
一部が特殊な「テレポート」としておぼえさせ、更に能力を得ることで絆を更に深め不可能と思える場所設定を可能とした
 トレーナーが気絶した時、テレポートをほぼ自動的に発動させるのはその深まった絆が衝動的に起こさせることだ
 

 ジークから逃げるには確かにテレポートしか、戦線離脱しか方法が無い
 しかし、そう甘くない

 「・・・先程接触した敵性ポケモンの波長は記録しているか」

 『はい』

 「追跡しろ」

 『了解しました。すぐに索敵開始します』

 エスパータイプのポケモンにはそれぞれ特徴的な波長があり、同じ種族でもごくごく微細な個体差がある
 ジークはあのネイティオの波長を採取・転送し、それを解析させることで逃げ出した2人を追おうというのだ
 波長の採取にはそういう小型化した機械があり、組織の幹部なら自由に持つことが出来る
 出来そうだが、決してジークの眼力で見破った・・・というものではない

 
 『・・・・・・ジーク様、同一の波長が見つかりません』

 「何だと」
 
 『索敵範囲を拡大していますが、まずカントー・ジョウト地方には存在していません。またネイティオのレベルやこれまでのテレポートデータから、それ以上の遠いところへは飛ぶことが出来ないはずです』

 『採取した波長には間違いはないか』、ジークへの不躾な質問をオペレータは飲み込んだ


 ・・・ジークは察した
 それがイツキの能力だ、ということに

 波長を変える
 それが種族としての範囲を超えないものか、さてはエスパータイプのポケモンならどんなものにでも変えられるのか
 後者なら「見た目はネイティオ、波長はルージュラ」というわけになる
 人の目ではわからないことだが、機械で見ると混乱する
 波長が変わってもエスパー技の威力などは変わらないから、戦闘では役に立たない

 まさに人畜無害のピエロのような、人をおちょくった能力だ・・・


 「運があったな」

 次は切れるかもしれない幸運


 ジークは、ジークと共にアジトへと帰還することにした
 このままでは終わらない
 
 戦場において敵前逃亡・任務失敗は負けではない
 それらをしても、生きていれば勝ちだ
 次があることこそ勝ちならば、死こそ負けだ

 この対流圏と成層圏の狭間の攻防に勝敗は無かった
 それだけが事実だ


 ・・・・・・
 
 
 「二度と会いたくない。戦いたくない」

 それが後日、トウド博士が語ったジークのことだ
 運良くその能力を間近で感じ取り、察し、生き延びた
 それだけで充分すぎた、と言った

 「もう次は無いかもしれない・・・」

 あの能力は広まったところで、皆が知ったところで
 どうすることも出来ない

 ―――最初から、まともな対処が出来ない

 「・・・運が良ければ、生き残れるかもしれないけれど」

 勝つことよりも生き残れるかどうかが先に頭にくる
 ジークの能力は運に左右されない絶対的なものだ
 

 「二度と会いたくない。戦いたくない」

 そう語ったのはトウド博士だけではない
 出会えば誰もがそう思う

 それがジークだ


 あの対流圏と成層圏の狭間の攻防に勝敗は無い
 しかし、確かに勝敗は着いていた






 To be continued・・・


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