7、6月4日


「だめです!!」
・・・・・やっぱりそうくるか、おかあさん。

あたしは、昨日あったことをおかあさんに話して、なんとか、旅に出るのを了解してもらおうかと思ったんだけど・・・・・・
普通、10歳の女の子が 旅に出るのを『はい、そうですか』な〜んて、
ほいほいOKする親なんて、あんまりいないわよね・・・
理由は1つ、『危ないから』の1点張り。
ワニノコを飼う許可だけはもらったところで、1度、あたしは自分の部屋へと戻る。

「どうしようか、ポコちゃん・・・?」
部屋に戻ったあたしは、途方に暮れてベッドにうつ伏せになった。
ふかふかしたお布団に体が沈み、ボーっとしてると、すぐに眠くなる。
横目で見たら、ポコがぺっとりと頭を床へとくっつけていた。
「キュイン?」
「・・・・・ポケモンに聞いても、分かるわけないか。」


でも、あたしは出かけなくちゃ・・・・・
ロケット団がまだいるって、分かった以上、じっとしてなんかいられない。
昨日会ってはっきりしたんだ、あたしがまだ、あいつらに対してトラウマを持ってるってこと。
だったらいっそ、こっちから乗り込んで、今度こそロケット団を消してやる!
3年間、ずっとまとわりついてた気持ちに、決着をつけてやるんだ!

あたしは自分の机の上を見た。
修理したばかりのピンク色のポケモンギア、通称『ポケギア』が乗っている。

(・・港・木の箱・・ポケモン・実験・・・ロケット団・・・・子供・・・)

「行こっ、ポコちゃん。」
あたしは、ポケギアを手に取ると、丸っこいリュックに自分の荷物を詰め始めた。
小さい頃からイタズラばっかりやっていたせいで、台所から食料をくすねるなんてお手のもの。
着替えと、地図と、ちょっとのお金、
初めてトレーナーになった時から、冒険計画なんていっつも頭の中にある。



「いってきまーす!!」
『外に散歩に行く』という名目で、あたしは上着をはおり、家の玄関から飛び出した。
お気に入りの帽子をかぶり、ポケギアを首からぶら下げて・・・

「キュイン!!」
ポコは、2階のあたしの部屋の窓から飛び降りてきた。
「ありがと、上手くいったね、ポコ!!」
そう、さっき詰め込んだ荷物を、ポコに持ってきてもらったのよ。
机の上には、書き置きがしてある。

『ロケット団をたおす旅にでます。』って・・・



「こんにちわ、ウツギ博士!!」
あたしは昨日教えてもらった、ウツギ研究所の扉を叩いた。
一応、軽く叩かないと、扉が壊れちゃうな・・・

「やあ、よく来たね。クリスちゃん!!」
中からウツギ博士が出てきて、あたしのことを歓迎してくれた。
なかへ通されると、山積みになった資料とほこりも あたしのことを出迎える。
「ちょうど今、『ポケモンじいさん』って呼ばれてる人から、メールがきたところなんだ。
 そのことで、君にお使いを頼もうと思っていたところなんだけど、いいかい?」

・・・・・・?
「お使い、ですか?」
「うん、ちょっと、このメールを見てくれるかい?」

『さっき、大発見な物が見つかったのじゃ、 今度こそ、本物ですぞ!!』

ウツギ博士のパソコンのモニターには、そんなメールが打ち出されていた。
「このメールを出した人、『ポケモンじいさん』って言うんだけどさ、いっつもおかしな物を拾ってきては、
 『大発見!!』って騒ぐんだ。 まぁ、いつもたいしたものはないんだけどね。
 ・・・・で、こんなメールが来たから、一応、確認しておこうかとも思うんだけど、
 あいにく、僕も助手も、忙しくってね・・・・」
「それで、あたしが確認しにいく、と・・・?」
「そういうこと、いいかな?」

結論を出すまで、そう時間はかからなかった。
「ま、いっか。 ねっ、ワニクロー!!」
あたしはいつの間にやら後ろにきていたワニノコの頭をなでながら話す。
ウツギ博士が不思議そうな顔をしている。
「ワニクロー?」
「そう、『ワニクロー』!!
 この子のニックネーム、昨日、徹夜で考えたんです!!」


旅に出る、旅に出る。
2匹のパートナーと1人の人間で・・・・・
「いこっか、ワニクロー、ポコ!!」
あたしは、まだ4日しか住んでいないワカバタウンを後にした。

「クリス、ちゃんか。
 あの子が旅したら、いつか、うちの子にも会うのかしら?」
あたしの背中の方から、おばさんは、声援をおくっていたらしい。



<続きを読む>

<目次に戻る>