31、8月18日


「・・・どういうことよ? これ・・・・・・」
その町に入った瞬間、あたしは 自分の眼を疑った。
だって、信じられる? ロケット団が 道の真ん中を 堂々と歩いてるのよ?
・・・・・・まあ、あのヤミカラスみたいな 真っ黒な制服の下っ端ではなく、スーツに『R』のマークの入った
ぱっと見 ロケット団とは分からないような 幹部の連中だったんだけど。



「・・・・・・はあ、ゴールド、誤認情報(ごにんじょうほう) 掴まされちゃったってわけか。
 アサギとここ(チョウジタウン)、全然逆方向じゃない・・・」
軽く ため息1つ吐くと あたしは ロケット団を追跡しようと 歩を早める。

「・・・危ないよ? あの人達、わるーい ロケット団なんだから!!」
突然 肩をつかまれ、あたしは 反射的に戦闘態勢を取った。
振り向くと スーツを着た とび色の長い髪を 頭の上で結った(ゆった)女の人が 腰に手をあて、睨んでいる。
どうも、物腰から察する(さっする)と刑事らしい。
「知らない? あの人達はねぇ、ロケット団っていって、3年前に カントーで犯罪を働いていた 悪い人たちなんだよ。
 お嬢ちゃん、面白半分に追っかけてたら あっという間に捕まっちゃうよ!
 ここは お姉さんに任せて 早く お家に帰りなさい!!」
それだけ言うと女の人は 通りかかった巡査(じゅんさ)に あたしのことを任せ、さっさとどこかに行ってしまった。
さすがに、警察に逆らうわけにもいかず、あたしは ポケモンセンターに とりあえず 行く事にした。


「・・・・・・ふう、どうするかなぁ?」
ポケモンの回復を待つ間、あたしは センターのソファにもたれかけ、これからのことを考える。

・・・やっぱり、まずはブルーさんに会って、今のジョウトの現状を 知ってもらうのが 第一よね。
・・・・・・・・・その後は・・・・・・

「・・・クリスタル?」
背後から 声を掛けられ、あたしは 頭をのけぞらせ、背後を確認した。
かなり驚いたような表情で 赤い髪の少年が 銀色の瞳で あたしのことを のぞきこんでいる。
「シルバー!?」
あたしは体を反転させ、ソファの背に手をかけた。
いきなりいなくなったと思ったら こんな所で再会するとは・・・・・・

「な、何で、こんな所に・・・!?」
「それは こっちのセリフだ!!
 どうして クリスタルが ここまで来ちまってるんだよ!?」
シルバーは 相当怒っているようだった。 眉をひそめ、銀色の瞳で あたしのことを睨みつける。
・・・どうして 怒られなきゃいけないのか、ちょっと理解に苦しむけど・・・

「こっちで ブルーさんが ロケット団の情報を集めてるって聞いたから、教えてもらいに来たのよ。
 ・・・・・・文句あるの?」
あたしは 負けじと シルバーのことを睨み返す。

シルバーは はぁ、と ため息をつくと、つぶやくように質問してきた。
「・・・・・・ゴールドはどうした?」
「アサギシティか、タンバシティよ。 アサギの灯台のポケモンが病気になって、お薬を取るために タンバまで行ったの。
 途中でなんか、事故があったらしくて、最後に連絡した時、病院にいるって言ってたわ。」

シルバーはそれを聞くと 更に 深くため息を吐いた。
口の中で 何かつぶやくと センターの入り口の方を指差す。
「・・・・・・ブルーって奴なら、大体は土産物屋(みやげものや)の近くでうろついてるから・・・
 そいつに会いたいなら、そっち行ってみれば?」
そう言うと、シルバーは 自分のポケモンを受け取り、行ってしまった。
・・・・・・何なんだ? 一体・・・・・・?



あたしは 回復したポケモン達を受け取ると、シルバーが言ったとおり、みやげもの屋街まで 行ってみた。
この田舎町は 観光で人を集めているため、あちこち よそから来た人達で 通りはごった返している。
「はぁ、こんな人ごみの中から 顔もよく知らない人を探すってのは、かなり大変ね・・・」
あたしは半ば ぶつぶつと文句を言いながら ブルーさんの姿を探す。
・・・・・・っと、不意に 人ごみの向こう側がどよめき、あっという間に 人だまりが出来始めていた。

「・・・もしかして、ブルーさんかな?
 ポケモンリーグで成績出してるから ファンがいたっておかしくないし・・・・・・」
あたしは 確認するべく 人だまりの方に向かってみる。
しかし、人だまりの中心を確認する前に あたしは袖(そで)を引っ張られ、人の輪の中から外されていた。
ブルーさん本人が あたしのことを 見つけていたのだ。

「・・・・・・あなた、クリス?」
銀色の瞳で あたしのことをまじまじと見つめながら 長い茶髪の女の人は 質問する。
あたしは うなずいた。
「レッドから クリスの事は聞いたわ。 ロケット団を倒すために 旅をしているんですってね。」
ブルーさんは にこっと笑い、人ごみから逃れるために その場から移動する。


「・・・・・・さて、」
ある程度、人のいない所まで来ると、ブルーさんは足を止め、あたしの方へ向き直った。
「ロケット団を 倒すのはいいのだけれど、それには それ相応の 実力が必要よ。
 とりあえずは、あなたの実力、見せてもらおうかしら?」

そう言うと、ブルーさんは よなきポケモン・ムウマを モンスターボールから取り出した。
・・・・・・バトルの開始ってワケだ。



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