39、8月31日


うわぁ〜・・・・・・しつこいッ!!
世間じゃ、同い年くらいの少年達が たまった宿題を 半泣き状態で片付けているような日に
・・・・・・あたしは、何が悲しゅうて、ロケット団と追いかけっこを やってなきゃならないんだろう?

ロケット団に追いかけられて 早3日。
最初は4〜5人しか見かけなかったロケット団連中、日に日に人数を増していって、今じゃ20人とか30人とか、そんな数になっている。
・・・んで、今、イーブイとタマゴを抱えたまんま、エンジュの街を 走りまわってるってワケ。


「・・・疲れたぁ〜・・・ずいぶん、息、切れちゃってるし・・・・・・
 ていうか、何でこんなにまで 数が増えちゃってるわけ?」
エンジュに古くからあるような『〜重の塔』みたいな 建物の影に隠れ、あたしは一息つく。
途中 買ってきたボトルのお茶を飲み干すと、トゲリンの入ったモンスターボールを 何気なく開いた。
甘えるような 可愛らしい顔が、へとへとになった精神を休めてくれる。 ポケモンって、そういう効果もあるんだろうか?
「・・・・・・ほら、分けて飲みなさい。」
リュックから飲み物を取り出すと 暑そうにしてるトゲリンとイーブイに手渡す。
2匹とも、しっかりしたポケモンだ。 言われたとおり、2つに分担して のどを潤して(うるおして)いた。

「いつまでも、ここに隠れられるわけないよね・・・」
何気なく、ゴールドのまねをして 2匹のポケモンに話しかけてみる。
どう考えたって、ロケット団数十人とあたし独りじゃ、多勢に無勢だ。 勝負は見えきっている。
だからといって、ここでじっとしていても、いずれ、見つかってしまうのがオチだ、ただの建物の影なんだから。
・・・ほら来た。


「トゲリン、イーブイ、行くよ。」
建物の影から姿を現したロケット団を見つけると、あたしはタマゴと すばやく走れないトゲリンを抱え、次の隠れ場所を探し、ひっそりと動き出す。
じゃりじゃりとした 小石を蹴散らす(けちらす)音を気にしながら、ロケット団の姿を確認していると、
いつのまにか、塔を囲うようにロケット団がうろついていることに あたしは気付いてしまった。
・・・・・・追い詰められてるってワケだ。
「この塔の中に 隠れるしかないか・・・運が良ければ、気付かずに通りすぎるかもしれないし・・・・・・」
うろついているロケット団の視線を気にしながら そっと大きな扉を開く。
「いたぞ!!」
・・・・・・結局気付かれた・・・・・・
あたしは 体をビクッと振るわせると、いそいで大きな塔の中へと逃げ込んだ。


一応、扉を閉めるが、どこにも鍵はついていない。 すぐに開かれ、1秒ももたないだろう。
とにかく、ロケット団から少しでも離れられるようにと 近くに見えた階段を駆け上がる。

・・・『だから、おまえのこと、ロケット団に近づけたくなかったんだ!!
 おまえみたいな 中途半端によわっちい奴が ちょろちょろ動きまわってんじゃねーよ!!!』

シルバーの言葉が 頭の中でエコーする。
・・・・・・まったく、その通りなんだ、でも、もう遅いね。


すぐには追って来られないように、塔の中に いくつか仕掛けをして ひたすら上へ上へと階段を駆け上がる。
一体、いくつの階段を上がっただろう。 上がって行くうち、暗いはずの階段の先が 明るくなっているものを 見つけていた。
「・・・・・・屋上? ・・・最上階ってこと?」
この上に上がると、今度こそ本当に 逃げ場がなくなることになる。
それでも、奴らの足音は 確実にこの階に迫り、あたしの逃げ場を 消してゆく。
切れた息を直すように 大きく深呼吸を1つつくと あたしは 最後の階段を駆け上がっていった。



「追いかけっこは ここまでだぜ、お嬢ちゃん?」
むさっくるしい 黒服の集団が 屋根の上へ続々と集まってくる。
あたしでさえ、夏の終わりの日差しに ジリジリと焼かれそうな陽気なのに こいつらはどうして平気でいられるのだろうか?
「こぉ〜んな ちっちゃい女の子1人に こんなにたくさんのストーカーがつくなんて、
 あたしってば人気者ってわけかしら?」
目いっぱいの ハッタリを掛けてみる。
「ふん、こんな色気もねえガキに 用があるわけねぇだろう!!
 俺達が 追っていたのは 嬢ちゃん、あんたが抱えている そのタマゴだよ!!」
あまり、効果はなかったようだ。 ・・・ていうか、むしろ、あたしの方がむかついている。
トゲリンを腕から降ろし、あたしは 戦闘態勢にはいる。

あたし1人対・・・・・・何人いるんだろう? 数えるのも おっくうになるくらいの数のロケット団達。
トゲリンが戦闘態勢に入ると そのロケット団達は 一斉に自分のモンスターボールを開き、ポケモンを繰り出してくる。
「ポコ!! トゲリンの援護(えんご)をお願い!!
 ワニクロー!! 絶対、負けらんないんだからね!!」
あたしはホルダーから さらに2匹のポケモンを繰り出す。 あたしが指示をはじめる前に 既にバトル始まっていた。
なにせ、ルール無用のロケット団どもだ。 1番弱そうに見えているのか、トゲリンにばかり 攻撃が集中している。
「ワニクロー、『みずでっぽう』!!」
トゲリンにたかってくる スリープやらサンドやらを 一気に水で押し流すと 視点をポコへと移す。
「トゲリン『ゆびをふる』だ!!」
トゲリン自身を見ず、ラッタと戦っているポコを見ながら あたしは叫んだ。

1ヶ月前には 全くと言っていいほど出来なかった複数戦。 ・・・あの時より あたしは強くなったんだろうか?

ポコの『サイケこうせん』で アーボックを倒して15匹、ワニクローの『なみのり』で18匹目。
一気に襲いかかってくるロケット団との攻防と 焦がされそうな暑さで 意識がもうろうとしてくる。
・・・・・・クーラーの効いた 涼しい部屋に入りたいな。

『ポコ、『サイケこうせん』!!』
21匹(だと思う、あまり数えてないから・・・)のロケット団のポケモンを仕留めたとき、トゲリンの『ゆびをふる』が 発動し始めた。
マンキーの『からてチョップ』を受けそうになっているポコと コラッタを倒したばかりのワニクローを一旦ボールに戻し、
イーブイを腕に抱える。 何が起こるか、わからないもんね。
「いけっ!! 『ゆびをふる』攻撃!!」
あたしが叫んだのと同時に トゲリンの体は 塔の外へと吹っ飛ばされかけていた。
慌てて引き戻そうと 足を掴むが、予想以上の強い力に あたしもろとも トゲリンの体は吹き飛ばされる。

・・・・・・・・・『また』だ。

地面ははるか下、飛行ポケモンは無し。
そして、あたし達は 9階建ての 建築物の屋上から ものの見事に落下していった。

40、『そらをとぶ』


『そらをとぶ』が使えれば・・・・・・何度、そう思ったことだろう。
高い所から落っこちるのなんて、これで3回目。 その度に、何度死ぬ思いをしたことか・・・・・・
「・・・まさか、3回もスイクンが来るなんてこと、ないよね・・・」

・・・・・・怖い。
初めて ロケット団を見たときみたいに 足が動かない。

「うわああぁぁぁッ!!」
なにも言うことが出来なくなって、あたしは ただ叫んでいた。
砂利ばかりが敷き詰められた地面が ぐんぐんと迫る。



「・・・・・・死んだな。」
塔の屋上で トゲリンとあたしをふっ飛ばした犯人は にやついた顔で つぶやく。
「ハギ様、しかし、タマゴも一緒に下に落ちてしまいましたが・・・」
「放っておけば良かろう。 我等の目的は 小金稼ぎではないであろう?
 我等の使命は もっと大きなところにあるのじゃ。 たかが小娘1人に振り回されておってどうする!!」

「・・・・・・なにが『たかが小娘』よ!!
 その小娘に ハギ、あんた負けてたじゃないの!!」
あたしが怒鳴ると ロケット団の連中は 一斉にあたしの方へと顔を向ける。

相変わらず 足の感覚がないままで 空を飛んでいる、結構変な感覚だ。
もちろん、幽霊なんかじゃないわよ?
地面に落ちる直前、トゲリンの『ゆびをふる』で 偶然『そらをとぶ』が発動したの。
強力なエネルギーは 空を飛ぶための翼を作り出し、トレーナーのあたしにまで 効果が及んでいる。 背中に翼が生え、ちょっと天使になった気分。


「グレン!! 『りゅうのいかり』を お見舞いしてやれ!!」
モンスターボールから 赤いギャラドスを繰り出し、強力な攻撃で相手を圧倒する。
「ひるむのではない!! 全員で応戦するのじゃ!!」
ロケット団の連中は すべてのポケモンで『りゅうのいかり』に 対抗してきた。
エネルギーとエネルギーがぶつかり合い、その場に 大爆発が巻き起こる。
「スリーパー、『サイコキネシス』じゃ!!」
辺りにもうもうと巻き起こる煙を振り払うかのように ハギが攻撃を指示する。
しかし、見事なまでに『サイコキネシス』は 空振りに終わっていた。
・・・・・・・・・だって・・・・・・


「ありがとね、トゲリン。 ホンット、助かった!!
 ・・・・・・なんだか、進化しちゃったみたいだけど。」
以前の3倍くらいまで大きくなり、翼の生えた体を手に入れたトゲリンを あたしは優しく撫でながら走っていた。
そう、攻撃のドサクサにまぎれて あたし達は戦闘から脱出したのだ。
それも、一時のことだと思うけど。 すぐに ロケット団が 追いかけてくるに違いない。



あたしは ポケモンセンターに とりあえず駆け込んだ。 ポケモンの回復をしたら、すぐに他の場所へ行くつもりで。
「・・・お願いします。」
あたしは イーブイ以外のポケモンを センターに預けた。
「いつ、応援が来るのかなぁ・・・」
途方もない不安が 背後から襲いかかってくる。 いつ、ロケット団が来るか、全く予想がつかないのだ。

「・・・なあ なあ、あんさん。 もしかしてクリスちゃんと ちゃいまっか?」
後ろから肩を叩かれて あたしは驚き、戦闘態勢をとる。
イーブイが前に飛び出し、いつでも飛びかかれるような姿勢で 話しかけてきた人間を威嚇する。
「あー、すまん。 驚かせてしもたなぁ・・・
 レッド達から連絡があってな、なんとなく、声かけてみたんやけど・・・・・・」
関西弁の男は どこかで見たことのある男だった。
茶色い縮れ毛を ボリボリとかき、ポロシャツの袖を まくりあげている。

「・・・・・・あれ、もしかして、ポケモンエンジニアの マサキ・・・さん?」
『ポケモンジャーナル』で読んだことがある。 ポケモン転送装置を開発した マサキ・ソネザキ氏。
「せや。 今日は『ポケモン時間転移システム』を 完成させるために こっちきたんや。
 さっき、システムの最終調整が終わったんやで、明日から使えるわ。」
マサキは 得意満面の笑顔でシステムを説明する。
・・・・・・こっちは それどころじゃないってのに・・・・・・
「・・・でな、昔に知られてなかった技は 使えへんねや。 タイムパラドックスが起こって パソコンがパンクしよるからな。
 ほいで・・・・・・」

マサキの話もそこそこに あたしは センターの2階へと駆け上がった。
背筋に 凍りつくような寒気が走る。 ・・・ロケット団 独特の気配だ。
「・・・な、なんやなんや? えろう 怖い顔しよって・・・
 システムは明日からやって、さっき・・・」
「しっ!!」
窓の外で どよめきが起こる。
ロケット団の集団は どこをどうやってかぎつけたのか、あちこちの店に押し入りながら どんどんセンターの方まで迫ってきた。
「な、なんや!? あれ、もしかしてロケット団ちゃいまっか!?」
窓のそとを見て仰天しているマサキを無視し、あたしは イーブイのほうを見つめていた。
ポケモン達は 1階で回復中。 ・・・かといって、下に降りたら あっという間にロケット団に見つかるのがオチだろう。
・・・・・・八方ふさがり・・・か。 絶望感に襲われる。


「・・・フイィ?」
抱えているタマゴが大きく動き、母親イーブイがのぞき込む。
「ゴメン・・・ゴメンね。
 あんた達を 無事に帰してやりたかったけど・・・・・・あたし、何にもできない・・・」
雨も降っていないのに タマゴに 水滴がポタポタと落ちる。 ひとかけづつ、ゆっくりとタマゴの殻が 割れていくのがよく見えた。

・・・・・・だめだ。 泣いてちゃ、だめだ。

部屋のすみに タマゴを置き、母親イーブイに そのタマゴを任せる。
部屋の中を見渡すと、さっき、マサキが言っていた『ポケモン時間転移装置』とやらが 目に入った。
「・・・ちょっ・・・!! 何やってるんや!? いきなり転送装置を起動させたりして・・・」
マサキがあたしの腕を引き、行動の意味を 聞き出そうとしている。
「イーブイ3匹を 過去へ転送させる!!
 あの子達は ロケット団に狙われているの、守りきるには こうするしかない!!」
「な、なんやて!?」
パニックを起こしているマサキをよそに 着実に作業を進める。
もともと 初心者でも簡単に 操作出来るように作られたシステムだ、あたしが動かすくらいは わけなく出来る。

振り向くと、ちょうど2匹のイーブイが タマゴから 孵って(かえって)いるところだった。
ロケット団の足音を聞きつけ、急いで母親と一緒に 3匹のイーブイを 装置の中へと押しこんだ。
「フイィ?」
母親イーブイが 驚いた表情で あたしの瞳を見つめる。

「・・・あんた達を、これから過去へ転送する。 ごめん、これしか方法が思い浮かばないんだ。
 でもさ、生きてりゃ、絶対、また会えるから・・・あたし達、きっと、また会えるから!!
 だから、さよならなんて、あたし言わないからねッ!!!」
イーブイの目を見ないようにしながら 一気に扉を閉める。
・・・迷ってたら、悲しくなる。
そのまま 躊躇(ちゅうちょ)することなく タイムカプセルのボタンを押した。



「見つけたぞ、てこずらせやがって!!」
乱暴な言葉を吐きながら ポケモンセンターの扉を ロケット団が乱暴に開く。
とりあえず、1人目は あたしの馬鹿力で 殴り飛ばしてやった。
「・・・・・・ん? お前の持っていたタマゴはどうした?」
「逃がしたのよ。 あんた達の 手の届かない場所にね・・・・・・」
手から血が出そうになるくらい、力強く 握りこぶしを締める。
こうなりゃ、もうタダでは やられてやんないんだから!! 出来るだけ、ロケット団をぶっ飛ばしてやる!!

「・・・サン、『サイコキネシス』!!」

少年の声が響くと、その場にいたロケット団の連中は 一気に全員、倒れて行った。
いくつか 気絶したロケット団達を踏み越えながら 1匹のエーフィが あたしの方に走ってきて、飛びつく。

「よっ!!」

赤い服に 赤い帽子。
遅すぎるくらいの救援だったけど、嬉しさで あたしは涙を ボロボロこぼしていた。

41、3分間の分かれ、3年越しの再会


レッドのエーフィは あたしがこぼした涙を 優しくなめとっていてくれた。
ざらざらした舌の感触が ちょっとだけくすぐったい。
「怖い思いさせちゃって、ごめんな。
 あんまり早く 助けられなかったんだ、クリスの側に サンがいたからさ。」

「・・・・・・・・・へ?」
一体、レッドは何を言っているのだろう? 訳が分からず、あたしはレッドを 涙でにじんだ瞳で見つめる。
「マサキ、そのシステム、転送先がどこになったか 調べられるか?」
「あ、ああ・・・・・・一応、どこ行ったか分からんと、不安やと思って・・・
 えーと、今のイーブイは・・・と、」
みるみるうちに マサキの表情は 驚きへと変わっていった。
眉間(みけん)にしわを寄せて レッドの方を見つめる。


「・・・・・・3年前の・・・わいの家や。
 これ、どういうことや? レッド・・・・・・」
「見たまんまのことだよ。 ・・・災難続きだったよなぁ〜、サンにとっては!!
 訳のわかんねぇうちに マサキと合体しちまうわ、オレみたいなトレーナーの下で働くことになるわ・・・」
冗談を言っているのかと思うくらい、レッドは軽く話している。
しかし、あたしの腕の中にいる『サン』は 確かに、あの母親イーブイと 周りを包む空気みたいなものが そっくりだった。
「もしかして、この子、あの お母さんイーブイってこと?」
率直(そっちょく)に 思ったことだけを口に出してみる。
「そう言うこと!
 ・・・・・・悪かったな、ホントは 最初から気付いてたんだけどさ、
 あの母親が転送されないと、サンがいなくなっちまうって、ブルーが言ってたもんだから・・・・・・」

・・・なんだか、ほっとした。
もう、あの母親は『小さい』なんて言えないくらい 大きな体に進化してしまっているし、タイプだって、全く別。
だけど、ちゃんとこうして また会えたわけなんだから・・・・・・

「・・・そうだ!! あの2匹の イーブイの方は!?」
急に頭を上げたもんだから 脳天が レッドのあごに激突してしまった。
その場に巻き起こった 一瞬のパニックと 笑いの後、痛んでいるであろう あごを左手で押さえながら レッドは話し出す。
「そいつらなんだけどな、あの時、『転送装置』に 誤作動が起こって、大爆発と一緒に どっか、行っちまったんだよ。
 死体があがったわけでもないから、多分、どっか別のところに転送されたんだと思うけど・・・」
「・・・そっか。」

ちょっと落ち込み気味なあたしの頭を レッドは軽く叩いてくれた。
「大丈夫だって!!
 こうして ちゃんとサンにも会えたわけなんだしさ!! 絶対、また会えるって!!」
「うん。」
母親イーブイ・・・いや、優しいエーフィ、サンの顔を もう一度見つめなおすと あたしは涙を拭(ふ)いて 立ち上がった。



顔を洗い、センターに預けていたポケモン達を受け取ると また、ロケット団征伐(せいばつ)のために
あたしは 足に力を込めて 歩き出した。

「・・・・・・あーッ!! クリスッ!!
 こんなところにいたぁ!!」
・・・相変わらずの 幼児のような喋り方(しゃべりかた)、甲高い(かんだかい)声。
ガラス張りのゲートをくぐり抜けると ゴールドとシルバーが最初に出会ったときのように あたしの目の前に現われていた。

少しだけ違うのは ゴールドとシルバーの連れているポケモン。
ゴールドはレッドの『サン』と 同じ種類のポケモン、額(ひたい)に 赤い宝石のような物がつき、尻尾が先の方で二股に分かれている
夜雪のように真っ白なエーフィ。 それに、肩にピカチュウを連れている。
シルバーはというと、身長は1メートル前後、
全身まっくろで 額(ひたい)と尻尾、それに4本の足に 蛍光イエローのわっか模様の入った スマートなポケモン。
図鑑で調べたら『ブラッキー』という種類のポケモンだった。

「・・・・・・なんか、ずいぶんと メンバーが入れ替わってるわね。」
「へっ?
 あ、違うよ、この子、ホワイト!! 進化したんだ!! こっちのピカチュウはディア。
 それで、あっちのシルバーのブラッキーは ブラックが進化しただけだから・・・」
・・・ふーん、なるほど、ゴールド達も しっかりポケモン育ててるってワケだ。

「それよりもね、大変なんだ!! ラジオがおかしくなっちゃって、変だな〜ってしてたら、ロケット団が・・・」
「ちょっと黙ってろ、ゴールド。
 ・・・ラジオ塔が ロケット団に占拠されてる。
 やつら、あそこでポケモンがおかしくなるような電波を ジョウト全域に流すつもりらしい。
 止めるには人手が足りないんだ。 クリスタル、手伝え。」
ゴールドの支離滅裂(しりめつれつ)な言葉を シルバーが訳してくれた。

「・・・・・・『中途半端によわっちい奴』は 要(い)らないんじゃなかったの?」
ちょっとだけ、意地悪してみる。
「・・・とにかく人手が足りないんだ。
 それに、ブルー・・・姉さんに聞いたら、おまえ、結構 強いらしいからさ。」
ちょっと照れたように ほおをかきながら シルバーはそっぽを向いた。
あたしは一言、「いいよ。」とだけ言うと、リュックを背負いなおして コガネシティへと向かって歩き出す。

「ほら!! さっさと歩け!!
 このままだと、今夜、野宿になっちまうぞ!!」
シルバーが 全員に発破をかける。


あたしは ちょっとだけ笑ってた。
こんな危険がいっぱいの旅なのに、始めた時より、ちょっとだけ・・・・・・



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