64、10月21日
「・・・・・・よおしっ、今日から あんたの名前は『オズ』、オズよ!!」
「キュウッ!!」
あたしが 名前を呼ぶと、ミニリュウの『オズ』は嬉しそうに尻尾を振った。
長老から渡されたボールの中のポケモンは 大きい体のクセして なかなかに可愛い奴だ。
そんなこんなで、これまた新人さんのみぞれと一緒にセンターの外でじゃれていると、ゴールドが壁の向こうから 顔をのぞかせた。
「・・・あ、そうだ、ゴールド、この鈴、振ってみてくれない?」
顔が見えたついでに あたしは首についていたリボンを外し、ガラス球のような錫を ゴールドに手渡した。
ゴールドは オーロラ色のリボンににくっ付いた鈴を じっと見つめ、あたしに向かって笑いかける。
「どうして?」
「・・・どうしてって・・・あの長老、この鈴を あたしに振ってみろって言ったでしょう?
だから、もしかしたら 別の人が振ったら、違う音がしたりするのかな〜・・・とか思って。」
ゴールドは それを聞くと きょとんと罪のない顔でこちらを見つめ、手に持った鈴を 優しく振って見せた。
驚くくらいに『とうめいなスズ』は きれいな音を出し、あたしはしばし、その音に聞き惚れる。
・・・・・・・・・少し くやしかった。
何をやっても ゴールドにはかなわない、そんな気がして・・・
「ありがと、その鈴、ゴールドにあげるよ。」
「へ?」
ポッポが豆鉄砲食らったような顔・・・と、いうか・・・きょとんとした顔で ゴールドは一瞬固まった。
しばし もっている鈴とあたしの顔を 代わる代わる見比べた後、急に早口で喋りだす。
「だめだよ、そんなのっ!! だって、もともとこの鈴、クリスがもらった物なんでしょう?
それに大事な物だったら、クリスが持ってなきゃ!!」
・・・まただ、また変なことを言い出している。
「それが『大事な物』だって、いつ、誰が決めたってのよ?
別にいいじゃないの、殺人予告をもらったわけじゃないんだから・・・
あたしよりゴールドの方が ずっときれいな音を出せるんだから、それは ゴールドが持っててよ。」
ゴールドは押し黙って少し考え込むと、ポケットの中から 何かを取りだし、あたしの手の中に押し込んだ。
「だったら、これ、クリスが持っててよ。 そうすれば同じになるから。」
あたしの手の中には 光の加減で様々に色の変わる 小さな、綺麗な 虹色の羽が収められていた。
どうも、『同じになる』と言っていた意味が引っかかるが、あたしは黙ってそれを受け取る。
「空に虹を架ける、伝説のポケモンの羽だよ。」
ゴールドはそう言うと、1日遅れの旅支度をするために ポケモンセンターの中へと戻っていった。
また、おかしな事を言い出している。
今度は『虹を架ける伝説のポケモン』、・・・まてよ、どこかでこのフレーズ、聞いたことあったような・・・
「・・・『虹を架けるもの』?」
・・・・・・まさか、ゴールドには そのこと話してないし・・・
きっと、気のせいだろう。
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