第二十七話 帰還
ヒュゥゥゥゥゥゥ…
真冬を思わせる風が、シンの顔に触れる
ここは、ホズミ辺境の草原の上空
数十メートル上空を、羽を羽ばたかせ、神秘的な状景を眺めながら飛んでいる
しかし、シンはそんなものを眺める余裕は無いようで
「師匠ォ!腕に力が入りません!落ちます!!」
師匠の腰に巻いた腕を震わせながら言う
ただでさえ冷たい突風に加え、両腕の怪我
シンの腕は限界を迎えていた
「じゃあ…落としましょうか?ここから風に乗れば結構の距離をいけるはずです。落ちてからは…工夫してください」
師匠は振り向き、笑顔で答える
師匠の場合、冗談じゃすまない
念のため…と、思いっきり抱きつく
ほかの人から見れば、恋人のようにも見えるその様子
本人は必死なのだ
・・・・・・・・
「着いたわよ」
少し朝焼けが見えたそのころやっとほぼ真下あたりに町が見える
オレンジ色の朝焼けの中、ボーマンダはゆっくり旋回する
明るい光が目にまぶしい
「スゥ…スゥ…」
シンはすでに師匠に寄り添うようにして深い眠りについていた
やはり何時間も歩き続け、ポケモン相手に逃走用の道具だけで応戦
疲れるのも当たり前だ
「ハァ…」
師匠は、ミキが寝てしまったときのシンと、同じような顔をした
「降りましょうゴラド。ポケモンセンターの近くに」
バサァァ…
ボーマンダは地面に着陸する
そのときのホズミシティは、朝焼けにより、明るく照らされていた
「途中で寝た罰でも与えましょうか…どうなるか楽しみです」
師匠はシンを負ぶって、中に入っていった
第二十八話に続く…
戻る