「そっか…そんなことが…」
「あぁ…お前に何も無くてよかったよ…」
そんな話をして…
第六十五話 出航!!
「はい…師匠。ご心配をおかけしました…はい、気をつけます…それは…はい…すみません…えっと…明日には行けると思います…はい…よろしくお願いします。では…」
シンがポケギアを切る
「どうだった?」
後ろで待っていたミキが聞く
「今シデが、コンテストやってるって。俺らも早く行って、連絡入れないと…今朝から出発して、夕方には着くからな」
ここはトキシティの船場
海に面していないため、大河を船で渡って、ノースタウンで停泊
そして、海にでる船が出港するところだ
ノースタウンで降りて、そのまま移動する人もいれば、そのまま海に出る人もいる
「それにしてもすごい人ねぇ…」
ミキが後ろを眺めながら言う
後ろにはたくさんの人だかり
まるで、遊園地の人気アトラクションのような、それぐらい並んでいる
対して、前方には誰もいない
いると知れば警備員だけ、つまり最前列だ
「早く起きた甲斐(かい)があったよ〜」
「叩き起こされた奴が言う言葉じゃねぇだろが」
数時間前―
ピピピピピピ…
高い電子音が鳴る
バシッ!っとシンが目覚まし時計を叩き止める
「んあ…四時…オッケィ…」
シンが眠い目をこすりながら起き上がり、カーテンを開ける
「あ・・・意味ないか…」
もちろんまだ日は昇っていない
しかし、真っ暗な世界に慣れた目は、そのわずかな光でシンは完全に目を覚ます
・・・・・・・・・・
「準備…ヨシ!」
シンの数年の旅の勘で、おそらく必要と思われるものをバッグに詰める
そして、クルッと振り返ると…
「うぅん…」
スヤスヤと眠るミキが
起きる様子は全くない
「お〜い…起きろぉ〜」
ゆさゆさとミキを揺する
「ん…」
少しずつ眠気が落ちてきたようだ
「何時ぃ〜?」
布団に入りながら聞く
「四時…過ぎ」
シンがポケギアを確認しながら言った
「早いぃ〜まだ寝るぅ…」
「並ぶぞ、あそこは」
「別に…良い…」
「はぁ…」
シンはため息をつき、顔に手を当てながら何かを考えているようだ
そして、ふと思いついたような顔をして
「起きないと悪戯するよ?」
布団を少し外し、ミキの顔を出させる
「ん…」
ミキが少し目を開けるが、目の前にあるシンの顔を見ると、また目を閉じた
「はぁ…」
そういうと、ミキの顔に、皮膚独特の暖かさが伝わる
そして、ミキの唇に何かが触れた
「ッ!!!!!!」
ミキが飛び起きる
唇には…シンの指
「起きてるじゃねぇか…急げよ…あと…五分」
時計を見てそういうと、いすに腰掛けた
「ハァ…ハァ…」
ミキは目を大きく開いて、息を荒くしていた
そして今に至る
「でも…あんな起こし方しなくても良いのに…」
「…師匠から教わった…俺も初めてやられたときは心臓が飛び出るかと思った」
「クリアさんが…」
そういい終わる前に、スピーカーの大きな声が響く
『これより!入船審査を行います。急がず慌てず、迅速に行いたいので、協力のほどお願いいたします!!』
第六十六話へ続く…
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