カチッ…


バガァァァァァン…

クリアが押したスイッチにより、目の前の壁は無残な残骸と化した
「みんな…頼むわよ…」
クリアはそう言うと、腰のモンスターボールに手を伸ばし、奥に進んでいった


第七十七話 クリアの巻



コツ…コツ…

耳に足音のみが妙に響く
それもそのはずここはAのいる部屋への最短ルート
この前捕らえたDからこの道を聞き出したのだ
耳を澄ませば、低い警報音が響いてくる
その中には爆音も聞こえる
おそらくもう戦闘が始まっているのだろう
Dのいっていた通り、入ってすぐに広間へ出た
そして、予想通り『A』がボールを構えて待っていた
「これはこれはクリア殿…ごきげんよう…」
Aはそう言ってボールを上空に放った
中からは『ルギア』が
「やはり…それを…」
クリアが怒りに満ちたような口調で言う
「もちろん…まぁ、子供から私好みに育てるのは苦労しましたが…」
そのルギアは少し変形している
その形はシンが以前、試練で見たものに似ていた
そのルギアは黒いオーラを放っていた
「子供にまで手を出すとは…問答無用!!」
クリアはそう叫ぶと、ボールを投げた
「テトラ!行きなさい!!」
出てきたポケモンは、おそらくクリアの持つポケモンの中でも最強格といわれる『サンドパン』
「まぁまぁ…お気を立たせず…」
Aがまるで赤子をあやすように言う


キィィィィィィ…


Aの右手が黒く光り、それに照らされた場所は漆黒に染まった
その輝きに照らされて、ルギアのオーラが力を増す
もうすでにルギアは狂乱状態
心の中はすでに破壊衝動に満たされているだろう
「救えない人ですね…」
クリアがそう呟くと


キィィィィィィィ…


クリアの右手は、エメラルドグリーンのように澄んだ輝きを発した
澄んだ色だが、光は強い
その光に照らされ、テトラは雄叫び(おたけび)をあげた
「行きますよ…神速!!」


・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・


「ダークブラスト!!」

ドゴォォォォォン…

ルギアの繰り出す技により、またアジトに大穴が開く
元から強大すぎる威力を持ち、ルギアでさえ使用を控えたといわれるエアロブラスト
そのルギアはダークポケモンと化し、いまやそれを上回る最強の技をテトラに繰り出す
「相手は…『超・飛』ですか…やむを得ませんね…レベルツー!!」
飛行タイプに『岩・地』は不利すぎる
そう判断したクリアは作戦を移した
「(『レベルスリー』に慣れるまでの数分…レベルツーで耐え切らないと…)」
レベルツーの掛け声とともに、テトラは突風に包まれた
「飛行タイプで威力を和らげる…か。だがそれに意味は無し!!」
その間もルギアの猛攻は続く
テトラを包む風の盾も、もう崩壊を始めている
が、その直後

「テトラ!レベルスリー!!」
風の盾が破られた直後だった
その瞬間白金に輝く球体が、テトラを覆い、ダークブラストから身を守った
その球体は、突如溶け出して、液体となった
が、形は球体を保っている


バアァァァン…


破裂音とともに、液体が飛び散った
それは鉄製のアジトの床や天井、壁に付着し、その鉄を溶かし、容積を広め、またテトラの元に戻っていった

バァァァァン…

それの繰り返し
アジトの鉄板は次々と消滅し、テトラに取りこまれていった
その球体は、すでに人の丈を越えている
「ダークブラスト!!」
Aが指示を出し、黒い塊が、テトラを襲う

ギィィィン…

突如鉄球がテトラの前に広がり、分厚い壁となってテトラを守った



それから数分
アジトは原型をとどめていなかった
もうすでに二人のトレーナーの足場を除いて、十数メートル以内は、すでに取り込まれていた
「もうそろそろです…取り込みなさい」
吸収をやめた鉄は、いくつかの触手を形成し、ルギアを捕らえようと襲い掛かった


グオオオオォォォ!!!


ルギアが雄叫びをあげて指示が出されていないダークブラストを触手に連射する
数分はバキィ…と音をたてて折れたがすぐに別の触手を形成し、襲い掛かった
そして、それをうまくかわした数本は、ルギアにまとわりつき、行動を制限した
それを大量の触手が加勢し、完全に取り込まれた

「硬化」

クリアがそう言うと、さっきまで液状だった鉄が突如固体になった
ルギアはその大量の鉄の重さに耐え切れず墜落した
その後、墜落した鉄球から少量の鉄が再び溶け出し、テトラの指に集まった
それは鋭い爪状のものを形成し、固まった

「アイアンクロー!!」

その声とともにテトラはルギアに襲い掛かった
テトラの爪は纏わり(まとわり)つく鉄に風穴を開け、ルギアに強大なダメージを与えた


第七十八話へ続く…
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予告…次回でゴット団編完結!
勝利したクリア
そしてシンの運命やいかに…
その結末は神のみぞ知る!(カニの味噌汁?)