ドゴォォォォォン…
メタグロスは轟音を立てて崩れ落ちた
その『バロム』はピクリとも動かなかった
第七十九話 終焉の地
Bの右手の光が急速に弱まった
そして、完全に負けたことを確認して
「・・・・・・負けたよ…」
そう言った
シンの横には、横になってうめいているイシスが
「痛いか?」
『ハ…鋼タイプのポケモンは…初めてなので…痛い…』
鋼鉄の体を持つメタグロスを素手で思いっきり殴打し、赤くはれ上がっている右手を押さえながらイシスが言う
「そうか…ご苦労さん」
シンはそう言うと、イシスをボールに戻した
コツ・・・コツ・・・
シンが静かにビルドに歩み寄る
そして、右手を上げた
おそらくB(以下ビルド)は胸倉をつかまれると思ったのであろう
が、シンはポンッとビルドの方に手を置いた
「ナイスバトルだ…ビルド」
「・・・・・・・・・」
ビルドは何も言えなかった
「バロム…ダークポケモンにしなかったんだろ?」
「・・・・・・・・・」
「お前…」
「・・・・・・?」
「ゴット団に入って何ヶ月だ…?」
「・・・・・・二ヶ月…」
「ならいい」
シンはそう言って懐から紙とペンを取り出した
「ここに名前書け。あとはこっちでどうにかする」
「?」
その紙には
〜執行猶予状〜
以下の条件に当てはまる罪人は、一年の執行猶予(しっこうゆうよ)を政府関係者の承諾を入れて認める
・犯罪後、百日以内
・殺人履歴がない
・上司の命令によって動いていた
以上
署名 許可者______
犯罪者______
』
「…後はこっちでどうにかするから」
シンはそう言った
ビルドの目からポロポロと、涙が流れ落ちているのが見える
が―
ゴゴゴゴゴゴ…
アジトが崩れ始めていた
各地で繰り広げられていた激戦のせいで、各地で大穴が開きすぎたためだ
再びアジトが自壊を始める
「逃げるんだ!シン!!」
ビルドがシンの腕を掴んで(つかんで)駆け出した
ガァン…
…ゴォン…
屋根が落ちてくる
シンはポケギアで『退避命令』を出した
シンがポケギアの電源を落とすと―
ガッ!
注意してなかった背後から破片が落ち、シンの後頭部に直撃し、シンは倒れた
さらに上から巨大な天井の残骸が落ちてきた
「危ない!!」
シンは目を覚ました
気付くと、横には残骸の下敷きになっているビルドが
「ビルド…!?ビルドォ!!」
「あ…う…」
見ると、血もかなり出ている
「シン…」
「何だ…?」
息も絶え絶えにビルドが言った
「ここは…襲撃にあって二十分後…つまりそろそろだが、自爆するようになっている…早く…そこの棒を渡って行け…一番下にいける」
ビルドが血で濡れ、震える左手で外に出て少しのところにある棒を指差す
「でも…お前」
「俺は良いから…!…早く行け…!」
ビルドが今出せる精一杯の声でシンに言う
「行ける訳ねぇだろがぁ!!バロム借りるぞ!」
シンがそう言うと、運良くつぶれなかったボールを取り出し、下に転がした
バロムは体を震わしながらも起き上がり、残骸を退けようとした
『・・・・ッ!!』
ビルドの耳に何かが聞こえた
『爆破まで…あと三十秒!!』
そのスピーカーから響く声は、シンの耳には届いてなかった
「っ!シン…!!」
ビルドがシンに呼びかける
「…なんだ?」
残骸をどけながらビルドに言う
大半を退けられたが、まだ時間がかかりそうだ
「バロムを…!!頼むぞ…!」
「はッ…!まさか…」
シンが何かに気付いたように作業を止める
「シン…!がんばれよ…!!バロム…テレポート!!!!」
「――――――ッ!!!」
シンは何かを言おうとした
が、それはビルドに届かなかった
『残り…ゼロ秒…みなさんさようなら…』
その声が耳に響いた
ドゴォォォォォォォォォン!!!!!
アジトの各地から爆発が起こる
それは、最上階からも起こった
「ビルドォォォォォォ!!!!!!」
その後、シンは何とか自分の足で集合する場所へと移動した
その目からは、涙が出ていた
「遅い!!」
ゴールドから怒鳴りを受ける
シンは、その言葉を聞くと、膝を落とした
「ビルドが…ビルドが…!!」
シンはこぶしを何度も足元に打ち付ける
すると―
「その『ビルド』ってお馬鹿さんはこの人かしら…?」
シンは振り返った
そこには、全身黒こげでビルドを担いで歩いてきたクリアの姿があった
「ありがと…う…ござい…ます…師匠…」
血だらけのビルドが言った
「弟子二人そろって世話かかせて…大変だわ…さぁ…病院にいくわよ」
シンの顔に、笑顔が戻った―
第八十話へ続く
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第二次政神戦争―
―終結―