「負け…た…?」
勝ち誇るように立っていたのは、カメックスだった


第八十六話 ワン・モア


ミキは地面にひざを落とした
目の前にいるカメックスの甲羅には金属光沢が見られ、その硬さを物語っている
その甲羅に思いっきり突進していったナミのダメージも相当のものだったに違いない

「私のカメックスのレベルツーは鋼タイプです。ノーマルタイプでは碌(ろく)なダメージも与えられませんよ」
シグレ博士はそういったあと最後に
「私の勝ちです」
そういって鉄部分の剥がれ落ちたカメックスをボールに戻す


最後だったのに…


そんな考えばかりが頭をよぎる


    まだ勝負は着いていない!!


そうとも言えただろう
ナミはまだ体を震わせている
戦えない状態ではない
が、このままでは命にもかかわる
あのカメックスは絶対に私達より強い

『勝ち目はない―』

そう思った

そしてミキは大きく息を吸い

「ありがとうございました!!」

そう言い、ナミをボールに戻し、ポケモンセンターへと走っていった





「…大丈夫ですよ。結構ダメージが浅かったので、明日の朝には治ってますよ」
「ありがとうございます」
ミキはぺこりと頭を下ろした
「本当はまだ続けれたんだけど、相手がシグレさんだからね…再起不能になるところだったよ」
「そうですか…」
医者は簡単にカルテを見せたあと、
「じゃあまた明日取りに来てくださいね〜」
「はい」
ミキはそういって部屋を出た


「おう。いきなり駆け出したかと思ったらこんなところに来てたか…」
「シン・・・?」
そうだ…忘れてた…
「外で待ってたの…?」
呆け顔で訊く
「あぁ。お前しか出さないようなデカイ声が聞こえたんで終わったのかな?と思ったら俺に目もくれず走っていって…」
「あう…ゴメン…」
そう言うと、また走っていった
シンの横をミキが走り去るとき、ミキの目元に白く光る何かが見えた
「・・・・・・・・良し・・・」
シンは少し考えたあと、歩いてミキを追った




ここはトキシティの港
「・・・・・いた・・・」
シンがやっとミキを見つけた
さすがに歩きで追いかけてもだめか
そう思いながら遠くからそっと見てみる


「うっ…うっ…」
ミキは泣いていた
足に顔をうずめるようにして座っている
「・・・・・・・・」
シンは無言で近づいていった
コッソリ近づくつもりだったが、最後に足音を立ててしまい
「シン・・・・?あっ・・・」
ミキが急いで肩で涙を拭く
が、またぽろぽろと流れ落ちてくる
ミキはすぐに後ろを向いた
「ごめんなさい…」
ミキはそう言うと走り去ろうとした
顔から涙が流れ落ちているのが見える
シンはすぐに腕を掴んで、紙を握らせた
「・・・・・・?」
ミキがシンに背を向けながら紙を見る


『最後のジム戦ご苦労
 簡潔に…
 明日八時、自分の持つポケモンを最高の状態にしてバトル場に来い
 推薦参加を賭けた勝負をしてやる
 お前の八匹のポケモンで俺のセトに勝ってみろ
              シン             』


「・・・・・・えっ!?」
何で!?
そう思って振り返った
そこにはシンの姿はなかった


「・・・・・・明日・・・八時・・・」
ミキは紙をグシャッと握りつぶすと、さっきまでシンのいた場所をジッと見つめ
「上等だ・・・!!」
そう言うと、ミキは涙をぬぐうと、その場を走り去っていった






〜〜〜〜翌日〜〜〜〜

「おっそいよ」
「早いな…」
先にバトル場に来ていたのはミキだった
それから来たのはシン
ちなみに今は八時前
「早めに来てびっくりさせようと思ったんだけどな…だめか…」
シンはそう言うと腰に手を伸ばし、ボールを取り出した
「行け。セト」
中からはセトが出た
が、いつも出しているような殺気に近いものは無い
「来いよ」
シンはそう言うとセトを前に行かせた
「・・・・・・・・・・シケ!!」
そう言うとミキもボールを投げた
中からはシケと呼ばれたアメモースが姿を現す
「!・・・・・ほう・・・」
アメモースの出現に驚きながらセトに指示を出した
「・・・スカイアッパー!!」
その直後セトの姿は消え、アメモースの懐にいた



第八十七話へ続く・・・
戻る