パシッ・・・

シンが音を立てて額を叩く
そしてため息を入れてから
「負けた・・・」


第八十八話 目標への一歩


ズシャァ・・・・・・

セトが攻撃の衝撃で地面に叩きつけられる
ぬかるんだ地面を滑り―停止した
冷凍ビームを数センチの距離で受けた肩は凍っている
「あぁ〜あ…」
シンがそう言いながらバトル場に入り、凍りなおしをしたあとセトをボールに戻す
「ふぇ…?」
ミキが声を上げる
どうやらこの状況を理解し切れていない様子
「え?ちょ…効果は薄いはずじゃあ…」
そういってシンに呼びかける
「こおり状態になった。凍り直しを持っていたとはいえ、おそらく実践上だったら間違いなくやられている」
「・・・・・・・?」
ミキはまだ話を飲み込めない様子
「お前のポケモンのあの威力だ。凍って動けないときに攻撃されたらひとたまりも無い。ま、お前は攻撃してこなかったけど…」
そういってボールを手に取り、ミキの元へ歩み寄った
「お前の勝ちだ」
そう言うと、ミキの服のポケットからのぞかせているトレーナーカードを手際よく抜き取り

ピピピ…

妙なバーコード読み取り機のようなものを押し当てる
そしてシンはカードを返すと
「大会の開会式は一週間後だ。会場はハガネ山だぞ。遅れるな」
そういって去っていった

一方ミキのほうはまさに混乱状態
明らかに試合続行可能だったはずなのに降参し、トレーナーカードをなにやらいじくって去っていく
「???」
ミキは状況判断にかなりの時間を要したようだ
状況判断が完全に終了したと同時に大きな声が背を向けて歩くシンにもよく聞こえた


「ぃよっっしゃぁ〜!!!」




その夜は、シンはポケモンセンターに泊まりに来なかった
やはり伝言要員のキルリア曰く
『これからは敵同士だ。同じ場所には泊まれん』
ということだ
もうすでにトキシティを出た事も聞かされた
そして―話は一週間後、ハガネ山の山頂から始まる…




〜〜〜ハガネ山〜〜〜

ここはハガネ山の山頂
山の中に鉄がいくつかむき出しになっていて、コレが名前の由来とも言われている
その山頂はかなり広い
昔、鉄を取るために山頂から順に平らに削って行ったそうだ
そのせいで山はかなり削られ、研究家の話では、今の1.5倍はあったそうだ
そして、そのかなり広い場所を大量のトレーナーが埋め尽くしている
参加制限人数一万人
その人数をはるかにオーバーする人が集まった
集まった人数は約一万三千人
一週間前までの参加人数でこの人数のことは知っている委員会のほうは、急遽『予選の予選』の開催を決定した


『みなさん!!お静かに!!!』
突如轟音が響く
それを声と判断するのに時間が僅かに要した
『これより予選参加者を決定する予選を開催いたします!!!!』
五月蝿い…
そうとしか思えない
何度も何度も響いて聞こえる声を必死に認識しながら
『ルールは簡単!!渡された紙に書いてある地点に行って近くにいる人とバトルしてください!!結果は当方ですべて把握できます!!勝利者が一万人に達した時点で終了です!!!その時点までの勝利者が予選に行くことが出来ます!!!わからないことは紙である程度把握してください!!開始は二十分後です!!!!』
その直後、耳を劈くような轟音が辺りに響く
おそらく笛だろう
その直後、いち早く笛と判断した猛者たちは、次々と駆け出していった
その中に―シンとミキはいた



第八十九話へ続く…
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