『それでは!第一戦の抽選を始めます!!』

司会がそう言うと、司会の立つ浮遊台の後ろに、巨大なルーレットが現れる
そのルーレットには二つの針が置かれ、十二人分の名前が書かれている
すると、その針が別々に回り始める
会場内の視線がそのルーレットに集まった

一本の針が減速を始める
そして、もう一本の針が回り続ける中、ゆっくりと止まり、一人の人物をさした

『第一戦!一人目のトレーナーは…クォーレ地方出身!シン選手!!』

その言葉とともに、東の電光掲示板にシンの顔が現れる
会場中から歓声が巻き起こる
そうしてる間に、もう一本の針も減速を始める
観客がそれに気付くと、歓声は徐々に薄れ、再び視線がルーレットに行く


『第一戦!もう一人のトレーナーは…ホウエン地方出身!センリ選手!!』



第九十六話 力VS力


巨大なバトル場に、二人のトレーナーが現れる
二人とも、自信にあふれた目で相手を見ていた



「再び戦う日が来るとはな…シン君?」
センリが言う
「今回も…勝たせてもらいますよ」

実際、シンとセンリは対戦経験がある
シンがホウエン制覇を目指していたときでは、ジム戦で対戦している
その時はシンが勝ったが、センリは実力を伸ばしホウエン四位
シンは二位だが、どちらが勝つかは分からない


「行け!セト!!」
「行け!ケッキング!!」

二人の手からボールが放たれ、二匹のポケモンが現れる
二匹はすぐに相手を睨み付けた

『それでは!!ポケモンキングスダム第一戦…スタァーット!!!』

「爆裂パンチだ!!」
「避けろ!メタルクロー!!」

ケッキングは腕を大きく振りかぶってセトを殴りにかかる
セトは身をひねり、うまくそれをかわすとセトは右腕をすっと引く
その瞬間、セトの右腕が光り輝き、 パキキキキ と音を立てて硬質化する


ドゴォ…


セトが右腕を突き出し、ケッキングを突き飛ばす
ケッキングの巨体は宙に飛び、地面に不時着する

「とどめだ」

セトは、攻撃直後の不安定な体にもかかわらず飛び出し、ケッキングに追い討ちをかける
が―

「破壊光線!!」

土煙が舞う中から強大なエネルギーを溜め込んだ光線が放出され、セトを飲み込む
セトはその勢いに負け、上空に吹っ飛ばされる

「馬鹿な…“特性≠ナまともに動けないはず…!」

ケッキングの特性は『なまけ』
何か行動を起こすたびに無力感に襲われ、僅かな時間だが、何も出来なくなる
今のケッキングは爆裂パンチを放った直後
すぐにでも攻撃が出来なくなるはずだ

「私のケッキングはマイナス点となる特性を克服した!私のケッキングは、止むことなく攻撃できる!!」
「な…!?」



消えてきた砂煙から雄叫びを上げるケッキングが姿を現す
「爆裂パンチ!!」
ケッキングが再び腕を引き、構える
その腕には強大な力が集まる
ケッキングの目の前には落下するセトが

メキィィ・・・・・・・・

その強靭な腕によって、セトは壁に叩きつけられる
衝突した壁は叩き壊され、その土煙からセトが飛び出す

「な…」

セトは平気な顔をしてケッキングに向かって突っ込んでいく
「ばっ…爆裂パンチ!!!」

普通ならこの強烈な攻撃に耐えかね崩れ落ちるはず
セトはその痛みを耐え、ケッキングに突っ込んできた
ケッキングはそれにカウンターを合わせるように殴りかかる

「堪えろォ!!」

再び強烈なパンチが腹に当たる
セトは苦痛にゆがむ顔をするが、それを耐え、ケッキングの懐に潜り込む
「起死!!回!!!生!!!!!」
ほとんど体力に残りが無いセトは、決死の覚悟で大技を放つ


ドゴオオオオオ!!!!


空気を震わせ、セトが一撃を放つ
体力が減り、追い詰められていれば追い詰められているほど威力を増すこの技
轟音を放ち、ケッキングが吹き飛ばされる
ケッキングは地面をそのまま滑り、停止した

そのケッキングは、起き上がらなかった


『第一戦勝者!!シン選手!!』



・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・


「やぁ」
「あっ…センリさん!」

ここは選手控え室
選手はそれぞれ部屋が違うが、別選手の入室は特に禁止されてはいない
シンの部屋にセンリが入ってきた


「お疲れ様です」
そういうとシンは頭を下げる
「いやいや…そういえばシン君」
「?」
センリはそこで話を止め、イスに座るよう薦める

「なんですか?」
イスに腰をかけたシンが訊く
「いや…それがだな…」
センリがそう言うと、何か言いにくそうな顔をして

「親の方…居ないんだって?」
「ッ・・・・・・・・」
シンが俯く

「あっ…気にかかるようなことを言ったのなら謝る…それでだ」
センリはそう言うと、自分もイスに腰掛ける
「ウチに…来ないか?」
「・・・・・?」
「実はな…私の家にも子供がいないんだ。もし…もしだ。私の家で良ければ…家族になって一緒に住まないか?」
「!」

センリはそう言うと、ポケットから一枚の紙を取り出した
そこには『住所』や『電話番号』が書かれていた
「もしも住んでもらっても構わないのなら…歓迎しよう」
そう言うと、センリは立ち、扉のほうへと向かっていった

「センリさん!!」
取っ手に手をかけたところでシンが呼び止める

「これから…お世話になります」
シンがそう言うと、センリは笑みを浮かべ、去っていった




「お世話になることが“出来ればね=E・・」


第九十七話へ続く…
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