ポケモンキングスダム二日目
その日は、初日を上回る激戦が繰り広げられた

シンVSゴールド
お互いの戦術を知り尽くしたライバルどうしの激戦となったこの勝負
ゴールドのカザンに対し、シンはなんとセトで対抗
本人曰く、「アイツを潰すにはコイツしかいない」と言っていた
が、その割には案の定劣勢
猛攻撃に対し、防戦一方のセト
もう駄目か、そう思われたとき、なんとセトがハイドロポンプを使用
本来覚えるわけの無いこの技、どうやって覚えたかは定かではないが、おそらくこれが『アイツ』対策のことだろう
なんと一撃でKO、シンの実力を見せ付けた


ダイゴVSイブキ
双方各地方最後の最後のトレーナーとなったこの勝負
イブキのキングドラも猛攻に出るが、全試合を一匹で制しているメタグロスが圧勝
すぐに試合が終わってしまった
また、この試合でジョウト勢が全滅した


そして―


第九十八話 反進化―想定外の危機


『これより!本日最終戦!ミキ選手VSレッド選手のバトルを行います!』


「よ…よろしくお願いしますっ!」
ミキが腰を深々と下げて言う
レッドは ははは と笑いながら
「そう固くなんなって!気楽にやろうぜ!」
そう言ってボールを取り出す
続いて、ミキもボールを取り出す

「行け!ナミ!!」
ミキがボールを投げた
中からはナミが姿を現す

「(レッドさんの最強のポケモンはピカチュウ!ナミなら…行ける!)」
「行け!フッシー!!」
「え!?」

レッドの放ったボールからは、フッシーが姿を現した
「あ゙〜〜〜〜っ!!」
ミキが呻きながら崩れ落ちる

「(て…てっきり大事な勝負だから最強のを使ってくるとばっかり…どーしよ!?)」

ラグラージ唯一の弱点は草タイプ
が、相手はフシギバナ
しかもレッドの長旅の間一緒に相棒として君臨したフッシー
まさに草タイプの王道のポケモンだ

「(でも…やらないと!!)」


『それでは・・・!ポケモンキングスダム本日最終戦…スタァーット!!』


「ナミ!波乗り!!」
「フッシー!日本晴れだ!」

その言葉の直後、空の雲が引いていき、猛烈な日差しが差した
その日の力はすざましく、地表からどんどん水分が抜けていった
が、急に地面から大量の水が巻き上がり、それは波となってフッシーに襲い掛かった

波はフッシーに直撃した
が、流石に日本晴れにより威力は弱まっている
ダメージはかなり少ないようだ

「ソーラービーム!!」
「ッ!守る!」

フッシーの背の花に、緑の光がエネルギーとなって集まっていく
しかも、ものすごい勢いで
すぐに花いっぱいにエネルギーは溜まった

直後、花の光は ふっ っと消え、それは口に現れた
自然のエネルギーの塊は、まっすぐナミに向かって、フッシーの口から放出される

ナミはそれを光で出来た壁で完全に防ぎきる


「行っくぞ!!ハァ…ド…プラント!!!」
「ッ!!」

フッシーの花から光が地面に放出される
その直後、フッシーの花は僅かにしおれ、明らかに行動が鈍くなる
が、攻撃は続行された
光を浴びた部分からものすごい速さで木が生えていく
それはあっという間に大木となった
そしてその木は、ナミに向かって太い枝を何本も触手のように伸ばしてきた
その枝の先は尖り、まさに槍のようであった
ただでさえ威力の高そうなこの技
ナミがまともに受けたらひとたまりも無い

「ッ!!!守る!!」

少し歪んでいるが、ナミを光が球状に覆う
何本もの枝はすぐに人の腕ほどの太さとなり、数をなしながらその球体を飲み込んだ

バチチチチチチチチチッ!!!!

壁が悲鳴を上げる
そして―

バリィィィン…

壁が耐え切れず崩壊する
が、枝の槍はそれ以上進入しなかった

「(エネルギーが…切れたんだ…!)」

始めに与えられたエネルギーが完全に無くなり、ハードプラントの進行は止まる
が、ナミは太い枝に完全に取り込まれてしまった
球を形作る枝が、ナミの行動を制限する

「(止まったけど…出られない…!あいつを一撃で倒さないとまた撃たれる…多分次は防ぎきれない…直に当てられれば冷凍ビームで倒せると思うけど…木でずいぶん制限される…どうしたら…)」

フッシーは少しずつ萎れた花にエネルギーを送り、元気を取り戻していく
時間は無い

「(シンだったら…どうしてただろうな…)」

そんな考えを起こす中、ミキはふと思う

「(炎タイプの技なら…焼き払える!!)」

ナミは水・地面タイプ
炎技は殆ど扱えない
だが、炎技を使う方法が、たった一つあった

ミキは、フゥ と息を吐くと


「ナミィ〜〜〜!!!“レベルツー=I!!」


ボオオオオオオオオオッ!!!!

ナミを取り囲む枝が一気に炎上する
「火炎放射!!」

炎上する木から、強烈な炎が噴射される
その炎が寸分たがわずフッシーに当たった
フッシーが声を上げ、崩れ落ちた



『勝者!!ミキ選手!!!』

・・・
・・・・
・・・・・


「マズイな…」
それを見て、観客席でシンが言う
シンが腰からボールを取り出し、足元に転がす
「イシス。出来るよな?」
『そんな事聞いてる暇ありませんよ!ホラ!!』
イシスはそう言うと、シンの腕を掴み、ミキの元へテレポートした

・・・・・
・・・・・・
・・・・・・・

「あっ。シン!勝ったよ〜!!」
ミキはシンを見つけたとたん、飛び跳ねてシンに言う
が、シンはそれに見向きもせず、まだ炎上を続けるナミの元へ向かう

「え・・・」
「イシス」
『ハイ』
イシスは念動力で焼け焦げた木を払いのける
そこには、まるで火傷のように体を赤くしたナミがいた
ナミは頭頂を黒くしており、そのあざの様な黒ずみは、少しずつ広がっていった

『くっ…』
イシスはそう言うと、右手をナミの元へ持っていった


シュィィィィ…

頭へ持っていかれた手が突如輝きだした
その手はナミの頭に当てられる
すると、熱が冷えるような音を立て、煙を出しながら黒ずみが少しづつ引いていった
が、再び黒ずみが増えだした
イシスの手の光も弱まっていった
『・・・・!!シンさん!!手伝って!!』
「・・・ちっ」
シンは舌打ちすると、シンも手をナミの頭へ持っていく

キィィィィィィィ・・・・

シンの手も輝きだす
それは紛れも無く『光る手』だった

ジュゥゥゥゥゥゥゥ!!!

すると、ものすごい勢いで黒ずみが消えていく

「・・・!!・・・・!!!!」
シンはすごい剣幕で黒ずみの進行を抑える
「・・・・!!!!」
シンが最後に力を強め、すっと手を引いた

「医療班を呼べ!!早く!!」
シンが外に向かってそう叫んだ
そして、腰から薬を取り出すと、ナミの治療を始めた
しばらくして、医療班が到着し、三匹のゴーリキーによって外に運ばれていった


・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・


「シン!!」
「ん…ミキか」

その後、ナミはふもとのポケモンセンターに運ばれ、治療を受けた
幸いダメージは少なくて済んだようだった


「そっか・・・良かった・・・」
「・・・・ミキ」
「ん?」

シンが神妙な顔をしてミキに話しかける

「どうしてレベルツーを使った?」
「え・・・レベルツーにして、炎タイプにすれば勝てるかなぁ…って」
「・・・・・ちなみに、レベルツーを使った回数は?」
「ん・・・アレが初めてだよ」
「・・・・・・・・」

シンはため息をつくと、少し息を吸って、話し出した

「そもそもレベルツーってのはな、ある程度の修行段階をつんで使うもんなんだ。今俺が持ってるポケモン全員がその修行をこなしていく。そこで大事なのが…その段階を踏まずにレベルツーを発動させると、必ず反進化(リバースエボリューション)って現象を起こす。それが起こると…まぁレベルツーと同じような風になるんだがそれが性質(タチ)がわりぃ。お前もさっき見ただろう、さっきの黒ずみだ。あれは体中に広がって、そのポケモンの体力を奪う。もちろん、死に至らしめることもある」

「・・・・・・・・・・」
絶句
ミキは何も言えなかった
ただ思いつきでした行動が、ここまで重要なことになるとは・・・

「…だけど、一回目の発動でそれを止められれば死ぬことは無い。だけど、その黒ずみが体全体に広がると、殆どダークポケモン化する…残念だがな」
「そんな・・・治す方法は!!治す方法は無いの!!?」
「・・・・・・・リライブ」
「!?」
「リライブだ。詳しい方法は知らんが、遠くの方にある、オーレ地方のアゲドビレッジってとこで話を聞くといい」
「・・・・・・・・・」
「言いにくいが、いずれにせよ、ナミが主戦力のお前だ。レッド先輩や俺みたいに主戦力が何匹もいるチームじゃないんだ。いずれにせよ、そう簡単に反進化状態から、戦えるまでに持っていくのは難しい。棄権するかどうかは、お前の意思に任せるがな」
シンはそう言うと、部屋から出て行った


第九十九話へ続く…
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