いつの間にか寝ていたのか…
足元がとどまることなく揺れている
もはや目が意味を成さないほど当たりは真っ暗
俺は、そんな黒の部屋で目を覚ました

そのまま体を起こす
直後、ガタッ と音を立てて今まで以上に大きく揺れる
長い間寝ていたらしい
体がうまく対応できず、バランスを崩す
運の悪いことに、頭の行き先は段ボール箱、しかも角
段ボール箱の角は以外にも結構痛い
頭を抑えのた打ち回る

さらに追い討ちをかけるように体に衝撃が走る

体を横にしていたので、滑るように壁に叩きつけられた
すると、今まで止むことなく起こっていた揺れが無くなる
しばらくして、自分がもたれ掛かっていた壁が金属音を鳴らした後、真っ二つに割れた
その溝から眩い光が差し込む
長いこと暗い空間に居たせいか、目がくらみ、よく見えない
危うく空いた溝から落ちそうになるが、それは手をつっかえ棒にして止める事が出来た

だんだんと目が慣れてくる
今度は逆光でよく見えないが、誰か人が立っているように見える
かなり慣れてきた
その人は女の人のようだ

「あなたがルビー君ね?ミシロへようこそ!」


第一話 無口


「えっと…あなたは?」
大体誰かは察しが付くが、念のため、聞いてみる
その人は、しまった と言う顔をして
「センリの妻です。あなたがルビー君?」
予想通り
俺は、『ルビー』と言う使い慣れない言葉に戸惑いながらも
「ハイ」
と、返事をした



たったダンボール一箱の荷物を持ち、ルビーは家に招かれた
一通り教えてもらった後、自分の部屋となる、二階へ招かれた
そのキッチリ整頓された部屋には、ベット、テレビ、パソコン、さらにはゲームまでもが置いてあった

「ここは自由に使っていいからね。後…」
そういって箱を取り出す
その中には、0時0分に調整された、新品の時計が
どうぞ、と言われて渡されると、すぐに下に行ってしまった
ポケギアを見て時間を合わせようとしたが―
ポケギアは大破
これに気付かない自分もどうかと思うが、恐らくカイリキーとやりあった時の物だろう
「高かったのに…」
そう呟くと、これ以上被害を拡大しないようにゆっくりとはずし、机の上に置く
見る限り、最後の攻撃をまともに受けて、スクリーン、他にも、部品が少しずつなくなっていた
「・・・・・・・・・はぁ・・・」
そうため息をつくと、それを今度は手荒に掴み取ると、ゴミ箱に投げ入れる

その後、いったん外に出て、木の棒を用いた読刻術で、ある程度の時間を確かめて、合わせに行った

その後、パソコンを少しいじってから、ルビーは外に出た


「こんにちわ〜…」
ルビーはオダマキ研究所の前で言う
応答は無かったが、ゆっくりと扉を開けて入る
中はかなり整頓されていた

そこにはオダマキ博士は居なかった
「あの…オダマキ博士って…どこにいらっしゃいますか?」
中に唯一居た研究員らしき人に聞いてみる
「えっと…博士ならフィールドワークに出てますが…って、何してるんですかぁ!?」
ルビーはなんと勝手に部屋に入り、さらにある機会をいじくりまわしている
「ちょ…勝手に触ったら…」
「大丈夫ですよ」
この機械には見覚えがあった
カントー・ジョウトでは、全体に普及しているが、ここら辺じゃあ一部の施設にしかないものだった
これは、地方範囲でポケモンを預けたり出来る道具だ
「えっと…クォーレ∞シグレ研究所∞預ける=v
ルビーがそう呟きながら順に打ち込んでいく
最後まで打ち終わると、六つの穴が開き、証明に照らされる
するとルビーは、腰から五つのモンスターボールを取り出した
それを名残惜しそうに見ると、モンスターボールを穴にはめ込む
「送信≠チと」
そのモンスターボールは、淡い青色の光を発して、消えた
「博士はどこへ?」
ルビーが研究員に訊く
研究員はあわてて機械が正常に動くのを確認した後
「えっと…博士なら101番道路へ…」
「そうか」
ルビーはそう言うと、その場から走り去っていった


ミシロタウンの出口まで来た
この町は、どうやらここを通り抜けないことには外には出れないようだ
ルビーはゆっくりと足を踏み入れていった
その時

「た…たた、大変だぁ〜〜!!!」
一人の男の子が奥から走ってきた
「どうした?」
「博士が…博士が襲われてる!ポケモンに!!」
ルビーはそれを聞くと
「101番道路は…すぐそこなんだな?」
「うん…!早く助けてあげて!!」
ルビーは奥に走っていった

「居た!」
そこを出てすぐのところで博士とそのポケモンは見つかった
博士を襲っていたポケモンはグラエナ
しかも二匹も居る
博士はもう追い詰められていた
ルビーは反射的に腰に手を伸ばす
が、そこにはボールは無かった
「博士ェ!!なにかポケモンは!!」
必死に博士に呼びかける
「そっ…そこのバッグに…!うわっ」
グラエナがじりじりと間を縮めていく
ルビーはそのバッグを見つけると、中に手を突っ込む
中には、モンスターボールがいくつか入っていたが、その中の一つを掴み、投げつける
そのボールは、博士とグラエナの間に落ちた
そこからは、緑色の、トカゲのようなポケモンが姿を現す
「キモリ≠ゥ…追い払え!!」
キモリは、尻尾を果敢に振り回して威嚇する
が、グラエナが一吼えすると、キモリが固まってしまった

「威嚇か…あっちのほうが断然有効だな…」
ルビーはそう言うと、近くの木の長い枝をへし折って、グラエナに振りかかる
グラエナはそれに気付くと、左右に散った
「大丈夫ですか?」
「あぁ…それより…」
グラエナは再びルビーたちに威嚇を始める
が、ルビーは怯まず一歩ずつ近寄っていく
一匹のグラエナがルビーに噛み付くべく襲い掛かった
ルビーは棒で払いのける
もう一匹のグラエナも襲い掛かる
目の前に大きく開かれたグラエナの口が見える
ルビーはとっさに棒を上に上げ、グラエナに噛ませる
「オラァ!!!」
噛ませたままその棒をぶん回し、グラエナを吹っ飛ばす
が、棒は噛まれた先から無くなっていた
そのグラエナはその衝撃で気を失った
始めに攻撃したグラエナがゆっくり立ち上がり、再び飛び掛ってきた
ルビーは僅かに残った木の端を再びグラエナに噛ませる
が、グラエナはなんとそれを噛み砕き、端でおびえきっている博士に襲い掛かった
ルビーがグラエナを追いかける
そして―

ガブッ・・・

グラエナが噛み付いた
噛まれたのはルビーの足
なんとグラエナに追いついたらしく、足を使ってグラエナを止めた
血は出ていなかった
ギリギリ靴が歯を防いだらしく、それ以上歯が進行する様子は無い
すると、グラエナが気を失ったように倒れた
「・・・・?」
グラエナの背中には、キモリがしがみ付いていた
「すいとるか…よくやったぞ」
そういってルビーはキモリを持ち上げると、オダマキ博士と一緒にミシロタウンに戻っていった


「いやぁ…助かったよ〜えっと…」
「ルビーです」
「そうそう!ルビー君」
ここは研究所
オダマキ博士は、体中にバンソウコウを貼りながら言った
「かつてのホウエン王者の面影はどこへやら…」
「うっ…そ、それより!!」
オダマキ博士は机の上に置かれた博士を助けたポケモン『キモリ』の入ったボールを拾い上げる
「これは君にあげよう」
そういってルビーに渡した
「・・・?何故?」
「ふふ・・・キミとの連係プレー、見事だったよ。まだポケモンは持っていないみたいだし、だからあげるよ」
「・・・・・・・」
ルビーはそのボールをじっと見つめ、言った
「スサノオ・・・・・・・」
「・・・・・?」
「こいつの名前は…スサノオだ」
「へぇ…あと…」
ルビーがスサノオ≠ニ名付けたキモリをしまっているときに、オダマキ博士が言う
「私の娘にサファイアって子が居るんだ。今私の家に居ると思うから、是非挨拶しておいてくれ」
「サファイア=E・・ですか?分かりました。では…」
ルビーはそう言って研究所から立ち去っていった



コンコン・・・・

ルビーが家の戸を叩く
奥から はーい と声がして、ドアが開いた
「どーも」
「??えっと…どちら様?」
「えっと…センリさんの養子でこちらに来ました。ルビーって言います。サファイアさんはお見えで?」
「えっと…二階に居ますが…どうぞ」
そういってルビーは家の中に招かれた
そのまま階段を上り、ドアの前に立った

コンコン

やはり礼儀、ドアを叩く
奥から トトト と木の板を走る音が聞こえて、ゆっくりとドアが開く
「・・・・・・」
恐らくこの少女がサファイアだろう
「えっと…サファイアさんですか?」
「・・・・・・・・」
少女は無言でコクンとうなずく
「えっと…隣に養子で来たルビーって言います。よろしくお願いします」
「・・・・・・・・」
またもや無言
彼女は、すっと右手を差し出した
握手かな?
そう思って手を出そうとした
が、彼女の手はルビーの右へ、ドアノブへ伸びた
ドアノブを握ると、ゆっくりと扉はしまった
ガチャリ と音を立て、一瞬の沈黙が流れる
「(何だったんだ?)」

ルビーは階段を下りていった
そこには、心配げな顔で見つめる、サファイアの母と思わしき人が立っていた
「どう…でした?話…出来ました?」
「いや…ビミョーです」
「そうですか…」
「なにか…あったんですか?」
ルビーがそう言うと、その人はゆっくり歩いて倒してある写真立てを持った
「これを見て」
「?」
ルビーに渡される写真立て
そこには、さっきの無表情な彼女とは打って変わって笑顔なサファイア
そのサファイアは、にこやかに、楽しそうな顔をしていた
「何が…あったんですか?」
「実はね…二年前になるんだけど。ここら辺に居た子供達と山で遊んでいるときにね。そのときもちょっと無口な子だったんだけど、遊ぶときはめいいっぱい遊ぶ子だったの。その時に、サファイアがいつにも無く大声を上げたみたいでね。その直後、山から岩がどんどん落ちてきてね。その子供達三人、サファイア以外、みんな死んじゃってね。それでサファイアは偶然助かって、みんなが死んだのは自分の声のせいだ≠チて思っちゃったらしくてね。それから声を出さなくなったの」
「そうですか…辛い話をありがとうございました」
「いえ…よろしくね。こんな子だけど」
「はい」
ルビーは、一礼して、立ち去っていった


「どこかで・・・聞いたことが・・・」

第二話へ続く…
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