第二話 奇妙

〜〜〜翌日〜〜〜

「ふぁ〜…あ」

ルビーが目覚める
起きたのはまだ六時
まだまだ寝たいが、どうやら日差しとは別のもので目覚めたようだ
「スサノオ・・・?」
スサノオが肩を揺すっていた
「どうした・・・?」
まだやはり眠い
寝ぼけた目をこすりながら体を起こす
すると、スサノオがカーテンを一気に開く
やはりもう日は昇っていたらしく、眩しい日差しが目に眩しい
スサノオは、じぃっとルビーを見て、少し経ってから窓の向こうを指差した
「ん・・・?」
その向こうにはサファイアが
サファイアは昨日のミシロの出口から外に出ようとしていた
スサノオが、「行かなくていいの?」と言わんばかりの顔を作る
「はぁ・・・」
ルビーがそうため息をつくと、ゆっくりと立ち上がり、服を着替えだした
スサノオは終始ニコニコしていた



「寒!!!」
上着を持ってこればよかった
今今そう思う
「いくぞ・・・」
鼻水をたらしたスサノオが頷いた


〜〜〜コトキタウン〜〜〜

途中の101番道路を越え、隣町まで来てしまった
101番道路のではサファイアは見かけなかった
コトキタウンの西に続く道を行こうとしたところ
「新種のポケモンの足跡を発見したんだ!」

ルビーは興味を持ってここに居ようとするが、スサノオが足をちょんちょんと突っつく
「あっ…ここを女の子が通りませんでしたか?」
答えはノー
その人から北にも続く道があることを聞くと、ルビーは北へ向かった


「居た・・・!」
北門を抜けた後の道路に、サファイアはいた
サファイアの目の前には、一匹のポチエナが
「危ない・・・!・・・?」
恐らく、野生のポチエナと思われるが、サファイアを襲う様子は無い
と言うより、なついている様にも見える
彼女の手には、スケッチブックと、何色ものクレヨンが握られていた
サファイアはまだルビーに気付いていないらしく、ただ黙々と描いていた
ルビーはゆっくりと後ろから近づく
もう真後ろまで来た
が、まだ気付いていないようだ
「ほぉ・・・・」
つい声が出てしまう
サファイアの描いていた絵は、上手かった
よくクレヨンだけでここまで書けるものだと思う
「・・・・・・!」
サファイアはやっとルビーに気付いた
が、すぐに顔を前に戻してポチエナを書き続けた
「・・・・・・・・・」
ルビーはただそれをじっと見つめていた


十分くらい経ったであろうか
サファイアはクレヨンをしまうと、しゃがみこんでポチエナと顔を合わせる
そして、描いた絵を、スケッチブックから慎重に外していく
そして、全部描き終わると、それをポチエナの足元に置く
ポチエナはその紙を破かないようにやさしく銜えると、嬉しそうに立ち去っていった
「へぇ…」
そのポケモンの手なずけに感服していると、すっくとサファイアが立ち上がる
そして―
「うわっ!」
突然振り返り、腕をルビーの顔の前に持っていく
その手には、モンスターボ−ルが握られていた
「・・・・・・・・・・」
相変わらずの無表情な顔で、ルビーを見ていた
「う…え…っと…バトル…?」
突然のことで頭が回らず、混乱しながらも答えを出す
サファイアはただコクンと頷くと、一歩ずつ後ろに下がっていった

「よぉし…行け!スサノオ!!」
スサノオがテクテクと前に出る
「・・・・・・・・」
サファイアが無言でボールを放る
そこからは、アチャモが姿を現した
すると、サファイアが、真ん中に穴の開いたコインに糸をくくりつけたものを二本、両手に持った

ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン・・・・

糸の方を持って両手でそれを回す
いきなり取った不可解な行動に首をかしげていると―

ヒュンヒュンヒュン!ヒュンヒュンヒュン

一瞬だけ右手のコインの回転が速くなる
その瞬間、アチャモが飛び出す

ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!ヒュンヒュン…

今度は左手のコインの回転が速くなる
すると、アチャモが火を吹いて攻撃してきた
「ッ!?避けろ!」
スサノオは身を低くして攻撃をかわす
目の前で初めて見た戦闘方法
何年も<gレーナーとしてやってきたが、こんなやり方は始めてだ
「奇妙なやり方だな…はたく!」
スサノオも負けじと反撃する

ヒュンヒュン!ヒュンヒュンヒュンヒュン…
ヒュンヒュンヒュン!ヒュンヒュンヒュン…

両手が別のタイミングで加速する
アチャモはスサノオの平手を軽々と避けて見せると、その体制のまま火の粉を吹く
スサノオは空中
避けられるわけも無く火の粉はスサノオを捕らえる

ヒュン!ヒュンヒュン!ヒュン!ヒュンヒュンヒュン!
ヒュンヒュンヒュン!ヒュン!ヒュン!ヒュンヒュン!

双方のコインが複雑なタイミングで加速⇔減速を繰り返す
その度にアチャモは複雑な行動、攻撃をこなし、スサノオを傷つけていく
一方スサノオは防戦一方
タイプも相性が悪いうえ、初めて見るこの戦術に戸惑っている
「はぁ・・・・」
ルビーがため息をつく
「あんまし使いたくないんだけど…」
そう言うと右手を前に出した
「負けるのは好きじゃないんでね!!」

キィィィィィィィィィィ・・・

右手から、音を立てて藍色の光が発される
「・・・・・・!」
サファイアも初めて見るようだ
戸惑いを隠せない

その光を浴びたスサノオはゆっくりと立ち上がり、その目をアチャモに向ける
「後ろに回ってはたく!!」
スサノオがものすごいスピードで突進していく
「・・・・・!!」

ヒュンヒュヒュン!!ヒュン!ヒュヒュヒュ!!ヒュン!!
ヒュ!ヒュヒュン!!ヒュンヒュンヒュン!!ヒュ!

コインがさらに複雑な回転を始める
が、追いつくことは出来なかった
パシィンと音を立て、アチャモがはたかれる
「行け・・・!」
追い討ちをかけるべく飛び出したスサノオが動きを止める
アチャモの前に、サファイアが立ちはだかった
「ふぅん…終わりだ」
ルビーがそう言うと、右手の光は消えた
そして、その場を立ち去っていった

サファイアは、アチャモをなでた後ボールに戻し、スケッチブックとクレヨンを拾って、早足にルビーを追いかけていった


「そうかぁ…サファイアとバトルを…」
「はい。それにしても奇妙な戦法ですねぇ…」
ルビーとオダマキ博士の会話
その後サファイアとルビーは無事に帰ってきて、研究所に入った
サファイアは今、博士のミズゴロウの絵を描いている
「ううん…私にも良く分からんのだがな。そういえば君は、ポケモンリーグには挑戦するのかい?」
「はい、そのつもりです」
「そうか、なら…」
オダマキ博士は首を回してサファイアを見る
「サファイアも…連れて行ってはくれないか?」
「えっ?何故?」
「サファイアは…事件のことは知ってるね。そのときから友達が一人も居ないんだ。だから友達として旅に出て、サファイアを明るくさせてほしい」
「・・・・・・分かりました」
ルビーはそう言うと、サファイアのほうに歩み寄り

「よろしくな」
そう言った
「・・・・・・・・・・・」
やはり無言
そして、こくんと頷くと、また絵を描き始めた




「…では、行って来ます」
ルビーがお母さんに言う
ルビーが出て行こうとしたそのとき
「あっ…待って!」
ルビーが振り返ると、そこには誰も居ない
すると、バッっと横から現れて、小さい段ボール箱を差し出す
「靴、ボロボロでしょ?」
確かに、昨日のグラエナとの戦闘で靴は穴だらけ
箱を開けると、ランニングシューズが入っていた
ランニングシューズとは、スイッチをONにすることによって、効果が発動し、右足が左足を引き寄せる⇔弾く 左足が右足を引き寄せる⇔弾く を繰り返して意図せずともかなりのスピードでの走行が可能になる靴だ
因みに、かなり高い
「いいんですか?こんな物…」
「いいのいいの!オイワイよ!」
そう笑顔で答えると、「行ってらっしゃい」と言った

「行ってきます」

第三話へ続く…
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