「・・・・なんだと・・・?」
「取り残しがあったっていってんだよ。ゴミの」
「・・・・!!なんだと!!!」
同じ『なんだと』でもニュアンスがまったく違う
ルビーは挑発している
「ボーマンダ!!龍の息吹!!!」
ボーマンダの口から炎が放たれる
ルビーはそれを軽々と避けると、じりじりとサファイアの方へ下がっていく
「サファイア」
「・・・?」
「悪ぃ!」
ルビーは振り返って手をサファイアの胸に押し当てる
別に、“アレ≠ネ気持ちでとっている行動ではない
それは、すぐに分かった
キィィィィィィィィィィ!!!!!!
押し当てられた箇所から、紅色の光が漏れる
なんと、ルビーの手が胸にめり込んでいく
そして、中で何かを掴むと、一気に腕を引く
「ッ・・・カッ・・・・・・」
引き抜かれた瞬間、サファイアは気を失う
ルビーの手には、紅色の石のようなものが握られていた
第八話 暴走
ルビーはその石を握る
するとまた石が光を発した
が、その光は徐々に薄らいでいく
光が完全に消える
ルビーは手を広げるが、石は出てこない
男に向き直ると、真っ黒な手を向ける
キィィィィィィィィィィ・・・
光を失ったはずの手から、再び藍色の光が漏れる
「行くぞ・・・!!」
そう言うと、突如手の光が強くなる
と同時に、黒ずんだ部分がどんどん広がっていく
それは、腕、肩、胸、胴、足
次々と黒ずみが体を進んでいく
黒ずみは、右目とその周りだけを残して止まった
「よし・・・!」
すると突如、黒くなった部分から炎のようなものが吹き出てきた
ルビーは炎に包まれた
「行くぞ・・・!!!」
ルビーは、男に向かって跳ぶ
なんとルビーの体は、ボーマンダの高さに達した
「ラアッ!!!」
「避けろ!!」
ルビーは燃え上がる右手を振り下ろす
ボーマンダはそれを間一髪で避けると
「龍の息吹ィ!!」
再び強烈な炎を吐く
が
「ウオオオオオォォォォ!!!!!」
ルビーを取り巻く炎が、強く燃え上がる
それは息吹をいなすと、すぅっと体の中に入り込む
黒いからだがあらわになる
ルビーは肺に大量の空気を送り込む
次の瞬間、頬が一気に膨らむ
そして、口から高速の何かが吐き出される
それは、高圧縮の、炎の塊
その紅蓮の火炎は、あっという間にボーマンダまでたどり着く
ボーマンダが炎に包まれる
男はボーマンダから飛び降りると、また別のボールを投げる
そこからは、フライゴンが
フライゴンはすぐに男を拾うと、炎の鎧を失ったルビーに火炎を浴びせる
ルビーもまた、炎に包まれる
が、炎は吸い取られるように消えていく
ボオオオオオオッ!!!
再び黒ずみから炎が発せられる
が、その黒ずみは先ほど止めた位置より、さらに進行している
もう殆ど右目が飲み込まれようとしている
「(もう後がない…一撃で…!!)」
ルビーは、手を上に掲げた
そこに炎が集まっていく
右手に再び高圧縮の炎が集まる
その炎は、掌(てのひら)に集まる
炎は、渦巻きながら球体を形成していく
「ハアアアアァァァッ!!!!!!」
ルビーは再びフライゴンに飛び掛る
掌に集まった炎を、渾身の力でフライゴンにぶつける
フライゴンは炎をまといながら墜落した
ルビーの体は、完全に黒ずみに侵食されていた
「イタ・・・ヨコカァ!!」
ランドが後ろからやってくる
「オオスバメ!!カマイタチ!!!」
大きな翼から放たれた風の刃がルビーを襲う
が―
「ナ・・・!?」
何かが刃を弾く
それは、ルビーから伸びた、尾
「グウゥゥゥ・・・・」
ルビーはうなり声を上げる
真っ黒になった目は、獣そのもの
また、ズズズ…と音を立て、二本目の尾が姿を現す
「ナ・・・ナンダ・・・?」
あたりに振りまかれる気迫が一気に増える
流石に危機感を感じたのか
「クソ!」
遁走すべく後ろを向かせる
が―
「カァッ!!!!!!」
それに向かってルビーが声を上げる
「ウ…ワァ!!」
強烈な熱風にさらされ、ランドは振り落とされる
ルビーに三本目の尾が生える
肌がぴりぴり焼けるように痛む
「ウガァ!!!」
右腕を振りかぶってランドに飛び掛る
直後
『やめなさい!!』
「ッ!!」
ルビーの前に、一匹のポケモンが立ちふさがる
ガッ・・・
ルビーを赤色の何かが叩き飛ばす
「グゥ・・!!!」
ルビーはすぐに向き直ると、その何かに飛び掛る
キィィィィィィ・・・
すると、その何かの腕から、茶色の光が発せられる
それを、ルビーに渾身の力でぶつける
すると、ルビーを覆っていた黒ずみ、炎が吹き飛ぶようになくなっていった
ルビーは、気を失った
第九話へ続く…
戻る