中に入ってからは簡単だった
イシスとセトが敵をほぼ全滅させてくれたから、ただ歩くだけ
侵入者を試すがごとく入っているヒビ
が、エアームドが予想以上に役に立った
そして―



第十話 風神


〜〜〜空の柱・最上階〜〜〜


「ハァァァァ・・・・つっかれた・・・」
『・・・こんなので疲れてどうするんですか?』
「いや、長いこと体動かしてなくて・・・」
『はいはい。それより・・・』
イシスの指差す先には、



レックウザ

天空を司る伝説のポケモン
雲の上でも長時間の滞在が可能な数少ないポケモン
普段はオゾンを食べながらホウエン上空を徘徊し、僅かな時期のみ、ここに戻る
しかしやはり雲の上
雲がまったく見られない晴天のときのみ、最上階に体を下ろす




『レオルドィ』

レックウザが声を上げる
この言葉は、通常のポケモンは話さない
上層階級のポケモンが話す言葉
と言っても、この言葉はポケモンにしか分からない
が―

「ルルィリズヅン?」
(何だって?)

ルビーがその言葉を発する

『レオルドィ』
(誰だ?)
「ズグム“ルビィ=v
(俺は、ルビー)
『ヌジァズ ヌゥ』
(ここに来た目的は?)
「ゥゥィ ルアウヌ」
(・・・ 言う必要はない)
『ゥィ レヲヴ』
( 上等だ)

レックウザが雄叫びを上げる
『挑発は済みました?』
「まぁな。行くぞ」
『ハイ』
三匹のポケモンが構える
レックウザは大きく息を吸い込む

『リョウェ ゾクェィ!』
(龍の息吹!)
「イシス、守る!セト、メタルクロー!!」

イシスが前に立ちはだかり、緑の光の壁で完璧に防ぎきる
セトは、その壁を突っ切って飛び込む
『ルァウァォウ!!』
(破壊光線!!)
「イシス!金縛り!!」
レックウザの動きが止まる
セトを吹き飛ばしたはずのエネルギーの塊は、再び体の中に吸収された


ドゴォ!!


轟音を響かせ、セトの高質化した腕がレックウザを吹き飛ばす
と同時に

「レベルツー!!」
セトを電気が、イシスを草木が覆う
「スサノオ!リーフブレード!!」
スサノオが両手の草の刃で振りかかる

『ヲウ!ララィ!!』
(逆!鱗!!)
レックウザは突如暴れだす
スサノオは強靭な尾にやられ、吹っ飛ばされる
「・・・超!カ・マ・イ・タ・チィ!!!!」
セトを覆う電気の中から強烈な風が飛ばされる
それは空中で2、4、8、16、32、64、124と数を増す
その刃の塊は、寸分たがわずレックウザを捕らえる
僅かに外れた刃は、床を木っ端微塵に砕き、砂煙が舞い上がる


『ルァウァ・・・ォウ!!』
(破壊・・・光線!!)

舞い上がる砂煙の中から、強烈な光線が
それはセトを飲み込み、吹き飛ばす

「ハァード・・・プラントォ!!」
イシスから何本もの木の触手が
先端はやりのように尖っている
が、レックウザはそれを難なくかわし、蛇のようにイシスに近づく
イシスの目の前にレックウザが


『リョウェ!!ゾクェィ!!!』
(龍のォ!息吹ィ!!!)

強烈な炎がイシスを守る木
そして、イシスを焼き払う

もう残っているのは、スサノオしかない



「スサノオ、もう準備はいいよな?」
スサノオはコクンと頷く
「よし!」
スサノオを光が包む
そして―



「超進化!!(エヴォルト!!)」
光が右腕に集まっていく
それはだんだん右手に集まり、放出される
それは棒のような形を模した後、正体はすぐに分かった


「大昔にいたといわれる神『須佐之男神』(スサノオノカミ)。その神は、荒れ狂う大蛇を倒し、伝説の刀を手に入れたという・・・。エヴォルト状態になる最後の条件。それは、伝説のポケモンといわれるポケモンを、倒すこと!!」

それは光の刀だった
が、光は非常に弱い


超進化(エヴォルト)状態を説明するには、まずレベルのことから説明しないといけない
レベルとは、各ポケモンの階級のようなものだ
経験値を得て上がるレベルとは、少し違うもの
経験値のほうのレベルは、ポケモンそのものの強さを表す
今説明するレベルは、階級だ
まず、全てのポケモンは、レベルワンから始まる
このポケモンに、ある試練を課し、見事それを成功させると、レベルツーとなる
レベルが上がったポケモンは、レベル上昇の作用で、タイプの根源となる『ホロン』を強制的に書き換えられ、組み合わせによれば、弱点無しのポケモンも出来る
一昔前までは、人工的にレベルを上げることが出来、そのシステムはかなりの脚光を浴びた
が、その際の拒絶反応の強大さ
そして、通常の方法でレベルを上げるトレーナー
さらにはポケモンの愛護団体からの厳しい批判を受け、それは禁止された
因みに、レベルは『1』『2』『3』『4』まであり、その上を行くのが『超進化』
一度レベルツーまであげてしまえば、あとは経験値を吸収し、自動的に上がる
が、超進化になるには、さらに難易度の高いステップを踏まねばならない
最も高い経験地が必要といわれる『3』→『4』の間に必要な経験値の、数倍の経験値を必要とするうえ、さらに厄介な手を踏まねばならない
まず、規定の経験値を得た時点で、“仮の£エ進化となる
確かにその時点では、もうすでに強力な力を持つが、真の超進化となるには、『伝説のポケモンを、その状態で倒すことが必要である』
仮でも超進化となれば、伝説のポケモンくらい・・・と思いがちだが、伝説のポケモンの強さは桁違いにある
とても一対一で太刀打ちできるレベルではないので、通常なら人海戦術を用いて攻撃する
そして、絶体絶命な状態といえるのが、この一対一の状態である



「スサノオ!リーフブレード!!!」
猛烈なスピードで飛び掛る

『グゥォゲス!!』
(なめるな!!)

レックウザは攻撃を放ち続ける
が、身軽にその攻撃を避けると、まず一発目の斬撃を浴びせる
が、レックウザは怯まない


『ズゥェクノ』
(まだまだ!)

かなり接近したスサノオに飛び込むが、回避されてしまう
スサノオはそのままルビーの近くまで寄ると

「次で決めるぞ!行け!!」

右へ左へと翻弄しながら突進していく


『ルァウアオォ!!』
(破壊光線!!)
「避けろ!!」

目の前から迫り来る光線を身を翻して避ける
スサノオはレックウザの目の前まで迫る
レックウザは大技の連発、しかも破壊光線を複数
レックウザの体が悲鳴を上げる
スサノオは刀を振り上げる
が―


『グオオオオオオッ!!』
「!!」

スサノオの目の前には、レックウザの『尾』
強靭な尾は地を削りながらスサノオに迫り来る
「クソッ!!」






ドゴォ・・・






鈍い音が響く
敵に当たり、止まった尾
尾を止めたのは、炎に包まれた腕
もといルビー
真っ黒になったルビーの腕、そこから噴出す炎
強烈な攻撃にもかかわらず、レックウザの攻撃をピタッっと止めた

「行けェェェ!!!!」

スサノオは光の刀を振り上げ、ルビー、そして尾を飛び越える
そして、その攻撃力の塊は、レックウザの首元を切り裂いた











「ふぅぅぅ・・・」
右腕の炎を止め、黒ずみも右手まで引かせたルビーは大きく息を吐く
「超進化は・・・出来たか?」
スサノオはコクンと頷く
「うし・・・じゃあ・・・」
ルビーはレックウザに向き直る

「ゾゥェォイ チュェウェ」
(“契約≠ウせてもらおうか?)
『ルヲゥ ゥゥィ サスゥ』
(やはり ・・・ それか)
「ヌイ ワウェウ」
(あぁ そうだ)
『ルヅデイ ヌゥ?』
(もう一度訊く 何故?)
「ゥゥィ ルオディェヲェ」
(・・・ そのうち分かる)

『チェウエ ゥゥィ ゾォェゥルル』
(面白い ・・・ 契約しよう)
「ルェゥィ」
(礼を言う)


キィィィィィィィィ・・・・

ルビーの右手が藍色に輝く
それを、レックウザにかざす様に上に持っていく
レックウザは、眩しそうに目を閉じるが、再びゆっくりと開く
すると、レックウザがどんどん緑の光になっていき、バラバラになっていく
それはルビーの手のひらへ・・・
光は球状をかたどり、固体化する
それは、モンスターボールのような、半透明の緑の玉となった

「“契約=E・・完了だな」
ルビーはそう呟くと、倒れているイシス、セトをボールに戻し、立ち去ろうとする
が―


そこにはシデが立っていた



第十一話へ続く…
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