(この話は、THE LEGEND OF TWO TRAINERSの第六十三話、第六十四話を読んでおくと、多少話が飲み込めます)







『リュェイ ゲラォワ?』
(何を 言っている?)
「あぁ!?だからお前は何モンだって聞いてんだよ!!」

さっきまでのルビーとは、口調が違う
後頭部に攻撃を受けてから、ルビーの言葉はもっと暴力的に
その上、さっきまで戦闘をしていたカイオーガを忘れている
元のルビーと、対になるような存在



―ルビーの二つ目の人格だ―

ただ、もう一つ対称的なのは、身をまとう炎
激しく火を噴いていたさっきとはまた対照的に、静かに炎は燃えていた


「だから一体・・・!」
『リャォ フムァィ』
(死ね 小僧)

カイオーガの口から、強烈な水流が発射された
ルビーはそれに衝突し、吹っ飛ばされた
ルビーはまっすぐサファイアの方へ―

「きゃあ!!」
サファイアは頭を抱えてその場に伏せた
ルビーはそのわずか上を通過
サファイアは頭が少し暑いのを感じ、
「(今の人…燃えてた!?)」
その重大な問題に気付くと、その人が吹っ飛ばされた方向に駆けた



砂埃の中には、ルビーが倒れこんでいた
体を包む黒いあざも、炎も消えていた
服も少し焼け(十分少しだけなところですごいが)、首下まであった髪も焼けていた
ショートカット程まで髪の焼けたルビーは、一見別人にも見える

「ぅ・・・つ・・・・」
ルビーは頭を抑えて起き上がった
「ナンなんだよ…ったい…」
痛みの余り涙目になりながらカイオーガの方を見た
すると、ととと…とサファイアが走ってきた

「大丈夫ですか!?」
サファイアはルビーの元に駆け寄ると、彼の腕に触れた
「(あっっ…!…こんな熱さじゃ体がまともに動けるはずが…)」



人間の体は、体温は四十数度までしか耐え切ることが出来ない
それを超えると体の機能が低下したり、悪ければ壊死
ルビーはさっきまで紅蓮の猛火に包まれていた
しかも長時間、体温はグングンと上昇

「ゲッホ・・・!・・・・こンのヤロー・・・・!!」
「ちょ・・・ちょっと待って!」

ルビーはもう喧嘩腰
圧倒的に大きさに差のあるカイオーガに喧嘩…って時点で無謀なのだが…

「ンだよ!さっき会ったお嬢!!」
「無謀だって!ム・ボ・ウ!やりあうんなら作戦!逃げるよ!」
サファイアはルビーの手を引いて、出口のほうへ走っていった


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「ところで…。あなた、名前は・・・?」

かなり離れた
そんな早くはカイオーガも来ないだろう、ただでさえ水の上だ


「俺ン…名前…?」






『シン…さん…?』
「シン…?俺の…名前…?」







「俺ン名前…。シン…(のハズ…)」
「シン・・・?分かった(あれ…?確かそんな名前の人が他にも…)」



「お前…ポケモン、持ってるのか?」
「うん、でも炎タイプだから…」
サファイアはバシャーモの眠るモンスターボールを取り出す
水タイプのポケモンに対して、炎タイプのポケモンは余りにも劣勢
その上あのカイオーガは氷を自在に操る
接近戦を用いるバシャーモでは、とても太刀打ちは出来ない






「それがどうした?逃げれりゃいいんだろ?」「・・・!?」



「俺にゃあ…コイツがある…」
「・・・・!!え・・・!?それって・・・!」





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『グヲゥ キチュァラヲィ?』
(何処に… 行った・・・?)






『グリャマウ クワァァヴ!!』
(まぁいい 絶対零度!!)
カイオーガはそう叫んだ
そのとたん、カイオーガの周りに氷が現れ、それが急速に広がっていった
その氷は、洞窟を辿り、シンとサファイアのいる方へ恐るべき勢いで侵攻していった


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「ホントに…できるの…?それ…」
「あぁ、まぁ見てろって」
シンはそう言うと右手の甲をすっと見せた
その手の甲には藍色の四角形が、妖しく輝いていた

シンは洞窟の先(カイオーガの方)に掌を向けると、目をゆっくり閉じた



キィィィィィィィィィィィィィ・・・・

その掌にも藍色の四角形が現れた
すると、その四角形は掌を離れ、大きくなりながら 洞窟を塞いだ
直後―――



ドオオオオオオォォォン・・・・・・!!



その藍色の光が囲んでいた場所に、突如半透明の藍色の壁が現れた
吹いていた冷風も止まった
完璧な壁となっていることが分かる



「どんなモンだぁ?」
シンはそう言うと、足元にあった小石を拾い、思いっきり振りかぶって壁に投げつけた
小石は、木っ端微塵に砕け散った
「上出来!」

「これって…光る手の最終段階…世界に一人しか現れないという…奥義『創造』…」



光る手には三つの段階がある
一つ目の段階が光る手を習得直後
二つ目は光る手を極め五つの力を使いこなすこと
その五つの力は、それぞれ『補』『撃』『従』『奪』『獣』と呼称される
『補』はその光をポケモンに当てることによって、強化できる
『撃』は光を強めてそれに触れることによってそれを破壊できる
『従』はある程度体力を減らしたポケモンを、モンスターボールのように捕獲できる
『奪』は触れた相手のポケモンの力を一時的に奪うことが出来る(余り多くない)
『獣』は後で説明することにしよう
それを更に極めることにより、光る手の七つの奥義を習得できる
が、それはごく稀であり、すでに習得している人が力を失ったときに、最も力の強い人に受け継がれる
『創造』は、何もない空間に極めて硬質な物質を作り出せる
使いようによってはそれで壁を作ったり、武器を作ったり…
また、奥義発動時には手の甲に独特の紋様が現れるのが特徴といえよう
この『創造』の場合、四角形が現れる


その藍色の壁は、ぴったりと洞窟を塞いだ
「こんだけ密度がありゃ、大丈夫だろ」
シンはそう言うと、その場に座り込んだ
氷が辿りつくまでまだ時間がある
作戦ならその間に考えられるだろう

だが、サファイアには一つ疑問があった



「ねぇ…シン君…。ルビーって人、知らない?」
「ルビー・・・?しらねぇな」
「!…そう…」




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その後二人は逃げるため、そしてカイオーガを倒すための作戦を考えていたのだが――


――来てしまった――



「…で…ってシン君、聞いてる?」
「…来るぞ」
「えっ?」


洞窟を壁越しに伝わる音
そしてその壁越しに、突き進む氷が見える
「来た…」
サファイアはそう言うと、壁に手を当て、その様子を見た
シンもそれを見に、近づいた


氷の先端は槍のように尖っていた
そしてその氷の槍は、まっすぐ―まっすぐ――






バリィィィィィィン・・・!!!!



藍色の壁にひびが入った
しかも、全体に広がるほど大きい、致命的なヒビ
サファイアはそれにあっけに取られ、身動きが取れていない
氷の槍は、再び下がり―またまっすぐ―――――


「危ねェ!!!!」

































「え・・・・・・・・・・?」
ついさっきまでサファイアと壁までの間には五十センチほどしかスペースは無かった
そのスペースには、何も無かったはずだ
が、次の一瞬にはそのスペースには人、シンがいた
「シン・・・?どうしたの・・・」「離れろ・・・!!」
そう言うとシンは、右腕を後ろに回し、サファイアを後ろに突き飛ばした
その掌は真っ赤にぬれている
「え・・・・・・!?」
シンは右手をサファイアに向けたまま叫んだ
「離れろ!この馬鹿やろう!!」「ッ・・・!」
サファイアはそろりそろりと後ろに下がった
シンの足元には赤い水たまりが出来ていた


ドオオオオオオオオオオオオオッッッッ・・・!!!!!!


サファイアの目の前に、再び藍色の壁が現れた
本来半透明な色であるはずのこの壁も、反対側がほとんど見えない
理由は単純、壁が分厚いから



「・・・・・・・・・・・・・・・」
サファイアは呆然と立ち尽くした


今、目の前には壁がある
その壁の向こうにはシンがいる



シンの右手や足元は、赤くなっていた
その赤は―――血―――


シンはカイオーガの攻撃を受けていた
たった一撃の攻撃で壁に大きなヒビが入った
それに再び入った攻撃―悪ければ貫通されるだろう



突如入り込んだシンと、血、カイオーガの攻撃、この事から導き出せるのは―――



「え・・・・!?ちょ、シン君!?シン君!!!」

サファイアは壁をドンドンと叩く
血が出ていたということは攻撃を受けていた可能性がある
しかも、シンとサファイアを離すように壁を張った
サファイアは無事でも、シンは・・・・・・・












ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・!!!!!!





突如洞窟が揺れだし、崩れ始めた
それと同時に、洞窟の奥から更に大きな轟音が響いた
そこからは緑の龍、レックウザが、洞窟に沿うように体を滑らせて近づいていた
レックウザは壁ギリギリのところで止まった
激突寸前で止まったその列車の上には、一人の少女が


「サファイアちゃん!」
ミキはそう言いレックウザから飛び降りると、サファイアを抱きかかえて再びレックウザに乗った




直後――――洞窟は崩れ落ちた
















緑の列車はズズズと後ろに下がっていく
そしてその目の前には、岩盤が次々と落ちてきた

















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「センパイ、どうですか?マスターの様子」
「はい…やっぱりこの回復力は異常ですね…光る手の光を少し当てただけで傷がふさがって…」
「流石マスター…ってトコですか…。アギラさんからの指令は出てますか?」
「えっと…。・・・・・・・・・・・!!」
「センパイ?」





「『卍』がカントー地方、ハナダ付近で確認。同時に『地』『天』が双子島の封印が解けたらしく行動を開始!更に…」
「・・・・・・・」








「ハガネ山で豪雪。上空に正体不明の飛行物体を確認。恐らく『絶』…。各部隊行動に移れと…指示が…!」
























後書きへ続く…
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