幕間劇、アルフの遺跡にて
「うっわ〜!! にゅるにゅるしてるー、おもしろーい!!」
ゴールドはここ、『アルフのいせき』で 新しく仲間になったウパーに興味津々だった。
このウパーは、『水』タイプであるが、『地面』タイプも持っているため、電気を受け付けないという 変わり種。
人のひざほどの背の高さの 水色のポケモンを ゴールドは面白がってなでまわしている。
ウパー自身も、さほど嫌がってはいないようだが。
「きゅっ?」
チコリータのミドリが、不思議そうな顔で 後ろを振り返った。
ウパーとたわむれているゴールドの後ろから、何者かが近づいてきたのだ。
その『何者か』は、ゴールドの真後ろで砂利(じゃり)をこするように立ち止まる。
「キキョウジムの戦い、お見事でした。」
背後から、澄んだ女の人の声がして、ゴールドは振り返った。
「・・・・・誰、ですか?」
一応、つたない敬語で返事を返す。
ゴールドの背後に立っていたのは、黒い、ハイネックの袖なしワンピースをその身にまとい、
茶髪を腰まで伸ばし、シルバーによく似た銀色の瞳を持った、ゴールドより、2つか3つくらい、年上の女性だった。
見た目だけならずいぶん若いのだが、仕草や物腰がずいぶんと大人びている。
「私の名前はブルー。
ゴールドとは一度会ってるけど・・・覚えていない?」
「えっ?」
ゴールドは 目の前の女性を必至で思い出そうとした。
だが、ほとんど全くと言っていいほど、覚えている人間のリストと一致しない。
「キキョウジムの、受付の・・・・」
「あっ!! 受付のお姉さん!?」
言葉が引き金となって思い出す。
服こそ違うが、その長い髪も、銀色の瞳も、キキョウジムでゴールドを強引にジム戦に参加させた『受付のお姉さん』そのものだ。
銀色の瞳の女の人は ゴールドが納得したタイミングを見計らってクスリと笑った。
「でもね、それだけじゃないのよ。 私にはもう1つの顔がある。
私は、『3人目のトレーナー』・・・・・・」
「えっ!?」
ゴールドは驚き、オーバーリアクションにもほどがあるというほど 上半身をのけぞらせた。
ブルーと名乗る女は ゴールドの反応を面白がるかのように続きを話す。
「嘘(うそ)じゃないわ、朝、ゴールドが寝てるときに置いてきたのよ。
ごめんなさいね、ああ書いた方が、面白みがでるんじゃないかと思って・・・・・」
ブルーと名乗る女性は(世間一般から見れば『少女』だが)悪戯っぽい顔で、舌をちょっぴりだした。
「ど、どうして、あんな手紙を?」
ゴールドは まだ、状況がよく呑みこめて(のみこめて)いないようだった。
口をぱくぱくさせながら、なんとかつむいだ言葉を放り投げる。
「私事(わたくしごと)があって、ワカバタウンに行ったときに、偶然、ゴールドたちを見かけたの。
本当はウツギ博士に用事があったんだけど、面白そうだから放り出して追いかけてきたわ。」
「・・・・・・ゴールド・・・『たち』?」
ブルーの何気ない一言に、ゴールドはいやな予感を感じて、顔を引きつらせた。
次の一言は、その予感が見事に的中していることを教えてくれる。
「そう、ゴールドと、シルバー!!」
ゴールドのこめかみに 青筋が走る。
硬直しているゴールドに、ブルーはさらに混乱するような一言を・・・
「それでね、1つお願いがあるのだけれど、
あなたからお願いして・・・・・・シルバーに、会わせてくれない?」
「・・・それ、本気で言ってます?」
しばらくして、ようやくゴールドは口がきけるようになった。
思いきり疑い深くなっている瞳で 相手の銀色の瞳を見上げる。
「えぇ、もちろん本気よ。
だけど、さすがに すぐに『はい、いいですよ』なんて 言ってくれるとは 思ってないわ。
すぐに答えは出さなくていいの、ゆっくり考えて!!」
鼻先がくっつきそうなほど 顔を近づけると、ブルーは銀色の瞳をきらめかせて笑った。
びくりとゴールドが硬直し、その場でしりもちをつくと、クスクスと笑って背中を向ける。
「See you agein Gold!!」
ブルーは長い髪をたなびかせながら去っていった。
あっという間に静かになった『アルフのいせき』には、呆然と座り込んでいるゴールドとミドリ。
「ねえ、ミドリ・・・・・・・」
「きゅう?」
「『しーゆー』って・・・・・・たしか、『またね』って意味じゃ・・・・・」
また会うのかもしれない、そう思っただけで気が重くなる。
ゴールドは この一方的に話を進めていった『お姉さん』に、ため息をついた。
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