ワカバタウン
はじまりを つげる かぜがふく まち
1、ミドリ(2)
ワカバタウン、この小さな町についたとたん、草のにおいが、ぼくの鼻をくすぐったんだ。
初めて来たときから思ってたけど、ぼく、この町が好きだ。
あいかわらず 足のはやい ぼくのご主人様、ゴールドの後を追って走る。
前は すっごくがんばらないと、追いつけなかったんだけど、今はそんなこともないもんね!!
青空ににあう、ぼくの名前と同じ 緑色のやねの家が見えたら そこがゴールドの家だ!
ぼくの名前はミドリ。
1年前に『うつぎはかせ』につれられて、この町にやってきた。
その前は・・・・・・よく覚えてないや。
いろいろあって、今はゴールドのところでポケモンやってる、よく、いっしょにあそぶんだ!!
「ただいまぁ!!」
ゴールドは すっごくうれしそうな声で、ゴールドの家のドアを開けた。
中から、おいしそうな うん、おなかがへってきたぞ、ごはんのにおいがする。
きっと、ゴールドのお母さんが ゴールドのために 作ってまってるんだ。
ぼくは ここでまってるんだけどね、大きなポケモンは 家の中に 入っちゃいけないんだ、しってた?
「ミドリ、入らないの?」
・・・・・・いいの?
「僕ん家は 大抵のポケモンが入っても大丈夫なように作ってあるから、大丈夫なんだよ。
・・・・・・あ、そっか、体が大きすぎて、ドアを通らないんだ。
一旦(いったん)ボールに入ってくれる?」
はーいって言って、ぼくは じぶんからモンスターボールの中に入ったよ、えらいでしょ?
はんぶんとうめいな ボールの上がわから ゴールドが手を出してぼくの入ったボールをひろった。
よく ぼくが上からゴールドのことを見るのに、この時だけはさかさまになって へんなかんじ。
ぼくの入ったボールを持って ゴールドは そのまんま、まわれ右して家の中へはしってく。
「お帰り、ゴールド!!
そろそろ来る頃だと思ってたのよ、手、洗ってらっしゃい!!」
ゴールドは 元気よくおへんじすると ぼくをモンスターボールから出して、せまいろうかの方へはしってった。
ぱたぱたってスリッパの音で後ろをむくと、ママさんが りょうていっぱいに おいしそうなおりょうりをもって ぼくのことを見上げてる。
この人もやっぱり、さいしょに会ったときより ずっと小さく見える。
・・・ぼくが 大きくなったんだけどね。
「あら、もしかしてミドリちゃん?
ずいぶん大きくなったのね。」
テーブルの上におりょうりをならべながら ママさんはぼくに話しかけてきた。
こうして見ると、けっこう顔が ゴールドににてるかも・・・
「そうだよ、ミドリ、頑張り屋さんだから!!」
ろうかのむこうからゴールドが走ってきた。
ゴールドはすっごく、うれしそうにわらうと、アクアや、ホワイトや、ディアのボールをひらく。
「紹介するね、旅先で仲良くなった、右から ディアにホワイトにアクア!!
後、カイトっていう、水ポケモンがいるよ。」
「あらあら、お友達がいっぱいね!!
晩御飯、たくさん作って待ってた甲斐(かい)があったわ!!
たくさん作ったから、ポケモン達も たくさん食べていいのよ!!」
ゴールドはジャンプすると テーブルのところまで走ってって、ごはんを食べはじめた。
「食べていいんだよ」って、ぼくたちにも ママさんの作ったごはんを食べさしてくれる。
食べたことのないあじの あったかいごはんは すっごくすっごくおいしくって、あわてて食べて、ぼくはしたをやけどしちゃった。
その日はゴールドの家でゆっくりねて(はじめて おゆに入ったんだよ、あつくてびっくりした!)、
つぎの日、ぼくはゴールドにつれられて おぼえのあるたてものまで あるいていった。
たしか、『うつぎけんきゅうしょ』っていったかな?
ぼくがゴールドとシルバーに会うまで いたところだ。
「おはようございます。」
ゴールドのこえ、ちょっとだけ元気がなかった。
中から 男の人のこえがきこえると、大きいほうのドアをあけて、ぼくもいっしょにつれて ゴールドは中に入ってく。
「お久しぶりです、ウツギ博士。」
ゴールドは大人の人に話すことばで うつぎはかせに話しかけた。
うつぎはかせは まあるいめがねをなおして、ぼくとゴールドをみてる。
「ゴールド君、それに、そのポケモンは、あのチコリータかい?
ずいぶん 大きなポケモンへと進化したんだね、ゴールド君、トレーナーとしての才能あるよ!!」
ゴールドはわらってたけど、ちょっとかなしそうだった。
ぼくのほうを見ると、バトルのときに見せるような しっかりした目で うつぎはかせのほうを見る。
でも、すぐに またさみしそうな顔。
ぼくのほうを見上げて、ゆっくりと話しかけてきた。
「ミドリ、もう半年以上経つよね、君は、旅をしてるのと、研究所にいるのと、どっちがよかった?」
・・・・・・・・・?
ゴールドの すごくすごくさみしそうな顔、ぼくまでいっしょに さみしくなってくる。
「僕はこれから、ポケモンリーグに挑戦しに行く。
君が今まで受けていた傷の 何倍もの攻撃を 受けるかもしれないんだ。
ロケット団に狙われてた時と違って、今なら選べる、
僕と行くか、研究所に残るか、君自身に 選んでほしいんだ。」
「・・・りゅうぅ?」
・・・・・・なんだかよくわからないけど、ゴールドがさみしいのはやだなぁ。
ぼくがそう言うと、ゴールドは たちまち元気になって、ぼくの首に抱きついてきた。
「そんなわけで、ウツギ博士、ミドリの育ち具合を見せに来ました!!」
ゴールドは目から水をこぼしてるけど、すっごくうれしそうなかおで おっきな声で話す。
「・・・そんなわけっていうのが、よく判らないけど、まぁ、いいか。
これからもチコリータ・・・じゃないね、メガニウムを よろしく頼むよ、ゴールド君!!」
「はいっ!!」
ゴールドは いっぱいいっぱいわらった。
この いっぱいいっぱいわらった顔、ぼく、好きだ。
「ありがと、ミドリ!」そう言って、はしりだす。
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