4、カイト




・・・・・・まぁ、彼に出会ってから、私の体に 傷が増えていったのは確かですね。
でも、私が 彼から離れようとする気は、全くありませんよ。
私は、私の意思で、私が付いていきたいから、彼に付いて行っているのですから・・・・・・


私の名はカイト。 種別は『マンタイン』と言われていますね、人間たちの間では。
『うずまきじま』と呼ばれる所で 私達の長(おさ)、ルギアにタンバに送るように命ぜられてから、
ずっとゴールド達と一緒に 旅を続けています。
彼の手持ちのポケモンの中では 私が1番の年よりですけどね、
あ、でも!! 戦力として 衰える(おとろえる)つもりは 全くありませんよ!!


今日は、ゴールドと一緒に 特訓をしに行く日です。
ほら、私ってば、せっかく大きな翼を持っているのに、相当の勢いがないと 飛ぶことが出来ないでしょう?
それでは、ポケモンリーグまで行った時、動けなくなってしまう可能性がありますから、
ボールから出た時、すぐに動き出せるようになるように、特訓するのです。

・・・・・・言うのは簡単ですが、いざ実行となると、なかなか上手くいかないものですね。
先ほどから、何十回と特訓しているのですが、草の上をバタバタと飛び回るばかりで・・・・・・
「・・・やっぱ、フスベの時みたいに すぐに上手くは行かないね。
 『バブルこうせん』も、何回もやってるから、もうそんなに 威力(いりょく)でないでしょ?」
そのとおりですね、海の上ならば、広い場所があるから 勢いもつけられるのですが、
ポケモンバトルのフィールドのような陸の上では、私は勢いもつけられませんから・・・
『バブルこうせん』では、威力(いりょく)にも限界がありますしね・・・

でも、こうやって海岸の上を跳ねまわっていると、まるで初めてゴールドと会った時のようですよ。
私、ゴールドとホワイトの関係がうらやましくって、砂浜の上を跳ねまわって 駄々(だだ)をこねていましたっけ。
・・・さぁ、力もつきましたし、私はまた海へと戻りますか。
特訓を続けなければなりませんし。
「・・・あっ、ちょっと待って、カイト!!
 ちょっとボールに戻ってくれる?」
・・・・・・なんでしょう?
とりあえず、ボールには 戻りますけど。
「ほらほら、この わざマシン使えば、上に上がれるかもよ?」
・・・それは、『わざマシン』ではなく、『ひでんマシン』では・・・・・・
でも、それはいい考えかもしれませんね、やってみるとしますか。 そんな賭けも、嫌いではありませんし。

わざマシンやひでんマシンを使うのは、これで3回目ですね。
・・・それだけ、私の覚える技は、たいしたことがないということなのでしょうか・・・?
しかし、それでもゴールドは 私のことをパートナーとして認め、側においてくれているのですね。
ならば、私も全力を尽くして、それに応えることにしましょうか。

「それじゃ、特訓再開だよ!!
 今度は海のほうへ向かって投げるから、がんばってね!!
 いっくよぉ〜!!」
ゴールドの手が 水切りのように下手から上手へ、より遠くへ飛ぶようにしなっていきます。
それは、私の入ったボールを飛ばすため。
タイミングを合わせて、私は外へ出なければ、・・・そろそろですね。
「・・・今だよ、カイト、『たきのぼり』!!!」
水の流れを作りだし、荒れ狂う波を、轟音(ごうおん)を立てて落ちてくる 滝さえも上昇する、水タイプの大技・・・
これなら・・・・・・上昇できる、海を、空に変えて!!!


「・・・・・・やったぁ!!
 飛べたよ、空に行けたよ、カイト!!」
ゴールド、跳ねあがって喜んでいますね、そこまで喜ばれると、私もポケモン冥利(みょうり)につきますよ。
空、青いですね、今日は1日中 いい天気になりそうですよ。
もう少し飛んでいてもいいですか?
この 綺麗(きれい)な景色を、もう少し楽しんでいたいのです。

その後は、同じ練習を 幾度(いくど)となく繰り返しましたが、
何回やっても順調で、私のポケモンリーグに対する不安は、ほとんどと言っていいほどなくなりました。
太陽が 空のてっぺんにやってきた頃、ゴールドはそろそろ休憩にしようと言って、私を海に出しました。
「・・・・・・あ、そうだ、カイト。
 たぶんね、アクアが 川の方から流れてくると思うんだ。
 迎えに行かないと、どこにいくか分からなくなっちゃうし、そろそろ迎えに行こうよ。」
アクアが・・・ですか?
・・・確かにそうですね、こんないい天気の日は、アクアは川にいることがほとんどですし、
彼なら、流されかねませんね。
行きましょうか。



「・・・・・・あ〜、やっぱり来たよ。
 カイト、川の方へ押し戻して!!」
まったく、世話の焼ける・・・・・・・・・
体重もけっこうあるのに、のんびりしすぎなんですから・・・・・・!!

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・の?」
ほら、アクア!!
気が付いたんなら、自力で岸(きし)まで戻ってください!!
「・・・まったく、ここにいたら 絶対流れてくると思ったんだよね!!
 こんな 海近くまで流されるまで、全然気付かないんだから!!」
「・・・・・・・・・のぉ?(※『NO』ではない)」
「その通りだよ、さっ、ボールに戻って!!
 もうお昼は過ぎてるんだから、早くご飯食べとかないと、おなかペコペコで死んじゃいそうだよ・・・
 ・・・ホントに、のんびり君なんだから・・・」


「・・・ま、それが面白いんだけどね。
 ね? カイト。」
ええ、みんな、楽しい私の仲間たちですよ!!
どれだけ、手が かかっても・・・・・・・・・ね。

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