5、ホワイト
(うん、決まり!!
首のまわりの真っ白い毛、すっごくきれいだから、だから、君の名前は、ホワイトだよ!!)
・・・・・・そう言われたのが、何年も 前の話みたいに感じるな。
ジッサイは、まだ3ヶ月ちょっとしか たっていないはずなんだけどな・・・
オレ、どうして あのトレーナーのこと好きになっちまったんだろう?
オレの名前はホワイト、種類はエーフィ。
力強いエスパー技と、ちょっとばかしだけど、人とテレパシーで話せるのがジマン。
んで、うららかな 日曜日の午後、オレのご主人、ゴールドの家を抜け出して、ただいまプチ家出中。
シルバーの所に行こうと思ってるんだ。
・・・・・・え? それじゃ『家出』じゃないって?
悪かったな、生まれてから1年もたってないんだよ、あんまり頭はよくないんだ。
前に話した時、海の見えるみさきに、シルバーの家があるって聞いたよな。
だったら、海のすぐ近くを歩いていれば、多分見つかると思うんだけど・・・・・・
ワカバタウン、小さな町って聞いてたけど、オレが思ってた以上に 広い町なんだな。
あ、建物が見えてきた、あれがシルバーの家かな?
『シルバー、いるか?』
いるんなら いるって、返事しろよ〜、いなかったら いないって〜・・・無理か。
『シルバー・・・』
「何やってんだ、ホワイト?
そこ、海の家だぞ、夏の間しか開いてないし・・・・・・」
・・・・・・シルバー!!
てーぼーの向こうから、遠くからでもよく見える シルバーの赤い髪が見えた。
駆け寄ると、キレイな銀色の目が まばたきする。
シルバーは『買い物』の帰りだったらしい。
バクフーンのフレイムと一緒に 大きなカゴをかついでいる。
「一体どうしたんだよ、おまえ、ゴールドのポケモンの中でも しっかり者じゃねーか。
ちょうちょでも追っかけてる間に、あいつと はぐれたのか?」
『違う!! オレが話があって、シルバーのとこに来たんだ!!
・・・・・・シルバーなら、オレの話、聞いてくれると思ったから・・・』
そう言うと、シルバーは自分の家まで オレを案内してくれた。
でもさ、いまさらだけど、やめときゃよかったかな?
「・・・・・・で、おれに話って、何だ?」
結構広いお屋敷の中の1個の部屋に案内されて、オレの目の前にミルクが出された。
部屋に通すのも、買い物袋の中からミルクを出して 皿に注ぐのも、シルバー1人でやっている。
いまさらだけど、エライんだな、シルバーって・・・・・・
『あのさ、今、オレとシルバーって、こうやってテレパシーで話が出来てるわけだよな。』
「ゴールドに 通じなくなってるんだろ?」
・・・・・・・・・・ええぇ〜!?
何で話してないうちから判るんだよぉ〜!?
「そこまで 露骨(ろこつ)に驚くなよ。
最近のゴールドの表情見てれば、何かあったかな、くらいは分かるって。
隠しちゃいるけど、あいつ、悩みやショックや哀しさみたいなのは、すぐに顔に出るんだ。」
『・・・はぁ〜、さすが幼なじみ・・・・・・
でもさ、ホントにオレにとっては 深刻なんだ。
たった2人だけでも、テレパシーで話せるってのが、たった1つのとりえだったのにさ、
こんな思いしたくないから、ルギアに頼んで、話が出きるようにしてもらったのにさ・・・・・・』
オレがしゃべると、シルバーはパチッと目をまばたかせた。
なにか、変なことを言ったかな?
「ルギア?」
・・・・・・・・・え?
あぁ、そっか、シルバー、ルギアのこと知らないんだっけ。
『アサギとタンバの間の島に住んでる、ジョウトの海の神様のことだよ。
全身銀色してて、エスパー技がすごくって、テレパシーをクシして 誰とでも話せるんだ。』
「それって、もしかして、この羽根の持ち主のことか?」
シルバーはそう言うと、1枚の羽根を取り出して オレに見せる。
銀色をした ふわふわの羽根だった、ゴールドがルギアから渡されたやつだ。
『そーそーそれ、その羽根の持ち主。
オレ、そのルギアの目の前で 変化したんだ、その時にルギアから『なにか、能力をつけようか』って。
それで、ルギアみたいに ヒトと話せるようになりたいって 言ったんだ。』
「それで、テレパシーが?」
『うん。』
シルバーはうつむいて しばらく考え込んでいた。
オレはその間に まだあたたかいミルクを ぴちゃぴちゃと飲み込む。
「・・・・・・もしかしたら、そのテレパシーが通じなくなったのって、おれのせいかもしれない。」
『は?』
めずらしく、シルバーは落ちこんだような表情を見せた。
赤い髪に銀色の目という、およそゴールドとは似ても似つかない顔は きれいにととのっててキレイだってのに。
「エンジュの伝説で聞いたことがある。
海の神・ルギア、空の神・ホウオウ、それに、陸の力、水・雷・炎を司る(つかさどる)ポケモン、
スイクン、ライコウ、エンテイは、密接な関係にあるって・・・・・・
もしかしたら、だけど・・・ライコウと、スイクンが おれ達人間が 捕まえてしまったから・・・・・・」
正直、どうと言うことも出来なかったな。
可能性があるとも言えないし、無いとも言えないし。
パーなオレが、考え付くことっていえば・・・・・・・・・
『うんじゃさ、要するには、オレのレベル不足ってことなんだよな。
しばらくは、ゴールドの能力に頼ることにする、それで、ゴールドに通じるようになるまで、自分をきたえとく。』
何かを言いかけていたのをさえぎって、オレは家の外へと飛び出した。
これ以上、シルバーに迷惑をかけたくもねーし。
・・・・・・・・・・・・がんばらねーと。
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