6、ディア




・・・・・・くちゅん!!
うぅ〜、はながむずむずするよぉ〜、のどの おくも、かしかしするしぃ〜
こんなときは、ママの作った はちみつレモンがあったかいの・・・


あたし? ディアだよ、ときどきピカチュウってよばれてるけど、あたしのなまえ、ディア。
男の子だとおもった? ひどいな〜 こんなにかわいいのに・・・
いまね、またカゼひいちゃって、(ぶりかえすっていうんだって)ママからはちみつレモン、つくってもらったの。

「・・・なさけないな〜、ディアの風邪、フスベでちゃんと治したと思ったのに・・・
 トレーナーなんだから、ディアに限らず ポケモンの体調管理は しっかりしなきゃいけないのに・・・」
そんなこといわないでよ、ゴールド、・・・・・・くちゅん!!
あたしがゴールドのいうことまもらないで、おひさまがあかくなっても あそんでたからいけないの・・・
「まぁ、そう悲観することでもないわよ、ゴールド。
 フスベからワカバに来ると、あの結構な高低差と、激しい温度変化で、旅なれた人でも体調を崩すことが多いわ。
 幸い、ディアちゃんはただの風邪で済んでるんだから、今日は母さんに任せて、ゴールドは外で遊んでらっしゃい!!
 しっかりしたトレーナーでも、まだまだ子供なんだから!!」
ゴールドがね、しゅんとしてにこっとしたの。
そしたらね、「カイトと特訓してくる」って、ボールもっておそとにいったよ。
ママ、そしたら、『はちみつレモン』ってあったかいのみもの、つくってくれたよ。

「でも、こうして見てると、普通のピカチュウにしか見えないわね。
 大体のピカチュウって、戦闘には向かない、ペット用になるのが ほとんどなんだけど・・・」
あたしのなまえはディアだよ、ママ。
ぽっぺふくらませちゃうぞ、ぷう。

ぷしゅっ、

「キャククククク・・・・・・!!」
「まだまだ子供、か、本当に、小さなポケモンなんだけれど・・・
 そんなに ひどくはないみたいけど、一応、お布団に入っとこうか?」
そーいったらね、ママ、ふわふわのもうふ、もってきてくれたよ。
ばさってかぶったら、ふわふわふわふわ、あったかいの。

・・・・・・くぅ・・・くぅ・・・・・・

「・・・・・・こんにちは、ゴールド、帰ってますか?」
・・・・・・・・・・・・うにゅ、しうばーのこえだよねぇ、あれ・・・・・・
パタパタの音がするよ、しってるよ、あれ スリッパっていうんだ。
「あら、いらっしゃい、シルバー君。
 ゴールドならね、「特訓に行く」って言って、朝早くから出かけちゃってるのよ・・・」
「そうですか、
 ・・・・・・あ、おぃ、ホワイトッ!?」
トントンタトンのあしおとだね、ホワイトのあしおとだよ。
おへやに はしってるみたい、おとが ちかくなってくるよ。
『何だ、ディア、おまえ、またカゼひいてんのかよ!?』
・・・なによ、ホワイトがかぜうつしたんでしょ? わざわざ そんなこといいにきたの?
なによ、いーっだ!!
「なんだなんだ、ゴールドチームの切り込み隊長は、実は寝ぼすけで 昼過ぎまでお休みか?」
シルバーだ、ねてたくて ねてたんじゃないよ、ねてなさいって いわれたんだもん。
『違うって、こいつ、フスベの時のカゼ、ぶり返しちまったらしいんだよ。
 んで、さしずめ ゴールドに置いてけぼりにでもされたんじゃねーか?』
「なんだ、風邪引いてたのか。 悪かったな、寝ぼすけなんて言って。
 しっかし、ロケット団を壊滅させるような ゴールドきっての強力ポケモンでも、風邪引くことあるんだな、
 なんだかんだで、結局は生後4ヶ月の赤ちゃん、ってわけか。」
・・・・・・ちがうもん、あたし、あかちゃんじゃないもん!!
なによなによなによ、ホワイトだって ほとんど かわらないとしなのに、おとなぶっちゃって!!
「・・・ディアは、なにをピィピィ騒いでるんだ?」
『オレとほとんど年が変わらなくって、自分だけ赤ちゃん扱いされてるからって、すねてる。』
「わかるのか、ディアの言葉が?」
『ま、な、テレパシーが通じるのは、人間だけじゃないんだ。
 まぁ、ゴールドの手持ちの中でテレパシーが通じるのは こいつだけなんだけど。』

・・・ゴールド? ゴールドっていえばね、そういえばね、ホワイト、きいてくれる?
『なんだよ、ディア。』
ゴールドね、すこしまえに すっごくかなしそうな かおしてたの。
どーしたのって きいたのに、なんでもないよってしか、いわなくってね、そしたら、またかなしいかおするから・・・
『・・・また、ゴールドか・・・あのバカ、ディアにまで心配かけて・・・』
ゴールドはバカじゃないもんッ、ゴールドはゴールドで、あたしのパパなんだから、わるくいわないで!!
『悪かったって・・・それに、何度も言ってるだろ、おまえのとーさん、ゴールドじゃないって。』
「何を言い合ってるんだよ・・・」


「・・・あのゴールドが、哀しい顔?」
そーだよ、こんなふーに、めのはしっこがさがって、くちがへのじで・・・
『いくらなんでも おかしくねーか?
 そこまで落ち込んでる時に、ディアに話しかけられて『なんでもない』なんて答えること、あいつなら・・・』
「ホワイト、これ、今思いついたことなんだけど・・・・・・もしかして、
 ほんとに、もしかしたらなんだけど、ゴールドのやつ・・・・・・」
ねぇねぇ なになに? なんのおはなし?
『一体何なんだよ、じらしてないで、早く言えよ?』

「・・・・・・ゴールドのやつ、ポケモンと話ができる能力、失いはじめてるんじゃ・・・
 あいつの能力、ほとんど 生まれついた時からあったって聞いた、
 本当にもしかしたらなんだけど、それがもし、子供が言葉を覚えるのと、同じような力だったとしたら?
 あいつが年を重ねることによって、その力が、失われていってるんだとしたら?」
『・・・・・・・・・・・・そんな・・・』
ねーねー、なんのおはなし?
ゴールドがどうしたの、ねー、おしえてよ。


あ・・・タンタン、トントントンのあしおとが きこえてきたよ。
ゴールドが帰ってきたよ。


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