日はまだ太陽から顔を出していなかったが、ウェズは起きていた。
今日も朝早くからデッキの掃除をしていた。
もちろん朝早くに起きたのだが、彼はあまり眠く感じなかった。
なぜだか気力がわいてくるのである。
今日は、(予定では、)南ギア島に着く日だ。

「(今日で早起きは終わり・・・。
  まぁ無料(ただ)で船に乗せてもらったのはありがたいけど・・・。)」
そんなことを考えながらウェズは作業をしていた。

数分後、船がざわつき始めた。
どうやら不審な船が近づいているようである。
その事を聞きつけた船員は、デッキから離れ、船内へ入っていった。

船乗りの間では、「ここの海域で不審な船を見たら海賊だと思え」という教訓みたいなものが話されているらしい。
そういうことをロビー(船員の一人)に聞いたことがある。

そして次の瞬間、船の後方から爆発音が聞こえた。
船内から煙が立ち込める。
煙の中からは
「金を出せ。」やら、「やめろ。畜生。」などの声が聞こえてくる。
そして「非難しろ。逃げろ。」という指示。

その指示に従うべきか迷っていた。
その時、「ねぇ。」という呼びかけの言葉。
後ろを振り向くと、自分と同じ年ぐらいの少女が立っていた。

「目撃者を始末すること、それが私の任務。」と少女がいきなり言ってきた。
「まさか、お前も?」そうウェズが聞くと、彼女は笑みを浮かべて、
ハクリューをくりだした。
「ハクリュー“れいとうビーム”。」
ウェズは何とか避けたが、船が悲鳴を上げながら凍っていく。
その後も“れいとうビーム”の雨をウェズは、なんとかよけていた。
彼は一瞬の隙を突いて、ブースターを出した。
「ブースター、“ひのこ”。」
れいとうビームは“こおりタイプ”、ひのこは“ほのおタイプ”なので、ブースターが有利なはずだが・・・。
「(このまま押し切れば・・・。)」ウェズは、そう思った。
「あなた自分が有利だと思っていない?」
少女がそんなことを言い、ウェズは、一瞬驚いた。
「氷は形を変えるのよ。」
その瞬間、“れいとうビーム”は、水流に変化した。
ブースターは、その水流の直撃を免れたようだが、かなりダメージを受けたようだ。そして彼自身も・・・。

「普通の“れいとうビーム”なら大丈夫だったでしょうね。私のハクリューの“れいとうビーム”は、氷から水に変化できる。」

船の後方からの爆発の影響からか、船が沈み始めた。
その影響からか、ハクリューの動きが鈍った。
「(今だ!!)ブースター、“ほのおのうず”。」
ほのおのうずでできた炎が、ハクリューの周りで燃え盛る。
だが、「ハクリュー“しんそく”。」
ハクリューのしんそくが、ウェズとブースターに直撃した。
「っ!!!!!」
彼らは、デッキから海に落ちた。

少女が、近くを通ったモーターボートに、飛び乗る。
モーターボートには、4人乗っていた。
その操縦者が言った。
「目撃者の始末は完了したか?」
「えぇ。」
他の乗船者が、無線を取り出し、それを通じて言う。
「資金集めは、完璧に遂行いたしました。」
『ご苦労。お前たちは、すぐ来い。いいな。』

船は、夜明けとともに沈没した。
オレンジ色の海の中で・・・。
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