「そういえばこんなことも・・・。」
マスターは昔の新聞を取り出した。
その記事の内容は
『研究者の一人、“ビリー”氏一家失踪』
こういう内容だった。
日付は7年前であった。
何故、彼が誘拐されたのか、
マスターは、その理由を話始めた。
「ビリー氏は、もともとこの島の出身じゃ。
 そしてこの島のギア族に古くから伝わる、
 俗に言う“伝説のポケモン”の話に興味があり、
 いろいろと調べていたそうじゃ。
 まぁもともと彼は新種発見の研究者ではなく、
 生物の複製(クローン)に関する研究者だったそうではあるが・・・。」
ロビーは、何故、それが関係あるのか気になった。
ビリー、彼はギア族の伝説について調べていた。
何故調べていたのだろうか。
ロビーはビリーこそが黒幕だとは思った。
「そのビリーが、黒幕・・・ですか?」
マスターは一息ついてから言った。
「どうじゃろうか?
 わしは、そうだとも思うし、
 もしかしたら、別の人間なのかも知れぬ。」

“真実は神のみぞ知る”。
ロビーはこのことばが嫌いだ。
何もかもが分からない、考えるためのヒントを与えない、
そんな状況が嫌いだ。
ただ、今はそれに頼らざるを得ないのだ。
7年前の真実、暗躍する組織の謎・・・。
何がどうなってるのかも分からない。
彼は、今はジョウト―南ギア間の船乗りだが、
元々この島の出身だ。
船乗りになったのは外部のこの島の諸事件に関する情報を探るためだ。
だが、成果は上がらなかった。
苛立ちが募る。
気付けば5年の月日がたっていた・・・。
“ビリー”、とは・・・?。
“伝説のポケモン”とは・・・?

彼は思い出した。
あの組織の始まりは8年前の“ギア狩り”だった。
数々の村が襲われ、生命は消えていった。
シャトル団は容赦なく、犯行に及んだ。
今、ギア族が十数名しかいないのもこのためだ。
“ギア狩り”という忌まわしき過去のためだ。
忘れようとしていた過去がよみがえる・・・。

「どうした?何ぼーっとしている。」
マスターにそういわれて彼ははっと立ち直った。
「いえ、少し・・・。」
「少し疲れとるのかの。
 話は戻すが、石は3つある。
 内、2つはウェズとケーンに持ってこさせる。
 もう一つは、“クロー”が、保護している。
 クローを覚えとるか?」
「え、ええ。あいつが持ってるんですか?」
「と言うよりはむしろ、クローが、管理している。
 そこにおそらく敵は来る。
 奴等も石が3つあることは知っておると思うが、
 判明したのはその一つだけのはずじゃ。」
マスターは続けて言った。
「疲れとるじゃろう?
 少し休むんじゃ。
 これから忙しくなる。」
マスターは休むよう促した。
ロビーはそれに応じるようにした。

彼は目をつぶった。
彼はすぐに眠りに付いた。
目をつぶると、あの日のことが思い浮かぶ。
遠い過去に存在する、平和と恐怖が入り混じる日々を――。
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