ナルクが出してきたポケモンはエビワラーだった。
「(あれ???)」
ウェズは予想がはずれた。
これではせっかく立てていた作戦が・・・。
「見たところヒトデマンを準備していたようだな。
 大方、ゴローンでも出すと踏んでいたのだろう。
 だが残念、オレは格闘ポケモン使いでね。」
彼は呆れたように言った。
「浅はかな戦略だ。」
ウェズは後ずさりを始めた。
逃げようとしたが足が言うことをきかない。
それを見たナルクは、また呆れるように言った。
「オレからは逃げられないといったはずだ。
 もういい。エビワラー!!!」
その声に呼応したエビワラーはパンチをしにかかった。
だがウェズにも勝機が無いわけではなかった。
「(こっちには“サイケこうせん”を放てるヒトデマンがいる。勝機は・・・ある。)」
エビワラーが向かってくる。
ヒトデマンには十分引き付けて“サイケこうせん”を撃つよう言った。
なるべくエネルギーロスせず、かつ技に気付かれても完全には避けられない距離で放たなければならないからだ。
「(もう逃げ切れないし、戦おうにもパワーも向こうの方が上。一発で仕留めなきゃ・・・。)」
エビワラーがパンチで攻撃しにきた。
「いまだ!!!」
ウェズはヒトデマンに支持した。
だが、ヒトデマンはエビワラーの攻撃を受けて湖に飛ばされた。
そしてヒトデマンは湖に沈み、浮かんでこなかった。
「ヒトデマン!!!」
ウェズは何も無い湖に向かって叫んだ。
すると後ろからささやくような声が聞こえた。
「お前が0距離射撃を行うことを予測するのは容易だった。
 オレは“かみなりパンチ”をさせる予定だったが必ず先制攻撃できるよう“マッハパンチ”を打たせた。」
するとナルクはこう続けた。
「助けに行かないのか?」
「え・・・?」
ウェズが振り向いた瞬間、凄まじい威力のパンチが、ウェズの腹を捉えた。
ウェズも湖に飛ばされた。
彼はカナヅチではなかったがパンチの衝撃で完全に意識が飛んでいた。
湖に叩きつけられると彼もそのまま沈んでいった。
湖畔ではナルクがぽつりと言った。
「“ばくれつパンチ”。」
彼はしばらく湖を眺め、ウェズが浮かんでこないところを見るとこの湖を去ろうとした。
「エビワラー。石は奪ったか?」
エビワラーは赤い石を持っていた。
「フフフ。よくやった。」
その時、湖から水しぶきが上がったような音をナルクは聞いた。
彼が振り返るとそこにはウェズが立っていた。
「生きていたか。」
「石を返せ!!!」
「ヒトデマンはどこだ?見殺しにしたのか?」
「ヒトデマンなんていない。いるのは・・・。」
ウェズの後ろからスターミーが出てきた。
「“サイケこうせん”!!!」
「エビワラー!!!」
エビワラーは“サイケこうせん”を避けた。
「“こうそくいどう”。」
ナルクはエビワラーに指示した。その瞬間エビワラーが消えた。
ウェズとスターミーは身構えたが、何も起こらない。
よくみるとナルクの姿も無い。
「奪われた・・・。」
ウェズはその場で崩れ落ちた。
追いかける余力などもう無かった。
石はおそらくエビワラーの“どろぼう”で盗られたのだろう。
“ばくれつパンチ”の寸前に“どろぼう”をしたに違いなかった。
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