ウェズは取り敢えず山を降りることにした。
ここの小屋に来るまでの道のりは大体覚えていたので
さほど迷うことは無かった。
しかし彼は何か気配がするのに気付いていた。
ナルクと名乗る先程の幹部だろうか。
ウェズは立ち止まって辺りをうかがった。
耳を澄ませ、気配の正体を探った。
しかし、聞こえるのは蝉のような声だけであった。
彼は忘れていた季節を思い出した。
今は初夏だったのだ。
しかし、彼は今、そんな声を聞き入っている暇は無かった。
ウェズはまた歩き始めた。
すると、その気配も動き始めた。
彼はついにその気配を感じ取った。
「オオタチ!!!“シャドーボール”!!!」
オオタチはボールに出てから瞬時に漆黒の弾を撃ちだした。
その弾は茂みの中に入り、何か鈍い音を伴って、散った。
すると、どこからか声がした。
ウェズにはその声がはっきり聞こえた。
「あぁ〜やっぱり見つかっちゃったか・・・。」
「どういうつもりだ!!!」
ウェズが聞き返す。
「あなたに答えることなんてない。だけど・・・一つだけ言える事があるわね。」
すると茂みの中から一人の少女とハクリューが現れた。
「お、お前は・・・。」
「久しぶりね。ウェズ。」
ウェズは突然の再会(?)に戸惑った。
しかし、彼は我に返ると身構えた。
「そんなに力まなくていいわよ。すぐ楽にしてあげる。
ハクリュー!!!!!」
ハクリューは彼女の声に反応し、“りゅうのいぶき”を放った。
オオタチもそれに対抗し、“シャドーボール”を撃つ。
「そうそう。あなたにはまだ自己紹介をしてなかったわね。」
彼女も戦闘モードに入り始めた。
「私の名前は・・・スノウ!!!」
ハクリューが“れいとうビーム”を放つ。
「オオタチ!!!“かげぶんしん”!!!」
ハクリューの“れいとうビーム”はむなしくも分身に当たった。
「少しは力をつけたようね。」
ハクリューは“れいとうビーム”を連発する。
「(こおり状態にする作戦か!!!)」
ウェズはオオタチに“かげぶんしん”で避けるよう指示を出した。
外れた“れいとうビーム”は近くにある木々や岩場を凍りつかせる。
次第に周り一帯が氷の世界へと化した。
ウェズ達は氷に足を取られ、上手く動けない状態だ。
一方、彼女のハクリューは氷の上を自由に動ける能力があるからだろうか、さほど氷の床に苦戦する様子は無かった。
「“シャドーボール”!!!」
オオタチが“シャドーボール”を二弾連続で撃つ。
しかし無情にも“りゅうのいぶき”で相殺されてしまった。
さらにウェズのオオタチは自分の攻撃のショックでバランスを失い、床を滑り始めた。
「オオタチ!!!!!」
ウェズはオオタチを追いかける。
そのために彼もバランスを失い、転倒した。
何とかオオタチを止めることはできたが、立つのが困難になってしまった。
「(やばい。ここで攻撃されたら・・・。)」
ウェズは必死に立ち上がろうとする。
「もう遅いわ。“しんそく”!!!」
ハクリューが猛スピードで突進してきた。
なおも“かげぶんしん”で避けるよう、ウェズは指示したが本体は動けなかった。
「オオタチ!!!」
ハクリューの攻撃はオオタチを捕らえ、オオタチはその攻撃を受け、大ダメージを与えられた。
「ハクリュー!あの子を楽にしてあげて。」
ハクリューはオオタチの所へ近づいていく。
オオタチの体力は残り少なく、弱い攻撃でも耐えられるかどうかわからなかった。
ハクリューは、尻尾を振りかざした。
「“たたきつける”。」
オオタチは尻尾で打たれてふっ飛ばされた。
ウェズは何回も滑ったもののオオタチを空中でキャッチした。
ウェズはオオタチに問いかけた。
「オオタチ!!!大丈夫か?しっかりしろ!!!」
オオタチは何とか無事のようだが闘えるほどの体力は残っていない。
スノウが言った。
「これで一匹ダウン。」
さらにスノウは自分の腕時計を見るなりこう言った。
「あら、もうこんな時間。残念だけどあなたに付き合っている時間が無いわ。
これで最後にしましょう。」
ハクリューがパワーをためる。
ウェズは、この様子を見て“はかいこうせん”だとわかった。
ウェズはブースターを繰り出した。
「何を出しても同じだわ。ハクリュー!!!これで最後よ。」
ハクリューの貯蓄パワーが最大になった。
それと同時にそのパワーは一気に光線と言う形で放出された。
「“はかいこうせん”!!!」
その光線はブースターとウェズに直撃した。
直撃後、すごい煙が辺りに立ち込めた。
彼らはもう助からないだろう、彼女はそう思っていた。
「これで・・・私の任務は・・・。」
スノウの目から雫がこぼれていた。
彼女は立ち込める煙に背を向け、ハクリューに乗ってこの場を去ろうとした。
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