スノウがこの場を去ろうとした時だった。
「まだ終わってない。」
爆煙の中から声がした。
その声に反応し、彼女とハクリューは振り返った。
そこには、ウェズとブースターが立っていた。
無傷でなんとも無かったように。
「ど、どうして?確実にヒットしたはずなのに・・・。」
「ブースターの“まもる”。どんな技でも無傷で耐えられるんだ。」
ハクリューはもう一度攻撃しようとしたが、反動で動けない。
「じゃぁこっちの反撃だ!!!
 ブースター!!!“ほのおのうず”!!!」
渦はハクリューを取り囲み、大火となって燃え盛った。
「忘れたの?こっちのハクリューの“れいとうビーム”は火に触れると水に変化するのよ。」
ハクリューが“れいとうビーム”を放つ。
“れいとうビーム”は炎にあたり、水へと変化し、炎の沈静化をはかった。
あたりに高熱を持った水しぶきがとぶ。
その時、日差しが強くなった。
“にほんばれ”だ。
「炎の勢いを強くする気?無駄だわ。ハクリュー、出力を上げて!!!」
ハクリューの凍てつくビームはさらに強力になった。
そして“ほのおのうず”の熱で水になり、“ほのおのうず”はその水で勢いが弱まっていった。
そして“ほのおのうず”の勢いは止まった。
「アタシの勝ちだわ!!!ハクリュー、トドメをさして!!!」
そのとき、ハクリューに強力な濁流が流れてきた。
それをみたハクリューと彼女は怖気づく。
「な、なんで濁流が・・・・・?」
彼女はウェズの方を見た。
いつの間にか、ブースターとスターミーを交換し、“なみのり”で濁流に乗っている。
そして濁流はハクリューとスノウを襲った。

こういうことだったのだ。
辺り一面、凍てついた氷地帯に“ほのおのうず”という大火を発生させ、その熱で氷を溶かした。
さらに“にほんばれ”で、その大火の熱を強化させた。
溶けた氷は水流と化し、その水流は土砂を巻き込んで、ハクリューをのみ込んだ。
スノウは濁流にのみ込まれる直前にハクリューから飛び降りたため、
なんとか助かったが、ハクリューはもう闘えないようだ。
「つ、次のポケモンを・・・。」
彼女がモンスターボールに手をかけたとき、彼女の目の前に黄色い電気を伴った拳が向けられた。
デンリュウだった。
ウェズは何も言わずにスノウの方をじっと見ていた。
観念したのか、彼女はモンスターボールから手を離し、その場に崩れた。
「どうしてずっと狙ってきたんだ?」
ウェズが尋ねる。
彼女は何も言わなかったが、しばらくして口を開いた。
「ボスはあなたが何か見たからって・・・。」
「お前たちが強盗をしているところか?」
「多分・・・違う。」
「じゃぁ・・・。」
「わからない。」
しばらく沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのはウェズだった。
「なんでこの組織にいる?」
「え・・・・。」
スノウは意味がわからなかった。
「いや、何でこの組織に身を置いて、ボスに尽くすのかって意味。」
「いえ・・・なんのことか・・・わからない。」
彼女は分からないふりをした。
「本当はこういうことしたくないんじゃないのか?」
「どうしてそんな事が言えるの?」
「さっき“はかいこうせん”を撃ったとき、泣いてたよな?
 それにこの前、オレを凍らせたときも・・・だった。」
「いや・・・あのときは・・・。」
スノウはしばらく黙りこんだ。
また沈黙が流れる。
彼女はようやく口を開いた。
「私の両親はこの組織に・・・囚われていて・・・。」
彼女の目に涙が浮かぶ。
「わ、私は組織を手伝うように、い、言われて・・・いて・・・。
 もし、逃げだ・・・せば・・・、両親が、どうなっても・・・、いいのか・・・って。」
彼女はそれ以上言えなかった。
彼女が落ち着いてからウェズは尋ねた。
「君の・・・両親は、ここの島にいるの?」
「いいえ。私の両親はジョウトという所にいるって聞いた。
 私も・・・だいぶ前だけどジョウトからその島に来たの。」
「ジョウト!!!??オレもそこからこの島に来た。
 ついこの前までジョウトにいた。」
「え、本当??
 わ、私の両親、ビリーって言うの。知っていたら・・・。」
「いや・・・知らない。」
「そう・・・。」
ウェズ自身、忘れかけていたことだが彼は記憶消失になっていた。
もし、ビリーを知っていたとしても、もちろん彼は覚えていない。
しかし、スノウが残念そうに俯いたとき、彼は思い出した。

手紙・・・。

あの目覚めの朝、知らないうちに持っていた、ビリーからの手紙を思い出したのだ。
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