ウェズとスノウはムーンタウンに着いた。
しかし、彼らはすぐには街に入ることができず、ずっと街の入り口を睨んでいた。
「シャトル団員がいっぱいいるわ。」
街を囲むように団員が居座っている。
簡単には入れないようだ。
「どうする?またダグトリオで・・・。」
「いいえ、碑の場所がわからないから“あなをほる”では行けないわ。」
「じゃぁあいつら全員と戦えば・・・。」
「あの数よ!無理に決まってるじゃない。」
スノウの言うとおり、街の外周には見えてるところだけでも50人ほどいるだろう。
されに街の内部にもたくさんの団員がいる。
街はシャトル団に占拠されていた。
「このまま奴等が野望を達成するのを見てるだけなのか?」
「いいえ、何か方法を考えないと・・・。団員に気付かれずに街へ入るには・・・。」
ウェズとスノウが悩んでいるところに何かが声をかけた。
「ウェズ!!!」
ウェズが振り返るとそこにはケーンがいた。
ウェズが呆気に取られているうちにケーンは続けた。
「どうしてお前がここにいるんだよ。」
「奴等の目標がここだとわかったから。」
「目標?」
「あぁなんかの碑がこの街にあるらしい。
 それが奴等の目標だとか、何とか・・・。」
「碑・・・か・・・。」
「何か知ってる?」
「いや、ここの街には昔から幻のポケモンが何処かに生息しているという言い伝えがあった。
 そしてこの街にはそのポケモンの記念碑がこの街にあると言われたことが・・・。」
「てことはあいつらは・・・。」
「あぁ、でも言い伝えだけど、記念碑だけを見つけてもそのポケモンは舞い降りない。
 そのポケモンを祀る遺跡が他にもあってそこで何年かに一度舞い降りるらしい。」
「じゃぁそこへ行けば・・・。」
ケーンは大きくため息をついてから言った。
「場所がわかんねぇよ。」

ケーンはしばらく街のほうをじっと見つめていた。
あのときの記憶が甦る。
屈辱の敗北から数ヶ月、この街に入るのをなんとなく臆してしまいそうだ。
でももうあの時とは・・・。

ただずっと立ち尽くしていたケーンを不審に思ったのか、ウェズが尋ねた。
「ケーン、どうした?」
「あ、あぁ。それより隣の奴は・・・誰だ?」
「彼女はs」
ウェズが言い終わらないうちにスノウが自己紹介をした。
「スノウです。はじめまして。」
「お前らどういう経緯で一緒にいるんだ?」
「え?私は元々s・・。」
「あぁ!!!スノウはシャトル団に詳しいんだ。」
ケーンが疑い深いような目でウェズと特にスノウを見た。
「お、オレがシャトル団について聞き回っていたら会った。
 そのとき奴等について教えてくれって言ったら『案内します』と言ってくれた。」
「え??違・・。」
ウェズはスノウの訂正を無視した。
スノウがなんどもウェズに呼びかけたがそれでも彼は無視を続けた。
「・・・・・なんだかしらねぇがお前らは帰れ。」
ケーンが声を荒げた。
ウェズには今まで聞いたことのない声だった。
「「!!!!!」」
「ウェズ、お前には関係ないだろう?」
「何言って・・。」
「お前はこの島の・・・」
ケーンは一息ついた。
「出身じゃないはずだ・・・。」
「・・・・・・・。」
ウェズは何もいえなかった。
「部外者のお前には何も関係ない。」
すると、ケーンが街の方をまたじっと見た。
そして先程の荒げた声とは正反対の穏やかな声で言った。
「マスターが言ってた。
 お前はビリーと言う奴の手紙を受けてこの島へ来たそうだな。
 あぁ、マスター曰く、自分探しのためだ・・・って・・・。」

ウェズには自分でも忘れかけていたことだった。
そういえば自分がこの島へ来た理由(わけ)は
失われた記憶を取り戻すための手がかりを探しに来るためのはずだ。
新たな人生が始まったとき、それまでの自分の情報を示せるものはあの手紙だけだった。
0からのスタート。
初めは記憶を取り戻そうと躍起になっていたが、今は、もう・・・。

ケーンは続けた。
「ならこの戦いはお前の戦いの対象外・・・そうだろ?」
ウェズは何もいえなかった。
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