2歩目:マサラタウンにて【旅立ち】

「なあ、二―ル。オレはこの状況にすごく疑問がある」
「ああ。俺もだ、ヴォレット」

 2人はそれぞれポケモン図鑑をもらい、出発しようとしたところなのだが(ヴォレットは荷物を取りに一回帰宅)、何故か1番道路をマサラタウンの住人数名(主に2人がイタズラの対象としてきた人々)が塞いでいる。

「なー、通してくれよ」
「そうそう。オレら早く出発したいんだけど」

 すると、中でも一番ガタイの良い中年男性が2人に近づいて来た。
 肉屋の親父だ。

『な、なんで肉屋の親父が近づいてくるんだ?』
『俺ら何かしたか?』

 と、2人は顔を近づけ声をひそめ、密談を始めた。
 過去の出来事でまだ発覚していない(つまり、まだ見つかって叱られていない)物を探す2人。

『あっ……。おい、アレじゃないか?ホラ、一昨日の…』
『あぁ、アレか。店の窓ガラスにヒビ入れちま―――』

 肉屋の顔がすぐ近くにあった。
 
「アレもお前等だったのか」

 2人は顔を見合わせると―――。

「「行ってきます!!」」

 逃げた。
 ―――が、肉屋の方が1枚上手。
 肉屋は2人の服の襟をガッチリと掴んでいる。

「はーなーせー!」
「いーかーせーろー!」
「落ち着けって。俺達はお前等を見送りに来たんだ。今日のところは、怒らないでいてやる」

 掴んでいた襟をはなす。

「ほら、行ってこい!」

 そして、2人の背中を思いっきり平手で叩いた。

「〜ってぇ!」
「〜っ、このバカ力!」

 いつのまにか、塞がっていた道が開いていた。
 2人はまた顔を見合わせた。

「お前等が帰って来たときは、腹破裂するまでウマイ物食わせてやるからな!覚悟しとけ!」
「いってらっしゃい」
「体に気を付けろよ!」 
「金とか落とすんじゃねぇぞ」

 2人はニイッと笑うと、足を進めた。

「「行ってきます」」

 1番道路へ。
 未知の世界へ。


 
 故郷には、自分たちを想ってくれる人達がこんなにもいる。
 この先、どんなに苦しくても、辛くても、何があっても………。
 故郷を想えば乗り越えられる。
 そう思えてならない2人だった。


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