3歩目:1番道路にて【初バトル】
1番道路。
「腹減っ―――」
「うるさい!!」
ヴォレット本日18回目の叫びを、二ールが遮る。
丁度、太陽が真上より少し西に傾いてきた頃だ。
「あと、だいたい30分でトキワに着くから我慢しろ」
「だってオレ、朝飯食べてないし」
「はっ、自業自得だろ」
などと、話をしている2人の前に、突然野生のポッポが現れた。
2人は一瞬キョトンとしたが、すぐに顔に笑みを浮かべるとボールを投げた。
「いけっ、ヒトカゲ」
「いけっ、ゼニガメ」
速く自分のポケモンを強くしたい2人は、野生のポケモンを見付けるたびに、こうして襲い掛かっているのだ。
こんな事をしていなければ、もっと早くトキワシティに着くだろうに……。
「ヒトカゲ、引っかく」
「ゼニガメ、体当たり」
「ポッ!?」
ポッポは身の危険を感じ、あっという間に飛んで行ってしまった。
2匹は標的が消えてしまったので、急停止しようとした。
――が、勢い良く突っ込んで行ったので、急に止まれるはずもなく、互いに正面からぶつかってしまった。
「あっ、何すんだよ!」
「それはこっちの台詞だ!」
二匹はそれぞれ、鼻や額の辺りをおさえている。
「あーもう、トキワジムに挑戦する為に速く強くなりたいのに!」
「それは、俺だって同じ――って、トキワジム?…ヴォレット、お前知らないのか?」
「は?何が?」
「トキワジム、ジムリーダーが行方不明らしくって、今閉鎖してるぞ」
「えっ!?嘘!!」
「あと、ジムで思いついた。ヴォレット、俺とバトルしないか?まだお互いにノーマルタイプの技しか使えないから、相性とか関係ないだろ?」
「嘘だぁぁ!!」と、頭を抱えていたヴォレットはピタリと止まり、この提案について、少し考えた。
「そーだな。よし、そのバトル受けて立つぜ!」
その後、一旦トキワシティに行き、昼飯を取り、ポケモンセンターの宿泊施設の予約云々すること小2時間。
再び、1番道路。
「ここら辺でいいだろ?」
町中でバトルはさすがにヤバイと、二ールがヴォレットをここに引っ張って来たのだ。
辺りの木には、木の実が幾つもなっている。
「よし、始めるか。ゼニガメ!」
「負けても泣くなよ?いけ、ヒトカゲ!」
ボールから出た赤い光線が形を成し、ゼニガメとヒトカゲが現れる。
(初のトレーナー戦がこいつか)
「ゼニガメ、体当たり」
「ヒトカゲ、引っかく」
ヴォレットは指示を出しながら、ぼんやりそう思った。
生まれてから、二ール相手にしてきた喧嘩は数知れず。
どちらの方が勝った数が多いのか、なんてことも、もちろんわからない。
「カゲッ」
「!ヒトカゲ」
ゼニガメが多少のダメージ覚悟で、体当たりしてきたのだろう。
ヒトカゲが倒れた。が、すぐに起き上がる。
「睨み付けるのあとに引っかく!」
(あ、そっか。これ、オレ対ニ―ルじゃないんだ。オレ達対アイツらなんだ…)
少し怯んだゼニガメに、引っかくがクリーンヒット。
今度は、ゼニガメが倒れる番だ。
けれど、硬い甲羅に守られているせいか、それほどダメージを受けているようには見えない。
「くそっ…。もう一回引っかく!」
「……………。避けろ、ゼニガメ」
ゼニガメが攻撃を避けると、すぐにニ―ルが次の指示を出した。
「やるぞ、ゼニガメ!体当たり!」
「避けるついでに引っかく!できるか?」
2匹は頷き、各自主人の命令に従う。
ヒトカゲが危なげなく体当たりをかわし、引っかくを繰り出そうとすると、ゼニガメの尻尾があるはずの所にない。
ゼニガメが殻に篭っているのだ。
「――なっ!」
その上、ゼニガメは殻に篭ったまま木に体当たりした。
その衝撃で、上から青くて少しトゲトゲした木の実が降ってくる。
硬いことで有名なカゴの実だ。
カゴの実のシャワーが2匹を襲う。
殻に篭っているゼニガメはノーダメージだが、ヒトカゲはそうはいかない。
「カゲッ」
避けきれずに、数個の実がヒトカゲに当たった。
ヒトカゲがふらつく。
「今だ、ゼニガメ。体当たり!」
ゼニガメは瞬時に殻から出ると、懇親の力を込めて、ヒトカゲに体当たりをした。
ヒトカゲは避けれるはずもなく、軽々と吹っ飛ばされた。
「ヒトカゲッ!?」
ヴォレットが急いでヒトカゲの元に駆け寄ると、ヒトカゲは目を回していた。
いわゆる、戦闘不能の状態だ。
つまりは、ヴォレット達の負けということ。
「…………。頑張ってくれたのに、ごめんな。」
ヴォレットはヒトカゲをボールに戻した。
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