次元の歪みから足を踏み入れた先は不気味な空間が広がっていた
途轍もない瘴気が吹き荒れ
意識を強く保たなければ自分を見失ってしまいそうだった。
そんな空間をしばらく進んでいくと
辺りに無数の殺気が感じられた。
「なるほど〜どうやら僕たちを足止めするみたいだね。」
「ふっ、面白い。」
オレとゆうきは共にボールを全て開閉する。
中から自分達の仲間が全員出撃する。
「後は、僕たちに任せて君たちはシェイドを。」
この言葉にオレのポケモンたちも頷く。
「解った、けど死ぬなよ。」
オレは皆を見回す。
そして、ラティアスと共に最深部に向かって走っていった。
そのオレの背中に向かってゆうきが言葉を投げかける
「君も生きて帰って来るんだよ。」
オレは言葉では答えず手を振って返事をした。
「さてと、皆派手に行くよ。」
僕は手元に残っていた最後のリピートボールを投げる。
中から出てきたのは天空の覇者と呼ばれるレックウザだった。
しかも普通は緑色なのだが僕のレックウザは色違いの黒だ。
「(派手に大暴れと行くか。)」
パルシェンもこう言うと皆と共に敵の中に飛び込んでいった。
それに続きゆうきのポケモンも一斉に突撃していった。
オレとラティアスは不気味な空間の中を
ひたすら奥目掛けて走っていた。
どこをどう走っているのかは解らなかったが
シェイドの気配を辿って行けば必ずたどり着けると信じていた。
暫く進んでいくと妙な気配が二つ後をつけてきていること気付く
「どうやら、敵のお出ましみたいだな。」
オレたちは立ち止まると後ろからついて来る気配に向かって
「もうばれているのだからおとなしく姿を見せたらどうだ。」
この言葉に呼応し周りの空間が歪み
オレはラティアスと切り離される。
どうやら、敵は一対一で戦いたいらしい。
辺りを見回してみるとそこは不思議な空間だった。
途轍もなく広く何もない
「戦いにはうってつけの場所という事か。」
オレは後ろに気配を感じ振り向くと同時に
サークルフレイムを放つ。
「腕は立つようだな」
暗闇から出て来たのはヘラクロスだった。
恐らくはシェイドの特性である擬態を使用しているのだろう。
「ここを通りたけば我を倒すのだな」
「さっさと終わらせたいがそうもいかないか。」
相手そこらの敵とは違い恐るべき波動を放っていた。
オレは意識を集中させ
自分が一番使いやすい形に炎を変化させる。
剣状に変化した炎を正眼に構え精神を極限まで集中させる。
「では、まいろうか」
ヘラクロスはバックステップで距離を取ると角を前方に突き出す
「メガホーン!!」
身体を加速させ一気に突っ込んできた。
「チィ」
オレはメガホーンを受け止めようと角に剣を合わせるが
バチィィィィン
メガホーンの威力が思ったよりも高く剣が崩壊する。
仕方なく急いで緊急回避しなんとか攻撃を避ける。
「なら、これでどうだ。」
オレはさっきよりも力を込め剣を作る。
一方ヘラクロスはUターンし再度攻撃を仕掛ける。
「今度こそ止める。」
ズドォォォォォォン
言葉どおり出力が上がった炎の剣で
メガホーンを止める事に成功した。
オレは角を押さえ付けている剣に力を込める。
相手もこれに負けじと力を込める。
「これで終わりだぁぁぁぁ」
オレはさらに力を込めヘラクロスを押さえ付ける。
「クックックックックッ、まさかこれほどの腕力とは驚きだな、だが甘い」
ヘラクロスは力のぶつかり合いを正面から上下に変える。
これにより上になったオレは焦る。
そう、いくら力があっても体重がなければ
上からの力は微々たる物になる。
「ぬん!」
体重が軽いせいで簡単に上空に投げ出される。
なんとか空中で体勢を整えようとするが悲しきかな
人間にそんな芸当は不可能だった。
「終わりだ!!」
オレより上に移動していたヘラクロスがメガホーンを放つ。
「(体勢は変えられなくてもシールドぐらいなら)」
ズガァァァァァァァァァン
なんとかシールドで直撃は防げた物の地面にぶつかった衝撃は
モロに受けてしまった。
オレは飛びそうになる意識をなんとか引き戻すとヘラクロスの姿を視認するため周囲を見渡す。
だがそれらしき影を見つけることが出来ない。
そんな時、突如後ろから虫の羽音が聞こえてきた。
オレは急いで音の方向に向く
案の定そこにはヘラクロスの姿があった。
しかもメガホーンを発動させて突進してくる最中の姿が。
オレは剣でこれを受け流す。
先ほどと同じように力勝負になれば体重のないオレが
上方向に投げられるのは目に見えていた。
それにあんな攻撃を何回も受けていれば
敗北を迎える確立を上げてしまう。
その為、敵の攻撃を受け止めるのではなく受け流すことにした
これならあのコンボを受けることもないのだから。
バチィン
それから暫くの間無機質な空間に角と剣がぶつかり合う音だけが響いていた。
だがこの状態に変化が訪れた。
前と同じ容量で受け流しなんとか反撃しようと
切り返しを打ち込もうとした瞬間
オレの脇腹に鈍い痛みが走る。
「驚いたな我が攻撃を受けて傷ができないとは。」
「連続攻撃とはな。」
先の攻撃の時オレはメガホーンばかりに気を取られてしまい
その後ヘラクロスが撃った瓦割をモロに受けてしまったのだ。
幸い身体に損傷はないものの
このままではどうあがいても勝つことは出来ない・・・
何故ならば技の威力が完全に足りないのだ。
敵の攻撃を打ち破りダメージを与えるには
もっと威力が必要なのに今の状態では出せずにいた
その理由はオレがポケモンと違いタイプによる威力修正が
かからないことだった。
人間の姿だと抵抗しか持つことが出来ない。
このせいで今のオレは炎タイプ技の力を
100%発揮させられないのだ。
何とかして威力を引き上げる方法はない物かと考える。
そんな時ヘラクロスの波動に変化が生じる。
「我が真の力でこの勝負迅速に付けさせて貰う。」
身体の色が漆黒へと変わってゆき同時に波動も
今までとは比べ物にならないほど危険な物に変わる。
「!!これだ」
オレはこの様子を見て一つの方法を思いつく。
早速それを実行する為にラティオスに質問する。
「(なあ、ラティオスお前の変身能力ってどう使うんだ?)」
「(なるほどその手があったか)」
ラティオスもオレがしたい事が分かったようだ。
「(変身は自分がなりたい物を強く思い浮かべれば出来る)」
オレが方法を聞き終わると同時に
ヘラクロスがメガホーンを発動させる。
「チェンジ、バクフーンEX」
オレの身体が光に包まれ火山ポケモンバクフーンに姿を変える。
変身が完了したオレは右手にエネルギーを集める。
そして、集めたエネルギーを超高温の炎にし
プラズマ化させメガホーンに打ち込む。
「食らえ!!サンダースマッシューーー」
攻撃と攻撃がぶつかり合い周囲の空間が歪む。
そしてオレの攻撃が
ヘラクロスの攻撃を完全に相殺したのだった。
――――――ラティアスサイド――――――
「あれここ何所?」
さっきまでイクジスと一緒に歩いていたのに
気付いたら離れ離れになってしまった。
おまけに私が今いる場所は
さっきと居た場所とあからさまに違っていた。
「とにかくこんな所でじっとしていてもしょうがないよね〜」
私はとりあえず元いた場所へ戻ろうと歩き始める。
「何所に行くのさ〜
これから楽しいジョータイムの始まりなのに。」
私は驚き声のした方向に身体を向ける。
そこには真っ黒なポケモンが居た。
私はこのポケモンがどこかで見た事がある気がして必死に記憶を手繰り寄せる
「!!思い出した」
そうこのポケモンの正体はジュペッタだった。
「ここから先に行きたいんだったら僕に勝ってからだよ。」
どうやら勝負しなくちゃならないみたい。
あまり戦いたくはなかったけど皆を守るためには戦うしかない。
私の身体が光に包まれ見る見るうちに無限ポケモン
ラティアスの姿へと変わっていった
「絶対に負けられない」
二つの視線がぶつかり合い風が巻き起こる。
そして、風が収まった瞬間私は一気に加速し距離を詰める。
「シャドーボール!」
ジュペッタの放ったシャドーボールは的確に私を捉えるがこれを紙一重でかわす。
「ドラゴンクロー!!!」
横をかする瞬間に手を展開し貯めていたエネルギーを攻撃に変換一気に解き放つ。
敵の身体にクローが突き刺さり私はそのまま上空に上がると
勢いをつけ地面に叩きつける。
敵の体重が軽いせいも在り叩きつけによるダメージは
あまり受けていないようだった。
「なかなかやるね〜、やっぱり勝負はこうこなくっちゃね♪」
何事もなかったかのように立ち上がってくるジュペッタ
だがその光景は異様としか言いようがなかった。
身体の中央には風穴が空き、そこかしこがボロボロなのに
動いているのだ。
しかも壊れた身体の部分からは邪悪な瘴気が渦巻いている。
この様子を見る限りポケモンではなく
シェイドと同じであると言う事が容易に想像できた。
となると並大抵の攻撃ではびくともしない筈。
「なら、これで」
私は精神を集中させ瞑想を発動させる。
光が身体を包み込み身体能力を上昇させる。
私は敵の背後を取りドラゴンクローで上空に弾き飛ばす。
上空に弾け飛ぶ相手よりも早く高空に移動し止まると
今度は地面に叩きつける為ドラゴンクローを放つ。
さっきと同じ戦法だが瞑想によって威力がアップしているぶん
十分にダメージを与えることが出来るはずである。
この予想は当たり今度の攻撃により身体の半分が消滅していた。
しかし、相手は平然としていた。
それどころか余裕すらも感じられるのだ。
「あ〜あ、こんなにボロボロになっちゃったよ
これ直すのめんどくさいんだよ。」
この言葉を皮切りに相手の波動に変化が生じる。
傷口から噴出していた瘴気が形を取り
身体を元通りに再生し始めると。
さらには身体の色が水色に変わる。
「本当のショーの始まりだよ」
――――――イクジスサイド――――――
「うぉぉぉぉぉ」
ドゴォォォォォォォン
攻撃と攻撃がぶつかり合う時に発生する衝撃音が
辺り一面に響く。
あまりにも強力な力がぶつかり合うことにより空間さえも歪む。
オレもヘラクロスもお互いを叩き潰すために
全力で攻撃を繰り出す。
異常なまでに高速化した戦闘も今のオレたちにとっては止まっているような物だ
この完全なるバトル・ハイ状態の中でオレたちはさらに
威力とスピードを上げていく。
「目の前の敵を倒す」ただそれだけを考えて
「破っ!!」
「甘い」
上段から繰り出されて瓦割をしゃがんで避けると
「食らえぇぇぇ」
すぐさま火炎放射を足元に放つ。
ヘラクロスはそれをジャンプして避け
オレめがけメガホーンを放つ。
これをバックステップで回避したオレは
間髪いれず垂直にジャンプする。
そこへオレの予想通りメガホーンで地面に直撃すると同時に
地震を解き放ったヘラクロスの姿があった
「もらったぁぁぁ」
キュイイイイイン
口内に光が集まり火球を形成する。
形成が完了したのを確認すると
下にいるヘラクロス目掛けて解き放つ。
打ち出された火球はぶつかる瞬間
いくつもの小さな火球にバラける。
バクフーンEXが得意としていた
「クラスターボム」と言う技だ。
この技の特徴は命中率を上げるため
標的の近くでバラけると言う性質がある。
小型の爆発が眼下で何度も起こり周囲が爆煙に包まれる。
そして地面に着地したオレは油断なく辺りを見据える。
そこには全ての爆発を回避したヘラクロスの姿があった。
「面白い、この技を避けきるとはな
なら、これで決めてやる!!」
オレは膨大な量のエネルギーを口内に集め始める。
奴もこの勝負にのるらしく頭部の角にありったけのエネルギーを集め始める。
やがて双方の充填が完了する。
「アトミック・ブラスト!!」
超高熱を誇る巨大な火球弾がヘラクロス目掛けて射出される。
「ぬん」
これをメガホーンで受け止めるヘラクロス。
初めは均衡が保たれていたものの
徐々にだがメガホーンの方が押され始める。
オレはこのチャンスを逃さないためにアトミック・ブラストを
起爆させる。
摂氏十万度の炎がヘラクロスを包み込み全てを焼き尽くす。
そして、炎が治まったその場所に
ヘラクロスの影も形も見当たらなかった。
「(まさか、これほどの力を持っているとは驚きだな)」
頭の中に直接響くこの声は間違いなくヘラクロスのものだった。
だが、声はすれども姿、気配共に見当たらない。
「(安心しろ、もう我は汝と戦える状態ではない、
先ほどの攻撃で身体が消滅してしまったのだからな。)」
これが本当だとするならば奴はシェイドではないと言うことだ。
シェイドならば元々身体などは
存在しないのだから。
「(今こうして話しているのは汝に礼を言おうと思ってな。)」
「礼だと?」
オレは奴の言いたい事がよく分からなかった。
なにせ礼を言われることなど何一つやっていないのだから。
「(最後に汝のような強者と戦えた事我は嬉しくてな)」
(なるほどそお言うことか)
オレは心の中で一人納得する。
「(最後に一つ願いを聞いてはくれぬか?)」
「?」
「(もし我がまたこの世にいでし時
もう一度勝負をしてはくれまいか?)」
オレはこの願いに首を立てに振る。
そして、声が聞こえなくなりオレがもといた空間に戻っていた。
――――――ラティアスサイド――――――
「ほらほら、ボォーっとしてるとやられちゃうよ」
相手が立て続けに撃ってくるシャドーボールの前に
私は防戦一方だった。
瞑想により特殊攻撃に対する耐性は上がっているが
物理攻撃に対しては上がっていないため一撃でも当たれば
致命傷になるのは確実だった。
けれども避けてばっかりじゃ勝つことは出来ない。
私は力を溜めると一気に解き放つ。
周囲を極光が包みこちらに向かって放たれた
全てのシャドーボールがかき消される。
「うそ、全部消されちゃったよ」
驚く相手、私は立て続けにミストボールを放つ
自らの羽で構成された白い球体が敵に向かって突き進む。
「そんな物、これで打ち消してやる」
相手もシャドーボールを出しこれに応戦しようとするが
簡単に打ち消され直撃する。
「あ〜あ、またやられちゃったよ。」
前と同じ尋常ではないダメージを追っているのに
何事もなかったように立ち上がってくる。
「そうだ、君にもこのダメージ分けてあげるよ」
この言葉と主にジュペッタの眼が怪しく光る。
その瞬間身体全身が攻撃一つ受けた覚えもないのに
痛み出しまともに動かせなくなる。
「一体なにをしたの?」
私のこの問いにジュペッタは
「簡単なこと、痛みわけを使っただけだよ♪」
私はこの言葉に驚愕した、痛みわけそれは、自分と相手の体力を足して均等に分ける技
だが、この技は相手に触れなければ
仕えないはずなのに・・・・・・・・
このまま戦えば私が負ける事は火を見るより明らかだった。
そう、一撃で相手を倒さない限りは。
「ほらほら、何考え事してるの?」
この言葉で現実に引き戻される私
見ると相手の頭上には信じられないほどに巨大なシャドーボールが形成されていた。
「この特大シャドーボールで奈落に送ってあげるよ」
そして、放たれるシャドーボール
(お願い間に合って)
私は自己再生でまともに動かない身体を治し始める。
シャドーボールが迫ってくる中
いつもはなんとも思わない再生速度が
やたらとゆっくりに感じられた。
この気が狂いそうな時間が永遠に続くと思われたその時自己再生が完了する。
私は急いで高速飛行形態にチェンジすると最大速力で脱出する。
その途端あれほどまでに遅く感じられた時間の流れが
元の速さになり
私が今までいた場所をシャドーボールが通り過ぎていく。
「やった〜、僕の勝ちだ♪」
どうやらジュペッタは
私が今の攻撃に直撃した物と思い込んでいるみたい。
私はこのチャンスを逃さない為に大技を発動させる
「必殺!!竜神乱舞」
連続で繰り出されるドラゴンクローが
ジュペッタをあらゆる角度から襲う。
さらに一撃一撃で相手の身体がチリと化していく
そして、最後に繰り出した一撃がジュぺッタの存在をこの世から完璧に消し去っていた
「(面白かったな〜、また遊ぼうね〜)」
最後のジュペッタのこの言葉を聴き私は
「絶対やだ」と心の底からだけでなく声に出して叫んでいた。
やがて、周囲の空間が少しずつ変わり始め気が付くと元いた場所にもどっていた。
もちろん、そこにはイクジスの姿も
私達はお互いが無事なことを確認するとシェイドが潜んでいるであろう場所に向かってまた走り出した。
やがて、不気味な黒い球体が四方の柱から出ている光によって
繋ぎ止められていると言うなんとも不思議な光景が
見える部屋にたどり着く。
よく見るとそれぞれの柱の上には無限ポケモンが象られていた。
「まさか、ここまで来るなんて」
部屋の中央にはこの戦いの原因であるシェイドの姿があった。
「お前の思いどうりにはならないって事を教えてやるよ」
オレは炎の剣を形成するとそれを正眼に構える
ラティアスもキッと相手を睨みつけ戦闘体制に入る。
シェイドも鎌を構えると油断なくこちらを睨む。
こうして
封印を守ろうとする者対壊そうとする者の最終対決が始まった。
技の説明
クラスターボム
大きな爆裂弾を飛ばし標的の前で破裂させ確実に命中させる技
相手が大きければ大きいほど威力と命中率が上がる
サンダースマッシュ
タイプが雷だが威力修正は炎タイプという風変わりな技
超高温の炎を作り出し周囲をプラズマ化させそのプラズマで
敵を攻撃する。
竜神乱舞
標的目掛けて連続で攻撃する乱舞技
走って勢いをつけ左足を滑らせながら
体重と加速力を組み合わせた蹴りを放つ所まで
イクジスとラティアス共通
その後ラティアスの場合は数発の蹴りと拳が入り
上空に蹴り上げるそこで変身しドラゴンクローで縦横無尽に
切り裂き最後に地面に向かって殴り飛ばす。
飛ばした後本人は先に下に移動し落ちてきた相手に
全エネルギーを集中させたドラゴンクロー(通称Dスラッシュ)
を打ち込む。
<続きを読む>
<目次に戻る>