「先手必勝、行くぜ、ファイアーストリーム!!」
オレは剣を高速回転させ炎の渦を生み出すと
シェイドに向かって解き放つ。
「甘いね」
これをなんなく回避したシェイドが
こちらに向かって距離を詰める。
「はなから、当たるなんて思ってねえよ」
なにせ先の攻撃はシェイドに距離を詰めさせるのが
目的なのだから
振り下ろされた鎌とオレの炎の剣がぶつかり合い衝撃波が生じる
オレは自分の力全てを使いシェイドを弾き飛ばす。
接近での切り合いとなればオレの方に分があった
なぜならばオレは常人の数百倍の腕力を持っているのだから
どうしてこんなに力があるのかは分からないが
役に立っている事は確かだった。
「君って本当に人間?ポケモンの姿をコピーしている
私より力が強いなんて」
壁に当たり吹き飛んでいた状態から止まったシェイドが
体勢を立て直しオレに問う
「ああ、れっきとした人間だよ」
今度はオレの方から距離を詰める。
再度炎の剣と鎌がぶつかり合い衝撃波が発生する。
右上から繰り出される斬撃を勢いよく炎の剣で弾く。
大きく鎌を弾かれたシェイドはバランスを崩すが
そこから鎌を下にもって行き身体をひねりながら
袈裟斬りを繰り出す。
オレはこれに自分の剣を合わせる。
その瞬間シェイドの心から歓喜の感情が生まれる。
どうやら先のヘラクロス戦で
オレが下方からの攻撃に弱いというのを知っているようだ
だが、弱点をそのままにする程オレは愚かではない
シェイドが鎌に力を込めオレを上方に弾き飛ばそうとするが
「!!なんで、上がらないの?」
この言葉が指し示すとおり
シェイドの鎌はピクリとも動かなかった。
オレの体重ぐらいなら軽々と持ち上げられるはずなのに
「残念だったな、当てが外れて」
オレは力を込め鎌を押さえ付けようとする。
これをシェイドは絶妙な呼吸で力を受け流し
バックステップでお互いの間合いの外に出る。
「なるほどね〜、その剣のおかげか〜」
どうやら今の最後の斬り合いで
オレの剣にかけてあるカラクリが解けたようだ。
「よく分かったな、こいつはGファイアブレード
ヘラクロス戦で形成した剣とは違い
異常なまでの重さを誇り体重が少ないオレの欠点を
カバーすることが出来る。」
そう、Gとはグラビティすなわち重力を表す。
この剣は炎のエネルギーを限界にまで集め
圧縮形成されているため数tという重さを実現させているのだ。
「じゃあ、接近戦を挑むのはその腕を使えなくしてからかな」
フワッ
一陣の風が吹き髪がたなびく
(異次元で風だと、まさか!!)
オレは緊急回避の動作を取ろうとするが時すでに遅し
左腕が消し飛んでいた
「イクジス!!、大丈夫」
オレは右手で左の肩口の出血部分を押さえ
後ろにいるラティアスに大丈夫だと返事をする。
そして、シェイドの方を見据えると
「衝撃波と冷凍ビームの混合技か」
「よく分かったね、でもいまさら分かっても遅いよ」
シェイドが鎌を構える、だが
バシュゥゥゥン
小さな爆発音と共にシェイドの左腕が爆砕する。
「嘘、いつの間に」
どうやら、先の緊急回避の際に放った
フロートブラストが着弾したようだった。
「これで、お互い様だな」
オレは吹き飛んだ左腕から瘴気を吹き出しているシェイドに
皮肉を込めて言う。
シェイドはこれを苦虫を噛み潰したような顔をして聞いていたが気を持ち直し身体を再生し始める。
吹き出していた瘴気が元在った腕と同じ形を取り
徐々に物質化していく
そして、完全に腕の形となる。
「私達、シェイドはこんな傷じゃなんともないけど
人間の貴方は大変そうね」
完全に再生した腕をオレに見せながら
余裕に満ちたシェイドが言う
「残念ながらオレもこんな傷じゃなんともないんだよ。」
こう言うとオレは肩口から右手を放しこう叫ぶ
「自己再生!!」
肩口から白い棒状の物がスルスルと伸びていき
左腕の骨格を形成する。
次に細かいひも状の物が複雑に絡み合っていき
先に出てきた棒状の物を覆い囲む
最後に棒と線の隙間を結合組織が埋めて行き次の瞬間には
左腕が元通り完全再生していた。
「そっか、自己再生を使えば簡単に元どうりだね〜、
あれ、でもバクフーンEXって自己再生使えたの?」
そういえばラティアスにはまだ話していなかったな
オレの魂の中にラティオスもいるという事を
だが、今は話せる状況ではない。
「ラティアス、その事は後で説明する
それより今から作戦を伝える」
オレは相手に聞かれないように能力を使って
ラティアスに作戦を伝え始める。
「(オレが全力で奴を攻撃して体力を根こそぎ削るから
止めを頼む)」
そう、この作戦ではオレが奴の体力を限界にまで削り
反撃や防御を出来なくさせ
完全に無防備になった所をラティアスが叩くという戦法だった。
今の奴とオレは互いに互角
つまりは力が尽きるのも同時ということだ。
「(うん、解かった
じゃあ私はその時まで力を溜めておくね)」
ラティアスが心の中で了解の合図を送る。
オレは(その通り)と能力で話、こう付け加える。
「(それから、できるだけ離れた所で待機してくれ)」
これには訳があった
もちろん巻き添えを受けないためというのもあるが
それ以上に力の解放による被害を与えないためでもある。
ラティアスが頷きオレから距離を取る。
それを確認するとオレはこう叫ぶ
「チェンジ、EXモード」
自分を中心に力の波動が渦巻き荒れ狂う。
それが全てオレの身体の中に吸収されると
オレの身体からは今までとは比べ物にならないほどの
波動が放たれる
これこそEXポケモンが真の力で戦う時に使用する覚醒技
「ねえ、そんな便利な技があるのに
どうしてヘラクロス戦では使わなかったの?」
シェイドのこの問いにオレは
「使えなかったからさ、この技はヘラクロス戦の後で
使えるようになったんだよ」
「そうだったんだ、じゃあ私も本気で行くよ
もう時間もないしね」
シェイドの周りに瘴気が集まり吸収されていく
どうやら、EXチェンジと同じく
自分の真の力を引き出したようだ。
「簡単にはアドバンテージを取らせてもらえないようだな。」
オレはGファイアブレードを正眼に構えると
シェイド目掛けて勢いよく切りかかる
真正面から来た斬撃を鎌で受け止めるシェイド
もちろんこんな簡単な攻撃で
シェイドにダメージを与えられるなどとは思ってもいない
オレは左足で地面を蹴ると
サマーソルトでシェイドの顔を蹴り上げる
体制を崩したシェイドに何発もの突きを繰り出す。
流れ星のように炎の尾を引き
何発もの突きが放たれるがそれらは全て空を切る。
これだけのスピードを持ってしても
シェイドには当たらないらしい
オレは間合いを取ると奥義発動準備の為、技を放つ
「食らえ!!灼熱の渦」
高速回転させたGファイアブレードから渦が伸び
シェイドを完全に包み込む
「さらに、チェンジバクフーンEX」
オレの身体が光に包まれバクフーンEXの姿になる。
キュィィィィィィィィン
口内に無数の光が集まり火球が形成される。
その火球から何本もの炎の渦が打ち出される。
火球のエネルギー全てを渦に変換すると
今まで打ち出された渦が収束し巨大な龍となる
「行けぇぇぇぇ!!滅びの悪龍」
龍が口を開け、シェイドを飲み込もうと暴れ狂う。
「そんな物、これで相殺すれば、ハイドロカッター」
鎌の軌跡に沿って形成された水の刃が龍に直撃する。
大量の水蒸気が舞い上がるが
オレはそんな事に構わず第二波を放つ
再度炎の龍が生まれそれをシェイドが打ち消す
そんな事が何回と続き暫くするとオレの力は殆ど尽きていた。
変身状態を保っていられなくなったオレは
元の姿に戻ると大量の水蒸気が立ち込めている空間を見つめる。
やがて、水蒸気が消えるとそこにはオレと同じく
ほぼ力を使い果たしたシェイドがいた。
「今だラティアス!!」
オレは後ろで力を溜めていたラティアスに合図を送る。
両腕に溢れんばかりのエネルギーを溜めていたラティアスが
シェイドとの距離を一気につめる。
そして、「ドラゴンスラッシュ!!」
ラティアスの腕が振り抜かれ巨大な衝撃波が放たれる。
だが、ラティアスの渾身の攻撃は
シェイドの鎌一振りで防がれてしまった。
「そんな、あれだけ力を溜めていたのに」
オレはこの時初めて自分の考え出した作戦のミスに気付いた。
そのミスとはEXポケモンが真の力を解放している状態ならば
普通のポケモンの攻撃は全く受け付けないということだった。
そう、例えそれが伝説だろうとも・・・・・・・・
「どうやら私の勝ちみたいね」
シェイドがゆっくりと立ち上がりこちらに歩み寄って来る。
再度変身しようと試みるオレだが
どうやらその余力は残っていないらしい。
しかし、それならシェイドにも余力は無い筈である。
それなのに何故動けるのだろうか?
そんな疑問がオレの頭の中に浮かぶが
そんなことはどうでも良いことだ
何の役にも立たないのだからな
「こんなのやだよ、あの時と同じ、また守れないの?」
ラティアスからこんな独白が聞こえてきた
「お兄ちゃんが死んだあの時から大切な人達を
あの時守れなかったお兄ちゃんの分も
守ろうと心に決めて必死に努力したのに、それなのに」
床に大粒の涙を落としながらラティアスは語る。
だが、シェイドが冷たくこう言い放つ
「無駄よ、いくら頑張っても普通の状態では
私達シェイドには勝てない。」
この言葉にオレの怒りは頂点に達した
「黙れ、努力すれば誰だって強くなれる。」
オレはこう言い放つとラティアスにこう言う
「自分の力を信じるんだ、仲間を守りたい、その気持ちがあればどんな奴にだって負けはしない」
そして、オレはシェイドから取り戻しておいた
心の雫をラティアスに投げる。
心の雫には無限ポケモンが持つ真の力を引き出してくれる効果があると今さっきラティオスが教えてくれた。
空中に投げられた心の雫を受け止めるラティアス
その瞬間、心の雫が光り輝く
極光ともいえる光の輝きの中でラティアスの波動が変わっていき
光が収まったそこにはさっきまでのラティアスではなく
仲間を守るという強い意志を秘めた瞳を持ち
EX体となったラティアスがいた。
この姿を見たシェイドは嘲笑し一言発する
「そんな付け焼刃の力なんかに負ける私じゃ」
シェイドのこの言葉を遮りこう言う
「付け焼刃なんかじゃないさ、あの力は
努力した者にしか与えられない物なんだからな」
「なら、試してあげるわ」
シェイドが鎌を振り上げ一閃するが切り裂いたのはラティアスの幻影のみだった
「もう、これ以上貴方の好きにはさせない」
後ろに回りこんだラティアスが
フルパワーのドラゴンクローを放つ
放たれた爪は易々とシェイドの腹部を貫通していた。
「嘘でしょ、こんな簡単に装甲が破られるなんて」
信じられないと言った顔のシェイドをよそに
腹部から爪を引き抜くラティアス
そして、自らの力を高めると
「ラスターパージ!!」
無限の力を解放させた極光がシェイドの身体を
塵へと変換していった。
全てが終わった封印を開放しようとしたシェイドは塵とかし世界は破滅の危機から脱した
そう信じてやまなかったがそれが妄想だとこの一言で破られる。
「まさか、私の身体が壊されるなんてね」
そこには本来の姿である精神生命体状になったシェイドがいた
「このままじゃ終われない最後に貴方も道づれにしてあげる。」
「チィ、間に合ってくれ」
オレは力を使い果たした身体に鞭打ち
ラティアスとシェイドの間に割って入ろうとする
「チェンジ、ラティオス」
光が包みオレの姿が無限ポケモンラティオスの者に変わる。
そして、ラティアスと共に自爆を試みようとしていたシェイドをドラゴンクローで弾き飛ばす。
「二人の無限ポケモン、ふふふふふふふふあははははははは
これで復活・・・す・・・・る」
こんどこそ完全にシェイドは虚空へと消えた
不気味な言葉を残しながら
オレが終わったなと思い後ろに振り向くと
ラティアスが驚きの表情で見つめていた。
まあ、無理もないだろう何せ今のオレの姿は
紛れもない兄の姿なのだから
この姿をどう説明しようか言葉に詰まるオレ
そんな様子を見ながらラティアスがこう告げる。
「そっか、お兄ちゃんの力も入っているから
自己再生が使えたんだね」
意外な程に普通の反応が返ってきた
オレは疑問に思いラティアスに聞いてみる
その答えはこんな感じだった
「確かに驚いたよ、でもイクジスが過去に亡くなった
バクフーンEXの力を使ってたんだから
お兄ちゃんの力を使ってても不思議はないしね♪」
確かに理屈はそうだけどよく納得できるな〜などと考えていた時
急に地震が起こる。
その地震はすぐに収まるがそれと変わりオレのポケギアから
けたたましいサイレンの音が鳴り響く
何事かと思いポケギアのメイン電源を入れるすると警告音と共に警告メッセージが表示される
「空間内の以上歪曲を確認
この空間は後5分ほどで崩壊消滅します
出口の方角は北、距離5000キロメートル。」
オレとラティアスの間に緊張が走る。
「急いで、脱出するぞ!」
ラティオスの姿に変身していたオレは腕を格納し高速機動形態にチェンジする
ラティアスも同じく高速機動形態にチェンジすると全速力で出口向かって飛ぶ
その間に能力でパルシェンたちにも空間崩壊が迫っていると話す
オレたちは最高限界速度のマッハ10で飛び続けていた。
一方出口ではユウキ達がオレたちの脱出を今か今かと待っていた
もう崩壊までの時間も少なくなってきた時前方に脱出口が見えた
オレ達は出口をくぐると共に速度をゼロに出来るよう
減速しユウキ達の前に見事ピタリと止まる
オレとラティアスの姿を確認したパルシェン達は
安堵の瞳を浮かべる
この変身した姿でもちゃんとオレだと認識できるのは恐らく波動で確認したのだろう
どんな姿になろうとどんな力を発揮しようと
その者の根底に流れる波動は普遍の物なのだから
そのとき後ろから妙な視線を感じたので振り向いて見ると
ゆうきが目を輝かせていた
「ついに出会えた、無限の力を司る伝説の守護龍」
そういえば初めてゆうきと話したとき
ドラゴンポケモンの話をしていた事を思い出す
オレは変身を解く
それを見て驚くゆうき
そしてオレがどうしてラティオスの姿をしていたのか
さらにラティアスの事も話す
「なるほど、そうだったんだ、無限ポケモンの変身能力
噂に聞いていた通りだね。」
納得したゆうきが頷く
「悪かったな、初めて会った時話さなくて
お前からは邪悪な感情が無かったから話してもよかったんだが
まさかラティアス達がドラゴンポケモンとは知らなかったんだ」
これを聞き驚くゆうき
「えっ、知らなかったの!!」
「ああ、まだオレの図鑑はカントー、ジョウト地方の
ポケモンしか情報が表示されないんだよ」
そう、言いながらオレは自分の図鑑を取り出し見せる
それは、オレが旅立ちの時に貰った図鑑で
今となってはかなりの旧型だった
「あれ、このタイプって
カントー地方のポケモン情報は表示されないはずじゃ〜?」
ゆうきが首をかしげる
「その事か、こいつは少し特別でな新たにメモリーを入れれば
新しい地方のポケモンの情報も出るように改造されてるんだよ」
今は、レジロックがオーキド博士の所にメモリーを
取りに行っている最中なので
まだホウエン地方のポケモンは調べられない
ラティアスたちの情報が出なかったのは
恐らくホウエン地方のポケモンだからであろう
その事をゆうきに話すと納得したようだ
だが、突如としてこんな穏やかな雰囲気の場を壊すとてつもない波動が外の広間から発せられる
驚いたオレたちは外の広間に急いで走り到着する。
すると、上空に漆黒の球体が浮かんでいた
そう、あの封印の間でみたシェイドの本体が
その、シェイドの鼓動に合わせ空間が歪む
オレたちでも空間を歪ませるほどの力を出す事は可能だ
けど今目の前にこいつの力はその力を軽く上回っていた
まるで次元の違う力今こいつがオレたちに襲い掛かってくれば
確実に死を迎える
オレたちは油断することなく奴を見据える
やけに喉が渇き額からは汗が流れ落ちる
こんな気の狂いそうな時間が永遠に続くと思われた時
奴は猛スピードでホウエン地方の方角に飛び去っていった。
辺りに吹く一陣の風でオレの髪がなびく
オレは自分の髪を押さえホウエン地方を睨み思う
まだ、奴らとの戦いは始まったばかりなのだと
技の説明
滅びの悪龍
幾つ物炎の渦を収束させて放つ必殺技
そのあまりの威力に滅びの悪龍という名前が付けられた
EXチェンジ
EXポケモンが真の力で戦う時に使用する覚醒技
通常時の何倍もの力を出す事が可能になる
ドラゴンスラッシュ
ドラゴンクローの強化版通常のポケモンなら一撃で
消滅させる事が出来る程の威力である
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