第1章 砂漠のきせき
第1話 フシギの出会い
「…暑いな…」
1人の少年が、カンカン照りの砂漠を歩いていた。
(ハヤト様、大丈夫ですか?)
「ああ。悪いな、ハッサム。少し迷ったようだ。…くっ、サラスナタウンさえ見つかれば…」
彼の名は、ハヤト。パートナーのハッサムを連れて、サラスナタウンという町へ向かっている。
一向に砂嵐は収まらない。目に砂が入らないように、手をかざしながら進む。前ばかり気にしていると何かに足をとられ、転んでしまった。
「おわっ!」
(ハヤト様っ!)
燃えるような暑さの砂から顔を出す。
「あっちいぃっ!」
真っ赤になった顔をブンブン振り回していると、自分を転ばせた何かが見えた。それは砂に埋まっていて、何かは特定できなかった。
「…掘ってみるか。」
(はい。私もお手伝いさせていただきます。)
二人は、砂漠の砂を手で掘った。少しづつ、その形が見えてくる。
「よし、掘り出せた。」
(これは…何でしょうか?)
それは、何かの化石だった。爪の様な、不思議な化石。
(何かの爪のようですね。)
「…こんなものが砂の中に…」
(どうしますか?ハヤト様。)
「とりあえず持っていこう。…どこかで復活させてもらえればな…」
そういうとハヤトは、化石をバックの中にしまいこんだ。
それから、またあてもなく歩き続けた。砂嵐も少し収まった。ハッサムの黄色い目が、ギョロっと辺りを見回す。
(あちらに人がいます。そちらの方が町では…?)
「なるほど。行ってみるか。」
ハッサムの言う方向に進んでみると、紫の美しい服をまとった、女の人とすれ違った。その女の人は、サーナイトを連れていた。
「!!」
ハヤトはその女の人とすれ違うとき、ただならぬ威圧感を感じた。思わずハヤトはその場で立ち止まった。女の人はなおも砂漠の砂をサクサク言わせ、進んでいった。
(…ハヤト様もですか。あの女の雰囲気、どこか…)
ハヤトはしばらく黙ったままだった。
(殺気!)
ハヤトの脳裏に、殺気という言葉がよぎった。同時にハヤトは、思わず叫んでいた。
「よけろハッサム!」
(はっ!)
「行けっ!サーナイト!シャドーボール!」
(はあっ!)
美しい紫のシャドーボールは、2人のほうへ飛んでいった。が、ハヤトの鋭い反射神経のおかげでかすりさえしなかった。シャドーボールは砂に当たり、消えた。波動で砂は舞い上がり、パラっと落ちていく。
「お前ら…ロケット団の差し金だなっ!?」
「何!?違う!そんなはずないだろう!?」
「フン…そういって、やつらはいつもこのサラスナを襲ってくる…だが!私はだまされないぞ!」
「何?もうサラスナタウンが近いのか!?」
「…つっ!口が滑ったか…」
「信じてくれ、われわれは本当にロケット団ではない!」
「その証拠は?」
「…そうだな…オレのこの真剣な表情…とでも言っておくか…」
「…」
「…」
その女の人もハヤトも、しばらく黙っていた。その一瞬の間に、永久が過ぎたかと思われたほどだ。そして、その女の口が開いた。
「…フッ…アハハハ…よし、気に入った!信じてあげる!」
「…そんな証拠で信じてくれるのか?ロケット団だったとしても?」
「フフッ、その時は私がキミを倒すまでだから。…そうだ。私の名前はサラ。こっちはパートナーのサーナイトよ。サーナイト、おじぎなさい。」
そういうとサーナイトは、深々と頭を下げた。
(よろしくお願いします。)
「へえ、よろしくお願いします、か…礼儀正しいんだな。」
「あなたにもサーナイトの声が聞こえるの?」
「そうだが…皆にも聞こえるんじゃないのか?」
「いいえ、その声は、ポケモンを道具だとしか思えないものには聞こえないの。…これがロケット団じゃない1番の証拠ね。」
「ふぅん、そうだったのか…今まで当然のことだと思っていた。…そうだ、申し遅れた。俺の名はハヤト。パートナーのハッサムだ。」
ハヤトが紹介すると、ハッサムは片足を地面につけ、もう片足はひざを立て、それから言った。
(こちらこそ、よろしくお願いします。)
その後に、サラが言った。
「お互いによろしくお願いします。」
「こちらこそ、な。」
2人と2匹は、かたく握手をした。カンカン照りの砂漠で、新たな友情が動き出した。