プロローグ





「博士、なんでしょうか? 私に御用とは・・・・・・」
銀色の瞳を 持った少女が  小さな扉をノックした。
「ああ、君か、とりあえず入りたまえ。
 実はな、図鑑が出来上がったんじゃよ。」
中にいた老人は、尋ねてきた少女を中へうながす。
その言葉に従って、少女は本の積み上げられた部屋の中へと足を踏み入れた。
執事(しつじ)か何かのように、入り口付近で足を止めてしまっているが。

「図鑑・・・と申しますと、博士の研究なさっていた
 あの、図鑑のことですか?」
少女の言葉に、老人は大きくうなずく。
「そのとおりじゃ、
 しかし、まだ『完成』はしておらん。
 『あの生物』達を しっかり調べんことには・・・」
「それで、私を?」
「さすが、察しが いいのう!!
 そうじゃ、君をわざわざ 異国から 呼び寄せたのは その為じゃ。」
老人は口角のしわを増やすと、高らかに笑う。
銀の瞳の少女は 見えないようにこっそりと髪を直した程度で、反応を示さないのだが。

「・・・それで、私は何をすれば良いのでしょうか?」
少女は尋ねる。
「君には、各地にいる『あの生物』達を 捕獲し、この図鑑に 記録していってもらいたい。
 1人じゃ大変じゃろうから、わしの孫にも、同じ仕事を 頼むつもりじゃ。」
「博士の、お孫さんにですか?
 しかし、彼はまだ・・・・・」
「子供だから、と 言いたいんじゃろ?
 大丈夫、あやつは 想像以上にしっかりしておる。
 それに 年なら君と同じじゃよ。」
老人に言いくるめられ、少女は、沈黙する。
穏やかな表情で笑うと、老人は自分の側にある分厚い本を軽く叩いた。


「・・・そうそう、今日、学会で『あの生物』達の正式名称が決まったよ。」
その言葉を聞くと、少女は その瞳を大きく見開いた。
1拍、間を取って 老人は先を続ける。
「いままで、呼び名が統一されず、『化け物』だとか、『モンスター』などと呼ばれておったが、
 あやつらは、この、『モンスターボール』に 入ってしまえば おとなしいものじゃ。」
そう言って、老人は 机から球体のものを取り上げた。

「そう、このボールに 入ってしまえば、ポケットの中に 入れることもできる。
 明日、正式発表されるが、こやつらの名前は・・・・・・・・

 『ポケットモンスター』、縮めて『ポケモン』、じゃ!!」

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