<各話の1番最初に飛べます>
5、道中 6、ポケモンセンター 7、トキワシティ 8、ピカチュウ 9、チーム



5、道中




「うええぇぇぇ〜〜・・・・・・何だってこんなにたくさんのポケモンがいるんだよ・・・」
レッド達が「ポケモン図鑑」を 集め始めてから約半日。
早くも 音をあげているのはレッドだった。
ここは『1番道路』。初夏の日差しが 辺りで生い茂っている草の背を いっそう高いものへと変化させている。



「人間にも いろんな種類がいるでしょ、それと同じことよ!
 この先 何十倍と ポケモンはいるんだからね、こんなとこで音を上げててどうするの!?」
キンキンするよな 甲高い声でレッドを叱り飛ばしているのは、
同じ、マサラタウンから ポケモン図鑑のデータを集めるために出発した 女トレーナー、『ブルー』。
そして、同じくマサラ出身で、レッドの幼なじみ、『グリーン』がレッドに嫌味を飛ばす。
「ふう、やっぱりじいさんの 見こみ違いだったってことさ。
 お前なんかじゃ 一生かかっても 図鑑完成は無理だっての!!
 今から 家に帰っても 遅くはないぜ、レッドクン?」

『あ!レッドのひたいに 怒りの四つ角が現れた!!』

「な・ん・だ・とぉ〜!!
 見てろ、オレがその気になれば ポケモンの100匹や200匹・・・・・・・!!」
そう言うとレッドは フシギダネの「ハナ」を連れて ぼうぼうに伸びまくっている草むらの中に 元気に飛び込んでいく。





「ねえ、グリーン、このレッドにやる気を出させるための作戦・・・か、どうかは知らないけど、
 ・・・・・・失敗だったんじゃない?」
「・・・・・・だな。」
比較的 南の方に位置する マサラタウン、その草むらで
150%晴天の太陽の下、250%の力で 走り回っていたレッドは 軽い熱射病で倒れていた。
それを見つけた 緑青コンビは呆れ顔。
「どうするの、グリーン? もうマサラから だいぶ離れちゃったわよ?」
「『どうする』って言ったって、・・・・・進むしかないだろ、このお荷物を連れて・・・・」
レッドは この2人の会話に むっときていたが、もはや顔を上げて 文句を言う力も残っていない。


「しょうがないわね、カメキチ!!」
そう言って ブルーが モンスターボールから取り出したのは
50センチくらいの 亀のような、大きな尻尾と つぶらな瞳が かわいいポケモンだった。
ブルーが オーキド博士から もらったポケモン、ゼニガメだ。
「ちょっと荷物もってて・・・・・・
 OK、カメキチ、『あわ』よ!!」

ブルーがそう言うと、カメキチと呼ばれたポケモンは、ふーっと口から泡を・・・・
・・・・・レッドめがけて発射する。
「いてててて!いてぇー!!
 ブ、ブルー、もうちょっとまともな手段はないのか!?」
背中で ばちばち はじける 「あわ」に レッドは 悲鳴をあげた。
「だって『みずてっぽう』を使おうにも レベルが足りないんですもの。」
まるっきり 焦点のずれた答えを ブルーは言う。
足りないのは容赦(ようしゃ)か常識か、止まらない攻撃でレッドが余計に弱ったのは当たり前のこと、
完全に動けなくなり、グリーンに背負われなければ動くことも出来ない。



熱射病と『あわ』攻撃で 重体のレッドが
となり街のトキワシティに運び込まれたのは、もう、日が暮れようとしている時間だった。
「・・・・・・で、一体 どこに連れていけばいいのかしら?」
すっかり伸びてしまった レッドを背負っているグリーンは、あまりの悲惨さに声も出なかった。
「とにかく、病院だろ・・・・」
「なるほど、じゃあ、あそこね!!」
ブルーの指差した先には アルファベットで[POKE]と書いてある看板があった。
「そこ・・・ポケモンの病院・・・・・・」
「だって、『病院』、でしょ?」

(だ、だれか助けてくれ・・・・・)

動くことも、叫ぶ事も出来なくなっていたレッドは まともな治療を受けられるようにひたすら祈る事しか出来なかった。
一刻を争う事態だというのにも関わらず、グリーンとブルーが口論を続け、
結局[POKE]と書かれた建物に入っていったのは、30分後のこと。


6、ポケモンセンター




「う〜ん、これは重症ね・・・・・・・・」

[POKE]と書いてあった看板の病院、
「ポケモンセンター」という 本来ポケモンの傷の治療をするところなのだが、
結局、レッドはここに運び込まれていた。
ポケモン専門医とはいえ、「さすがは医者」といった感じで女医さんらしき人物は、てきぱきとレッドの治療を進めていく。
そんな女の人が、レッドの症状を見て一言。
「ちゃんと水は飲んでいたみたいだから、熱射病の方は たいしたことないんだけど、
 この背中のアザ、かなりの重症になっちゃってるわ、一体何があったの?」
「そ、そこにいるブル・・・・・」


・・・すぱーん!!!


「あ〜ら、ごめんなさい、レッド!?」
「〜〜〜〜〜〜っっ!!!!」
レッドの頭には気を失いかけるほどの激痛が走っていた、
ブルーが叩いたのだ、何処から取り出したのか、ハリセンで・・・・

それを見ると女医さん(らしい人)は何かを察したようだ。
レッドにこっそり耳打ちしてきた。
「・・・・・・あらあら、気の強い彼女を持つと大変ねぇ!!」
「ち・・・・ちが・・・・・・」
レッドは「違う!!」と思いっきり否定したかったが、もはや、それを行う余力も残されていない。
口をパクパクと動かすが、陸に上げられた魚のように空気が出たり入ったりするだけ。

3人がポケモンを連れていたこともあり、その晩は、ポケモンセンターに泊めてもらうことになった。
旅のトレーナー達は皆そうしているのだという。
もっとも、レッドの怪我のせいで、とても その場から動ける状況ではなかったが。
動けないレッドを病室へと残し、グリーンとブルーはセンターに出してもらった夕食を食べながら会話をする。
「どう思う?」
「・・・何の話題をしているの?」
「レッドの事だっての、他に話題もないだろうが。
 あいつ、さっさとマサラに送り返した方が良いんじゃないか?」

ブルーは自分の持っているスプーンをくるくる回しながら少し考え込んで、
「確かに、トレーナーとしてはまだまだだと思えるわ、でも・・・・・・」
「でも?」
ブルーは自分の食事を一旦中断した。
「フシギダネが レッドになついているのも事実なのよね、研究所じゃ誰にもなつかなかったのに。
 良いトレーナーは、ポケモンをなつかせる才能があるって聞いたことがあるわ。
 レッドがその『良いトレーナー』かどうかは、怪しいものだけど。」
「ばかばかしい!!
 あの単細胞にそんな才能があるわけないだろ!!」
そう言うと、グリーンはさっさと寝室のほうに向かっていった。
扉が閉まるまで背中を見送ると、落ちてきた長い髪を直し、残された食事をとりつづける。





時計の針が夜中の12時を指す頃、レッドはふと、目を覚ました。
別に背中の痛みが ぶり返してきたわけでもない、ただ、なんとなくだ。
うつ伏せになっているので あまり体の自由が利かない、レッドはもう一度寝よう、と思う。

ふと、気付くと、ほおに少しだけ 冷たい感触がある。
「・・・・・・・ハナ?」
重くなりはじめていた まぶたを少し開いてみた。
そこにはハナの姿はなかった。代わりにあったのは、白い光。

「ミュ?」
白紫色の体、長い尻尾、そして 澄んだ、青い瞳・・・・・・
小動物ほどの大きさしかないのに、レッドはそのポケモンに 何故か、神聖さを感じた。

「誰・・・・・・?」
体がだるくて動かず、レッドは眼だけを動かした。
白紫色のポケモンは体を宙に浮かせ、レッドの頭の上をふわふわ飛んでいる。
時々、顔にぶつかる長い尻尾が ひんやりしていて気持ち良い。


この名前も知らないポケモンをレッドはもっと見ていたいと思う。
しかし、いくら気持ちを集中させようとしても薄れていく意識が それを許すことはなかった。


7、トキワシティ




翌日、レッドは 走り回れるくらいまで 回復していた。
夜中に見た謎のポケモンのことは いくら話しても グリーンもブルーも信用してくれなかった。
それというのも野生のポケモンに出会ったら必ず作動するはずの ポケモン図鑑に 何も データが残されていなかったからだ。
仕方がないので、レッドは自分が見たポケモンを荷物に忍ばせておいた スケッチブックに描きとめておくことにする。
白紫色の小さな体、長く、ひんやりした尻尾、青い瞳。
それらが、自分の記憶から消えないうちに・・・・・


女医さんが(昨日の人物はどうやら本当に女医だったらしい)
レッドが街から出る事を 許してくれなかったので グリーンは先に行ってしまった。
「あんの・・・薄情者――!!」
「まあまあ、グリーンだって、ポケモン集め、早くやりたいわけだし・・・」
「なんだよ、あいつの 肩持っちゃって、まさかお前、グリーンのこと・・・・・」
「はっ!?
 ちょ、ちょっと何を考えているの!! だれが、あんな、・・・・・」
ブルーは耳まで真っ赤になっていた。
肌の白い子なので余計に赤くなっているのが目立つ。
「へ〜え、へ〜え、ブルーがねぇ・・・・・・・」
「違うって言っているの!?」



・・・・・・その後、この会話は 30分近く続いたらしい。



不毛な会話に終局を告げ、レッドは とりあえずトキワシティを歩く事にした。
この町には時々買い物に来るので、少しは 町の構造を知っている。

「ほら、ハナ、こっちだぞ!」
魚屋を突っ切り、花屋の裏を通って、レッドは ある場所を目指していた。
そこは、レッドが 小さい頃から あこがれてきた人物がいる場所・・・
「ハナ!! あそこがトキワシティジムだ!!」
茂みの中から 顔を出すと、そこには堂々とした風格をもつ、古い四角い建物があった。
看板には 大きく『GYM』と書いてある。
「ぐうぅ〜・・・・」
「でっかいだろ、トキワシティジムっていうんだぜ? ここで、トレーナーとしての腕を試されるんだ。
 いつかは オレたちも、ここに挑戦するんだぜ!!」


レッドは 小さい頃、ここに迷い込んだ事があった。
そのとき、ここのジムリーダーに 助けてもらったのだ。

「強くなったら またここに来い、俺がいつでも相手になってやる。」

そう言ってジムリーダーは レッドを 親の所まで返してくれた。
その日以来、レッドは ジムにちょくちょく遊びに行くようになった。
自分のあこがれとなった『おじさん』に 会いに行くために。


「お、そうだ、せっかくだからハナのこと、おじさんに紹介するか!!」
そう言うと、レッドは、ためらいもなく ジムの扉を叩く。

どんどんどん・・・・・

中から 返事はなかった。
「留守・・・・・・かな?
 ま、しょうがないか、いきなりだったもんな。」
レッドは 後ろに向き直って、来た道を引き返そうとした。

がちゃっ

扉の開く音がして レッドは振りかえったが、そこの扉は 開いていなかった。
「裏口・・・・・!!」
嫌な予感がして レッドは ジムの裏口まで走った。
2つ目の角を曲がって 裏口まで差し掛かったとき、レッドは ジムの中から出てきた 黒服の男にぶつかった。
「・・・いってーな、この野郎!!」
黒服の男はやくざ並みにレッドの事を睨みつける。
が、そこで『はいゴメンナサイ』などと謝るような性格ならば、グリーンに『単細胞』などと呼ばれないワケで。
「痛いのはこっちだ!!
 何なんだよ、お前ら、今 ジムから出てきたろ!! トキワジムになんの用事だ、何者だよお前ら!!」
レッドは ひるまずに このやくざ風の男に質問の連射砲をあびせる。
当然、目つきの悪い男が良く思うはずもなく、
「五月蝿い(うるさい)ボウヤだ、さっさとお家に帰りな!!」
そう言うと、黒服の男は腰についていたモンスターボールから蛇のようなポケモンを取り出した。

「・・・・・・ポケモントレーナー!?」
「とっとと帰らないと、アーボの『どくばり』が飛ぶぜ。」
男がそう言うと、蛇のようなポケモンは、しゅーっとうなってみせた。
数珠(じゅず)のように小さな球の連なった尻尾が カラカラと音を立てる。



「・・・なんだか良く分からないけど、気に入らないな、お前。
 戦ってやろうじゃんか、ハナ!!」
レッドの気持ちに応えるように、ハナはすぐさまレッドの前に飛び出した。
背中の大きなタネを見せつけるかのように、低く構えてアーボと呼ばれたヘビのようなポケモンを睨みつける。
「よし、アーボ、『どくば・・・・・」
「『たいあたり!たいあたり!たいあたり!たいあたり!たいあた・・・・・・」
力はさして強くないのだが、ハナが連続して『たいあたり』で攻撃してくるので アーボは反撃する手段もなく、地面に転がった。
10回も突進されると、もはや起き上がる気力もなくなったのか、伸び切ったうどんのように くたっと動かなくなる。
「・・・・・・使えない、ポケモンめ!!」
男は地面の上で倒れているポケモンを蔑む(さげすむ)ような視線で見ると、そう言い残し、逃げるように去っていった。
その場に 自分のポケモンを置き去りにして・・・・


きっとそれが、全ての幕開けだったのかもしれない。
黒い服の男の胸に、赤い色で『R』という文字が 刻んであるのをレッドは見た。
その文字を忘れないうちに、次の物語が始まっていく――――――


8、ピカチュウ




「あーっ、もういやっ!!」
次から次へと現れる、けむしポケモン、ビードルに、ブルーは奇声を発していた。
ここは、虫ポケモンの楽園、トキワのもり。
うっそうと茂る(しげる)森の中で、虫に出会わないというほうが無理な話なのだが・・・・



あまりにもブルーが騒ぐので、レッドは 少し腹が立ってきた。
「虫くらいでピーピー騒ぐなよ、ポケモントレーナーなんだろ?」
「虫がだめなんじゃないのよ!!
 小さい時、スピアーに刺されたことがあって・・・・・」
「わーった、わーった!!
 オレがニビシティまで連れてってやるから!!」
ブルーが泣きそうな顔になっているので レッドは それ以上強く出る事が 出来なかった。
スピアーは ビードルが進化(成長して姿を変えること、ポケモン用語)した姿。
蜂のような姿をしたポケモンで、その鋭い針に刺されると、全身に猛毒が回る、と聞いた事がある。
ましてや、『小さい時』では、その症状は凄まじかったのだろう、トラウマになっても 仕方がない。


『ポケモン図鑑の記録用』のポケモンを何匹か捕まえながら、レッドたちは森の中を進んでいった。
その途中のできごと・・・

「なんだ?あのポケモン・・・・・」
まっすぐ進めない程の木々の上、そこに、あきらかに虫には見えないポケモンがいた。
黄色い小柄な体、黒く、つぶらな瞳、背中にはしましま、そして、両方のほっぺたに赤い丸印。
「ピカチュウだわ!! かわいいっ!」
さっきまで泣きそうになっていたとは思えないくらい、顔を輝かせ、ブルーは 自分のモンスターボールに手をかけた。
しかし・・・・・
「ハナ!!『なきごえなきごえなきごえ!!!』」
「ぐうぅ!ぐぅぅ!!ぐううぅぅ!!!!」
「『たいあたりぃ!!』」
ハナの『たいあたり』が決まると、ピカチュウは1メートルくらい後ろまで吹き飛ばされる。
それを追いかけるように レッドは手にした球体をピカチュウへと投げつけた
「よっしゃ、モンスターボール!!」
レッドの手から 放たれたモンスターボールは 見事命中し、
後ろで硬直しているブルーをよそに ピカチュウはレッドのポケモンになった。
「よし、記録完了!!」


「・・・・・・・・・ずるい!!
 ピカチュウ、私が捕獲(ほかく)したかったのに!!」
「へへっ、早い者勝ちだ!!」
周りにビードルがいるのも忘れ、ブルーとレッドは口喧嘩を始める。
突然襲われないように、ということでモンスターボールから出されている
ゼニガメの『カメきち』にフシギダネの『ハナ』も、困り顔。
「捕まえちゃったモンは取り消せないからなっ!!
 ま、触るくらいならいいけど?」
そう言って、レッドは さっき捕まえた ピカチュウのボールを開いた。
「ほらブルー、撫でてやれよ!!」
レッドがブルーに見せる為に ピカチュウをひょいっと 抱き上げたとき・・・・・

ばりばりばりばりっ!!!!!

目の前がチカチカして、レッドの全身に鋭い痛みが走る。
ピカチュウが 電気を放ったのだ。
「な、なんだ!?」
ブルーが 自分のポケモン図鑑を開いて ピカチュウのデータを呼び出した。
「『ピカチュウ、ねずみポケモン
  ほっぺたの りょうがわに ちいさい でんきぶくろを もつ。
  ピンチのときに ほうでんする。』」

「ま、まじかよ・・・・・・・」
黒焦げレッドが 全身をぷすぷすといわせながらつぶやいた。
捕まえたばかりのピカチュウは虫の居所が悪いらしく、ぷい、とそっぽを向いてふくれている。
「・・・抱くか? ブルー・・・・・・」
「遠慮しておくわ。
 すごい放電量だもの、電気を浴びたくなければ、そのピカチュウをボールの中に入れておくことね。」
さすがにブルーは ピカチュウに触る気は 起きないようだ。
妙に説明口調で そろ〜っとレッドとピカチュウから遠ざかる。





レッドは ピカチュウの顔を見つめてみた。
「ぴ?」
ピカチュウは不機嫌そうな表情で レッドの事を睨んでいる。
鼻先をつつくと、ふん、と息を鳴らして、またしてもレッドに電撃を浴びせた。
「・・・なっまいきそうな顔してんな!!」
「ぴぃ?」
ピカチュウはますますレッドのことを睨みつける。
一体何が気に入らないのか、レッドが手を出せば、ことごとく電撃かギザギザの尻尾かで叩き落される。

「・・・おっしゃ、決めた!!
 今日からおまえの名前は『ピカ』だ、いくぞ、ピカ!!」
レッド以外の全員(ポケモン含む)が、「え?」という表情をする。
「ちょっと、また電撃を浴びたいの!?」
「そりゃ、電撃はきついけど、オレは、こいつの生意気さが気に入った!!
 パーティに入れてくぜ!!」
「・・・・・・電気にやられて、気がおかしくなったのかしら・・・」
レッドは 唖然としているピカチュウに向かって、自分の右手を差し出した。
「それじゃ、よろしくな、ピカ!!」

ばちばちっ!!

差し出された手には、また、ピカの電撃が走るのだった。


9、チーム




「ってぇ〜〜・・・」
レッドは相変わらずピカチュウの「ピカ」に黒焦げにされていた。
トキワの森でピカを捕まえてから既に3日、ピカは未だになつく気配が無い。

「なぁ、なんでお前 そんなにいっつも不機嫌なんだ?
 そんなに眉間にしわ寄せてばっかりだと、そのうち跡が・・・・・いてっ!!」
まったく、それだけ『でんきショック』を受けて、正常に動いているレッドの心臓は相当なものだろう。
モンスターボールから出て、その様子を見ていたハナも
どうして怒るのか分からないくらいに、ピカは不機嫌だった。


「ねえ、どうして そんなにそのピカチュウにこだわるのよ、
 電気タイプだったら、他にもたくさん・・・・」
「い・や・だ!! オレはこいつと旅したいんだ。
 だから、意地でもこいつと友達になる・・・・いてっ!!」
ブルーは呆れ顔(あきれがお)でどこかへ行ってしまった。
誰も見ていないトキワの森でも、レッドの話は続く。





「・・・・・・・・・なぁ、ピカ、友達に・・・・」

ばりばりばりっ!!!!

今日1番の電撃だろう、これは。
「いってぇ〜・・・・キクなぁ〜、これは・・・ピカ、お前もしかして、友達、いないのか?」
その言葉にピカの体は一瞬ぴくっと反応した。
図星、なのかもしれない。
「そう睨むなよ、ピカ、
 だったらさ、友達になってくれなくてもいいから、オレのポケモンバトル、手伝ってくれないか?」
ピカはそっぽを向いていたが、耳だけは、ピクピク動かしている。
「オレ、世界一のポケモントレーナーになるんだ!!
 だから、そのバトル、ピカも出てくれよ、オレは名前だけのチームリーダーでいい、な、どうかな?」


ピカは背中越しに レッドの方をちらっと見やった。
「そう、『チームレッド』!! いいんじゃねーか?」
レッドの栗色の瞳は ピカに向けてやさしく微笑んだ。
この提案に、ピカは後ろを向いたままだったが 電撃が飛んでくる事はない。
「よっしゃ、いこうぜ、ハナ、ピカ!!」
新しい『仲間』を得たレッドは 意気揚々と歩き出した。
次の町、ニビシティへ!


・・・・・・今の自分が 街の中を歩き回ったら
何人もの人から声をかけられる格好をしている事にも気付かずに、黒焦げレッドは、満面の笑顔で。


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