<各話の1番最初に飛べます>
10、ニビシティ 11、ジム 12、ポケモンバトル




10、ニビシティ




「うおっ、すっげ―――っ!!!」
ニビシティにある博物館に来ていたレッドたち。
『古代ポケモンの化石』というコーナーで 感激の声を上げては、係員の人に睨まれていた。

「カブトプス、それにプテラか・・・・・・
 昔は こんなポケモンが そこらへん、うろうろしてたのか・・・だっ!!?」
独り言の真っ最中に、レッドは両ほほを何者かに後ろから蹴り飛ばされる。
まあ、そんな事をするのは、1人、2人くらいしか、いないのだが。



「グ、グリーン!?」
「声が 大きいぞ、レッド。」
博物館の係員に気付かれないように さっさと足を引っ込めると、さっそくグリーンはレッドに向けて言い捨てる。
まさか、こんなところで会うとも思わなかったレッドは、パチパチと目を瞬かせた。
「グリーン、おまえも博物館の見学に来たのか?」
「ああ、ポケモンに関する知識を持っておくのも、
 ポケモンマスターになる為の、1歩だって、じーさんが言っていたから・・・」
「ポケモン・・・・マスター?」
聞きなれない言葉に、レッドはまた、目をぱちくりさせた。
「まさか、おまえ ポケモンマスターのこと、知らないなんて言うんじゃ・・・・・」
「ああ、知らないけど、なんだそれ?」

グリーンは、口を開いたまま固まった。
レッドが その態度にレッドが潜ませると、ようやく動きだして、床に向けて深く息を吐き出す。
「・・・・・・呆れたな、まさかお前がここまで ど素人だったとは・・・・
 いいか、ポケモンマスターっていうのは・・・



それから30分間、グリーンは この ど素人レッドに
延々と、ポケモンのルールを 教えつづけた。

各地に『ポケモンジム』というポケモンのことを教える施設があること。

『ポケモンジム』にはそれぞれジムリーダーがいて、彼らに挑戦し、勝つとバッジがもらえること。

バッジを8つ集めると毎年開かれているポケモンバトルの大会、
『ポケモンリーグ』にシードとして出られること。

『ポケモンリーグ』で優勝すると、
グランドチャンピオン、『ポケモンマスター』の称号がもらえること。





「ふーん、それで、グリーンは
 その『ポケモンマスター』を、目指してるわけか。
 あっ、・・・ってことは、グリーンは トキワジムの『おじさん』とも、戦ったのか?」
「『おじさん』?
 あぁ、おまえがよく話すトキワの、ジムリーダーのことか?
 確かにジムには行ったけど、あそこは留守とかで、戦うことは出来なかった。
 無責任なジムリーダーもあったもんだ、泥棒にでも入られたらどうするつもりなんだ?」
「あっ、そうか・・・」
レッドは内心、残念な気持ちと ほっとしている気持ちが 混ざりあっていた。




「ま、おまえにゃ、一生かかったって、『ポケモンマスター』には なれないだろうな。
 せいぜい、ポケモンとお友だちごっこでもやってな!!」
グリーンの言葉に、レッドは顔を引きつらせる。
150ホーンほどの大声で反論、係員どころか、博物館中の人間から睨まれる。
「・・・・・・なんだと!?
 世界一のポケモントレーナーになるこのオレに向かって、『ポケモンマスターにはなれない』だと?
 よーし、なってやろうじゃねーか『ポケモンマスター』!!
 絶対、おまえよりも早くな!!」
「・・・うるっせーな・・・あぁ、どうでもいい話だが・・・・・」
レッドの熱を冷ますように グリーンは冷めた声で言う。


「この街のジムの受付、今日の15時までだぜ?
 レッド、おまえ間に合うのか?」
レッドは時計を見た、14時55分。
名前はレッド(赤)なのに、顔が青くなる。
「・・・・・・・・・げっ!? あと5分しかねーじゃねーか!?
 グリーン、なんで、もっと早く教えてくれなかったんだよ?」


そう言いながら、レッドは ニビ博物館を 飛び出した。
現在、14時56分。
果たして レッドは ジムの受付に 間に合うのだろうか?


11、ジム




「うあ〜・・・・・」
疲れきった顔で レッドはジム挑戦者の 控え室に座っていた。
結局 昨日は15時きっかりにジムの受付を済ます事が出来たのだが・・・

「なに、緊張してるの? レッド。」
ブルーが 隣にちょこんと座りながら話しかけてきた。
ポケモン集めに専念していたブルーは 早めに受付を済ませたわりに レッドと同じ日取りになっていたのだ。
「いや、別に緊張しちゃいねーんだけど、
 昨日ちょっと、いろいろあって・・・・・」
『いろいろ』というのは、ポケモンセンターに行ったとき、ピカが暴れて大迷惑をかけたことにあった。
ピカを回復させようとして、看護婦の人がボールを開けたとき、
うっかりピカの尻尾を触ってしまい、機嫌を損ねてしまったのだ。
結局、その場は、レッドがピカに飴(あめ)を与える事で、何とか落ち着いたのだが・・・・・

「それにしても、さっきのグリーンの戦い、すごかったわね!!」
「はあ・・・・・」
そう、ニビシティのジム戦、グリーンの戦いは先程終わったばかり。
グリーンは ヒトカゲの尻尾の炎で敵のポケモンに火傷を負わせ、あっという間に勝利を治めていたのだ。





「オレ・・・勝てるのか?
 なんか、今になって不安になってきた・・・」
レッドは頭を抱えてうずくまった。
その背中をポンポンと叩くと、ブルーはあっかるい声を上げる。
「弱気になっていてどうするの!!
 私の華麗なる戦いを見て、元気を取り戻しときなさい!!」
ブルーはそう言うと、席から立ち(自分の順番が回ってきたのだ)バトル場に向かってさっそうと歩いていった。


ブルーの戦いは 観客の誰もが 目を見張るものがあった。
相手の巨大な(実際、8メートルもある)ポケモンにも臆(おく)することなく、
ブルーは ゼニガメの『カメきち』を ボールから取り出すと、

「カメきち、『あわ』よ!!」

そう、ブルーが指示すると、小さなカメきちは、相手のポケモンの周りに、無数の泡を飛ばす。
その『あわ』に、相手のポケモンが戸惑っているうちに、
一瞬で勝負をつけたのである。
レッドは その戦いを見て呆然としていた。
「すごい・・・・・ブルー・・・」
戦っているブルーからは、
先日まで ビードル相手に キャーキャー騒いでいた 少女の姿は 感じられなかった。



戦いの『舞台』から降りてきたブルーは、呆けて(ほうけて)いるレッドの肩を、ぽんと叩く。
「次は、あなたの番よ。
 レッド、この戦いには オーキド博士の 面子もかかっているのだから、
 ・・・・・しくじらないでよね。」
とても同い年とは思えないほど大人びた表情で ブルーは強気に笑う。
レッドは、その言葉に、寒気すら感じた。


12、ポケモンバトル




『さぁ〜、本日最後の挑戦者となりました!!
 今度の挑戦者は・・・・マサラタウンの、レッド選手です!!』

石造りの大きなジム全体に、ひときわ大きな歓声があがり、バトル場に立ったレッドは気が遠くなりそうだった。
対戦相手として真正面にいる 頭のとがった男は浮き出た汗をぬぐうと、にやりと笑う。
「フッ、これで最後の挑戦者、というわけか。
 ずいぶんと緊張しているようだが、それでこの厳しいジムバトルを勝ち抜けるのかな?」
この男、ジムリーダーのタケシからは、余裕すら感じられる。
「うっ、うっせえっ、上半身裸の変態(タケシファンの方ごめんなさい)なんかに負けてたまるか!!
 いくぜ、ハナ!!」
そう言って、レッドはモンスターボールから、フシギダネのハナを取り出した。


「最近発見されたフシギダネ、草タイプ・・・・・・セオリー通り、というわけか。
 しかし、このリーダータケシ、そう簡単にやられはしないぞ!!」
ジムリーダータケシは、ボールを開いた。
途端に、レッドの顔に照明が当たらなくなる。
「でけえ・・・・・」
見上げるほどの灰色の物体を 下から順々に見上げていく。
タケシが取り出したポケモンを レッドはまるで、山みたいだと思う。
いわへびポケモン、イワーク、体長が8メートルもある巨大なポケモンだ。




『始めっ!!』


場内に アナウンスが響き渡り、レッドにとって 初めてのジム戦が始まった。
「イワーク、『がまん』だ!!」
巨大ポケモンイワークが先手を取る。
タケシが叫ぶと、イワークは円形状の構えをとり、動かなくなった。

「・・・・・・・・・なんだ? 始まったばかりだっていうのに、攻撃してこないのか?
 まあいいや、ハナ、『つるのむち』!!」
ハナは、背中の種から、植物のつるのようなものを伸ばすと、イワーク目掛け、思いっきり叩きつけた。
身じろぎこそしないものの、イワークの岩で出来た体がボロリと崩れる。
「よっしゃ、効いてるぞ!! ハナ、もういっちょやってやれ!!」
ハナは、同じ調子で、背中のつるを2発、3発とイワークに向けて叩き続けた。


「よっしゃ!! 後1発で・・・・・」
「イワーク、『がまん』を解いていいぞ!!」
タケシの指示で、イワークが一気に突っ込んできて、レッドは思わず目をつぶった。
まるで地震のような地響きが起こり、聞き慣れたハナの声で悲鳴のようなものが聞こえる。
「・・・ハ・・・ナ?」
うっすらと 目を開けると、そこには 砕けた闘技場と、ダメージを受けて、気絶しているハナの姿があった。


『フシギダネ、戦闘不能!!
 ジムリーダー、タケシ、優勢に立ちました!!』


弾んだアナウンスと、いっそう盛り上がる歓声、会場はジムリーダーの味方という訳だ。
「・・・・・・・・・・・・」
レッドは、無言のままハナをモンスターボールに戻すと、取り出したもう1つのボールに向かって、何かをささやいた。


「頼む、ピカ!!」
中から出てきたのは、不機嫌そうな ・・・・・・ピカチュウ。
電気を通さないイワークに対して、この選択に、場内は騒然となった。
「ふざけているのか!?
 そんな、『でんき』タイプのポケモンを・・・・」
タケシはレッドの選択に 驚きを隠せなかった。
「ふざけてなんかいねーよ、このピカで、そいつを倒すんだ!!」
レッドは、怒りのこもった瞳で、タケシとイワークを見つめ、まっすぐに指差す。


「ピカ、『でんこうせっか』!!」
レッドが叫ぶと、ピカはしぶしぶながらもイワークに向かって突っ込んだ。
しかし、イワークの体は固く、あまりピカの攻撃は効いていないようだ。


「『いわ』に、そんな単純な打撃攻撃が効くと、本気で思っていたのか?」
タケシの顔からは、余裕の笑みすら感じられる。
「効くさ、オレたちは、誰にだって、負けないんだ!!」
ピカも、戦闘態勢に取りかかっていた、どうやらレッドの気持ちが通じたらしい。
大きく息を吸い込むと、足腰に力をいれる。
「ピカ、もう1発『でんこうせっか』!!」
「イワーク、『がまん』だ!!」
タケシが指示すると、イワークは再び同じ構えをとった。
円形の構えを取る前に攻撃はあたったものの、ハナが出したほどの攻撃力もなく、イワークはびくともしない。
イラついているのか、再び飛び出そうとしたピカを静止して、レッドはイワークをよく観察する。



(・・・やべぇ、もう1回あの攻撃がきたら、ピカは無事じゃすまされねーし・・・・・・
 まてよ、技の名前・・・『がまん』?
 もしかして、いっぺんダメージを食らわねーと、こいつ攻撃できないんじゃ・・・?)

「ピカ、『がまん』が解けるまで、『なきごえ』攻撃!!」
ピカはメチャクチャに嫌がるが、レッドとの言い争い(?)に根負けし、可愛らしく鳴きだした。
直接攻撃がくるものと思っていた(らしい)イワークは その行動にとまどい、なんだか力が抜けている。
そうして、レッドとピカは、相手の攻撃を『でんこうせっか』でかわし、
イワークが『がまん』を使ってきたら『なきごえ』で防御、という作戦をとる。
ただ、ピカの攻撃も強くはないので、タケシとの戦いは、今までにないほど長期戦となった。


「どうした、これでは ラチが開かないぞ?」
「それは、どうかな?」
レッドはイワークの顔を ちょいちょいと指差した。
タケシがよく見ると、タケシのイワークは相当のダメージを受けて、苦しそうにあえいでいる。
「な・・・なぜだ!?」
「『チリも積もれば山となる』、ってことわざ知ってっか?
 ピカには1ヶ所に集中して攻撃するように、最初に言っておいたんだ。
 すっげーむかつく奴が言ってた言葉だったんだけどさ、まっさか役にたつとは思わなかったよ、オレも!」
指差した先が、顔から少しずつ下へとずれていく。
イワークの腹の辺りは、ピカが攻撃しつづけたため、削れて穴が出来はじめていた。


「さあ、ピカ・・・」
レッドは笑みを浮かべ、イワークの方を指差す。

「待った!! 降参だ・・・」
とどめを刺される前に、タケシは白旗を上げる。
「完敗だ、これだけ相性の悪いピカチュウに、あと1撃でやられようとしている。
 君の、そのバトルセンスは、流石(さすが)だよ。」


一瞬の沈黙の後、会場はこの本日最後のジム挑戦者、突破者に どよめきを起こした。
「ふう、ありがとな、ピカ!! お前のおかげだよ、勝てたのは・・・」
満面の笑顔でレッドが礼をいうも、ピカはぷいっと顔をそむけ、身だしなみを整え始める。
相変わらず、だが、少しずつ変わりはじめる。
そのことをレッドも やはり少しずつだが、気付きはじめた。


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