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43、ワナだらけのジム 44、古代VS現代 45、終わらなかったバトル



43、ワナだらけのジム!?




『なるほどのう、サファリゾーンで ポケモンの生体実験が・・・・・・』
レッドの長話を聞き終わった後、オーキド博士は電話越しに 1つため息をついていた。

「一応、ポケモンセンターで回復してもらったから 体力がどうのこうのっていう事はないんだけど・・・・・・
 タツ・・・あ、そのハクリューのことだけど、自分でやった事を すげー気にしてて、オレ、どうすればいいのか・・・・・・」
いつも明るいレッドからは 想像もつかないくらい、落ちこんだため息を1つ吐く。
そばで 電話を聞いていたラッキーの『コウ』(レッドが付けたニックネーム、『幸福』の『コウ』らしい)が
座っているレッドの足を 小さなうでで抱きしめた。

『大丈夫じゃよ、『そういうポケモン達』を 預かってくれる場所があるんじゃ。
 そこに頼んで、心のケアをしてもらうというのはどうじゃ?
 きっと、元気になって帰ってくると思うが・・・?』
レッドを元気付けるかのように オーキド博士は 明るく言い放った。
「・・・・・・その方がいいな。
 じゃ、今から タツをそっちに送るから、・・・・・・お願いします。」
レッドは沈んだ声のまま 受話器を置いて 電話を切った。
ほとんど 時間を空けず、ハクリューの『タツ』の入ったボールを オーキド研究所に転送する。



「・・・・・・いてっ!!」
転送が終わり、意気消沈したまま とぼとぼと歩いているレッドに 突然背後から電撃が襲った。
振り向くと、ピカが 睨んでいるんだか笑っているんだか よくわからない表情で 突っ立っている。
「・・・ピカ? ・・・・・・・・・うわわわっ!!」
ピカの行動の意味を考える間もなく、レッドは 足元にハナの『たいあたり』をくらい、頭上からユウにどつかれた。
倒れこんだ隙に サンに背中に乗られ、ポコに頭をつつかれる。
最後にコウが レッドの頭を軽くはたき、にっこり笑って手を差し出すと、レッドはやっと、ポケモン達の行動の意味が わかったような気がした。


「変な トレーナー!!」
道端で倒れこんでいるレッドに対して、この街の子供らしい女の子が クスクスと笑いかけていた。
「自分のポケモン全員に攻撃されるなんて、兄ちゃん そんなにポケモンに嫌われてんの?」
「違う、逆だよ。」
レッドは ラッキーの手を借りて 立ちあがった。
「『好かれてるから』こそ、こいつらは殴ったんだ。 ・・・きっと、オレのこと、思いやってさ。」
「・・・・・・そう言うもん?」
少女は あまり分かっていないようで 目をパチパチと瞬く。

「・・・そーだ、父上なら、兄ちゃんが本当にポケモンに好かれてるかどうか、分かるんじゃ!!
 兄ちゃん、家きてよ、家!! セキチクジム!!」
「・・・・・・えっ!? 」
レッドは 思わず聞き返した。
まもなく向かおうと思っていた先の人間が レッドが到着する前に『こっちに来い』と言っているのだ。
「・・・君、ジムの子?」
「そーだよ、セキチクジムリーダーのキョウは あたいの父上。
 ・・・・・・あっ、まさか、あたいがジムの子で 世界中の男を『みりょう』するくらい 可愛いからって、誘拐する気じゃあ・・・」
「するかっ!!」



レッドは少女の案内で セキチクジムまで到着した。
ジムは 古代から伝わる 日本建築風の建物で 古くからある城を彷彿(ほうふつ)とさせる。
「ま、兄ちゃんが挑戦者なら、あたいの案内はここまでだから。
 せいぜい 父上の所にたどり着く前に やられないようにね!!」
そう言い残すと、少女は壁をくぐり抜け、どこかへ行ってしまった。
何が起こったのか訳が分からず、レッドは少女がくぐり抜けた壁を叩いてみるが、ただただ コンコンと固い音が響くばかりである。

「ちぇ、何だよ、『やられないようにね』って・・・ ここ、ジムトレーナー、いねーじゃねーか。」
レッドは もう一度『ちぇっ』と舌打ちすると、屋敷(と、言った方が正しいだろう)の中に 1歩踏み出した。
・・・・・・つもりだったのだが、玄関先にあった 見えない壁に顔面から衝突し、痛みでその場にうずくまる。
「あ、そうそう、言い忘れてたけど、家ん中、忍者屋敷になってて 慣れてないと進むの大変らしいから、気を付けといてね。」
先ほどの少女が どんでん返しの壁の中から顔を覗かせ、忠告する。
「・・・早く言えよ、そういうことは・・・・・・」


「よっしゃ!! それじゃ、気を取りなおして行くとするか!!」
レッドは自分に向かって叫ぶと、今度は壁にぶつからないように気を付けながら 玄関をくぐった。

きゅ〜、どすんっ!!
「うわっ!!」
「・・・ぐへッ!」
「どわっと!!」
「ぼちゃん(ぼちゃん?)げぼごぼがぼ・・・・・」
「ぶっ!?」
・・・・・・・・・何があったかは ご想像にお任せしよう。

「あ〜あ〜、バカだね〜・・・
 壁ぞいに進んでけば 罠に引っかからないようになってるのに・・・・・・」
ジムの少女は その様子を見ていて 呆れ(あきれ)はてていた。
「あんなんじゃ、父上に敵うわけが・・・・・・あ、来た。」



あっちこっち すり傷 切り傷 たんこぶ その他色々 くっつけながらも、レッドはなんとか ジムリーダーのいる部屋までたどりついた。
・・・なぜか、口に魚をくわえて。


44、古代VS現代




「あーッもーッ!! 散々 ジムん中に ワナ ワナ ワナ ワナ 仕掛けまくりやがって!!
 オレに なんか恨みでもあんのかッ!? セキチクジムリーダー!!」
レッドは くわえていた魚を 吐き捨てると ジムリーダーにくってかかった。
1番奥の部屋にいた中年の男は その様子を見ると すくっと立ちあがる。

「ファファファ・・・すまんな。
 お前に恨みはないのだが、ああしておくと、娘が喜ぶのでな。」
「娘ェ〜?」
レッドは眉を動かした。 誰がいるとも分からない天井に向かって ズバットも落ちてきそうな大声で叫ぶ。
「どーゆーことだよ!!
 この 悪趣味な 屋敷、おまえの 趣味で 作られたのかよッ!!!」

「だって、面白いんだもん。 父上の挑戦者が 次から次へと 面白いようにワナに引っかかって・・・」
天井の板が一つ開き、中からさっきの少女が 顔をのぞかせる。



「もう良い、お前は外で遊んで来い。
 ・・・・・・挑戦者、娘の非礼は 拙者が詫びよう。」
「もーいいよ、あんたジムリーダーだろ?
 わび聞くより、あんたから セキチクのジムバッジを 奪い取りたい気分だね。」

その言葉を聞くと、ジムリーダーは 口元を緩ませた。
「良いだろう、ただし、手加減はせんぞ!!
 今に生き残る イガ忍者の子孫、セキチクジムのキョウ、いざ、参る!!」
今日はそう言うと、持っているモンスターボールを 地面に打ち下ろした。
中からは 中途半端に球体のポケモンが 体中ついた『ふじつぼ』のような部分から 煙を吐いて飛び出してきた。

『ドガース どくガスポケモン
 うすい バルーンじょうの からだに もうどくの ガスが つまっている。 ちかくにくると くさい。』


「ドガースか・・・それじゃ、こっちはこいつだ!!
 いけッ!! ポコ!!」
レッドは 赤白のモンスターボールを放り投げた。 中から バーチャルポケモン ポリゴンの『ポコ』が飛び出す。

「ドガース、『どくガス』攻撃!!」
キョウは ポコが 出てくるなり いきなりドガースに攻撃を仕掛けさせた。
体中の穴から 紫色のガスが飛び出し、レッドは思わず 手で口を被った(おおった)。
キョウは 部屋中に充満する 紫色のガスの中で 不敵に笑いながら 言葉を放った。
「拙者の 得意とするタイプは『どく』!!
 毒をくらわば自滅・・・・・・眠ってしまえば無抵抗・・・お前に勝機など 見つけられるのか?」

「あたりめーだ!!」
レッドが叫んだ2秒後に ドガースの体は キョウの横を掠め(かすめ)、壁に激突していた。
「な・・・、確かに、ポリゴンは毒を吸ったはず・・・・・・ 何故(なぜ)動ける!?」
「『たいあたり』、上手くやれたな、すげーよ ポコ!!」
レッドは 左手を口に当てたまま ポコの頭を右手で撫でた。
いつのまにやら ポコの体全体は 部屋中のガスと同じ 紫色へと変色している。


「そうか・・・・・・相手のタイプを 自分に貼り付ける技『テクスチャー』・・・
 こちらと同じ『どく』タイプになってしまえば、毒を受けつけない・・・
 拙者が 昔からの技なら お前は最新の 文明を使う、と言うわけか・・・」
「なに ぶつぶつ言ってんだよ?
 そっちのドガース、まだ倒れるほどダメージは受けてないだろ? 続けようぜ?」
レッドがそう言って ポコをバトルステージまで進ませると 横から紫色の球体が ポコの体を弾き飛ばし、今度は ポコが壁に激突した。
「休むな!! 『えんまく』!!」
ポコがステージへと復帰する前に ドガースは体中の穴から 今度は墨(すみ)のような黒さの煙を 吹き出す。
狭い部屋は すぐに煙に被い尽くされ、レッドは辺りを見渡そうと 目を細めた。

「ポコ!! どこだ、ポコ!!」
「キュイン・・・」
ポコの独特の鳴き声と同時に 何かの激突するような音が部屋に響く。
ドガースの『たいあたり』を受けたのだと 直感的にレッドは感じた。
「ポコ、無事か!? 無事だったら、音を立てないようにこっちに来い!!」
暗闇の中、レッドはどこにいるのか 見当もつかないポコに向かって 闇雲に叫ぶ。
やがて、少々の間を置いて ザリッという音とともに ポコはレッドの足元まで たどり着いた。
相手の姿を見失っているうちに 何発か『たいあたり』を受けたらしく、体のあちこちに 傷を作っている。

「・・・・・・ポコ、まだ 戦えるか?」
レッドの問いに ポコは黙ってうなずく。
「そっか、大丈夫か、・・・・・・だったらさ、一緒に あのドガースを倒しにかかろうぜ!!
 勝負は1発きり、絶対 外すんじゃねーぞ?」

レッドは 帽子を深くかぶりなおした。 目を細めて 部屋の中を被い尽くす煙に じっと目を凝らす。
注意深く観察すると 黒、灰色の煙の中で 1つの闇がポコに向かい、襲いかかってきた。
「今だッ!! 『サイケこうせん』!!!」
闇が1メートルくらいのかたまりになって 近づいて来た瞬間、レッドは 体中の 全ての力を込めるかのように叫ぶ。
それに合わせて ポコが自分の前に 虹色の光の糸を収束(しゅうそく)させ、前方に向かって 一気に発射した。


バンッという 何かが壁に当たるような音と共に レッドは しりもちをついていた。
『何か』が 腹に当たり、バランスを取りきれなくなったのだ。
「なるほどな、ドガースが放った『えんまく』の動きで 向かってくる軌道を読んだのか。
 その 奇抜(きばつ)な発想は 評価してやろう。」
キョウは 大きなコウモリのようなポケモンを使い、部屋に溜まった『えんまく』を取り除きながら話した。
目の前には『サイケこうせん』を受け、戦闘不能となった ドガースが転がり、それをモンスターボールに戻す キョウの姿がある。


そして、レッドのうでの中には 気絶してしまったのか、すやすやと眠っているポコの姿があった。
「・・・・・・『サイケこうせん』を撃ったのと同時に『たいあたり』も 受けちまったのか・・・
 お疲れさん、ポコ。 おまえにちゃんと、セキチクのバッジ、見せてやるからな!!」
レッドは ポコをボールに戻すと 次のポケモンを構えた。


45、終わらなかったバトル




「ゆけッ!! ベトベトン!!」
キョウは 2匹目のポケモンを繰り出した。
体全体が液体のようで 決まった形を持たず、常に揺れ動いている なんとも言えない色をしたポケモン。
「ユウ、いけッ!!」
レッドは 自分の足元にモンスターボールを 放り投げた。
しかし、本来出てくるはずのポケモンは 一向に姿を現さない。


「・・・・・・どういうつもりだ?」
キョウは いらついたようにレッドにたずねた。
レッドは左足を 上げて見せる。 その下には いつのまにか小さな穴が出来あがっていた。
「ポコとの戦いで あんた 不意打ちしてみせたよな。 ユウの得意技も、不意打ちなんだよな!!
 ・・・なぁ、ユウ!!」
レッドが叫ぶと キョウが繰り出したベトベトンの真後ろから 茶色い玉が飛び出した。
あっという間にベトベトンを地面の中に押しこむと すぐにレッドの足元まで 走って戻ってくる。

「おっけ、よくやった!!」
レッドがユウを誉めようと頭を撫でると その手に トゲのようなものがあたる。
何が起こったのか 良く分かっていないうちに ユウは『進化』し、1回り大きな体へと成長していった。

『サンドパン ねずみポケモン
 すばしっこく はしり まわり せなかの ハりと するどい ツメの こうげきが とくい。』

「なるほどな、目には目を、というわけか・・・
 しかし、拙者とて、やすやすとやられはせぬぞ!! ゆけっ、マタドガス!!」
「よっしゃ、それじゃ、こっちも交代だ!!」

2人は 同時にポケモンを繰り出した。
キョウは 先ほど出したドガースが 2つ付いたようなポケモン、マタドガス。 ドガースの進化形だ。
レッドはというと・・・・・・
「じゃ、サン、頼むぜ?」
イーブイのサンだ。 本来、戦闘用のポケモンとして使われる事は ほとんどないのだが、レッドはこのポケモンで 様々な戦法を編み出す。


バトルは ポケモンを出した瞬間から始まっていた。
「サン!! 『でんこうせっか』!!」
「『スモッグ』だ、マタドガス!!」
相手の『スモッグ』で 決して軽くはないダメージを受けながらも、サンはマタドガスに 小さな体で ぶつかって行く。

「『どくどく』!!」
キョウが叫ぶと マタドガスは2つの口から 黒いかたまりを吐き出し、サンに命中させた。
当たったかたまりは どうやら毒だったらしく、サンは気分悪そうに その場でふらふらと 足をもつれさせる。
「・・・サンの様子がおかしい、普通の『どく』じゃねーな?
 『でんこうせっか』、サン!!」

サンは 思わず体を震わせるような視線で マタドガスを睨みつけ、技の名前の通り、電光石火のスピードで体当たりした。
そのまましがみつくと、紫色の球体に 思いっきり噛みつく。
「いいぞ、サン!! 早めに決めろ!!」
マタドガスは 嫌がり、サンを振り落とそうと暴れまわる。
しかし、サンも必死だった。
振り落とされまいとしがみつき、引っ掻いたり噛みついたりして ようやくサンが離れた時には 2匹とも 瀕死寸前のところまで来ていた。


「サン、来い!!」
レッドが呼ぶと サンはおぼつかない足取りで 駆け寄ってきた。
サンは 既に いつ倒れてもおかしくないくらいまでに衰弱し、息遣い(いきづかい)も荒く、顔色も真っ青だ。
「ほら、飲め。」
レッドは サンに『どくけし』を与えた。
苦味のある(レッドはふざけて飲んだ事がある)薬を口に含むと、少しずつだが サンの顔色は良くなってゆく。

「・・・っしゃ、それじゃ、戦闘再開だ!!
 サン・・・・・・!!」
「させぬ!! 拙者とて セキチクのジムリーダー、ただでは やられぬわ!!
 マタドガス、『じば・・・・・・」



「父上!!」
突然 天井から 先刻の少女が飛び降りてきて、レッド達の戦いを中断した。
「な、なんだぁ?」
「こら!! ジム戦中は 入って来てはならんと 何度言ったら・・・・・・!!」

少女は その場で土下座すると 言葉を続けた。
「ごめんなさい!! でも、一大事だったから・・・・・・
 大変なの、ポケモングッズの生産会社が、ロケット団にのっとられたって・・・・・・」



「フイイイィィィッ!!」
その場の沈黙をかき消したのは サンの鳴き声だった。 温厚(おんこう)なサンが これだけの大声を出すのは 初めてのことだ。
小さな足で床を蹴り上げ、『早く行こう』と レッドにうながす。
レッドはうなずいた。
「・・・そうだな、早く、いかなくちゃ。」


「待て!!」
外へ出ようと レッドが背を向けたとき、キョウが呼びとめる。
何事かとレッドが振り向くと 途端に小さな物が レッドの顔めがけ、飛んできた。

「父上、あれは・・・」
「・・・・・・忘れ物だ、挑戦者。」
思わず受けとめた物を 手のひらの上で確認すると それはピンク色のハート型をした 正真正銘、本物のジムバッジだった。
「キョウ・・・これ・・・・・・」
「行け!!」
キョウに 怒鳴られ、レッドは1回うなずくと 何も言わずに走り出した。


「父上・・・・・・」
少女が不安そうな表情で キョウの事を見つめていた。
「・・・父は、あの少年に負けていた。
 お前が入ってこなければ、父は、『負ける指示』を 出そうとしていたのだ。」
キョウは どこか遠い目で空を仰ぐ。


バタンッ!!
「どわっ!?」
ドボン!!
「ぼひゃ!? げぼごぼがぼ・・・」


「あ、ワナ取り外すの忘れてた・・・・・・」
「・・・・・・早く行って、あやつを外に出してやれ。」


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