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75、バトルを魅せるトレーナー 76、冷静な判断を



75、ポケモンリーグ 予選決勝
   グリーンVSブルー・1―――バトルを魅せるトレーナー




「・・・・・・まぁ、全然予想してなかったわけじゃないけどさ。
 すっげー、興味深いカードだな・・・・・・」
巨大なスクリーンに映し出された 予選決勝の表示を見て レッドはため息を吐くようにつぶやいた。
横にはグリーン、ブルー、それに、オーキド博士もいる。
全員の視線は スクリーンに注がれていた。

トーナメント形式の2次予選、『四天王に挑戦!』に挑む人間がいなければ それが直接決勝トーナメントになるのだが・・・
試合は順調に進んで行き、翌日には予選決勝のバトルが控えている。
そのトレーナーはGブロック代表、グリーン・O(オーキド)・マサラ、
対するはIブロック代表の ブルー・ホワイトケープだ。

「予選決勝でグリーンとブルーが戦い、勝った方がレッドとリーグ決勝・・・・・・
 フム・・・ずいぶんと、面白いことになっておるな。」
オーキド博士のしゃがれごえが 妙なくらい レッドの耳に響く。
「・・・じーさん、一体、誰を応援するつもりなんだよ?」
「全員じゃよ。
 ここまで来たら、全力で戦え、としかワシは言えん。」


『さー、いよいよポケモンリーグも最高潮(さいこうちょう)!!
 一万人を越す応募を受けた予選も、残すところあと2人、そう、予選の決勝まで進みました!!
 本日の対戦者は なんと2人ともマサラタウン出身、
 あのポケモン界の権威、オーキド博士の孫のグリーン選手対、戦いの荒野に咲く1輪の花、ブルー選手です!!』

2人とも、全く緊張の様子を見せずに会場入りする。
しかし、レッドは知っていた、周りを取り囲む 何千人、何万人という人達の瞳が どれだけプレッシャーになることかと。
それをあえて受け、押しつぶされそうなほどのプレッシャーに打ち勝ち、周りに愛嬌(あいきょう)を振りまけるくらいの度胸がないと
この世界では やっていかれないのだ、戦う前なら、なおさら。

「位置についてください!!」
大きなフラッグを持った審判の声を合図に2人はボールを構える。
審判の次の言葉を合図に 2人はボールを開く。
「試合開始」の声は 聞こえなかった、大衆の大歓声が それをかき消してしまったからだ。
「フーディン!!」
「ぷうちゃ〜ん、出番よ♪」
2つの曲がったスプーンを持ったポケモン、フーディンは 開始早々、ブルーのプクリンへと『サイケこうせん』を放ってきた。
ピンク色のつややかな体毛を持ったポケモンは ゆらりとそれを簡単そうにかわす。

『始まりました、ポケモンリーグ予選決勝!!
 事実上の準決勝とも言える このバトル、試合形式は6対6、それぞれ、3匹目のポケモンが倒れた時点で勝負がつきます!!
 グリーン選手のフーディン、早々と攻撃を仕掛けましたが、なんなくプクリンにかわされてしまいます!!』

「・・・グリーン、知ってた?
 この何万人という観衆が 私達のバトルをどれだけ楽しみにしていたか。
 それに、戦う姿に どれだけ魅力を抱いていたかっていうこと・・・・・・・・・」
「・・・・・・何が言いたい?」
ブルーが突然言い出した言葉に グリーンは眉をひそめる。
明るいブラウンの髪をなびかせ、くるりと1回転すると ブルーはにっこりと笑って言葉を続けた。
「この1年間の間で 私が調べ上げた結論。
 ポケモンバトルはただ強いだけじゃダメ、このバトルは見世物(みせもの)なのだから。」
言っているブルーの横で プクリンがぶくぶくと巨大化していった。
1メートルほどの小さなポケモンは あっという間にブルーの背を抜き、どこまでも膨らんで(ふくらんで)いく。
「そう、この1万人を越す大観衆の誰からも愛されるよう、誰の予想も裏切るような戦略が大事。
 段階を踏んで行く1つづつのバトル、私は見せるため、魅(み)せるために戦うわ!!」
ブルーが言い終わった瞬間、3メートル近くまで膨らんでいたプクリンが 突然跳ねあがった。
ふわりと浮かび上がったそれを ブルーは組み合わせた両手を使って さらに跳ね上げる。
「レシーブッ!!」
元からあったプクリンの皮膚の弾力、それに溜めこんでいた空気の力を使い、まばたきする間にプクリンは目に見えない所まで飛んでいってしまった。
まるで、空気の抜けた風船のように 空へと飛びあがって行ったのだ。
観客たちも これには言葉を失う。

「・・・フム・・・・・・ブルーはプクリンの身体の特徴を 上手く生かしてそれを戦略にするか。
 初めはタイプの相性しか考えず、融通(ゆうずう)の効かない子だと思っていたが、ブルー、変わったようじゃな。」
観客席にいたオーキドは 軽く息をつく。
その直後に 誰かが隣に座り、少しだけそちらに視線を移した後、またバトルへと注意を注いだ。
「『すてみターックル』!!!」
隕石の降り注ぐようなスピードで プクリンはフーディンの上へと落下する。
さすがに 自分も衝撃を受けたのか、くらくらと千鳥足(ちどりあし)になって プクリンは立ちあがった。

『・・・す、すごい、すごいバトルです!!
 ブルー選手、プクリンの『すてみタックル』で フーディンを1撃にして倒してしま・・・!?』

直後、ブルーのプクリンがばったりと倒れた。
落下の衝撃で土煙の上がったフィールドの上に ゆらりと黒い影が浮かぶ。
「忘れていたのか、ブルー?
 物理攻撃の威力を 半分まで押さえこむ防御技、『リフレクター』。
 バトル中、油断は即、敗北へとつながるぞ。」
「・・・ぷうちゃん・・・・・・ごめんね、私が至ら(いたら)なかったせいで・・・」
ブルーは倒れたプクリンを抱きかかえると 攻撃を加えたフーディンを 銀色の瞳で睨みつけた。
あっという間に ポケモンの交代を終えると、今度はフーディンの方がばったりと倒れる。
ブルーの側でピエロのようなポケモンが しきりに指を動かしていた。
「バリヤードのバリきち君です♪
 よ・ろ・し・く・ね☆」


「まったく、なんてガキどもだい!!
 あんな子供が バッジを全部集めていたらと思うと、あぁ、まったくぞっとすんね!!」
観客席に座り、苦々しげに言葉を吐いたキクコに オーキドは得意げに笑いかけた。
「どうじゃ、キクコ、面白い子供たちじゃろう。
 レッドも含めて、みんな、マサラの子供たちじゃ、ワシは、面白い子供たちに出会ったよ。」

76、ポケモンリーグ 予選決勝
   グリーンVSブルー・2―――冷静な判断を




「行け、ナッシー!!」
グリーンがボールを打ち下ろすと 2メートルくらいのヤシの木のようなポケモン・・・
それも、3つもの顔のある 一体どんな思考をしているのか想像もつかないポケモンが 登場した。

「『タマゴばくだん』!!」
グリーンの命令を受け、ナッシーは頭上から タマゴ型の物体を飛ばす。
それらは地面に落ち、バリヤード・・・バリきちの側まで転がると 大爆発を起こした。
「交代するわ、バリきち、戻ってちょうだい!!」
ブルーはさっさとバリきちを引っ込めると、新しいモンスターボールを開いた。
途端、ナッシーの頭のうちの1つに 棒状の物が飛んで来てぶつかる。 ダメージはほとんど無かったようだが。
「カモネギ君の カモきちです☆
 草タイプなら、立体的な攻撃なんて出来ないでしょう?」


カモネギは空中をくるくると飛んでいるクキを 見事に空中でキャッチすると そのままパタパタと飛び始めた。
まるでふざけるようにして ナッシーの周りを飛び回って挑発する。
「・・・・・・ふざけているのか!?
 仮にも ポケモンリーグ予選決勝なんだぞ!?
 ナッシー、『サイコキネシス』!!」
打ち出された念波を カモきちはふわりと飛んでかわす。
そのまま地面へと墜落するような勢いで着地すると、カモネギは持っているクキを使って チアリーディングのような行動に出た。
「ふざけているわけじゃないわ。 これが、私達の考え出した 戦法なのよ。
 ふざけたような行動の中の1つ1つに意味を持たせ、相手を自分のペースに誘い込む・・・
 言ったはずよ、私はバトルを魅せるって、カモきち『みだれづき』!!」
最後の技の指示以外は ほとんど聞こえないような小さな声だった。
カモきちは すばやく持っているクキを1回転させると、ナッシーに向けてその切っ先を突きつけた。
さらに連続してつつきまわると、普段ではあまり見られないような威力の『みだれづき』が 炸裂する。
「・・・・・・まさか、さっきの踊りは・・・!!」
「そう、『つるぎのまい』、攻撃力を上げていたの。
 グリーン、私の術の中にはまっていったみたいね、悪いけど、勝たせてもらうわよ!!」
ブルーがそう言った瞬間、フィールドにいたはずのカモネギが吹き飛ばされ、ブルーの横を飛び抜けて行った。
「・・・・・・えっ?」
慌ててブルーがフィールドに向き直ると 息を切らせたナッシーがブルーとそのポケモン、カモネギを睨みつけている。
どうやら、『サイコキネシス』が命中したらしい。
カモきちは目を回してしまって 起きる気配がない。
「手品師は、決して最後までネタをばらさないものだ。
 ブルー、お前は少し、しゃべり過ぎたんじゃないか?」

『・・・・・・ブルー選手のカモネギ、ダウン!!
 これでブルー選手、後がなくなりました、しかし、グリーン選手のナッシーも、相当辛そうだ!!』

「・・・こいつなら、後で回復すればいいだろう。
 ナッシーはポケモンなんだ、センターで回復すれば 1発で治るからな。」
そう言った グリーンの言葉も聞かず、ブルーは倒れているカモネギを抱きしめ、ボールへと戻した。
ゆっくりとグリーンの方へ、ナッシーのほうへと向き直り、
何かを決意したような顔で 青色のモンスターボール、ハイパーボールを握り締める。
「・・・後がない、か。
 仕方がないわね、出来れば 出さなければいいと思っていたのだけれど・・・・・・」
ブルーはハイパーボールの開閉ボタンを押す。
それを地面へと放ると、中から出てきたポケモンは 熱風を放ちながら 一気に上昇した。
その熱気で ナッシーはぐらりと倒れる。


「・・・・・・行け、リザードン。」
実況の男、それに、観客席にいる誰もが ブルーの出したポケモンに言葉を失っていた。
巨大な火の鳥が 空を飛んでいるのだ。
それは、伝説のポケモン、ファイヤーだった。
「炎対炎、ずいぶん、面白くなると思わないか?
 リザードン、『ほのおのうず』!!」
地上にふんばっている強大な炎の竜は 空を飛んでいる鳥へと向かって炎を吐き出す。
「ファイヤー、『そらをとぶ』攻撃!!」
リザードンの放った炎が届く直前、ファイヤーは高く高く上昇した。
炎の力はそこで切れ、リザードンが次の力をため始める直前、ファイヤーの鋭いくちばしが突き刺さる。
「よくやったわ、ファイヤー!!
 戻って、カメきちと交代よ!!」
ブルーはすばやくポケモンの交代をした。
ファイヤーが ひらりと空から舞い降りると それをボールへと戻し、代わりに赤白のモンスターボールを投げる。
「カメきち、『バブルこうせん』!!」
ブルーが叫ぶと、カメックスはその大きな体で大地を踏みしめ、7色に光るシャボン玉を次々と発射した。
それらが 午後の太陽に反射して光り、イリュージョンのような美しさが生まれる。
「どう?
 これならカメきちの出した泡が壁となって、炎はほとんど受けつけない!!
 攻撃と防御、それに魅力が一体となった・・・・・・」
「詰めが甘い!!
 リザードン、戻れッ、サンダー『かみなり』だ!!」
一瞬のうちに 耳をつんざくような爆発音が鳴り響いた。
ほぼ同じ時に目も眩むような閃光、それが『かみなり』の仕業だと理解するのには 少しの時間が必要だった。
気がつけば、黒こげになったカメックスが フィールドの真ん中で横たわっている。

『・・・・・・カ、カメックス、ダウン!!
 ブルー選手、3匹目のポケモンが倒されてしまいました、よって、グリーン選手、決勝進出です!!』

気がついたように 会場のアナウンスが流れると、それまで静まりかえっていた会場が 一気に騒がしくなった。
腰が抜けたのか脱力したのか、ブルーがその場に座りこむ。
「・・・負けちゃった。」
カメックスをボールへと戻し、それに向かってブルーは話しかけた。
そこからしばらくして、ようやく立ちあがり、歓声の響く会場に 背を向ける。


「・・・・・・伝説のポケモン、やっぱりおまえらが捕まえてたのか。」
会場へ向かう、そして、会場から外へ出る廊下の中で ブルーへと向かってレッドは話しかける。
それを無視するように ブルーの足取りは速かった。
「グリーンだって持ってたわよ。
 カメきちは サンダーの『かみなり』当てられて倒れたんだから・・・」
「・・・そっか、気をつけとくよ。」
ブルーの足取りが小走りになる。
レッドはそれについていくのに大変な思いをした。
「ついて来ないでよ!! 私はグリーンに負けただけで、レッドに負けたわけじゃないんだから!!
 レッドに 私をちゃかす権利なんてないはずだわ!!」
「ちゃかすつもりなんてねーよ!!
 それに、オレだって ブルーに負けるつもりなんてねーんだからな!!
 だから、だから、いつかオレとバトルするときまでに 強くなっとけよ、グリーンに負けねーくらいに!!」

「・・・・・分かってるわよ!!」
ブルーは走り出す。
そのすぐ後、控え室の扉を 乱暴に閉める音が 廊下に響いた。


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