「あそこがジム・・・って、ん?」
見ると、ジムの前に人だかりが出来ていた。
「どうしたん・・・ですか?皆さん、中に入って・・・」
「それがさあ、この張り紙見てくれよ!」
言われるままに最前列に行くと、そこには。
「え、ええええっ、ジムが休止!?」
「二ヶ月前からだそうだ。ったく、しょうがねえから隣の格闘道場にでも行くか・・・・」
格闘道場?アイナはその存在をはじめて知った。
「どういうところなんだろう・・・行ってみる?ヤンヤンマ。」
ヤンヤンマは、答える代わりに羽を震わせた。
「せいっ!とう!」
「あまあいっ!甘すぎるわ貴様等!」
びしいっ、と、竹刀の音が鳴り響く。
「・・・・行こっか?」
ヤンヤンマは何も答えず、身体全体を震わせた。
「はあー・・・どうしようか、これから?」
ジムは休止中、格闘道場に入る自信もない。
「うーん・・・」
その時、アイナの眼に、それは飛び込んできた。野生のチコリータが、同じく野生のデルビルに追い掛け回されているのだ。この都会の中で。
「ど、どうなってるの・・?」
突然の出来事におろおろしていると、デルビルはいきなり火を吐き始めた。それも、チコリータの周りを走り続けながら。
「・・・いけない!これはひのこ≠フ連発で起こる・・・・」
ほのおのうず≠セと分かったアイナが駆けつけようとするもすでに遅く、チコリータはうずに巻き込まれてしまった。
「・・・・そんな・・・」
しかし、次の瞬間、渦の中から二枚の葉っぱが勢いよく飛び出してきた。それは、確かにはっぱカッター≠セった。
「あの・・・・炎の中で・・・・?」
しかし、その威力は次第に衰えていき、ついにははっぱがデルビルに届かなくなってしまった。そして渦が消えた後に残ったチコリータは、『ひんし』寸前で『やけど』を負っていた。しかし、デルビルは攻撃を続けようとする。その口が開かれたとき、アイナはとっさにチコリータを腕に抱えていた。
「セ、セーフ・・・・」
これに怒ったのか、デルビルはアイナに対してにらみつけ≠トきた。
「うっ・・・力が・・・ヤンヤンマ、でんこうせっか=I!!」
しかし、デルビルにひっかか≠黷トしまった。
「まだまだ!かげぶんしん=I」
デルビルは突然回り始めたヤンヤンマに困惑していた様子だった・・・が。デルビルのひっかく≠ヘ当たった。
「かぎわける≠ヒ・・・?じゃあ、ヤンヤンマ!上に上がって!」
ヤンヤンマは急速に上に上がると、急降下した。
「ちょうおんぱ=I」
デルビルはあっという間に眼を回した。
「ふう・・・。ソニックブーム≠フ練習をしてたら偶然出来たのよね、これ・・・役に立ってよかった。」
アイナはチコリータをゆっくりと降ろした。
「もう大丈夫。・・・・にしても・・・・」
アイナはさっきの出来事を思い返していた。確かにあの時、このチコリータはほのおのうず≠ナ相性ダメージをかなり喰らっていたはずなのに、なぜ、はっぱカッター≠何度も繰り出せたのか・・・。
「あ!チコリータ!」
振り向くと、男の子が走ってきていた。
「このチコリータ・・・・君の?」
「ううん!でも、いっつもデルビルに追いかけられていたんだ!・・・・もしかしてお姉ちゃんが助けてくれたの?」
「えっ・・・・うん。」
「そっかー!!!僕、お姉ちゃんのファンになろうっと!」
男の子は眼をキラキラ輝かせている。
「あ!そうだ、・・・ここら辺でトレーナーがたくさんいるところ・・・ってある!?」
「ええっと・・・あ!クチバに行く途中にたくさんいるのを見かけたよ!・・・・話しかけたら怒られたけど・・・。」
「ありがとう!」
これで、目標が一つ決まった。確かクチバにもジムがあるのだ。その方向は・・・・
「そうだ!ぼく、いいもの持ってるよ!はい!お姉ちゃんにあげる!僕にはまだわかんないから!」
受け取ったそれは、【タウンマップ】だった。
「クチバシティは六番道路をまっすぐ行ったところね・・・」
「ここだよ!ここにたくさんいたんだ!」
「へえ・・・・。いろいろありがとう!」
「お礼なんかいいよ、僕はお姉ちゃんのファンなんだから!」
その時、鐘が鳴った。
「あっ・・・もう帰らなきゃ!じゃあね、お姉ちゃん!チコリータ!」
「じゃあね!」
もう一度タウンマップを広げる。
「ここから南ね!いこう、ヤンヤンマ・・・・っと!」
アイナはチコリータに向き直った。
「もう、デルビルにつかまっちゃだめよ。じゃあね。」
アイナは歩き出した・・・・つもりだったが、服の裾を引っ張られて立ち止まってしまった。
「どう・・・したの?」
見ると、チコリータが服に噛み付いていた。
「・・・・一緒に来る、チコリータ?」
そう言った時、チコリータはぱああっと顔を輝かせた。
アイナはモンスターボールを、チコリータに向かって投げつけた。ボールは一回転すると、点滅していたライトが消えた。
「よろしくね、チコリータ。」
そう言うと、チコリータはカプセルの中でニコニコ笑った。
その頃、クチバシティ。
『にしても・・・困りましたね、ジムリーダーが続々と失踪していると。すでに休止としているヤマブキ、タマムシに続いて今度はハナダ・・・・。いったいどうなっているんでしょうか?』
「いや・・・・まだなんとも言えんことは確かじゃ。また何か分かったら資料を送ってくれ。」
『はい。』
「オーキド博士え〜っ!こんなところにいたんですか!?」
「うむ、少し気になることがあってなあ。・・・・では行くとするかの、珍事件があったという・・・シオンタウンに。」
このカントー全体を揺るがすことになるであろう事件に、アイナ達が巻き込まれることになるのは・・・・・まだまだ先の話。
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